午前、午後のダブルステージで開催されたツール・ド・シンカラ最終日。これまでにタイム差を獲得していたアミール・ザルガリ(イラン、アザド大学)が難なく総合首位をキープ。愛三工業レーシングチームのエース、綾部勇成は昨日から順位を1つ上げ、総合7位でフィニッシュした。

登坂区間は一面に茶畑が広がる登坂区間は一面に茶畑が広がる (c)Sonoko.Tanaka

総合4位以下は逆転可能となる山岳ステージ

いよいよ最終日を迎えたツール・ド・シンカラ。最終日ながらハードなスケジュールで、午前午後のダブルヘッダーだけでなく、午前中の7Aステージは、標高差約1,000mの本格的な山岳ステージになっている。しかし、総合順位はイランのアザド大学が1、2、3位を独占し、4位のチョイ・キー・ホー(香港、香港ナショナルチーム)との差は5分49秒ほど。

「最後まで何が起こるかわからないのがステージレースだ。最後まで全力でジャージを守る」と話す総合リーダーのアミール・ザルガリ(イラン、アザド大学)だが、今大会での圧倒的なイランの登坂力を考えれば、まず総合上位が動くことはないだろう。しかし、総合8位につける綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)は上位と逆転可能。つまり総合4位以下につける上位の選手にとって大切なステージとなった。

シンカラ湖畔を進むプロトンシンカラ湖畔を進むプロトン (c)Sonoko.Tanakaシンカラ湖畔の小さな町を抜ける集団シンカラ湖畔の小さな町を抜ける集団 (c)Sonoko.Tanaka

鈴木&五十嵐、日本人コンビの逃げ

109.3kmのコースのうち、56km地点の中間スプリントポイントを過ぎるまでは平坦で、後半40kmが登坂区間となる。レース序盤は、後半の登坂区間を恐れてかアタックが消極的だったという。そのなかで日本勢の鈴木謙一(愛三工業レーシングチーム)と五十嵐丈士(フジ・サイクリングタイムドットコム)の逃げが決まるが、スプリントポイントを過ぎ、上りが始まると有力選手に絞られた先頭集団に吸収された。

逃げに乗って走る鈴木謙一(愛三工業レーシングチーム)逃げに乗って走る鈴木謙一(愛三工業レーシングチーム) 先行する4人の選手を追う追走集団先行する4人の選手を追う追走集団 (c)Sonoko.Tanaka

鈴木は「今日は行こうと決めていた。序盤のテクニカルな下りを使って差を稼ぎたかったけど、最大で1分半ほどしか開かなかった」と話す。一方の五十嵐は「山で行けないのがわかっていたので、自分ができる最大限のことをしたかった。狙っていた中間スプリントが取れたので、最低限のことはできたと思います」と振り返った。


最後の山岳ステージもイラン勢が強かった

登坂区間では、やはりイランのクライマー、ザルガリ、ラヒン・エマミ、ゴラコール・ポウルセイディが協力して加速。そこに付いて行けたのは香港のチョイ・キー・ホーで、ポウルセイとザルガリに次ぐステージ3位でゴールした。総合成績がかかる綾部勇成は追走集団で走り、ゴール前の下りを使って先行、追走集団のトップでフィニッシュした。区間5位となり、総合成績が7位に上がる。

イラン勢が1、2フィニッシュイラン勢が1、2フィニッシュ (c)Sonoko.Tanakaステージ5位でフィニッシュした綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)ステージ5位でフィニッシュした綾部勇成(愛三工業レーシングチーム) (c)Sonoko.Tanaka





第7Bステージは下り基調となる第7Bステージは下り基調となる (c)Sonoko.Tanaka

7Bステージ 集団スプリントを制したチャン・ジェ・ジャン

午後に開催された7Bステージは、午前中に上ってきたルートを戻るような下り基調の70.8km。スタート直後に、総合9位、綾部と24秒差のチェン・カイ・フェン(台湾、アクションサイクリング)が先行したが、愛三工業レーシングチームが追い上げて吸収。

ゴールはスプリントとなり、ポイント賞ジャージを着るチャン・ジェ・ジャン(韓国、トレンガヌ・プロアジア)が、ツール・ド・コリアに次ぐ、シーズン2勝目を挙げた。綾部はステージ5位でゴール。総合7位をキープし、ステージ上位に何度も入賞して存在感を大きくアピールした。

先行するアクションサイクリングの選手を追う中島康晴(愛三工業レーシングチーム)先行するアクションサイクリングの選手を追う中島康晴(愛三工業レーシングチーム) (c)Sonoko.Tanakaチャン・ジェ・ジャン(韓国、トレンガヌ・プロアジア)がステージ優勝チャン・ジェ・ジャン(韓国、トレンガヌ・プロアジア)がステージ優勝 (c)Sonoko.Tanaka

