8月2・3日に白馬で開催された全国小学生・中学生マウンテンバイク大会での各クラスの優勝者のMTBを取材した。キッズたちの小さな体格をカバーするレースバイクには工夫がいっぱい。大人たちもヒントにできるカスタマイズが多く見受けられた。



「27.5インチのカーボンバイクはよく進む。転がるタイヤがお気に入り」
小学6年生男子 優勝 中島 渉くん(チームK)のアンカーXR9


小学6年生男子 優勝 中島 渉くん(チームK)のアンカーXR9小学6年生男子 優勝 中島 渉くん(チームK)のアンカーXR9 photo:Makoto.AYANO
激戦の小学生最高学年、6年男子を制した中島 渉くん(チームK/埼玉県 川越市立霞ヶ関東小学校)はアンカーのカーボンMTBのトップグレードのXR9に乗る。昨シーズンまでは26インチのアルミバイクに乗っていたが、ホイール系が少しでも大きなほうが有利と、今シーズンから27.5インチのカーボンフレーム導入に(お父さんが)踏み切った。
渉くんは「27.5インチと軽いカーボンフレームはとてもスピードが出て、乗りやすいです」と言う。体格比で言えば大人にとっての29インチ以上だろうが、見ていて不安を感じないほど完璧に乗りこなしている。

フロント部の「渉」のネームシールが光るフロント部の「渉」のネームシールが光る 走りの軽いブリヂストンExtenzaタイヤがいちばんのこだわりパーツだ走りの軽いブリヂストンExtenzaタイヤがいちばんのこだわりパーツだ


渉くんいちばんのコダワリパーツはブリヂストンのExtenzaタイヤ。製品として一般販売されておらず、完成車にセットされるタイヤだが、「スピードが出ること、走りが軽いこと、滑らないこと、すべて気に入っています」とお気に入り。サドルはタイオガのスパイダーサドルがフィットするので長く使い続けている。
昨年まで乗った26インチのジャイアントXTCは妹の瞳ちゃんに譲ったが、瞳ちゃんも小学4年女子で優勝している。
「昨年は2位だったけど、今年は初優勝できて嬉しい。将来はオリンピックに出て1位になること」と、渉くんの夢は大きい。

GDR Risen6カーボンハンドルも振動吸収性に優れ扱いやすいというGDR Risen6カーボンハンドルも振動吸収性に優れ扱いやすいという タイオガのスパイダーサドルはノークッションながら乗り心地の良さがお気に入りタイオガのスパイダーサドルはノークッションながら乗り心地の良さがお気に入り



「24インチバイクに26インチホイールをインストールして大径化」
小学2年男子優勝 村上 ヒカルくん(Team SEIYO)


小学2年男子優勝 村上 ヒカルくん(Team Seiyo)のスペシャライズドHOT ROCK24小学2年男子優勝 村上 ヒカルくん(Team Seiyo)のスペシャライズドHOT ROCK24 photo:Makoto.AYANO
小学2年男子で優勝した村上 ヒカルくん(愛媛県 西予市立多田小学校)は、昨年も小学1年生の部で1位だったので、連覇達成だ。 
ヒカルくんは言う。「普段はスピードを出してタイムトライアルの練習をしています。将来はプロになりたいです」。う〜ん頼もしい!

前下りステムにアップハンドル天返しで低いハンドルポジションを作り出す前下りステムにアップハンドル天返しで低いハンドルポジションを作り出す 24インチフレームに26インチホイールを組み合わせて使う24インチフレームに26インチホイールを組み合わせて使う


ヒカルくんのバイクは小学生キッズのMTBとしてはベストセラーのスペシャライズドHOT ROCK24だが、よく見ると24インチフレームに26インチホイールを組み合わせて使用している。
お父さんの説明によれば、「やはりホイール系が大きいほど転がり面で有利です。フレームとのクリアランスが問題で、幅1.8インチなど幅の狹いタイヤが有るんですが、ハイトが高くてフレームに干渉してしまうタイヤが多いんです。リアはシュワルベNOBBY NICKの1.8インチを、前輪はマキシスLARSEN TTを使用しています。来年ぐらいには26インチバイクに乗らせたいですね」とのこと。

ホイールが大きくなるぶん重心も高くなる。Fサス部のクリアランスはキツめだホイールが大きくなるぶん重心も高くなる。Fサス部のクリアランスはキツめだ リアステー部はこのとおりほとんど余裕が無いのが課題リアステー部はこのとおりほとんど余裕が無いのが課題


お父さんによれば26インチの他のメリットとしては、お兄ちゃんやパパのお古タイヤやホイールが使えることだという。「愛媛県西予市のジャージを着て走っていますが、実質は家族チームでやっているので、家族内でパーツをやりくりできることが必須ですね(笑)」。

