2011年3月9日から15日までの7日間に渡って、イタリア中部で第46回ティレーノ〜アドリアティコ(UCIワールドツアー)が開催される。グランツールで総合優勝を狙うオールラウンダーからミラノ〜サンレモ狙いのスプリンターまで、実に豪華なメンバーが集結。別府史之(レディオシャック)の出場も決まった。

2つのタイムトライアルとティレーノ名物の激坂バトル

ティレーノ〜アドリアティコ2011コース全体図ティレーノ〜アドリアティコ2011コース全体図 image:RCS Sportティレーノ〜アドリアティコは、ジロ・デ・イタリアと同じRCSスポルトが主催する1週間のステージレース。レース名の通り、ティレニア海沿岸をスタートし、半島を横断してアドリア海沿岸へ。2つの海を結ぶその行程から、イタリアでは「コルサ・デイ・ドゥエ・マーリ(二つの海のレース)」と呼ばれる。

同時期に開催されるパリ〜ニースと同様、クラシックレースやグランツールに向けて調整を続ける有力スプリンターやオールラウンダーたちが大勢出場する。

第4ステージ・コースプロフィール第4ステージ・コースプロフィール image:RCS Sport今年は個人TTから平坦ステージ、山岳ステージまで、多種多様なコースが登場。コースディレクターを務めるRCSスポルトのマウロ・ヴェーニ氏は「様々なタイプの選手に活躍のチャンスが生まれるようなコースをデザインした。ミラノ〜サンレモを狙うトップ選手たちが集結するので、刺激的なレースになるだろう」と予想する。

第46回大会はティレニア海に面したマリーナ・ディ・カラーラで開幕。今年は初日と最終日にタイムトライアルが設定されているのが特徴で、第1ステージはフラットな16.8kmで行なわれるチームタイムトライアルだ。長い歴史の中でチームTTが組み込まれるのは今年が初めて。

第5ステージ・コースプロフィール第5ステージ・コースプロフィール image:RCS Sportレースは2日目からアドリア海に向かって東進を開始。斜塔で有名なピサ近郊の平野部を抜け、トスカーナ州の丘陵地帯を抜ける。後半にかけて2つのカテゴリー山岳が設定されているが、集団を縮小させてしまうほどの破壊力は無し。最後は集団スプリントに持ち込まれる可能性が高い。

続く第3ステージもスプリンター向きの平坦コース。ラスト25km地点でカテゴリー山岳を越えた大集団が、ペルージャの街になだれ込む。スプリンターにチャンスがあるのはこの第2&第3ステージだけだ。

第6ステージ・コースプロフィール第6ステージ・コースプロフィール image:RCS Sport第4ステージでレースはアドリア海に到達。今大会最長240kmのロングコースは、イタリア半島の背骨にあたるアペニン山脈を跨いでいる。ゴール地点は標高329mの丘上都市キエーティ。旧市街に向かうルートは最大勾配19%の激坂で、ゴール地点の1km手前でカテゴリー山岳のアーチを通過する。この激坂でクライマーたちが勇んで飛び出すだろう。

今大会最難関の第5ステージには、標高1455mのサッソ・テットを含めて3つのカテゴリー山岳が設定されている。しかも240kmというロングコース。頂上ゴールではないが、総合順位の変動が予想される。

ティレーノ〜アドリアティコの名物は標高のある難関山岳ではなく、短くてパンチ力のある激坂だ。最終日前日の第6ステージは丘上都市マチェラータの周回コースが設定されている。最後は最大勾配18%の激坂サンタマリア・デル・モンテを含む14.7kmの周回コースを3周し、マチェラータの街中にゴール。アルデンヌ・クラシックさながらの激坂バトルに注目したい。

最終日はアドリア海のリゾート地サンベネデット・デル・トロントで行なわれる個人TT。アドリア海に面したフルフラットな9.3kmコースが総合優勝者を選び出す。

ティレーノ〜アドリアティコ2011日程
3月9日(水)第1ステージ マリーナ・ディ・カラーラ 16.8km(チームTT)
3月10日(木)第2ステージ カラーラ〜インディカトーレ 202km
3月11日(金)第3ステージ テッラヌオーヴァ・ブラッチョリーニ〜ペルージャ 189km
3月12日(土)第4ステージ ナルニ〜キエーティ 240km
3月13日(日)第5ステージ キエーティ〜カステルライモンド 240km
3月14日(月)第6ステージ ウッシタ〜マチェラータ 178km
3月15日(火)第7ステージ サンベネデット・デル・トロント 9.3km(個人TT)

世界屈指のグランツールレーサーが集結!

