下地処理を終え、ロゴステッカーの制作までを終えた前回。今回はいよいよ本塗装へと入っていきます。メーンイベントの「大いなるチャレンジ」です。

ベース色の塗装を終えたフレームは所々にムラがある状態。でも問題ありません!ベース色の塗装を終えたフレームは所々にムラがある状態。でも問題ありません!

マスキングから装飾塗装へ

ベース色の塗装を終えたフレームは、なんだか所々に斑(まだら)模様が出来ています...。こんなんで大丈夫かいな~? いえいえ、大丈夫です。ここから細かく仕上げて行くのです。

マスキングが塗り分けの仕上げを左右する

マスキングを終えたフレームに、さらにデザイン塗り分け用のマスキングを施していく。この作業が一番時間がかかっちゃうんです。これは仕上がりを左右するとても重要な作業なので、一人になれる部屋で慎重に作業をしています。いつもは作業着で行いますが、この後すぐに自転車競技連盟の強化会議があるので、正装にて作業している私...。

デザイン塗り分け用のマスキングを施していく。いつものように(?)真剣なカツリデザイン塗り分け用のマスキングを施していく。いつものように(?)真剣なカツリ パイプをグルッと一周まわすデザインはかなり面倒だパイプをグルッと一周まわすデザインはかなり面倒だ


パイプを一周まわして貼る作業が多い今回のデザインは、かなり面倒。こんな感じで、ぴったりと貼れるようになるのには、それなりの経験が必要になってきます。僕はたまたま左右の手を同じように使えるので、結構上手です!(笑)

最近までそれが普通だと思っていたんだけど、仕事仲間に指摘され、それが普通じゃないことに気づいた。そういえば、子供の頃から、絵筆を右に左にと持ち替えて描いていたっけ! ん~器用貧乏!

マスキング完了。この上からさらに重色を塗装しますマスキング完了。この上からさらに重色を塗装します

マスキング完了で、重色を塗装します。今回は緑のぼかしを先に塗装。今日は一人なんで、右手で塗装しながら、左手のデジカメで撮影~。これも器用なんとかでしょ!

グリーンの上に違うグリーンを重ねてボカしながら塗装していくグリーンの上に違うグリーンを重ねてボカしながら塗装していく

ぼかし塗装を終えて、最終のマスキングを終えたフレームです。塗装作業もいよいよ佳境に入ってきました。前菜を作り終え、いよいよメインディッシュの調理に入っていきますよ~。完成は間近!

ぼかし塗装を終えて最終のマスキングを施したフレームぼかし塗装を終えて最終のマスキングを施したフレーム


塗り分け面をスムーズに仕上げる

これで全ての塗装が終了! マスキングテープをはがすと、塗り分けされた塗装面が現れます。しかし、その表面はあまり綺麗な状態ではありません。マスキングを利用してのボカシや塗り分けをすると、どうしても塗料の段差ができちゃう。

「料理は一手間」って言いますが、塗装も一手間! 2000番台の微粒子コンパウンドで、丁寧に段差を削っていきます。

塗り分けした部分はどうしても段差が気になる塗り分けした部分はどうしても段差が気になる コンパウンドで段差を取り除き、滑らかに仕上げて行くコンパウンドで段差を取り除き、滑らかに仕上げて行く


勿論完全に取り去る事はできませんが、この作業をするしないでは、雲泥の差があります。ボカシ部は、特に慎重に、何度も確認しながら行います。

完璧にスムーズな表面の塗り分けができた!完璧にスムーズな表面の塗り分けができた!

これで、不自然だったボカシ部分が自然な感じに仕上がります。カミングアウトすれば、エアーガンでの細かなボカシは今年からはじめました(笑)。

今までは、マスキングでクッキリとした塗り分けばかりの仕事が多かったので、特に覚える必要が無かったんです。ところが、AMANDAさんからの注文で「ボカシ」をどうしても取り入れなければならなくなり、必要に迫られてマスターしたという次第...。
今回、編集長のフレームで随分と練習しましたので、もう安心です。ワハハハ...。

フレームに写真を貼り込む

さて、ここまでは今までの経験値で問題なく進行してきましたが、ここからが新境地! 今回は新しいトライとして、フォトグラファー綾野氏のレース写真をフレームに貼り込んで行きます!

