デビューしたばかりのDOGMA F12 DISKを、F10 DISKを愛車とするシクロワイアード編集長・綾野、そしてF8、F10、F12と欠かさず本社取材を行なっている編集部の磯部が日本最速インプレッション。DOGMAを知るからこそ見えるF12の進化と価値、そして魅力に迫った。

インプレッション by 綾野真

「F10オーナーとしては複雑なニュース...。しかし進化の度合いを確かめたい」

マイバイクであるF10 DISKと見比べてみる。写真以上に実際のルックスは変化していたマイバイクであるF10 DISKと見比べてみる。写真以上に実際のルックスは変化していた photo:So.Isobe
DOGMA F10 DISKのオーナーになり、8ヶ月が経とうとしている。F10が「テン」(つまり10点満点の10)を車名につけたからには、新型が出るのは従来の発表サイクルよりも少し先だろうと考えていた。しかし容赦なくF12は発表された。F10でロングライドに出る機会が増え、乗りこなし、身に馴染んだ頃に。何という開発スピードだろうか...。

心躍るニューモデルの発表は、F10オーナーにとっては微妙なニュース。それでもF12へのモデルチェンジは形状の変化はあれどT1100 1K素材の変更は無しということで、F10と12の比較に興味が沸く。F12のインプレッションに入る前に、まずマイバイクであるF10のインプレを記しておくことは皆さんの参考になるだろう。

愛車のDOGMA F10DISKとCW編集長・綾野。サイズは46.5Sに乗る愛車のDOGMA F10DISKとCW編集長・綾野。サイズは46.5Sに乗る
F10でもっとも気に入っているのはダウンヒルの自在度だ。ドグマに限らず、歴代のピナレロの操りやすさは「ピナレロ・ハンドリング」と形容されてきた。F10はまさにその言葉通り、高速走行時において機敏かつ安定感のあるステアリング特性で、素晴らしいハンドリング性能を感じさせてくれる。

前後のホイールが完全に懐の中にあるような操りやすさは、とくにダウンヒルにおいて顕著で、相当なスピードを出していても自在にレーンチェンジでき、素直かつクイックなハンドリングには快感さえ覚える。それにディスクブレーキの制動性の良さが輪をかけ、私は仲間うちでは敵なしのダウンヒラーになった。F10オーナーになる前には下りで勝てなかった人を置き去りにしてしまえるのだから、その性能の高さは確かだろう。クリス・フルームのあのアクロバティックなダウンヒルも、なるほどドグマだからこそ可能なのだ、と思える。

よく「ドグマって剛性が高すぎるんじゃ?」と問われるが、確かに超高弾性カーボンを素材にしているだけあって剛性はもちろん高いのだが、かといって硬すぎることはなく、むしろ快適性を感じるぐらいに全体の剛性がほど良く調整されている。レースには出ず、ロング&エピックライドで使用するようなユーザーにも十分おすすめできるキャラクターだ。F10オーナー同士の会話でも、同じような意見を言う人が多い。

エアロダイナミクスも高いレベルにあり、とくに前輪とフォーク周辺の空気の抜け、抵抗のなさを感じる。私は山岳系ライドが好きなためリム高のあるエアロホイールをあまり好まないが、ペダルを漕がなくても無理なく他のバイクを引き離していく下りの速さは、高いエアロ効果あってのものだ。登りも得意なF10のオールラウンドな性能に満足しているし、ロングライドにますます出かけたくなる良き相棒だ。

