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シマノレーシングの足元を支えるのが、フルモデルチェンジを果たしたジャイアントのフラッグシップロード「TCR」。歴代のTCRを乗り継いできた青いチームのメンバーに、実際にレースで投入した新作TCRの印象を聞いた。

シマノレーシングが駆る、珪孔雀石色の新型TCRたち

メンバー全員が新型TCRに乗るメンバー全員が新型TCRに乗る photo:Kei Tsuji
若手中心のチームを率いる28歳のキャプテン木村圭佑(シマノレーシング)若手中心のチームを率いる28歳のキャプテン木村圭佑(シマノレーシング) photo:Kei Tsuji
シマノレーシングは、28歳のキャプテン木村圭佑を最年長に20代の選手を揃える若手中心のチーム。野寺秀徳監督が指揮するチームは、サイクルパーツメーカーのシマノがメインスポンサーを務めるだけに、他チームに先駆けて国内で一早くディスクブレーキ化を果たしている。

これまでシマノレーシングの選手たちはTCRとPROPELを脚質や好みに合わせて乗り分けてきたが、今シーズンはチームカラーと相性の良い「マットクリソコラカラー(珪孔雀石色)」の新型TCRで揃えている。製品発表から約半年の時間が経過した今、トレーニングとレースでしっかりと距離を残りこんだ選手たちにバイクの印象を聞くことができた。

チームの拠点を置く大阪府南部の丘陵地帯に集まったメンバー7名のうち、野寺監督がインプレッション役に指名したのはクライマーの湊諒とスプリンターの黒枝咲哉、そしてパンチャーの横山航太。脚質の異なる3名に個別に話を聞いたが、3名からは決まって「バランスが良い」という答えが返ってきた。ここからは3名のインプレッションを紹介していく。

「前作と比べて空力性能が上がっていることは走っていて感じます」「前作と比べて空力性能が上がっていることは走っていて感じます」 photo:Kei Tsuji「バランスの良さは下りでも顕著で、安定感がある」「バランスの良さは下りでも顕著で、安定感がある」 photo:Kei Tsuji
2020年シーズンはメンバー全員がTCRを選択した2020年シーズンはメンバー全員がTCRを選択した photo:Kei Tsuji

湊諒 クライマー 身長170cm/体重61kg フレームサイズ710(S)


湊諒 クライマー 身長170cm/体重61kg フレームサイズ710(S)湊諒 クライマー 身長170cm/体重61kg フレームサイズ710(S) photo:Kei Tsuji前作TCRを乗り続けた自分の印象としてはまず、フレームが軽く、バランスが良い。物理的にも軽いんですが、バランスが良いから乗っていて軽く感じるのかもしれません。前作TCRと比べてダンシング時の振りは軽くなっています。

ディスクブレーキ専用設計になって、後ろを引きずっている感覚も無くなった。どうしてもディスクブレーキの重さを感じていたのですが、新作になってペダリングの力がより推進力に変わっている感じです。フレームの剛性は全体的にまんべんなく硬くなっている。ダイレクト感が増して登りやすい。バランスの良さは下りでも顕著で、安定感があります。

平均点がとにかく高いので、悪く聞こえるかもしれないですけど良い意味で個性がない。ジオメトリーが前作と一緒なのでとりあえずポジションをそのまま移行したのですが、進ませ方が違うので少し調整しました。最初は進ませ方に苦戦しましたが、踏み方がわかってからは完全に新作の方が速く走れていますね。

湊諒(シマノレーシング)湊諒(シマノレーシング) photo:Kei Tsuji

黒枝咲哉 スプリンター 身長164cm/58kg フレームサイズ680(XS)


黒枝咲哉 スプリンター 身長164cm/58kg フレームサイズ680(XS)黒枝咲哉 スプリンター 身長164cm/58kg フレームサイズ680(XS) photo:Kei Tsuji夏から乗り始めて、大分のレースを走りました。前作と同じサイズ680(XS)で、ヘッドチューブの長さが少しだけ変わった影響でサドルの位置を少し変更した程度です。スプリンターとしてマイナス17度のステムを使用することもできますし、セッティングを出しやすいバイクですね。身体が小さい人でもポジションを出しやすくなっていると思います。

