安全に楽しいサイクリングをナビしてくれるサイクリングガイド。地域の魅力を体験するのにぴったりなサイクリングというアクティビティを充実させてくれる、欠かせない人材だ。そんなガイドを育てるために活動するJCGAの養成講習に日向涼子さんとハシケンさんが参加したレポートをお届けします。



愛媛で開催されたサイクリングガイド養成基礎講習会愛媛で開催されたサイクリングガイド養成基礎講習会 photo:Kenji.Hashimoto
サイクリングガイドを目指すプログラム

6月下旬、モデルでサイクリストの日向涼子とサイクルジャーナリストのハシケン(筆者)は、サイクリング先進県の愛媛県へと飛んだ。今回は、愛媛県の自治体等により構成される「愛媛県サイクリングガイド養成推進協議会」が「一般社団法人 日本サイクリングガイド協会(JCGA)」に委託して実施される「サイクリングガイド養成基礎講習会」の受講が目的だ。

昨今、日本各地で広がりを見せているサイクルツーリズムを背景に、愛媛県では、サイクリングガイドのプロを育成するためのプログラムが2014年から進められている。座学と実技講習を主体に、年に1回、「公益財団法人日本サイクリング協会(JCA)」によるサイクリングガイド検定試験があり、厳しい基準をクリアすると公認資格を取得できる。

一人で走るための技量とガイドは別物だ

座学では実演を交えながら自転車の基礎から学んだ座学では実演を交えながら自転車の基礎から学んだ photo:Kenji.Hashimoto
JCAが編纂したサイクリングガイド教本JCAが編纂したサイクリングガイド教本 photo:Kenji.Hashimoto
今回、二人が受講した「サイクリングガイド養成基礎講習会」は、サイクリングガイドのなんたるかを知る、言わば入門講習だ。参加者の安全を守りながらリーダーとしてグループメンバーをガイドし、パンクなどのトラブルにも即座に対応する。こう内容を聞くと、ベテランサイクリストの中には、それくらいできるかもと思われれるかもしれない。

しかし、JCGAが目指すサイクリングガイドの力量はより高いレベルに置かれている。二人とも、これまで数多くのレースやロングライドイベントを走ってきた。そして、雑誌等の企画等でツーリングのガイド役を務めてきた経験もある。でも、今回、この講習を受講して、どんなに一人で走る体力や技量が備わっていても、複数人を引き連れて安全・安心・満足を提供するプロフェショナルなガイドを目指すためには、ガイドとしての姿勢からきちんと勉強する必要があると実感したのだった。

あなたはすべて正しく判断できますか!?

ふたりが参加した講習の詳細レポートを前に、今回の講習の中で実際に参加者へ振られた質問項目の一部を紹介しよう。わかっているようで、正しい判断に迷うシーンも多いはずだ。交通法規の理解の上に、参加者のレベルに合わせて安全に走行できる判断を瞬時にできるようになること。これがサイクリングガイドに求められる能力なのだ。

JCGA代表理事の渋井氏による講義JCGA代表理事の渋井氏による講義 photo:Kenji.Hashimoto
公道では頻繁な状況判断が求められる公道では頻繁な状況判断が求められる photo:Kenji.Hashimoto

<1>
Q.「二段階右折が必要な交差点では、常に車道を走るべきか?」

A.答えは、車道と歩道を最適なかたちで使い分ける。例えば交差点の停止線付近にメンバー全員が安全に停止するスペースがないと判断したら、交差点の手前で安全に留意しながら、必要なら一時停止してから歩道へ上がり、徐行または自転車を押しながら、歩行者専用信号で横断歩道を渡ることもある。

<2>
Q.「道路の右手にあるコンビニで休憩するとき、どのようにメンバーを道路の反対側へ渡らせるべきか?」

A.ガイドがその場の交通状況を判断し、必ずハンドサインを出して渡らせるが、道路を斜めに渡るのはNGだ。少し先に横断歩道があれば、歩行者同様にそこまで進んでから1列で渡り、対向車線の路側か歩道を戻ってくるかたちになる。しかし前後に横断歩道がない場合は、車道(の左側端)で一旦停止し、安全を確認したのち、一斉に自転車を押して渡ることもある。この場合は当然ながら歩道のガードレールや植樹など障壁がないことが前提条件だ。