F12インプレ 「よりスムーズな走り心地。日本人にマッチするサイズラインアップも良い」

「剛性や反応性の向上を感じつつも、快適性も保たれているため乗りこなしやすい」「剛性や反応性の向上を感じつつも、快適性も保たれているため乗りこなしやすい」 photo:So.Isobe
F12に乗ってみると、まず逞しくなったフロントフォークの存在感を感じる。ハンドル越しに目に入るフォークはブレード先端が見た目に太く、とくにディスクキャリパーの制動力を受け止める左フォークのブレードが際立って太く、アシンメトリック(左右非対称)が顕著だ。ブレードが薄く、外側に弧を描くように湾曲しているF10のフォークとはルックスから大きく違うのが印象的だ。トップチューブの曲がりは乗ると目に入らないし、その変化を感じることはできないが、このフォークの変化はもっとも大きなアイキャッチだ。

剛性感を増しているが、素直で突っ張るフィーリングも無い剛性感を増しているが、素直で突っ張るフィーリングも無い photo:Makoto.AYANOフロントフォークはその力強いルックスのとおり剛性感を増している。しかし先端付近まで中空構造のような太いブレードは振動吸収性も素直で、剛性が高すぎることもない。フォークに体重を載せてのコーナリングもよりスムーズで、突っ張る感じは無い。

チェーンステイもより太くスクウェアな形状となり、ペダリングパワーの伝達性向上により優れるという。自分にパワーが足りないので剛性アップを実感することは難しいが、バックステーおよびリア三角の振動吸収性はむしろ向上している印象だ。決して硬すぎず、ゴツゴツこない。DI2のシフトフィールもショックが少ないし、路面の凹凸からくる振動を素直に収束させているのがわかる。

それでいてハンドリング特性などは共通してDOGMAだ。全体にライドクオリティーが高まっている印象で、それが乗り心地の向上、フィーリングの良さにつながっている。それこそディスクブレーキ専用設計で造り上げたことによる恩恵だろうと思う。

一体型ハンドルの新型MOST Talon Ultraはケーブルが外に無いスッキリしたルックスで、形状がスマートになっている。空気抵抗値の向上はこの部分の恩恵が大きいだろう。私のF10のハンドルバーにはステム別体式のMOSTのJAGUAR XFC Aero Compact Carbonを使用しているが、それは380mm幅のラインナップが有ることで選んだ。そして年に数回の航空機輪行のパッキングの際に難儀したくないことがその理由。新型MOST Talon Ultraはその点も分割式のスペーサーなどにより解決しているようだ。

28cタイヤでも余裕のクリアランスが与えられたリアバック28cタイヤでも余裕のクリアランスが与えられたリアバック photo:Makoto.AYANO細部の設計変更で嬉しいのは28mmタイヤに対応したこと。F10には28mmタイヤを試してみたが、後輪のクリアランスがギリギリ。ホイールが振動で振れた際にBB周辺でフレーム内側に擦ることがある。今は少し変則的だが、前輪に28C、後輪に25Cタイヤを履くことで落ち着いている。それは漕ぎが軽く、荒れた路面の対応力も向上する組み合わせで気に入っているのだが、前後を28mmタイヤにしたい時はある。山岳や荒れた道のライドなら28mmにしておけばダウンヒルで余裕が生まれるからだ。グラベルにも好んで突っ込んでいくタイプだし、私がもっとも好きなロンド・ファン・フラーンデレンの市民レースの石畳には、前後28mmがベストだ。

ピナレロのバイクで気に入っているのが組んだときのスタイルの良さだ。マイサイズは46.5Sと小さいが、それでもシートピラーの出しろやハンドル高さ(コラム長さ)、トップチューブのスローピング具合なども完璧なプロポーションが出せる。これらは数値やテクノロジーには表せない性能だけれど、組んだ時の見た目のバランスが完璧なのは本当に気に入っている点だ。ピナレロはそこまで考えてフレームをデザインしている。

さらにドグマはサイズ展開もじつに13サイズ!もあり、身長168cmの私でもリーチとスタックの好みにより3サイズから選べる(どれもバッチリ乗れる)のはさすがだ。プロであってもジャストサイズが選べるだろう。

