地域密着型のチームが増えてきた。
この流れは「宇都宮ブリッツェン」の成功例が後押ししていることは間違いない。

ブリッツェンは昨年、その人気だけでなく昨年のJツアーで個人・チーム共に総合優勝を果たすことで名実共に日本のトップチームの仲間入りを果たした。しかし設立当初、地域密着型という新しいコンセプトによるチーム設立の試みには、大きな期待が寄せられる反面、不安の声も寄せられていた。

そんな状況の中から、彼らがここまで一歩一歩前進してこれた要因とは何だったのだろうか?
それは経営学に基づいた緻密な計算ではなく、「愛」の力であり、廣瀬氏が大事にしている「分かち合う喜び」を感じ取った支援者との化学反応だった。

“地元大好き自転車バカ”が始めた手作りのプロスポーツチーム「宇都宮ブリッツェン」

2012シーズンはチーム設立から目標に掲げていたJBCF Jプロツアーにおいて個人総合優勝とチーム総合優勝のダブルタイトルを手にすることが出来ました。また、国内UCIレースの『ツール・ド・北海道』では強豪チームがひしめく中、団体総合優勝を獲得し、総合力の高さを示すことができました。

ツール・ド・北海道2012、団体総合優勝ツール・ド・北海道2012、団体総合優勝 photo:Hideaki.TAKAGIシーズン4年目にしてJプロツアー完全優勝を果たした宇都宮ブリッツェンシーズン4年目にしてJプロツアー完全優勝を果たした宇都宮ブリッツェン (c)Tatsuya.Sakamoto STUDIO NOUTIS

そしてジャパンカップの前日の、増田成幸選手のキャノンデール・プロサイクリングチームへの電撃移籍発表など、宇都宮ブリッツェンにとってもファンタスティックなシーズンとなりました。

チーム設立から5年目に入り、自転車業界と地元栃木県の皆さまには多岐に渡り宇都宮ブリッツェンの存在を知って頂けたのではないかと感じおります。

宇都宮ブリッツェンから世界ランキング3位のキャノンデール・プロサイクリングチームに移籍を果たした増田成幸宇都宮ブリッツェンから世界ランキング3位のキャノンデール・プロサイクリングチームに移籍を果たした増田成幸 (c)Tatsuya.Sakamoto STUDIO NOUTIS様々なご支援ご協力の賜物で5年目を迎えられた訳ですが、国内において独立法人であるロードレースチームの運営を長期的に継続する事は一筋縄にはいきません。

設立当初は、どこまで体力が持つのか?本当に経営が出来るのか?などの声が我々の元まで届いてきたこともありました。

確かに大学などで経営学やスポーツマネージメントを勉強したほとんどの方なら、国内ロードレースチームの運営には手を出さないと思われます。一般の媒体露出が少ないうえ、チケット収入が得られないスポーツ団体をマネージメントする事は非常に厳しいからです。

しかし、宇都宮ブリッツェンの運営サイドはスポーツマネージメントの知識はほとんど持たない“ただの素人”がはじめたプロスポーツチームです。

では何故ここまでやって来られたのか? それは誰にも負けない「競技愛」と「郷土愛」を持っていたからだと感じています。

「こんなに楽しい自転車をもっと多くの人に乗ってほしい」
「ロードレースの素晴らしさをもっと知ってほしい」
「自転車で宇都宮を日本一したい」

そんな子供心にも似た気持ちを持つ、“地元大好き自転車バカ”が始めた手作りのプロスポーツチームが宇都宮ブリッツェンです。だからこそ多くの方が手を差し伸べて下さり、関わりあってくれたのだと。

宇都宮ブリッツェンを応援して下さるスポンサー、サポーター、ボランティアスタッフの皆様には、チームが成長していく姿、ロードレースが認知され広がっていく喜び、優勝した感動を分かち合える仲間がいる。それらを運営サイドと同じ温度で楽しんでもらいたい。

そのように“競技愛”“郷土愛”に合わせ、心に垣根を作らないスタイルが、良い意味で化学変化を起こし、難しいと言われたロードレースチームの運営が継続出来て来た大きな要因の一つだと思っています。

地元における引退レースとなったジャパンカップクリテリウム2012で、ファンの労いに応える廣瀬地元における引退レースとなったジャパンカップクリテリウム2012で、ファンの労いに応える廣瀬 (c)Makoto.AYANO宇都宮ブリッツェンを支えるサポーターの皆さん。チームの大きな原動力の一つだ宇都宮ブリッツェンを支えるサポーターの皆さん。チームの大きな原動力の一つだ (c)Makoto.AYANO

プロスポーツの世界は権利や利害関係を全面に押し出す場合が多いものですが、宇都宮ブリッツェンは、心に垣根を作らず、これからも出来る限り地元の人の小さな声に耳を傾け、どんな小さなイベントでも全力で臨んで行きます。