ひまわり畑を行くツール・ド・フランスの写真をフレームに貼り込んじゃおうという、壮大なアイデア!ひまわり畑を行くツール・ド・フランスの写真をフレームに貼り込んじゃおうという、壮大なアイデア!

今までに経験したことがあるのは、ヘルメットや小さな写真。ここまで大型の一枚物は未経験です。果たして上手く出来るんでしょうか? モチロン編集長は僕がこれをするのは初めてだって知らない(笑)。

デザインラフを送信した時、すぐに返事で「本当に出来るの?」って確認の電話があったくらい。さすがスルドイ!

僕の答えは「もちろん出来ますよ!(たぶん・・・、と心の中で舌を出す)」

30分ほどフレームとにらめっこしながら、施工方法を考え、形に合わせ大まかに写真をプリントしたシートをカットします。この手法は、大型車両にカッティングシートでデザインを施す方法と全く同じ。結局今まで培った技術とノウハウで作業進行する事に。
フレームに合わせて貼り込むべくおおまかにカットして行くフレームに合わせて貼り込むべくおおまかにカットして行く

貼り込んでいく姿はちょっと人には見せられませんので非公開ですが、仲のいい看板屋や表具屋さんに施工を相談したところ、「無理!」って非常に心強いアドバイスを頂きました。ありがとうございます。

ただ...印刷されたばかりの写真は、柔らかすぎて、台紙から剥がすと、フニャフニャになってしまうほど、柔らかくてデリケート。
通常は一週間程度乾かし、ある程度の強度がでてから作業するのが常識。しかし、今回は湾曲したヘッドチューブ廻りにも貼り込まなければなりません。そこで、シートがプリントされてすぐの柔らかな状態であえて施工に映ることにしました。

どうだ!

フレーム片面にひまわり畑の風景を貼り込んだフレーム片面にひまわり畑の風景を貼り込んだ


途中何度も挫折しそうになったけど、そんな時は、浅田顕氏著「諦めない」第一章 選手・浅田顕 P34、
「冬でもいかに距離をこなすかが課題だ。強くなることに近道はない。地道な練習によってこそ実力が高まるのだから、どんな時でも甘えは許されないのだ。」

何度も心の中でこのフレーズを叫びながら、難関をクリアーできたのだ。浅田君ありがとう!「諦めない」よ、ありがとう!

この時、編集長バイクのリメークを影で支えたのは浅田氏著書「諦めない」であった事を、当の本人は知るよしもないだろう...。

みんな、「諦めない」もう読んだ?冬でも練習に行きたくなるので、お勧めです! カツリーズでも売ってるよ~(これが言いたかった)






成田 加津利(カツリーズサイクル)成田 加津利(カツリーズサイクル) プロフィール
成田 加津利(なりた かずとし)


1967年11月27日生まれ(ブルースリーと同じ日である事が自慢)。文化系の生い立ちで美術系への進学を試みるが、ことごとく失敗。その反動で、体育会系へ転身。

高校時代にピスト競技で日本一に輝き、実業団へと進む。ツール・ド・北海道や国際大会で入賞し、平成元年に競輪へと進む。2000年に現役を引退し、現在のショップ「カツリーズ」を開業。

同時に選手指導への思いも強く、アテネオリンピック代表の唐見実世子を育成。現在も石川県のヘッドコーチを務める。メカニックとしても活躍し、現在はNIPPO COLNAGOに所属。過去にはジャパンナショナル、愛三工業、EQA・梅丹本舗・グラファイトデザイン、ブリヂストン・アンカーでもスポットでメカニックを努めた事がある。

デザイナーとしては自分が選手として参加した、石川インターハイのパンフレットや、グッドデザインにも輝いたナカガワサイクルワークスの初代チームジャージを手がけている。ちなみに現在のカツリーズサイクルのカツリは、中川茂氏が間違えて読んだ事からニックネームとして定着。開業時に相談したところ、「カツリで行け!」と、かん高い声で名付けたという(分かる人には分かる話!)。

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