「パーツのグレードアップで軽量化と性能アップを狙う」
小学3年男子優勝 遠藤絋介くん(菖蒲谷キッズ)のキャノンデール TRAIL24


小学3年男子優勝の遠藤絋介くん(菖蒲谷キッズ)のキャノンデールTRAIL24小学3年男子優勝の遠藤絋介くん(菖蒲谷キッズ)のキャノンデールTRAIL24 photo:Makoto.AYANO
昨年小学2年生男子で優勝したのに続き、今年は小学3年男子で優勝した遠藤絋介くん(菖蒲谷キッズ/岡山県 岡山大学教育学部付属小学校)。連覇を支えたのはキャノンデールのキッズ用MTB、TRAIL24。昨シーズンから本格的に市場に投入された新しいバイクだが、会場ではとても多くのキャノンデールのMTBが見られた。スポーツ用途として好評だということの証だろう。

絋介くんを囲む遠藤一家。家族でMTBを楽しんでいる絋介くんを囲む遠藤一家。家族でMTBを楽しんでいる お父さんのお下がりのXTRハブを用いて組まれた軽量ホイールお父さんのお下がりのXTRハブを用いて組まれた軽量ホイール


絋介くんのバイクにはXTのディレイラー、XTRのハブ、クランクブラザースのエッグビーターペダル、サンマルコSLRのサドルなど、ところどころに本格グレードのパーツが散りばめられる。持った感じもかなり軽量に仕上がっていた。これらはお父さんのお下がりが大半。
「やはり私の趣味で大人のパーツを流用してグレードアップしてしまいます(笑)。MTBは私も趣味で、家族みんなで楽しんでいます」とお父さん談。

ポジションを出すために前下りステムを使用しているポジションを出すために前下りステムを使用している クランクブラザースのエッグビーターペダルは嵌めやすく軽量クランクブラザースのエッグビーターペダルは嵌めやすく軽量


「ショートクランク&Wギア化で駆動系を最適化」
小学1年男子優勝 野嵜然新くん(Team NOZAC)


小学1年男子優勝 野嵜然新くん(Team NOZAC)とメリダ MATTS TEAM24小学1年男子優勝 野嵜然新くん(Team NOZAC)とメリダ MATTS TEAM24 photo:Makoto.AYANO
昨年はキッズ補助輪無しクラスで優勝、そして今年は小学1年生の部で優勝した野嵜然新くん。チーム名の「Team NOZAC」は、想像通り家族の名前(のざき)からとったもの。ダディに出たお父さんと、補助輪無しクラスに出た弟と一家でMTBを楽しんでいる。

Fサスにディスクブレーキとデフォルトの状態で十分なハイスペックを誇るFサスにディスクブレーキとデフォルトの状態で十分なハイスペックを誇る 前下りステムにアップハンドル天返しで低いポジションを出す前下りステムにアップハンドル天返しで低いポジションを出す


然新くんのMTBは、サスペンションフォーク&油圧ディスクブレーキ搭載の24インチ本格キッズ用レーシングモデル、メリダ MATTS TEAM。
だが各部にわたって手が入れられ、パーツがグレードアップしている。
お父さんは語る「一番の工夫はチェーンホイールですね。クランクは短くカットして、途中に穴を設けてペダルを取り付けたショートクランクなんです。手の力が弱くて左手のシフト(F変速)ができないので、本当はシングルギアでもいいぐらいなんですが、ダブルギアにして使用しています」。

カットしてショート化したクランクに、XTRのギア板を取り付けてW化しているカットしてショート化したクランクに、XTRのギア板を取り付けてW化している シートピラーは前後逆向きにしてサドルを前に出しているシートピラーは前後逆向きにしてサドルを前に出している


オリジナル状態はフロントトリプル。そこに工夫して取り付けたWギアだが、その使い方にも独特の工夫がある。
「ギア板はXTRの36・26Tを削ってXTのクランクに取り付けています。でもコースの状況によってアウターだけ使用・インナーだけ使用を切り分けているんです。今回のコースなら上りがキビしいのでインナー26T固定で走るように子供には言い聞かせました。だから実質はフロントシングルなんです。チェーン外れのトラブルが怖いですからね」。

Fサス無しリジッドバイクをタイヤのエアボリュームでカバー
小学4年男子優勝 綾野 尋くん(チームK)


小学4年男子優勝 綾野 尋くん(チームK)の愛車はリッチーP23をレストアしたフルリジッドバイク小学4年男子優勝 綾野 尋くん(チームK)の愛車はリッチーP23をレストアしたフルリジッドバイク photo:Makoto.AYANO
小学4年男子の部で優勝した綾野 尋くん(チームK/埼玉県 所沢市立山口小学校)。昨年は24インチのMTBで出場したが、昨シーズン末から思い切って26にインチアップした。