乗り物の中で一番身近なのが自転車です。だからこそ、どんなプロスポーツよりも地域の皆さんにとって一番身近な宇都宮ブリッツェンであり続けたい。これから10年、50年、100年とチームを継続させ、伝統あるクラブと言われるように、携わるすべての人と共に歩んで行きたいと願っています。

2013シーズンに向けて

2013シーズンに突入しましたが、今年は4名の新メンバーを迎え国内レースを中心に戦っていきます。
昨年のJプロツアーランキング1位の増田選手、3位の初山選手、4位の廣瀬が移籍と引退によりチームから離れました。そのことに不安材料を感じている方がいるかも知れません。

新メンバー4名を迎えた2013メンバー。バイクはKUOTA、ホイールはシマノ、タイヤはもちろんパナレーサー新メンバー4名を迎えた2013メンバー。バイクはKUOTA、ホイールはシマノ、タイヤはもちろんパナレーサー (c)Tatsuya.Sakamoto STUDIO NOUTIS
しかし、元全日本チャンピオン、2度のアジアチャンピオンにも輝き、Jプロツアーで3度の総合優勝、アテネオリンピック日本代表の輝かしい実績を持つ鈴木真理選手がチームに合流しました。
この鈴木選手と、たった1年でエースを担うポジションにまで急成長を遂げた飯野選手との2人がエースを務め、また違ったレース展開をお見せ出来るのではないかと期待しています。

加えて中村キャプテンと普久原選手の両ベテランがエースと若手を繋ぐ連結役になるのは間違いありません。時には自ら勝利をもぎ取る力も持ち合わせているので、勝利を目指すバリエーションがあるのはチームの強みです。

昨シーズン成長を遂げた飯野智行がチームの一翼を担う昨シーズン成長を遂げた飯野智行がチームの一翼を担う photo:Hideaki.TAKAGI大ベテランのエース鈴木真理が宇都宮ブリッツェンに加入大ベテランのエース鈴木真理が宇都宮ブリッツェンに加入 (c)Tatsuya.Sakamoto STUDIO NOUTIS

そして、若手の成長がツアー優勝のキーポイントになると考えています。地元宇都宮出身のクライマー堀選手とスプリンター鈴木近成選手は、地元サポーターから大きく期待が掛かります。

昨年、堀選手はプロデビューシーズンにおいて、レース中の落車で上腕部を2度骨折しまい、シーズンのほとんどを治療とリハビリに費やして来ました。今シーズンは背水の陣で戦う覚悟であり、開幕戦の伊吹山ヒルクライムから昨年のリベンジを狙います。

鈴木近成選手は、まだまだ経験が浅いスプリンターですので、ゴールスプリントで数多くの勝利を手にしている経験豊富な鈴木真理選手から指導を受けながらゴールスプリントを担当することになります。

新加入の郡司昌紀選手は全日本選手権個人タイムトライアルU23において2年連続で2位表彰台を獲得。最年少18歳の城田大和選手は2012年国民体育大会ロード少年にて2位入賞を果たしていることから、郡司選手、城田選手共に高いポテンシャルを秘めています。

新生ブリッツェンは引き続き就任4年目となる栗村監督が指揮を取っていきます。そして、栗村監督からはチームプレゼンテーションの席で2013シーズンの目標が発表されました。

  • 目標1:Jプロツアー 個人総合優勝・チーム総合優勝
  • 目標2:全日本選手権 エリートロード・U23ロード・エリートTTで優勝(プランA)、3位入賞(プランB)
  • 目標3:UCI(国際自転車競技連合)レースにて、昨年獲得したUCIポイント(34ポイント)を上回る
  • 目標4:ジャパンカップサイクルロードレース 3位表彰台(プランA)、アジア最優秀選手賞(プランB)

昨年、Jプロツアーで個人・団体共に総合優勝を獲得しているので、当然2連覇を目指し国内ツアーに臨みます。しかし、国内有力チームも選手補強を行い、チーム力は拮抗している事が予想されるので、昨シーズンの様に表彰台の独占や連勝を続ける事はかなり難しいと感じています。

そもそもチーム半分のメンバーが入れ替わった今期、昨シーズンの成果を比較するのも違うと思います。新しいチームとしてチャレンジして行く姿勢が大切です。一勝の重みが、より重く感じるシーズンとなるでしょう。

20年間の競技生活を終えて

さて、ここから私の話をさせていただきます。

昨年、20年続けてきた競技生活を終えました。情けないことに20年も自転車競技を続けてきて、ロードレースではたった1勝しかできませんでした。

東日本ロードクラシック2012でキャリア初の優勝を遂げた東日本ロードクラシック2012でキャリア初の優勝を遂げた photo:Hideaki.TAKAGI
自分でも優秀な選手だったとは思っていません。振り返れば、人と人と繋ぐ役割だったり、チームが苦手だったり足りないと感じる部分を補ったり、つじつまが合うように自分を変えることができるタイプでした。
特にシマノレーシング時代はアシストの仕事に誇りを感じ、勝利の輪の中にいる事が最高の喜びでした。
昨年、宇都宮ブリッツェン所属でキャリア初優勝を挙げたその日も、自分が勝利するつもりでスタートラインに立ってはいませんでした。

