「スト村と呼ばれて」

選手には皆ニックネームがあるものだが、その大半は名前から由来した簡単なものだ。しかし宇都宮ブリッツェンの中村 誠選手の場合は違う。「スト村」...この一ひねりしたユニークなニックネームからは、彼の人生観が垣間見えるかもしれない。

自分には宇都宮ブリッツェンに加入してからニックネームが付けられました。それは「スト村」。 パッと聞いただけでは何の事か分からないようなニックネームですが、要約すると「ストイックな中村」。略して「スト村」となったわけです。

2007年の全日本実業団対抗ロードでチーム優勝を飾り同時にルビーレッドジャージを獲得した中村。栗村監督と柿沼キャプテンに挟まれて会心の笑顔を魅せる。2007年の全日本実業団対抗ロードでチーム優勝を飾り同時にルビーレッドジャージを獲得した中村。栗村監督と柿沼キャプテンに挟まれて会心の笑顔を魅せる。 では、いつから自分がスト村と呼ばれるようになったかといえば、宇都宮ブリッツェンが誕生する以前に、現在のチームのコーチである柿沼さんとチームミヤタで一緒に走っていた頃まで遡ります。

自分と柿沼さんは気心が知れた仲なので、レースに行くとホテルの部屋が同じ事が多く、その日もいつもと同じように同部屋になった、レース当日の朝の事でした。

自分は体幹部のトレーニングを日課としていて、朝起きてほんの数分しか経ってない状態で「V字腹筋」で鍛えていたところを、寝起きの柿沼さんに見られてしまいました。

柿沼さんは「な、なんてストイックなんだ...。今日はレースだよ」と言いました。それが「スト村」のはじまりだったと記憶しています。また、それだけではなく、練習に対する考え方や自転車に対する想いを柿沼さんと話していて、一層そう思われたのかもしれません。

ロードレースは基本的にストイック

そもそも自転車ロードレースというのは、競技性からしてストイックな選手が多いように思います。

レースでは何百キロという距離を、野を越え山を越えながら走ります。雨や多少の雪でも、道路が走れる状態でさえあればレースは行われます。逆に、外でじっとしているだけでも日射病になるような真夏の暑い時期でもレースはあります。

しかも、ステージレースになればそんな状況が何日も続くわけで、よっぽど我慢強い人間でないと続けていけないスポーツの一つではないでしょうか?

そんな色々な状況下で走らなければいけないロードレースというのは、レースをただ走るだけでも大変な状態にあるにも関わらず、そこからチームの選手達と協力して、他のライバルたちと戦わなければいけません。

J サイクルツアー第1戦クリテリウムin熊谷2010 TR決勝、アタックした伊藤(鹿屋体大)を追う中村。こうした動きもレース中の仕事だJ サイクルツアー第1戦クリテリウムin熊谷2010 TR決勝、アタックした伊藤(鹿屋体大)を追う中村。こうした動きもレース中の仕事だ photo(c):Hideaki.TAKAGI 2010年Jサイクルツアー第3戦の東日本実業団ロードで集団を牽引する中村2010年Jサイクルツアー第3戦の東日本実業団ロードで集団を牽引する中村 photo(c):Tatsuya.Sakamoto

そこには高いポテンシャルとパフォーマンスが求められます。自分の走りを全うしようと考えると、どうしても自分に厳しくなりますし、妥協できなくなります。

他の仕事も同じだと思いますが、もし自分が会社員で、自分がやらなければいけない仕事を自分がやらずに放置したとします。そうすれば一緒に働く人間に迷惑がかかり、さらには会社全体にまで影響が及びます。 これを、会社が「チーム」、働く社員が「ライダー」だと置き換えると、自転車競技も同じことで、自分の仕事をやり通すことが当たり前のことになってきます。

信頼される走りを自分自身が求め続けて精進する事が、選手として当たり前の形で、自分の場合はたまたま他の方の目に触れる所に居ただけで、この世界の第一線でやっている選手は皆、一般の方が「ストイックだ」と思うような事を当たり前のように行っているのだと思います。

トレーニングレースとして出場した社会人対抗ロードで久々の優勝を飾ったトレーニングレースとして出場した社会人対抗ロードで久々の優勝を飾った

「チームの仕事に携わりたい」という想い

もし、僕がこの生活<世に言うストイックな生活>から開放されて、自転車レースの他の何でもやっていい状況になったとします。それなら釣りやゴルフなどを是非やってみたいと思っています。

ん? 今でもやれるんじゃない??

