デザインの構想が固まったら、いよいよ下地の塗装に入ります。塗装はいきなり塗り始めるのではなく、まず下層から塗ります。それが表面の塗装を美しく発色させるに必要不可欠なのです。

カツリーズでは塗装は僕を含め3人で行っています。僕以外はこの道20年以上のベテラン! しかし、面倒な仕事、すなわち今回のような特殊なデザイン仕事はなぜか僕の担当です。特殊なマスキングとステッカー貼りも僕が一人で行っています。

なんでだ~!!!

カーボンの場合、まず下地に塗装がしっかりと食い付く特殊な下地処理を行います。カーボン生地を生かしたデザインにするため、鉄フレームで使用するグレーの下地は使いません。

カーボンフレーム用の特殊な下地処理を施して行くカーボンフレーム用の特殊な下地処理を施して行く

次に今回僕が用意したサプライズ! 特殊塗装色の色合わせです。今のところ、国内ではカツリーズでしかやっていない色です。(と思われる。違ってたらごめんなさい)

まだ手探りでやっているので、色あわせにはかなりの時間を費やしてしまいました。実際には試し塗りなどを何度となく繰り返しています。

試し塗りをしながら色合わせを納得いくまで行う試し塗りをしながら色合わせを納得いくまで行う

特殊色を塗装していきます。今回のベース色は、「グリーン・ラブリー・クリアー」!(命名は我が娘のさくら)
これは、編集長に黙って無許可でおこなっていますので、この記事がUPされる頃には、編集長の口から泡...頭から角!!って感じでしょうか?

しかし、塗ってしまいましたのでっ!。へへへへ。

「グリーン・ラブリー・クリアー」を塗っていく!「グリーン・ラブリー・クリアー」を塗っていく!

なんか、緑ですね...。デザイン画にはこんな色ありません。

しかし、この塗装、太陽の下にでたときは、恐らく編集長の涙が見られるはずです。嬉し涙か、悲し涙かは定かでありませんが。

味わい深い色が出た! 太陽光の下なら輝きを放つはず味わい深い色が出た! 太陽光の下なら輝きを放つはず

カーボンなので、乾燥は低温スポット+自然乾燥です。この時期はカラッとしているから、とても綺麗に仕上がります。フレーム塗装は湿度が低い時が一番です。

以下、愚痴。え~私...本日深夜2時より仕事をしております。
なんでかって言いますと...突然むちゃフリで入ってきたお仕事、CWのA野編集長からの依頼をこなすためです。

ず~と働いてます。本当にず~と...。朝もお昼もカップメンでした。夕食はマックでしょう(涙)。
ありがとう、A野編集長~Grazie mille!


フレームのロゴステッカー製作

コンピュータ上でデザインの版を作っていくと、こんな版ができます。上半分の何やら細い線は、今回のマスキング用シートの版です。綾野号から寸法を測り、今までの経験値から、湾曲の角度を入れていく作業です。

ロゴをデザインした版をつくる。上半分の線はマスキング用シートの版ロゴをデザインした版をつくる。上半分の線はマスキング用シートの版

下半分のカラーは、極薄シートにプリントされるインクジェット部分。一つのデーターにまとめて制作し、管理しやすくしておくと、数年後にリペアを頼まれたときに対応がしやすいのです。

超~特大のプリンターでプリント中。このプリンターが、カツリーズの秘密兵器!(本邦初公開)

このプリンターがあれば、大きな車両、つまりMEITANやNIPPOのチームカーから、小さなバーエンドまで製作出来ちゃいます。つまりはこのプリンターで、多くのプロチームのさまざまなエキップメントにプリントしてきたのです!

秘密兵器の超特大プリンターでロゴ等をプリントして行く秘密兵器の超特大プリンターでロゴ等をプリントして行く


コンピュータで動かす最先端のデジタル機器!のはずなんですが、何故か色合わせが難しくて、今回も3度程度プリントしました。

写真に写る僕の左手の下(今回使用のプリントの下)には、過去に製作した森のプリントを出力し、近い色を検索していきます。とてもアナログ的な作業を求められます。

緑や赤は色合わせが簡単な方なのですが、青色がとても難しいのです。イタリアのウエアーメーカーがプリントする青は本当に綺麗で、NIPPOの大門監督からは、色に関してとても高い水準で求められます。

下地の塗装も終えたので、いよいよマスキングしての装飾塗装に入ります。全ての食材を切り終えて調理に入っていく北王子魯山人みたいな心境です。






カツリーズの仕事ファイル

マングローブサイクルモデルのヘルメット

編集長のお達しにより、今までカツリーズが手がけたアートなバイクやエキップメントを紹介していくコーナー第3弾。思い出の作品の数々を、デザインしたときのワンポイント・アドバイスを交えてご紹介していきましょう。

東京は立川にお店をかまえる「マングローブバイクス」。実は競輪学校の同期で、お互い引退後ショップ開業。
彼の新店舗オープンへのお祝いに製作。お店の名前「マングローブ」の写真をデザインに取り入れた。写真をヘルメットデザインに使用したのはこれが初めてのこと!

MANGROVE ヘルメットMANGROVE ヘルメット 湿地帯に生える植物マングローブをイメージした湿地帯に生える植物マングローブをイメージした




カツリーズのアートバイク製作記のバックナンバー こちら です




成田 加津利(カツリーズサイクル)成田 加津利(カツリーズサイクル) プロフィール
成田 加津利(なりた かずとし)


1967年11月27日生まれ(ブルースリーと同じ日である事が自慢)。文化系の生い立ちで美術系への進学を試みるが、ことごとく失敗。その反動で、体育会系へ転身。

高校時代にピスト競技で日本一に輝き、実業団へと進む。ツール・ド・北海道や国際大会で入賞し、平成元年に競輪へと進む。2000年に現役を引退し、現在のショップ「カツリーズ」を開業。

同時に選手指導への思いも強く、アテネオリンピック代表の唐見実世子を育成。現在も石川県のヘッドコーチを務める。メカニックとしても活躍し、現在はNIPPO COLNAGOに所属。過去にはジャパンナショナル、愛三工業、EQA・梅丹本舗・グラファイトデザイン、ブリヂストン・アンカーでもスポットでメカニックを努めた事がある。

デザイナーとしては自分が選手として参加した、石川インターハイのパンフレットや、グッドデザインにも輝いたナカガワサイクルワークスの初代チームジャージを手がけている。ちなみに現在のカツリーズサイクルのカツリは、中川茂氏が間違えて読んだ事からニックネームとして定着。開業時に相談したところ、「カツリで行け!」と、かん高い声で名付けたという(分かる人には分かる話!)。

カツリーズ サイクル