今から考えると不思議なレース展開の組み合わせで、私はゴールラインを一番で駆け抜けぬけることができました。

内心、ロードレースの神様が“イタズラ”してくれたのかなって。
ゴール後、優勝した経験がないのでどんな風に喜びを表現していいのかフワフワした気持ちでした。アシスト選手として数々のチームの勝利を経験した事はあるけど、自身の勝利は初体験。今まではゴール先で喜んでいるエースに駆け寄り、抱き合って握手を交わすのがセオリーでした。

でも、その時はみんなが私に駆け寄ってきて抱きしめられた。これも一つのエースとアシストの違いなんだと、20年間続けてきて初めて気がついたことでした。

宇都宮市役所内で2012シーズン半ばに引退を表明宇都宮市役所内で2012シーズン半ばに引退を表明 (c)Tatsuya.Sakamoto STUDIO NOUTIS幾多の名選手をアシストしてきた廣瀬幾多の名選手をアシストしてきた廣瀬 photo:Hideaki.TAKAGI

ジャパンカップ2012アフターパーティーにて、愛息からの手紙の朗読ジャパンカップ2012アフターパーティーにて、愛息からの手紙の朗読 photo:Hideaki.TAKAGI引退レースとなった輪島ロードレース2012で、花束を受け取る廣瀬引退レースとなった輪島ロードレース2012で、花束を受け取る廣瀬 photo:Hideaki.TAKAGI

宇都宮から多くのサポーターがレース会場に駆けつけてくれて、家族もチームメイトもみんなが私の勝利に喜んでくれました。今だから言えるけど、ライバルチームの野寺監督も狩野選手も喜んでくれたり、たくさんのメッセージも頂きました。

しかし、私はその一ヶ月後には引退を決意していました。
多くの方が引退発表後に「まだまだ走れるでしょ?」と言ってくれましたが、選手での目標よりも、もっと他にやりたいことが生まれていたからです。

日本の選手達も純粋に強くなりたい、勝ちたいといって厳しい努力を続けています。
そんな選手達に努力した分、優勝した数だけ、高い評価を受ける環境であるべきだと私は思っています。
そして、多くのサポーターが集う熱狂したレース会場で選手達を輝かせたい。

たくさんの子供たちがプロ野球選手やJリーガーになりたいと言うように、プロロードレーサーも子供達の夢の選択の一つになる様、これからも日本でサイクルロードレースの素晴らしさを広げて行きます。

ジャパンカップクリテリウム2012を走り終え、地元の歓声に応える廣瀬ジャパンカップクリテリウム2012を走り終え、地元の歓声に応える廣瀬 photo:Kei Tsuji

プロフィール
廣瀬 佳正 ひろせ よしまさ
1977年10月21日生(35歳)
栃木に生まれ、自転車競技の名門・作新学院出身である生粋の栃木人。ブリヂストンアンカー、スキルシマノなどのチームを経て、地域密着型プロロードチ-ム「宇都宮ブリッツェン」の設立に尽力し、自らも選手として活躍。Jプロツアー2012最終戦・輪島ロードレースを最後に選手を引退し、現在はチームのゼネラルマネージャーに就任、チームと自転車競技の発展に奔走している。

Panaracer「TOURER PLUS Brevet edition」

パナレーサー TOURER PLUS  Brevet editionパナレーサー TOURER PLUS Brevet edition (c)パナレーサーロードバイクやスポルティーフでのツーリングに人気のタイヤ「ツアラープラス」に、ブルベに最適な「ブルベエディション」が誕生。

「ツアラープラス」は、“本格的なロードバイクで安心してツーリングが楽しめるロードタイヤ”をコンセプトに開発された商品だが、「ブルベ エディション」は、超長距離を走ることになるブルベを意識して、さらに「軽く」「快適に」を追求して開発されている。

「強さ」を維持するために、ベーシックモデルと同じく、ツーリングにありがちなサイドカットやリム打ちパンクで効果を発揮する「アンチフラットケーシング」を採用。「ブルベ エディション」は、ベーシックモデルからケーシングのベースコードを軽量化することによって、さらなる軽量化と衝撃吸収性向上を実現した。

またコンパウンドも、耐カット性、耐摩耗性を向上させた「 NEW ZSGナチュラルコンパウンド」を採用することで安心感がアップ。

サイズは、長距離走行での身体への負担軽減を考慮した、エアボリュームのある700×26Cで展開。26Cの太目のサイズで「アンチフラットケーシング」も採用しながら、重量は240g(ave)を実現している。

商品名「Panaracer TOURER PLUS Brevet edition」
(パナレーサー ツアラープラス ブルベエディション)
サイズ700×26C(26-622)
重 量240g(ave) ※アラミドビード
カラー黒、茶サイド
税込参考価格5,100円
発売時期2月初旬

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グループ1優勝黒枝士揮選手(鹿屋体育大学)
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東京マラソン2013
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提供:パナソニック ポリテクノロジー株式会社