ゴールの周辺はワインの一大産地。ライドイベントに参加した7000人の一般サイクリストが、まるで聖地の巡礼のように列を作ってブドウ畑を縫っていく。1級山岳メングラーズヒルで、総合優勝候補は少しだけ絞り込まれた。今年もボーナスタイムによる総合争いが最終日まで縺れそうな予感がする。

リーダージャージのアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)がインタビューを受けるリーダージャージのアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)がインタビューを受ける photo:Kei Tsujiゴール地点のタヌンダは、ワインの産地として有名なバロッサバレーの中心地。見渡す限りワイン畑またはその休耕地で、第4ステージのコースは整然と並ぶブドウ畑の間を進む。

コースの沿道に目立つのは、日本でも手に入りやすいワインで有名なジェイコブスクリーク社の看板。原油・天然ガス会社のサントス社がツアー・ダウンアンダーのメインスポンサーにつく前、つまり2009年まで大会のメインスポンサーだった同社は、タヌンダの近くに拠点を置いている。

カフェでスタートを待つ宮澤崇史とアナス・ルンド(デンマーク、チームサクソバンク)カフェでスタートを待つ宮澤崇史とアナス・ルンド(デンマーク、チームサクソバンク) photo:Kei Tsujiどこまでも続く大規模な農園の中にあるジェイコブスクリークのビジターセンターでは、食事やワインの試飲が可能。同社は現在もダウンアンダーのスポンサーに名前を連ねていて、プレスセンターの冷蔵庫には様々な種類のワインが山ほど並べられている(もちろん飲み放題)。

この日はまさにそのジェイコブスクリークが所有するブドウ畑で撮影した(作業中の人に了承を得て)。写真に写っているブドウで作られたワインが、日本に輸出され、シクロワイアードご愛読者の皆様の口に入るかもしれない。念のため、毎日プレスセンターで味見しています。

ブドウ畑を横目にプロトンが進むブドウ畑を横目にプロトンが進む photo:Kei Tsuji

メイン集団に復帰する宮澤崇史(チームサクソバンク)メイン集団に復帰する宮澤崇史(チームサクソバンク) photo:Kei Tsujiタヌンダの街はお揃いの赤いジャージを着たサイクリストに溢れていた。この日は「BUPAチャレンジ」というプロと同じコースを使用したライドイベントが併催されていて、約7000人が参加したという。

BUPAチャレンジのコースは4種類。プロと同じノーウッドを朝6時半にスタートする130kmコース、グメラチャを7時にスタートする102kmコース、マウントプレザントを7時半にスタートする79kmコース、そしてタヌンダを9時にスタートする33kmコース。

逃げるルーベン・ペレス(スペイン、エウスカルテル)ら3名逃げるルーベン・ペレス(スペイン、エウスカルテル)ら3名 photo:Kei Tsuji最先端ロードバイクに乗ったプロ顔負けの絞れたサイクリストから、シティバイクに乗ったお腹がどっぷり出ているサイクリストまで、それぞれのレベルに合わせてコースを選択。ゴール地点は共通してタヌンダ。参加者はみんなプロがゴールする前に走り終え、レースを観戦するというもの。

どの参加者もタヌンダにゴールするので、7000人の参加者とその家族が、人口4000人の小さな田舎町を埋める。レースを取材する側としては、交通渋滞をはじめとする混乱が起こるので勘弁してほしい。

アップダウンのある内陸部を進むプロトンアップダウンのある内陸部を進むプロトン photo:Kei Tsujiスタート前に「今日は最初の登りがキツいかもしれない」と心配していた宮澤崇史(チームサクソバンク)は、最初の登りでアタックが掛かり続けたメイン集団から脱落。レース中盤に集団に復帰したものの、その表情は冴えない。

結局この日最後の1級山岳メングラーズヒルでメイン集団から遅れ、2人のチームメイトと一緒に14分16秒遅れのグルペット最終便でゴールした。「落車の影響もあるけど、踏めないというか、前に進まない感じ」。スタッフが待つチームカーに向かいながら、首を傾げ、何ともやるせない表情を浮かべる。

両手を広げるオスカル・フレイレ(スペイン、カチューシャ)両手を広げるオスカル・フレイレ(スペイン、カチューシャ) photo:Kei Tsujiツアー・ダウンアンダーは残り2ステージ。実質的に、翌日の第5ステージで総合争いは決まる。「ダウンアンダーは明日始まって、明日終わる」というジャーナリストがいるほど、第5ステージで全てが決まる。

第4ステージで総合争いは先行した49名に絞られたものの、総合成績を見ると45名の選手たちがまだ12秒以内にいる僅差の状態。

ルンドやヨルゲンセンとグルペットでゴールした宮澤崇史(チームサクソバンク)ルンドやヨルゲンセンとグルペットでゴールした宮澤崇史(チームサクソバンク) photo:Kei Tsuji総合上位にはマシューズやフレイレ、チオレック、ベンナーティ、ボアッソンハーゲンといったスプリンターの名前が目立つ。でもそれより総合争いで注目したいのは、ジェランスを始めとする登坂力のある選手たち。

総合トップ10には入っていないが、ロジャースやバルベルデ、ゲルデマン、ロバーツ、ヘジダル、LLサンチェス、マシャド、マイヤー、パウリーニョ、ロイドといった選手たちが総合で僅かに12秒以内。少しのタイム差とボーナスタイムで簡単にひっくり返る。

美しいポディウムガール美しいポディウムガール photo:Kei Tsujiオールドウィランガヒルの頂上ゴールでタイム差をつけてステージ優勝を飾った選手が、そのままダウンアンダーの総合優勝に輝きそうなイメージ。スプリンターたちも全開でオールドウィランガヒルを登ってタイム差を少なくし、最終日のボーナスタイムによる逆転を狙う。

とにもかくにも、グリーンエッジは何かムーブメントを起こす必要がある。はっきり言って、ここまでグリーンエッジの見せ場はゼロ。メイン集団を牽引する姿はよく見かけるけど、結果には全くと言っていいほど結びついていない。

グリーンエッジのマシュー・ホワイト監督は「チームには登坂力のあるジェランスとマイヤーがいるから問題ない。総合を狙える位置にいる」と軽く言うが、ここまでの走りを見る限り心配でたまらない。オーストラリア初のUCIプロチームとして、鳴り物入りでオーストラリアのUCIワールドツアーレースでデビューしたチームが、0勝&表彰台無しに終わったとなると幸先が悪過ぎる。

オールドウィランガヒルはグリーン集団の手に落ちるのか?それとも?いよいよ真夏のオーストラリア決戦は佳境に入る。

text&photo:Kei Tsuji in Adelaide, Australia
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