しなやかなクロモリ製リジッドフレームはポジション出しの面ではサス有りモデルより有利だというしなやかなクロモリ製リジッドフレームはポジション出しの面ではサス有りモデルより有利だという 40mmの超ショートステムをスレッド/アヘッド変換アダプター小物を使用して取り付けている40mmの超ショートステムをスレッド/アヘッド変換アダプター小物を使用して取り付けている


サスの無いリジッドフレームはお父さんが昔乗っていた名車リッチーP23をレストアしたものだ。フレームをチームカラーに塗り替え、パーツもお父さんのお下がりを使用してリア8段仕様で組み上げている。クランク周りはSRサンツアーのCW9XTC JRの152mmを使用。ヘッドが旧スレッド式のためコラムアダプターを介して40mmステムを使用し、身長140cmでも無理なく26に乗れるポジションをつくりだしている。

SRサンツアーのジュニア用クランクセット、CW9XTC JRの152mmを使用SRサンツアーのジュニア用クランクセット、CW9XTC JRの152mmを使用 2.2サイズのGEAX Saguaroチューブレスタイヤを前後1.2気圧程度の低圧で使用してサス無しを補う2.2サイズのGEAX Saguaroチューブレスタイヤを前後1.2気圧程度の低圧で使用してサス無しを補う


普段はシクロクロスに同じバイクで出ているため、軽いサス無しにこだわっている。サスペンションが無いことのデメリットを埋め合わせるのは太めのチューブレスタイヤ。2.2サイズのGEAX Saguaroを前後1.2気圧程度の低圧で使用する。体重の軽さあってこそ可能なことだ。

スペインブランド”MASSI”製の27.5インチカーボンバイク
中学3年男子で優勝 北林 力(Westberg Proride)


中学3年男子で優勝した北林 力くん(Westberg Proride)が駆るMASSI中学3年男子で優勝した北林 力くん(Westberg Proride)が駆るMASSI photo:Makoto.AYANO
大会最高学年の中学3年男子で優勝した北林 力(りき)くん(Westberg Proride/白馬村立白馬中学校)は、キッズというよりすでに大人に近い体格を有している。連覇を遂げた走りもスマートでパワフルそのもの。

ケーブル類はフレームに内蔵されるケーブル類はフレームに内蔵される 27.5インチホイールはMASSIオリジナル。タイヤはシュワルベのRACING RALPHを使用27.5インチホイールはMASSIオリジナル。タイヤはシュワルベのRACING RALPHを使用


北林くんが乗るのはスペインのブランド「MASSI(マッシ)」の27.5インチXCモデルだ。聞きなれないブランド名だが、他に小林可奈子選手(あづみのMTBクラブ)なども駆る純XCレースバイク。カーボンフレームの造作を見ればこのハードテイルバイクはひと目でハイスペックであることが分かる仕上がり。北林くんも輸入代理店マムアンドポップスの機材サポートを受けているという。

チェーンステイは大きく屈曲する。ギアは1×10仕様だチェーンステイは大きく屈曲する。ギアは1×10仕様だ フロントギアはXTクランクにRACE FACEのシングルギアを取り付けているフロントギアはXTクランクにRACE FACEのシングルギアを取り付けている


フロントはシングルギア仕様の1×10S。シマノXTのクランクにRACE FACEの30Tのシングル歯を取り付けている。これはお父さんによるものだとか。タイヤはシュワルベのRACING RALPH、メインコンポはシマノXT、ステムなどにもMASSIオリジナルを使用する。

北林くんは言う。「乗り心地は非常にクイックで、FOXのサスが動きが非常にスムーズなのでシングルトラックで有利。そしてロックアウトも簡単なので気に入っています。今シーズン序盤まで29インチバイクに乗っていましたが、途中から27・5のこのバイクに乗り換えました。タイヤの接地面積が少し小さいぶん、登りの抵抗が軽く感じ、ハンドリングもクイックな印象を受けます。ホイールもMASSIオリジナルで、軽くて堅牢。クロカンで速いバイクです」。
近いうちにエリートXCシーンに必ず登場してくる北林くんのこれからの活躍に期待しよう。


IRCが新型キッズ用 MIBRO24タイヤを発表

IRCが会場で発表していた新型キッズ用 MIBRO24タイヤIRCが会場で発表していた新型キッズ用 MIBRO24タイヤ photo:Makoto.AYANOIRCタイヤが会場に出展していたブースで、新型キッズ用 MIBRO24タイヤを展示していた。今まで24インチタイヤといえばワイヤービードのものがほとんどで、あまり本格的な仕様の製品が市場になかったのが現状。それがトレールライド用の定番タイヤMIBROのアラミドビード/フォールディング版となって登場するという。製品に近いサンプルが出来たばかりということでまだ詳細データは公表されていなかったが、おそらくワイヤービード比で80g程度は軽いと推測される。キッズMTBの定番サイズ24インチのスポーツタイヤとして発売開始が待たれる。


photo&text:Makoto.AYANO