「熱帯の花となれ、風となれ」をキャッチフレーズに開催されるツール・ド・おきなわ。日曜のレース部門がメインだが、土・日曜にわたって楽しめるサイクリングの部も人気が高い。やんばる地方をぐるりと巡るダイナミックなセンチュリーライドの様子を実走レポートでお伝えしよう。

本島一周サイクリング&やんばるセンチュリーライドのスタート チームオリオンのみなさん本島一周サイクリング&やんばるセンチュリーライドのスタート チームオリオンのみなさん (c)Makoto.AYANO気の合う仲間で走ります気の合う仲間で走ります (c)Makoto.AYANO

沖縄北部ヤンバル地方、アップダウンの厳しいコースだが、コースの素晴らしさ、おきなわならではの雰囲気にリピーターも多いのが素晴らしいサイクリングである証拠。

ここでは土曜日の本島一周サイクリングの一日目と、やんばるセンチュリーライドの模様を紹介しよう。このふたつは基本的に土曜は同じコースを走り、沖縄本島の北半分をぐるりと廻る。本島一周サイクリングは日曜にもう半分の南を走ることができる2日間のフルコースだ。

子供太鼓に見送られてスタート子供太鼓に見送られてスタート (c)Makoto.AYANO名護十字路をスタートしていく本島一周サイクリング&やんばるセンチュリーライド名護十字路をスタートしていく本島一周サイクリング&やんばるセンチュリーライド (c)Makoto.AYANO

今年からスタート地点が変わり、名護市中心部の名護十字路からスタートする。大会メイン会場には、早朝7時のスタートにあわせサイクリングの部の参加者約1000人が集合した。

ここから、沖縄本島一周サイクリング(2日間、313km)とやんばるセンチュリーライド (189㎞)、チャレンジサイクリング100㎞)、恩納村ファミリーサイクリング(70km)伊平屋島体験サイクリング(76㎞)、伊是名島体験サイクリング(56㎞)、バリアフリーサイクリング(40km)などが、順次スタートしていく。

名護市を抜けて一路やんばるを目指す名護市を抜けて一路やんばるを目指す (c)Makoto.AYANO海岸沿いの橋を渡る集団 グループは途切れない海岸沿いの橋を渡る集団 グループは途切れない (c)Makoto.AYANO

ツール・ド・おきなわのレースを含む全体の参加者は約4,400人。サイクリングの部の参加者は約1000人と、レースもツーリングも日本最大級のイベントだ。実行委員会の話では、大会として安全に運営できる人数で応募を締め切らざるを得ず、すぐに定員一杯になるほど。もちろん参加希望者数はもっと多い。そして、今年多かったのが台湾からの参加者。全部門で170名以上の台湾のサイクリストが、参加してくれた。このサイクリングにも、大きなグループで走っていた。震災被災地への義援金を200億円以上寄せてくれた台湾。距離が近いというだけでなく、大いなる親日家だ。

台湾女子アナチーム 右はとても有名な方だそうです台湾女子アナチーム 右はとても有名な方だそうです (c)Makoto.AYANOちょっとオシャレなウェアで走る台湾からの参加者ちょっとオシャレなウェアで走る台湾からの参加者 (c)Makoto.AYANO

この日は朝から素晴らしい天気に恵まれた。暑すぎず、爽やかな晴天。湿度も低く走りやすいおきなわ独特の晩秋の天気が嬉しい。もっとも、2010年は大雨に見舞われ、あまりの豪雨に途中で棄権する人が続出したという。その無念をもって今年再度チャレンジするリピーターさんもかなりの数がいたようだ。

ヤンバル地方を走るこのコースは、レースの部も通るやんばる地方の過酷なアップダウンを189㎞にわたって走り抜ける。コースが厳しいことで知られ、完走するにはそれなりの体力が必要だ。

延々と続く海岸線をひた走る延々と続く海岸線をひた走る (c)Makoto.AYANO
可愛い応援団が沿道に登場可愛い応援団が沿道に登場 (c)Makoto.AYANO台湾の女子アナチーム 楽しんでいます台湾の女子アナチーム 楽しんでいます (c)Makoto.AYANO