ファウスト氏は「金属フレームの時代にはス・ミズーラ(ジオメトリーオーダー)が当たり前だったんだ。カーボンになったからといってサイズやジオメトリーで妥協しなくてはいけないのはレース機材としては失格。その点は譲らないよ」と話す。そんな点にこだわるアマチュアは少ないのかもしれないが、フィット感を突き詰めればその大切さがわかるというもの。

F12の登場は、F10からのデザインの変更やマイナーチェンジといったレベルに留まらない、れっきとしたフルモデルチェンジだ。10から12へ。1飛ばしのナンバーに象徴されているような大きな変化が確実に感じ取れる。ドグマは一般ウケしそうなギミックやテクノロジーは追わず、レース機材として大切なことは一切疎かにしない保守派でありつつも、進化は確実に遂げる。そのうえで美しいバイクであることを至上とするのがドグマ。F12はイタリアンバイクの底力を感じさせてくれる。

テスタープロフィール:綾野真

綾野真(シクロワイアード編集長)綾野真(シクロワイアード編集長) シクロワイアード編集長。昨年10月からドグマF10DISKのオーナー。ロングライドや山岳系エピックライドが好きで、週末ごとにF10で奥多摩・奥武蔵の山間部を走り回っている。ツール・ド・フランスは20年連続で現地取材。写真は2018年ツール最終日、シャンゼリゼの表彰式にゲラント・トーマスとチームスカイの祝福にやってきたファウスト・ピナレロ社長とマーケティングマネジャーのルチアーノ・フサポーリ氏と。


インプレッション by 磯部聡

「F10よりも上支点と下支点か繋がる滑らかなペダリング。チェーンステー付近のフィーリングも違う」「F10よりも上支点と下支点か繋がる滑らかなペダリング。チェーンステー付近のフィーリングも違う」 photo:Makoto.AYANO
F12、である。その名前だけでも、F8、F10と続くDOGMAの血を引く正統進化版であることは誰にも解るはずだ。一台で石畳を除くあらゆるステージで勝つというコンセプトは変わらず、基本的な造形も引き継いではいるものの、実際にヘッドやボトムブラケットなどのボリュームアップはF10と比べるまでもない。デザイナーのスケッチから起こしたという造形は美しい限りだ。

今回はイタリア本社を訪ねて取材を行ったが、社内デビュー関連やチーム用バイクの準備に多忙を極めていたため試乗は日本国内で行うこととなった。到着後いち早くF12 DISKの試乗車を手配してくれたピナレロジャパンには改めて感謝である。

まず最初にお伝えしたいのは、DOGMAはやはりDOGMAだったということだ。

「最近のハイエンドバイクでダメなものなんてない」とは良く言われる言葉だし、本当にその通りだと思う。中でも歴代のDOGMAでいつも驚かされるのは、パワーをかけていない時ですらスッとペダルが回り、前に進むフィーリングの強さ。そしてそれは、F8、F10、F12と世代を追うごとに、少しずつ、それでも明確に強くなっていると感じる。

イタリア本社郊外で撮影したF12 DISK。この個体を日本でテストしたイタリア本社郊外で撮影したF12 DISK。この個体を日本でテストした photo:So.Isobe
2014年にデビュー、DOGMAの新たな章を切り開いたF82014年にデビュー、DOGMAの新たな章を切り開いたF8 photo:So.Isobe2017年にモデルチェンジを果たしたF10と筆者。この時のプレゼンはシチリア島で行われた2017年にモデルチェンジを果たしたF10と筆者。この時のプレゼンはシチリア島で行われた photo:Takehiro.Nakajima

F12 DISKをフィールドに連れ出し、徐々にテンポを上げていくと、渡欧前に借り受けたF10 DISKと比べ、脚当たりがほんの少し柔らかくなっていることに気づいた。F10はペダリングの上支点/下支点で少しだけ引っかかるフィーリングを覚えたが、F12はそのギクシャク感が薄らいだことでペダリングがスムーズに繋がっていく(それでもF12と乗り比べた時に気づくレベルだ)。ボリュームアップしているにも関わらず、重量がF10から据え置きであるという事実が意味するのは、各チューブの肉薄化。それが生み出しているであろう、抜け感のある走りが何とも心地良い。