<3>
Q.「路側帯に停車中の駐車車両を避ける場合、車のドアが開くリスクを回避しながら、状況によっては対向車線に車線を変更して回避する。その後、駐車車両を避けたら、ガイドは前方の安全を確認しながら、速やかに車線を路側帯側へ戻すべきか?」

A.最後尾が車を回避するまで同じラインをキープするのが正解。最後尾メンバーが車を回避するまで、後続車に走行ラインを見せ続ける必要があるからだ。つまり、車を避けたら速やかに路側帯側へ車線を変更する動きはNGだ。


熱意さえあれば誰でも受講は可能

宇和島市の地域おこし協力隊のメンバーも参加宇和島市の地域おこし協力隊のメンバーも参加 photo:Kenji.Hashimoto
スポーツサイクル初心者でも講習を受けることでステップアップできるスポーツサイクル初心者でも講習を受けることでステップアップできる photo:Kenji.Hashimoto
本年度の初回となる今回の基礎講習は6月23日と24日の2日間、それぞれ1日完結で実施された。午前中は座学、午後は公道走行を交えた実技講習が行われ、日向とハシケンが参加した日曜日には9名が参加した。サイクリング歴や年齢、普段の自転車への関わり方はそれぞれ。この基礎講習への参加条件はなく、将来サイクリングガイドとして活動をしたいという熱意さえあれば受講可能だ。

二人にとっては、ガイド資格を取得することで、自転車を取り巻く環境に対する見識を深め、今後サイクリングガイドとして各自治体のサイクリング振興に貢献できればと考えている。受講者の中には、宇和島市の地域おこし協力隊のメンバーも。四国一周サイクリングのルート上にある宇和島で活動しており、将来的にサイクリスト向けのサービス展開を考えて今回参加していた。

ガイドは大型トレーラータイプの観光バスを運転している感覚が大事

ヘルメットの正しい装着方法などもいちから学ぶヘルメットの正しい装着方法などもいちから学ぶ photo:Kenji.Hashimoto受講者同士でコミュニケーションも生まれる受講者同士でコミュニケーションも生まれる photo:Kenji.Hashimoto


走行前に参加者のバイクに不具合がないかをチェックする走行前に参加者のバイクに不具合がないかをチェックする photo:Kenji.Hashimoto
さて、午前中は、屋内で交通法規やガイディングについての知識を学んだ。まずガイドが心に刻むべきなのは、「安全・安心・満足」という3要素だ。まずは参加者の安全が大前提で、そのために安心が途切れなく続く必要がある。その安全と安心が充分に担保されて初めて、参加者の満足がある。

引率走行のみならず、受付から休憩、解散、プランニングに至るまで、サイクリングの全てをこの3要素に当てはめて優先順位を整理する思考回路が重要だ。そして、サイクリングガイドの素養には、知識や技量のみならず、コミュニケーション能力も求められるという。

ガイドの素養としてコミュニケーション能力が不可欠ガイドの素養としてコミュニケーション能力が不可欠 photo:Kenji.Hashimoto
「ガイドとしての人の質を高めることもこの講習の目的の一つです。そして、ガイドには事故なくサイクリングを成功させる責任があります。プロ意識、責任感を持ってもらいたい」と、受講者へ熱弁を振るうのは、今回の指導を担当するJCGA理事長の渋井氏だ。

そして、「交通法規に従いながら一人で走るのが普通自動車なら、グループを率いて走るサイクリングガイドは、大型トレーラーの後ろにお客様をのせて運転しているような感覚が大切。常にグループ全体の安全を意識した状況判断が求められます。そのため、一人で走るときよりも何倍もの安全マージンを確保して走らなければなりません」と、ガイドとして広い視野を持つ必要性をわかりやすく説明する。サイクリングガイド資格は、例えるなら普通自動車免許ではなく大型二種免許を取得するようなものなのだ。

走り出す前にやるべきことは多い

走行前にハンドサインを共有することも大切な作業のひとつ走行前にハンドサインを共有することも大切な作業のひとつ photo:Kenji.Hashimoto
午後は今治市内をガイドともに実走するガイディング講習だ。交通法規に従いながら、実際の交通状況に応じて、適切な判断をくだしていく。市街地は信号や交差点など次から次へと現れる。判断を待ってくれる余裕はないのだ。わずか数キロの実走講習だったが、普段ガイドの視点で走ることに慣れていない二人にとって、刺激いっぱいの講習となった。