前半の約85kmは海沿いの沖縄らしい景観をいく平坦路。海を左手に見ながら、淡々と、快調に距離を稼いでいける。
参加者たちはチェックポイントになっているエイドステーションでストップしながらも、脚の揃った仲間や集団をみつけて足早に走っていく。

エイドステーションで供されるのは、バナナなどと並んで、沖縄名産のサーターアンダーギー(揚げドーナツ)や、シークワーサージュース(レモンの一種)黒糖など、南国ならではの味が嬉しい。汗を大量にかくので、ミネラル補給の塩もしっかり用意されている。

サーターアンダーギーはおきなわの揚げドーナツサーターアンダーギーはおきなわの揚げドーナツ (c)Makoto.AYANO沖縄のひらみレモン「シークワーサー」が補給食として供される沖縄のひらみレモン「シークワーサー」が補給食として供される (c)Makoto.AYANO

昼食がしっかり出るのもポイント。奥の休憩ポイントでは、豚汁とカレーがひとりづつに供されて、しっかりと食事を摂ることができる。

奥の休憩ポイントでの昼食風景奥の休憩ポイントでの昼食風景 (c)Makoto.AYANO昼食ポイントで出る豚汁とカレー昼食ポイントで出る豚汁とカレー (c)Makoto.AYANO

そして待っている後半の110km以上が、世界遺産になっているやんばるの熱帯林のジャングルをいくアップダウンの激しい道のりだ。ちょうど昼食タイムを挟んでコースの厳しさががらりと変わる。しっかり食事を摂る必要性は、この後の道の厳しさをしっていれば十分理解できるのだ。

やんばるクイナが見守る中を走るやんばるクイナが見守る中を走る (c)Makoto.AYANO

道端でよくみる「ヤンバルクイナ横断注意」の看板は、観光客ウケを狙っているわけではなく、本当に出没するから。道を横切るときにクルマにはねられて交通事故に遭うケースが多いようで、注意を呼びかけているようだ。

やんばるクイナ飛び出し注意の看板が見守るやんばるクイナ飛び出し注意の看板が見守る (c)Makoto.AYANOやんばるクイナの交通事故防止を訴える看板やんばるクイナの交通事故防止を訴える看板 (c)Makoto.AYANO

走りながら撮影していると、台湾人のジャーナリストに声をかけられる。なんでもレース系の仕事もしている雑誌社に勤める若者、Alan君で、私事だが、つい先日台湾で開催されたレースの写真と記事のやり取りをしてくれた雑誌社に勤務している。意外なところでつながっているのだなぁと嬉しくなった。この翌週の台湾のMAXXIS太魯閣国際ヒルクライムに行くんだよ、と話したら、古くからつきあいのあるジャーナリストと久々に会えるだろう、と教えてくれた。

台湾や韓国との交流がますます盛んになるツール・ド・おきなわでは、アジアのお客さんを迎える用意を年々進めている。実行委員長の森兵次さんが社長をつとめる沖縄輪業(外部リンク)では、スポーツバイクのレンタルを始めたとのこと。かなり高級なカーボンバイクもこの先レンタルが可能になる準備を進めているとのことで、荷物を抱えてのアクセスの問題が徐々にクリアになりそうだ。

台湾人のAlanが沖縄輪業でレンタルしたジャイアントのロードレーサー台湾人のAlanが沖縄輪業でレンタルしたジャイアントのロードレーサー (c)Makoto.AYANO新車で借りられるようだ新車で借りられるようだ (c)Makoto.AYANO

ちなみにAlanが借りたラボバンクカラーのジャイアントのアルミバイクは、105装備の本格的ロードバイクだった。Alanによれば、台湾では都市型バイクショップでカーボンバイクやDi2装備の高級バイクがレンタルできるのは当たり前になりつつあり、沖縄がそれに学ぼうとしているんだとか。さすが、サイクリングアイランド構想を掲げる沖縄だけある。

ハイライトはやんばるの厳しいコース

アップダウンが続くやんばる路 とても厳しい道だアップダウンが続くやんばる路 とても厳しい道だ (c)Makoto.AYANO

本島一周サイクリングとやんばるセンチュリーライドのハイライトは、やっぱり厳しくてもやんばる地方のジャングル地帯を行く道だと思う。アップダウンが繰り返し、海もときどきしか見えないが、道の両側に広がる亜熱帯ならではの独特の森の風景を見ながら走るのは、なかなか楽しい。