エアロロードのPROPELや前作のTCRと比べて、自分の脚質的に剛性のフィーリングが良い。一言で言うと「バランスが良い」に尽きますね。前作はフレームの中に硬い所と柔らかい所を感じとることができたんですが、新作は全体的にバランスが良くなっている。これはディスクブレーキ設計になって、バランスが整ったことも大きいと思います。1500Wオーバー(体重58kg)で踏んでも全然たわみを感じなくて、より反発して加速していく感じ。高速域でも伸びが良いです。

エアロロードが有利なシチュエーションもあると思いますが、ダンシング時の振りやすさやコーナリングなど、扱い方に癖がなくてレースで全体的にタイムを縮めるならこのバイクですね。

黒枝咲哉(シマノレーシング)黒枝咲哉(シマノレーシング) photo:Kei Tsuji

横山航太 パンチャー 身長167cm/体重59kg フレームサイズ710(S)


横山航太 パンチャー 身長167cm/体重59kg フレームサイズ710(S)横山航太 パンチャー 身長167cm/体重59kg フレームサイズ710(S) photo:Kei Tsujiやはりディスクブレーキ専用設計から来るバランスの良さが第一印象でした。そして前作と比べて物理的にも走った印象的にも軽い。どうしても重量が増えがちなディスクブレーキですけど、フレームが軽くなったことで、特に特殊なパーツを使うことなくUCIの規程重量(6.8kg)より少し重い程度にまとまっています。アルミのステムやカーボンレールではないサドルを使ってこの重量。軽さは武器になりますね。あと、前作と比べて空力性能が上がっていることは走っていて感じますね。クラウチングポジションを取った時に伸びていく感じ。

自分のような脚質だと、繰り返しアタックしていく中で、後半にどれだけ力を残せるかが勝負。前作はキャリパーブレーキ設計のバイクをスルーアクスル化した影響か、ハブ周りの硬さを感じていて、それが脚に来る場面もありました。新作はそのスルーアクスル周りの硬さが好印象に変わっている。

かれこれ10年ほど歴代のTCRを乗り続けているんですけど、ピュアレーシングバイクとして進化していく中で、この新作は不快な振動が抑えられた快適なバイクです。バランス良く剛性を上げながらも、歴代TCRの中で一番快適なバイク。僕たちのようなレーサーだけじゃなくて、速く・遠くを目指すサイクリストに最適な一台です。

横山航太(シマノレーシング)横山航太(シマノレーシング) photo:Kei Tsuji

あとがき

「マットクリソコラカラー」の新型TCRに乗るシマノレーシング「マットクリソコラカラー」の新型TCRに乗るシマノレーシング photo:Kei Tsuji
TCR ADVANCED SL DISC FRAME SET(税抜360,000円)TCR ADVANCED SL DISC FRAME SET(税抜360,000円) (c)ジャイアント・ジャパン日本を代表するトップチーム、シマノレーシングへのインタビューは以上の通り。実戦使用を踏まえた詳細なインプレッションを聞くべく、コロナ禍のレース休止期間を挟んだため前回記事から半年以上を開けて掲載にこぎつけた本ページだが、結果として選手たちがトレーニングとレースで距離を乗り込んだリアルな声を取り上げることができた。

シマノレーシングが駆る、珪孔雀石色のTCR ADVANCED SL DISCはトップグレードにしてフレームセット税抜36万円(リムブレーキ版は税抜33万円)。50万円、60万円オーバーのハイエンドモデルがひしめき合う昨今において、ジャイアントならではのコストパフォーマンスは、このTCRでより一層高まっていると言えるだろう。相談・購入は全国のジャイアントストア、ならびにディーラーまで。

TCR ADVANCED SL DISC FRAME SET
ジャイアント 全国ショップリスト
提供:ジャイアント・ジャパン 制作:シクロワイアード編集部