ヘルメットはもちろん、シューズやアパレルブランドとしても最先端を切り開くGIRO(ジロ)が、国内の新たな代理店との契約を開始する。本国からゼネラルマネージャーも来日し、東京・代官山にてプレゼンテーションが開催された。



ヘルメット、シューズ、アパレルなど幅広いラインアップを揃えるGiro Sport Designヘルメット、シューズ、アパレルなど幅広いラインアップを揃えるGiro Sport Design
自転車部門における新たなジロ独占輸入代理店となるのは、アソスやローター、ブルックスなどの輸入販売でおなじみのダイアテック。今回のプレゼンテーションは本国からゼネラルマネージャーを含む首脳陣を招き、取り扱いショップやメディアに対し、改めてジロのブランドヒストリーや世界観、テクノロジー、そして主要製品ラインアップの紹介を行う形で開催された。

来日したのは副社長兼ゼネラルマネージャーを務めるグレッグ・シャプレイ氏やブランドマネージャーのエリック・リヒター氏、そしてセールスマネージャーのジョセフ・ウィードン氏という3名。プレゼンテーションはダイアテックの代表取締役である櫻井耕太氏の挨拶に続き、シャプレイGMからブランドの説明が行われた。

ダイアテック代表取締役である櫻井耕太氏ダイアテック代表取締役である櫻井耕太氏 副社長兼ゼネラルマネージャーのグレッグ・シャプレイ氏副社長兼ゼネラルマネージャーのグレッグ・シャプレイ氏


ジロ(正式名称はGiro Sport Design)社の創業は1985年のこと。つまり昨年でちょうど30年目を迎えたことになる。ベテランサイクリストであれば、まだロードレース界においてヘルメットが普及していなかった当時、ジロが最先端のエアロダイナミクスや軽量化を意識した「Prolight」をデビューさせたことでその名を知った方も多いかもしれない。「従来の常識を覆したProlightは大きな人気を博し、当時はストックを会社内に置ききれず別に倉庫を借りました」とはシャプレイ氏。

その後も91年にはエアロを推し進めた初代「Air Attack」をデビューさせ、94年にはストラップしか存在しなかったフィッティング機能を現在の原型へと大幅に進化させた「Roc Loc」システムを登場させる。その進化は自転車用だけではなくウィンタースポーツ用ヘルメットにも波及し、暑さ・重さ・デザインなど全てを一新した製品を投入したことで、スキーヤー、スノーボーダー達のヘルメット普及率を一気に引き上げた。

エアロダイナミクスを追求し衝撃を与えた初代Air Attackエアロダイナミクスを追求し衝撃を与えた初代Air Attack パナソニックも、ONCEも振り返ればGIROだったパナソニックも、ONCEも振り返ればGIROだった

ジロの歴史が展示されたヒストリーコーナージロの歴史が展示されたヒストリーコーナー
プレゼンテーションで語ったブランドマネージャーのエリック・リヒター氏プレゼンテーションで語ったブランドマネージャーのエリック・リヒター氏 ハイエンドロードヘルメットの「Synthe」。プロロードレーサーからの支持も高いモデルだハイエンドロードヘルメットの「Synthe」。プロロードレーサーからの支持も高いモデルだ わずか175gと軽量化を突き詰めたハイエンドロードシューズ、Empire SLXわずか175gと軽量化を突き詰めたハイエンドロードシューズ、Empire SLX 近年ではシューズやアパレルの開発にも着手し、シューレースを採用し世間を驚かせたEmpireシリーズなどをリリースしたことで一気にシューズブランドとしての位置も確立。加えてロードヘルメットのエアロ化を急速に推し進めた現行「Air Attack」など、エポックメイキングな製品を次々とリリースし、その後のムーブメントに繋げてきた。

プロロードの世界だけを見てもBMCレーシングやカチューシャ、ラボ・リブなどジロのヘルメットを愛用するチームは数多く、シューズに関してはスポンサー外であっても使用する選手もいるほどだ。

ジロとの出会いについて櫻井氏は言う。「きっかけはたまたまジロ本社のメンバーと京都で共にライドしたこと。その後カリフォルニア州サンタクルスの本社に招かれ、社員全員がロードやMTBはもちろん、グラベルライドといった新しい遊びを積極的に楽しんでいる様子に感銘を受けました。オファーを受けて今年の2月頃に今回の契約に至りました」。

ダイアテックとしては従来のジロが抱えていた海外との価格差を是正し、ブランドイメージをしっかりと理解したショップと連携することで、アメリカで感じたブランドイメージをユーザーに伝えていきたいという。