そう思われる方もいるかもしれませんが、今は時間に余裕がなく、きっとまだまだ先の話になりそうです。

2010年宇都宮ブリッツェンのメンバー2010年宇都宮ブリッツェンのメンバー
釣りとゴルフ以上にやりたい事は、チームの仕事に携わりたいという事です。宇都宮ブリッツェンは地元密着型の新しいチーム形態で、企業チームとは違った部分が多く、色々な方々が協力し助け合いながらチームが成り立っています。

前例が無い分、大変な面はあるとは思いますが、それ以上に無限の可能性を秘めたチームです。そんな魅力的なチームの内側で働きたいと思っています。

走りながらチームの運営会社であるサイクルスポーツマネージメント株式会社の仕事を行っている柿沼コーチや廣瀬キャプテンの直向な姿を見ていると、自分にとっても走る原動力が生まれます。

2010年宇都宮ブリッツェンのチームプレゼンテーションでの中村(写真中央)。今季の活躍を誓う2010年宇都宮ブリッツェンのチームプレゼンテーションでの中村(写真中央)。今季の活躍を誓う Photo(c): Makoto.AYANO 2010年もストイックに走る!2010年もストイックに走る! Photo(c): Hideaki.TAKAGI

会社の事もものすごく忙しいはずなのに、目を輝かせて仕事や自転車に取り組む姿は、自分にとって「サイクルスポーツマネージメント」で働きたいという新たなモチベーションに繋がっています。

きっと、一番ストイックなのは、多忙な仕事をこなしながらも第一線でレースに挑む、柿沼コーチと廣瀬キャプテンなのかもしれません。

プロフィール
中村 誠 なかむら まこと
1983年生 27歳
アップダウンの多い周回コースなどを得意とするパンチャータイプの選手で、レース前半から動いてチームが後手にまわるのを防ぐことができる重要な存在。

そのストイックな性格からチーム内では「スト村」と呼ばれており、緊張感を持って競技に取り組む姿勢は若手の手本となる。

柿沼コーチとは多くのチームで共に戦った仲のため気心は知れており、今期は心機一転、宇都宮ブリッツェンでエースの長沼隆行と善光をサポートしながら、自身のリザルトも狙う重要なポジションで厳しいレースシーズンに挑んでいる。

主な戦歴:
2005 全日本実業団U23ロードレース 優勝
2005 3DAYSROAD熊野個人総合 9位
2005 3DAYSROAD熊野 新人賞
2005 National Championships Road U23 2位

2006 全日本実業団栂池ITT 5位
2006 全日本実業団ロードレースin小川 3位
2006 J-Tour U26 年間総合優勝
2006 全日本実業団対抗ロードレース 2位

Panaracer 「RACE」シリーズ
Race type DRace type D 写真クリックで拡大 Race type ARace type A 写真クリックで拡大 Race type LRace type L 写真クリックで拡大

パナレーサーのロードレーシングトップモデルが「RACE」シリーズとしてリニューアル。

オールラウンドタイプのtypeA(All-around)、耐パンク強化タイプのtypeD(Duro)、そして軽量タイプのtypeL(Light)がラインナップされており、用途や目的に合わせてチョイスできる。全タイプとも従来のEVO3シリーズと同じく高いグリップ力を誇る。

typeAでは従来のバリアントEVO3PTに比べて20gを軽量化。typeDはシリーズ最強の耐パンク性能を誇り、typeLは耐パンクベルトを内蔵しながら、20Cで175g、23Cで185gの軽さを実現している。

参考価格  type D:6,480 円(税込)/type A:5,680 円(税込)/type L:5,680 円(税込)
Panaracerサポート選手の注目リザルト
クリテリウムin舞洲2010
優勝 向川尚樹選手(マトリックス パワータグ)
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Jサイクルツアー第3戦 東日本サイクルロードレース
8位 長沼隆行(宇都宮ブリッツェン)
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Jサイクルツアー第4戦 白浜エアポートクリテリウム
2位 向川尚樹選手(マトリックス パワータグ)
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全日本学生選手権クリテリウム大会
優勝 元砂勇雪選手(鹿屋体育大学)
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トライアスロン ITUワールドカップ 第3戦・石垣島大会
2位 細田雄一選手(グリーンタワー・稲毛インター)
トライアスロン ITU世界選手権シリーズ 第2戦・ソウル大会
15位 細田雄一選手(グリーンタワー・稲毛インター)
トライアスロン ITUアジアカップ スービック大会
優勝 平野司選手(ハンズ・スーア・稲毛インター)
車イス陸上 ボストンマラソン(アメリカ)
優勝 土田和歌子選手
車イス陸上 ロンドンマラソン(イギリス) 
優勝 土田和歌子選手

提供:パナソニック ポリテクノロジー株式会社