おおきなシダ植物や、人がすっぽり隠れてしまいそうなイモ科の葉が生い茂る森は、ヤンバルクイナがいつでてきてもおかしくない。恐竜が住んでそうな雰囲気さえ漂う風景だ。

シダ植物が沿道から応援?シダ植物が沿道から応援? (c)Makoto.AYANO見渡す限りやんばるのジャングルが続く見渡す限りやんばるのジャングルが続く (c)Makoto.AYANO


やんばる地方では休憩所の数は減るが、代わりなるのが共同売店という名前の地域の商店。ここで必要な補給食は買うことができる。運が良ければ100円でおきなわソバを食べることもできる(ただしすぐなくなってしまう)。

高江共同売店「山の駅」で休憩高江共同売店「山の駅」で休憩 (c)Makoto.AYANO沖縄ならではの味をみつけよう沖縄ならではの味をみつけよう (c)Makoto.AYANO

高江のチェックポイント手前には、有名なヒロ・コーヒーファームがある。ここは知る人ぞ知る隠れスポット。ご主人のヒロさん(足立浩志さん)が一昨年亡くなってしまったのだが、有機栽培の自家製コーヒーを出してくれる味のあるお店で、ここのやんばるコーヒーは格別に美味しいと評判だ。毎年このお店に立ち寄ってコーヒーを楽しむのが、私の密かな楽しみ。ちょうど眠気が襲ってくるタイミングなので、美味しいホットコーヒーと、コーヒーの若葉で入れた緑茶(サービス)が、目覚めの喝を入れるのにちょうどいいのだ。

高江休憩所近くのヒロ・コーヒーファーム 隠れ家的名店です高江休憩所近くのヒロ・コーヒーファーム 隠れ家的名店です (c)Makoto.AYANOあえてサービスで出されるコーヒーの新芽で淹れたお茶を紹介 目が覚めますあえてサービスで出されるコーヒーの新芽で淹れたお茶を紹介 目が覚めます (c)Makoto.AYANO

高江を越え、東村の海岸部に入り海沿いの道になるとアップダウンが減り、ペースを上げることができる。疲れは溜まってくるが、最後のエイドステーションの大浦まではもうすぐ。

大浦の道の駅でしっかり補給をとって、最後に待ち構えているのは、レース部門でも同じみの羽地ダムへの上りだ。原生林の間を縫って登るダイナミックな道は、レースがトンネルの先を右折してダムへの道を行くが、サイクリングの部は直進してさらに上り、名護市街を目指す。

沿道のホテル従業員たちが厚意で用意する施設エイドステーションも沿道のホテル従業員たちが厚意で用意する施設エイドステーションも (c)Makoto.AYANO好天に恵まれて、やんばるの大自然の中を走る好天に恵まれて、やんばるの大自然の中を走る (c)Makoto.AYANO

頂上から下ると、一気に名護市街のオリオンビール工場へと到着するのだ。メイン会場の名護十字路はすぐそこ。1日コースはここでゴールを迎えるが、2日間コースの人はふたたび海沿いの道を喜瀬ビーチまで走らなければいけない。この大浦からの最後の上り区間と、ホテルまでの道のりは、疲れた身体にはちょっとキツイ冗談に思えるオマケだ。夕暮れを過ぎてゴールする人も多いのだ。

夕暮れに名護市にゴールできればGood! 達成感に包まれる瞬間だ夕暮れに名護市にゴールできればGood! 達成感に包まれる瞬間だ (c)Makoto.AYANO

走った後は居酒屋で沖縄料理とオリオンビール、そして泡盛を楽しむ。胃も疲れているからあまり飲み食いはできないはずだけど、厳しいやんばる地方を走りきった身体には、身体に良い沖縄料理と、泡盛の心地よい酔いが嬉しい。走って食べて沖縄を実感する。それがやんばるサイクリングの魅力だと思う。


text&photo:Makoto.AYANO

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