チェーンステーの極太化によるフィーリングの差は、より自信を持って体感できるものだった。踏み込みに対する後ろ支えが強固となり、滑らかなペダリングが重なることでトルク感、濃密感は確実に向上している。高剛性バイクにありがちな踏みづらさが無いから加速が続く。どこまでもダンシングしていけるかのごとく。

ダンシングの軽快さは超一級品。アルミホイールでその良さを引き伸ばしてみたいダンシングの軽快さは超一級品。アルミホイールでその良さを引き伸ばしてみたい photo:Makoto.AYANO左右に自在に舵を切れるハンドリングはやや落ち着きがないとも捉えられるが、倒し込んでいくと不思議とビタッと決まる。前章で話を聞いたボッテオン氏も特段アピールしなかったが、伝統の「ピナレロハンドリング」はF12となっても生きているのだ。下りコーナーでの安定感が僅かに増したのは、BBと同じくヘッドチューブ周辺が大口径化と肉薄化されたためだろうか。ハンドルから伝わるインフォメーションには凹凸の上を繋ぐような上質感が加わったが、それでもなお、あえてハンドルに体重を乗せる(下手な)ダンシングを試したら上手く走らなかった。乗り手のスキルをカバーしてくれるエンデュランスロードとは、根本的に性格が違うことを強調しておきたい。

乗り心地を求めるなら他の選択肢があるだろう。そして、ハンドリングしかり、F10比で乗りやすくなったとは言えど硬質な踏み心地しかり、やはりDOGMAは純然たるレーサーバイクだ。

DOGMAの本質を引き出すには相応のスキルが必要になってくるが、DOGMAを感じるのに脚力は問われない。コントローラブルなハンドリングと、安心感を増したフォーク〜ヘッドチューブのおかげで、下りが苦手なライダーであっても恐怖心をいくばくか取り除いてくれると思う。乗り手のスキルが上がれば、そこに待っているのは異次元のライディングだ。F10に乗ったフルームが、2018年のジロ・デ・イタリア第19ステージで、世紀の大逆転劇を演じたように。

試乗車に装着されていたフルクラムのホイール「WIND 40C」は初見だったが、SPEED 40cのようなハイエンド品と比べれば外周部が重いデメリットこそあれど、全体的なマッチングは非常に良好だった。しかし、自分であれば、ダンシングの軽さを引き立てるためにシャキッとしたアルミホイールを選ぶだろう。F10 DISKの試乗車についていたカンパニョーロのZONDA DBでも十分だったし、SHAMAL ULTRA DBなんて最高だと思う。

そしてやはり、デザインを重視したバイクには、デザインを優先したコンポーネントだ。シマノでもスラムでも良いけれど、ここはカンパニョーロ、それもあえて、EPSではなく機械式を選びたい。12速化したSUPER RECORDであれば、性能も、趣味要素も全て兼ね備えた一台となることだろう。

お高くなってしまっても構わない。妥協の無い一台を組み上げたい、そう思わせる魅力がF12にはある。

テスタープロフィール:磯部聡

磯部聡(シクロワイアード編集部)磯部聡(シクロワイアード編集部) シクロワイアード編集部で主に海外発表会やニュース関連記事を担当。DOGMAに関してはF8を皮切りにF10、F12と現地取材を行い、その度に乗り込み、開発スタッフや選手へのインタビューを通して理解を深めてきた。趣味は「いかに狙ったコーナーを狙ったラインで、しかも美しいフォームでアグレッシブに、かつリズム良くクリアするか」の探求。自転車と同じくクルマと料理も三度の飯より好き。

提供:ピナレロジャパン text:So.Isobe、Makoto.AYANO