イランの圧倒的な強さで総合優勝争いという観点からは、盛り上がりに欠けた今大会。しかし、20歳のクライマー、チョイ・キー・ホー(香港、香港ナショナルチーム)や22歳のスプリンター、チャン・ジェ・ジャン(韓国、トレンガヌ・プロアジア)など、アジアの若い才能が印象的だった。

そして、アジアツアーチームランキング首位を目標とする愛三工業レーシングチームも、最後は非常にいいチームワークを見せ、最終ステージでチーム成績1位を獲得。5人のメンバーが笑顔で表彰台に上がった。

ポディウムで記念撮影をする選手とVIPたちポディウムで記念撮影をする選手とVIPたち (c)Sonoko.Tanaka最終ステージ、チーム区間首位の表彰を受ける愛三工業レーシングチーム最終ステージ、チーム区間首位の表彰を受ける愛三工業レーシングチーム (c)Sonoko.Tanaka

ステージ順位 7A
1位 ゴラコール・ポウルセイディ(イラン、アザド大学)2h48'15"
2位 アミール・ザルガリ(イラン、アザド大学)
3位 チョイ・キー・ホー(香港、香港ナショナルチーム)
4位 ラヒン・エマミ(イラン、アザド大学)+02"
5位 綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)+3'38"
6位 マーク・ジョン・レキサー・ガレド(フィリピン、セブンイレブン)
7位 ボッシュ・マント・ベルケン(オランダ、グローバルサイクリング)
8位 ホー・チン・コワ(香港、香港ナショナルチーム)
9位 チュン・カイ・フェン(台湾、アクションサイクリング)
10位 ダディ・スルヤディ(インドネシア、プリマムッダ)+3'41"
33位 松尾修作(フジ・サイクリングタイムドットコム)+10'17"
36位 中島康晴(愛三工業レーシングチーム)
52位 伊藤雅和(愛三工業レーシングチーム)+14'06"
56位 木守望(愛三工業レーシングチーム)+16'10"
80位 鈴木謙一(愛三工業レーシングチーム)+21'19"
タイムアウト 五十嵐丈士(フジ・サイクリングタイムドットコム)+29'06"


ステージ順位 7B
1位 チャン・ジェ・ジャン(韓国、トレンガヌ・プロアジア)1h28'15"
2位 プロジョ・ワセソ(インドネシア、ユナイテッドバイクケンカナ・マラン)
3位 シー・シン・シャオ(台湾、アクションサイクリング)
4位 綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)
5位 ルリー・イブヌ・ファロカ(インドネシア、ユナイテッドバイクケンカナ・マラン)
6位 ヌグローホ・キスナント(インドネシア、プトラプルジュアンガン)
7位 アリン・イスワナ(インドネシア、DKIジャカルタ)
8位 チー・ホー・ユェン(香港、香港ナショナルチーム)
9位 ファタヒラ・アブドゥラー(インドネシア、プリマウタマ)
10位 エリクソン・オボサ(フィリピン、セブンイレブン)
11位 伊藤雅和(愛三工業レーシングチーム)
16位 木守望(愛三工業レーシングチーム)
38位 中島康晴(愛三工業レーシングチーム)
43位 松尾修作(フジ・サイクリングタイムドットコム)
48位 鈴木謙一(愛三工業レーシングチーム)


最終総合成績
1位 アミール・ザルガリ(イラン、アザド大学)17h52'01"
2位 ラヒン・エマミ(イラン、アザド大学)+16"
3位 ゴラコール・ポウルセイディ(イラン、アザド大学)+1'42"
4位 チョイ・キー・ホー(香港、香港ナショナルチーム)+5'49"
5位 ボッシュ・マント・ベルケン(オランダ、グローバルサイクリング)+10'38"
6位 アガング・アリシャバナ(インドネシア、プリマウタマ)+12'38"
7位 綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)+13'19"
8位 ハリ・フィティリナント(インドネシア、プリマウタマ)+13'23"
9位 チュン・カイ・フェン(台湾、アクションサイクリング)+13'43"
10位 ホー・チン・コワ(香港、香港ナショナルチーム)+13'44"
20位 中島康晴(愛三工業レーシングチーム)21'13"
21位 伊藤雅和(愛三工業レーシングチーム)25'08"
30位 松尾修作(フジ・サイクリングタイムドットコム)+29'48"
55位 木守望(愛三工業レーシングチーム)+43'57"
65位 鈴木謙一(愛三工業レーシングチーム)+55'47"

チーム総合首位
アザド大学

ポイント賞
チャン・ジェ・ジャン(韓国、トレンガヌ・プロアジア)

山岳賞
ゴラコール・ポウルセイディ(イラン、アザド大学)


photo&text:SonokoTanaka