また、サイクリングガイドには、走行前にも参加者の安全を守るための大切な役割がある。「初対面の参加者同士で安全に走行するためには、走り出す前に重要事項を共有することが絶対に必要です。ハンドサインやルート上の危険箇所、行程の変更などですね。そしてその情報共有をうまく機能させるためには、メンバー同士を和ませて互いに気を配る雰囲気をつくる“アイスブレイク”が想像以上に大切なのです。ですから、これはJCA検定の採点項目にも入っていますよ。そして、ガイドには整備不良のバイクを見抜く能力なども求められます。ハンドサインの共有も必須事項です」と、走り出す前にやるべきことが多いことに受講者は驚いていた。

歩道は常に徐行。それでも安全が確保できないなら一旦停止する歩道は常に徐行。それでも安全が確保できないなら一旦停止する photo:Kenji.Hashimoto
ガイドは進路変更をするたびに最後尾までチェックしながらラインを変更するガイドは進路変更をするたびに最後尾までチェックしながらラインを変更する photo:Kenji.Hashimoto実走の途中で適宜ブリーフィングも行われた実走の途中で適宜ブリーフィングも行われた photo:Kenji.Hashimoto


このほか、「ガイドとしてふさわしいスタイル」についても学んだ。シューズは歩きやすいSPDシューズまたはスニーカー、外から眼が見えることで表情がわかりやすいクリアレンズのアイウエアの装着など。ウエアはレースで着用するようなレーシングジャージは殆どの場合は適切ではない。

参加者の趣味度を考慮した服装を心がけることもガイドと参加者の心理的な距離を近づけるのだ。また、ガイドは自転車も、サドルを適正よりも低めに、ハンドルは高めにセッティングするなど、あらゆることをガイドの視点で準備しなければならない。そこまでしてプロのガイドなのだ。

ガイドとしての要件を学んだ充実の1日講習

黄色と水色のウエアを着たJCA公認サイクリングガイドがサポート黄色と水色のウエアを着たJCA公認サイクリングガイドがサポート photo:Kenji.Hashimoto
早朝から夕方18時まで続いた講習に熱心に聞き入る早朝から夕方18時まで続いた講習に熱心に聞き入る photo:Kenji.Hashimoto
現在、各地でサイクリングの環境整備が進み、地方再生の起爆剤としてスポーツ自転車への注目は一層高まっている。さらに、東京オリンピックも迫り、インバウンド事業も活性化する中、海外のサイクリストをもてなすガイド役の充は急務だ。

そんな時代背景を踏まえ、JCGAではサイクリングガイドを「サイクリングビジネスのプロ」として位置づけている。そして、今後、JCA公認資格を取得したJCGA登録ガイドが、旅行会社や地方自治体と企画を組みながら、活動の幅を広げることが期待されている。

今回、基礎講習を受講した日向涼子は、「ひとりのサイクリストとしての最適解とガイドとしての最適解は違うのだと実感しました。たとえば、ガイドにふさわしいウエアですが、数年前の私なら自分が走りやすい格好で走ることしか考えられなかったと思います。最近は、初心者の方から相談を受ける立場になり、今回受講して合点がいく内容が多くありました。今後、サイクリングガイドを目指すことで、もっと人の役に立てるようになれればと思っています」(日向)

11月の検定試験に向けて

ガイドに必要な技量の習得のため実践形式で行ったガイドに必要な技量の習得のため実践形式で行った photo:Kenji.Hashimoto発進、停止、シフト操作など基本操作から改めて学んだ発進、停止、シフト操作など基本操作から改めて学んだ photo:Kenji.Hashimoto


受講認定証を受け取った日向とハシケン受講認定証を受け取った日向とハシケン photo:Kenji.Hashimoto
私たちが受講した「愛媛県サイクリングガイド養成基礎講習会」は、11月に予定されている日本サイクリング協会(JCA)の公認資格である「JCA公認サイクリングガイド(ベーシック)」の検定試験のための基礎講習という位置づけでもある。この基礎講習は、これまで愛媛県以外でも実施してきたが、今後はさらに全国各地に広げる予定だという。

そして、私たちは11月の検定試験に向けて、今回学んだことをもとに、ガイドとして必要な能力を高めていきたいと思う。サイクリングガイドに興味があり、少しでも志があれば、ぜひ私たちと一緒にサイクリングガイドを目指してみませんか。

text&photo:Kenji Hashimoto
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