新型コロナウィルスの感染拡大が続く中、交通手段や健康維持目的で自転車利用に注目が集まっている。政府による緊急事態宣言が発出され多くの商業施設が休業する中、人々の生活に欠かせない自転車の販売やメンテナンスを行う自転車店は様々な工夫を凝らしながら営業を続けている。サイクリストが自転車店を利用するにあたって、どんな注意が必要だろうか?



自転車協会が自転車店営業についての「お知らせ」を発表

4月7日、新型コロナウィルス(COVID-19)の感染拡大を受け、政府より緊急事態宣言が発令された。東京都や大阪府をはじめとした対象地域の7都府県(4月14日現在)では、外出の自粛や学校の休校、娯楽施設や商業施設への休業要請が各自治体から発せられている。

サイクリストにとって欠かせない存在である自転車店サイクリストにとって欠かせない存在である自転車店
また、世界各国、特に感染が爆発的に広まっている欧州の各都市では都市封鎖(ロックダウン)が行われ、法的拘束力のある不要不急の外出規制や店舗休業が行われている。このような情勢の中で、感染の恐れが大きいとされる電車やバス、タクシーなどに代わる交通手段として、自転車が注目されている。

自転車の利用が進む状況下で必要不可欠となるのが、自転車の販売や修理・メンテナンスを行う自転車店の営業だ。人との接触を避ける交通手段として、運動不足を解消するためのアクティビティとして自転車を活用していれば、どうしても故障や部品の欠損などは付きまとうもの。4月9日、一般社団法人自転車協会が現在の状況における自転車店の営業について、以下のような「お知らせ」を出した。以下、全文となる。



自転車販売店の営業について

初めに、新型コロナウイルスに感染した方々に心よりお見舞い申し上げます。

現在、世界は先行きが不透明な新型コロナウイルス感染拡大に直面しており、家族、友人、お客様、私たちの周りの人全員が影響を受けています。

諸外国においては、厳格な「ロックダウン」という規制のもと自転車販売店の営業が許可されていない国もある中、日本では公共交通機関に代わる移動手段として自転車の活用が続いており、「緊急事態宣言」発令後もお客様の感染リスクを最低限に抑えるような方法をとったうえで、自転車販売店は一部店舗(休業しているショッピングモール内の店舗及び土日休業や時短営業の店舗)を除いて通常営業を続けております。

不要不急の外出は自粛するよう国や各自治体から要請が出ている状況においても、日常の買い物など外出が必要な場合もあろうかと思います。

その際、人との密を避けるための有効な移動手段として、自転車を新規にご購入される場合やお手持ちの自転車をメンテナンスして使用するなど、消費者のニーズに対応すべく、自転車販売店の営業は継続しております。

(引用元:自転車協会HP https://www.jitensha-kyokai.jp/info/?p=1#n1586312699-412274



この内容に先立ち、WBIA(世界自転車工業連盟)は「世界各国の政府に対して、必要なあらゆる健康衛生上の注意が尊重されることを条件として、COVID-19危機の最中も自転車修理業務の継続を許可するよう要請した」というプレスリリースを配信。このコロナ禍において、自転車店の営業が生活に不可欠なものであることを発信している。

時短営業店舗も多いため、営業時間の確認を。予約制をとる店舗も

自転車協会が表明した声明の中にあるように、現在のところ日本において多くの自転車店は営業を続けている。4月13日に東京都が発表した休業要請対象施設FAQの中では、自転車店は社会生活を維持するうえで必要な施設として休業要請対象施設に含まれていない。ただ、試乗会やショップライドといった人が集まるイベントについては、多くのサイクルショップが中止にしている。

更には、スーパーやドラッグストアなど多くの商業施設が感染拡大防止策として実施しているように、時短営業を行っている自転車店も多い。また、ファッションビルやショッピングモール内にテナントとして入居している店舗の営業可否については、ディベロッパーの決定に従うこととなる。なので、まずは訪問予定の店舗の日々の営業時間を確認するべきだろう。

商業施設の中に入居している店舗は休業していることも商業施設の中に入居している店舗は休業していることも
また、中には完全予約制をとる店舗もある。訪問しようとしているショップが予約制をとっている場合は事前にアポイントをとる必要もある。お店の中にいる人数が制限されることでソーシャルディスタンスを保つことが出来るため、予約の手間はかかるにせよ安全に店舗を訪れることが出来るはずだ。

お互いの配慮が感染拡大防止へ繋がる

可能な限り人との接触回数および時間を減らすことが新型コロナウィルスの感染拡大防止につながる以上、まず必要となるのは、可能な限り店舗への訪問回数を減らすことだろう。例えば、修理依頼であるならばどういった不具合があるのかを事前に連絡しておいたり、商品の購入であれば製品選びの相談や在庫確認といったことを行っておくといいだろう。仲のいいスタッフとの対面コミュニケーションもショップを訪れる大きな理由となるだろうが、今はお互いのためにグッとこらえるべき時だ。

商品説明などを屋外で受けられるショップであれば、更に安心できそうだ商品説明などを屋外で受けられるショップであれば、更に安心できそうだ
また、修理のために預ける自転車や購入した商品の受け渡し方法について、事前に打ち合わせておいても良いだろう。自転車の受け渡しや説明についても屋内で行うのではなく、屋外である程度の距離を置いて行うほうが望ましい。中には、オフィシャルで通信販売を行っているショップもあるはずだ。

決済手段についても一考の余地はあるはずだ。不特定多数の手を経てきた現金ではなく、キャッシュレスでの決済や、金額が大きければ口座振り込みという方法も考えられる。現金決済の場合は、事前に消毒を行っておけば安心できるはず。

大変な時だからこそ、馴染みの店へ

そこまでするのであれば、通販で買うよ!メンドクサイ!という方もいらっしゃるだろう。しかし、少し考えてみてほしい。このコロナ禍が収まり、また気兼ねなく仲間たちと共にライドに繰り出そうとしたとき、馴染みのサイクルショップが無くなっていたら? ライドやイベントを企画してくれていたショップの経営が立ちいかなくなれば、困るのは私たちひとりひとりのサイクリストでもある。特に小規模なお店であればなおのこと。

イベントなどがキャンセルになったいま、オーバーホールにはもってこいのタイミングだと言えるだろうイベントなどがキャンセルになったいま、オーバーホールにはもってこいのタイミングだと言えるだろう
また、多くのレースやイベントがキャンセルされた今だからこそ、愛車のオーバーホールにもぴったりのタイミング。再び自由にサイクリングを楽しめる日のために愛車を万全の状態へと整備しておくこともまた、サイクリストが今出来ることの一つだろう。

近年無かった切迫した事態の中で、営業を続けてくれている自転車店。利用する我々サイクリストもまた、細心の注意を払って利用していきたい。

text:Naoki,Yasuoka
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