正式な取り扱いは5月20日からスタートし、主力はもちろんヘルメットとシューズ。ソックスやグローブ類についてもすぐに販売がスタートし、本国で勢いのあるジャージなどアパレルは追って国内展開を行っていくという。また代理店変更前の製品(国内正規販売品に限る)に関してのカスタマーサポートも行い、スモールパーツや補修品の在庫も豊富に取り揃えていくそうだ。

限定で短期間発売されていたEmpire VR90のGRINDUROモデル限定で短期間発売されていたEmpire VR90のGRINDUROモデル タンからGRINDUROのマスコットキャラクター(?)が睨みを効かすタンからGRINDUROのマスコットキャラクター(?)が睨みを効かす

フラッシュを当てるとまばゆいばかりに輝くEmpire ACC Reflectiveフラッシュを当てるとまばゆいばかりに輝くEmpire ACC Reflective Empireシリーズの弟分であるRepublic。シューレースを用いたタウンユースモデルEmpireシリーズの弟分であるRepublic。シューレースを用いたタウンユースモデル


シャプレイ氏の言葉を引用すると、ジロのブランドプラットフォームは以下の3つ。「Free thinkers=自由な発想での物づくり」、「Ride advocates=乗ることを大切にする」、そして「Interface innovators=自転車と体が接する大切な製品を開発すること」。

それらに大きなインスピレーションを与えているのが、本拠地であるサンタクルーズの風土だという。「サーフィン、スケート、ウィンタースポーツなど様々なカルチャーの発祥の場で、最先端IT企業の集うシリコンバレーも近い。この地域であるからこそ生まれるアイディアがあるし、それは自転車にとっても同じ。MTB、ロード、CXなど、様々なライドフィールドが広がるんだ」とシャプレイ氏は続ける。反射素材を全面的に使ったシューズなどユニークなアイディアは、「science&soul(=作り手の情熱と最先端技術の融合)という社風だから生まれたものだ、とも。

ファッションサイクリスト待望のカラーチェンジ用シューレースも発売されるファッションサイクリスト待望のカラーチェンジ用シューレースも発売される ワイドシェイプを用いたSavant WF(写真は未発売カラー)ワイドシェイプを用いたSavant WF(写真は未発売カラー)


比較的小規模な本社内にはデザインから試作、テストまで全て自社内でまかなえる環境がジロの自慢で、近年には自社の風洞実験施設を建設。特にヘルメットの冷却性能を大きく改善することに成功したのだという。

製品の開発・販売だけではなく、ジロはリアルとオンラインのどちらでもソーシャルな場を作り出すことに積極的だ。例えば積極的なSNSの活用はもちろん、フード&ドリンク、キャンプを含めたハッピー&ファンな「GRINDURO」と名付けた新しい形のオフロードイベントを昨年に初開催させている(詳細は以下のムービーを確認してほしい。今年のチケットは即売り切れだったそう)。プレゼンテーションではこのGRINDUROをきっかけに、2016年はMTBへの回帰にも注力していきたい、とも語られた。


今後しばらくのキーとなるのは、「最も進化したロードヘルメット」と自信をのぞかせる最高峰の「Synthe」。これに衝撃を滑ることで緩和させるMIPSシステムを採用した最新モデル(34,000円、MIPS非搭載モデルは29,600円、税抜き)も投入され、最軽量のAeonも引き続き販売される。

シューズに関しては最高峰のEmpireシリーズはもちろん、スニーカーの快適性と、レーサーシューズのようなペダリング剛性を両立したオフロード用のTerranduroが新ジャンルのアイテムとして注目株。グローブに関しても最高級皮革を使ったプレミアム感あるLXなど、ユニークな製品が登場している。

またアジア人向け製品について聞いたところ、ヘルメットに関してはワイドシェイプを用いたSavant WFが発売され、シューズに関してはワイドモデルを現在開発中だという。最高級グレードのアジア向け製品に関しては今のところ開発の予定が無いとのことで、これからの展開に期待したいところだ。

左からグレッグ・シャプレイGM、ブランドマネージャーのエリック・リヒター氏、セールスマネージャーのジョセフ・ウィードン氏左からグレッグ・シャプレイGM、ブランドマネージャーのエリック・リヒター氏、セールスマネージャーのジョセフ・ウィードン氏
ちなみに、プレゼンテーションを終えた本社メンバーにこの後のスケジュールを聞いたところ、翌日は山梨県で開催されるクラシック自転車の祭典「エロイカ」に参加するのだという。本国から携えてきたビンテージバイクの写真を自慢げに見せてきたシャプレイ氏に、ジロの豊かな社風を垣間見た気がした。

text&photo:So.Isobe
photo:Makoto.AYANO