ダブルエースを組むイヴァン・バッソとヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)ダブルエースを組むイヴァン・バッソとヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) photo:Kei Tsuji今年のティレーノ〜アドリアティコには史上稀に見る豪華なメンバーが揃う。グランツールでの活躍が期待されるオールラウンダーやスプリンターたちが一堂に会すのだ。

総合優勝候補の筆頭に挙げられるのは、昨年グランツール2勝を飾ったリクイガス・キャノンデールだろう。昨年ジロを制して今年ツールを狙うイヴァン・バッソ(イタリア)と、昨年ブエルタを制して今年ジロを狙うヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア)がダブルエースとしてティレーノに乗り込む。初日のチームTTから強さを発揮するだろう。

アンディ・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)とファビアン・カンチェラーラ(スイス、レオパード・トレック)アンディ・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)とファビアン・カンチェラーラ(スイス、レオパード・トレック) photo:Riccardo Scanferla7月のツール・ド・フランスでバッソと対決するアンディ・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)は、2008年大会覇者のファビアン・カンチェラーラ(スイス)を従えての出場だ。ミラノ〜サンレモや「北のクラシック」に照準を合わすカンチェラーラは、そろそろ調子のピークを迎えているに違いない。

ツアー・オブ・オマーンの頂上ゴールを制し、個人タイムトライアルでカンチェラーラらを沈めたロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)は好調を維持したままこのティレーノに挑む。急勾配の登りはヘーシンクの得意分野で、激坂サンルーカにゴールする10月のジロ・デッレミリアで2連覇を果たしている。

ツアー・オブ・オマーンで総合優勝を飾ったロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)ツアー・オブ・オマーンで総合優勝を飾ったロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) photo:A.S.O.昨年総合3位に入った元世界チャンピオンのカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)は、2年連続ティレーノのスタートに立つ。昨年フレーシュ・ワロンヌを制したエヴァンスは、距離の長い山岳から急勾配の激坂まで幅広くカバーする。タイムトライアルも得意とすることから、総合上位に絡んでくるに違いない。

直前のストラーデ・ビアンケで優勝したフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)直前のストラーデ・ビアンケで優勝したフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット) photo:Riccardo Scanferla激坂を得意とする選手として忘れてはないないのが、2008年大会から2年連続で激坂モンテルポーネ頂上ゴール(第6ステージのゴール地点マチェラータの近く)で優勝したホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)だ。今年はダニーロ・ディルーカ(イタリア)も同チームのメンバーとして出場。ともにアルデンヌ・クラシックを得意とする選手であり、タイムトライアルさえ克服することが出来れば表彰台に手が届くだろう。

昨年のティレーノは、ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)とミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)の激しい総合争いに沸いた。2010年大会覇者ガルゼッリはもちろん連覇を狙う。2009年大会覇者のスカルポーニはダミアーノ・クネゴ(イタリア)とダブルエース体制でレースに挑む。

2008年大会総合3位&2009年大会総合4位のトーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン、チームスカイ)は安定した走りが持ち味。ジロ・デ・イタリアではチームリーダーを担う予定だ。チームスカイからはスプリント力とTT能力に秀でたエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー)も出場する。

直前のストラーデ・ビアンケで優勝を飾ったフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)にも注目したい。総合優勝候補には挙がりにくいが、ステージ優勝を狙った果敢な走りには注意が必要。ミラノ〜サンレモのチプレッサやポッジオでほぼ100%アタックするこのベルギー生まれのアタッカーは勢いに乗っている。

ミラノ〜サンレモを狙うトップスプリンターの競演

マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード)マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード) photo:A.S.O.ティレーノは3月15日に閉幕。その4日後に春先の一大決戦ミラノ〜サンレモが開催される。つまりこのティレーノで調子を上げて、そのままミラノ〜サンレモに挑む選手は多い。平坦コースが設定された第2ステージ&第3ステージでは、グランツール同等の、もしくはそれ以上に熱いスプリントバトルが予想される。

2009年のミラノ〜サンレモで優勝したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード)は、最強発射台マーク・レンショー(オーストラリア)とともにこのティレーノに挑む。

タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ)タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ) photo:Cor Vosレンショーはツアー・オブ・オマーンで総合優勝。カヴェンディッシュはツアー・オブ・オマーンの最終ステージでシーズン初勝利を掴んでいる。

世界チャンピオンのトル・フースホフト(ノルウェー)とタイラー・ファラー(アメリカ)というガーミン・サーヴェロの強力タッグも要チェック。ミラノ〜サンレモではこの2人にハウッスラー(パリ〜ニースに出場中)を加えた強力な布陣で初制覇を狙う。まずはこのティレーノで成績を残しておきたいところだ。

サルデーニャに続いてティレーノに出場する別府史之(日本、レディオシャック)サルデーニャに続いてティレーノに出場する別府史之(日本、レディオシャック) photo:Cor Vosミラノ〜サンレモで4度目の優勝を狙うオスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)は、2005年大会の総合優勝者。昨年ステージ優勝を飾ったトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)やロビー・マキュアン(オーストラリア、レディオシャック)、アンドレ・グライペル(ドイツ、オメガファーマ・ロット)、フランシスコホセ・ベントソ(スペイン、モビスター)と言ったトップスプリンターたちも顔を揃える。

そんな海外勢を迎え撃つのは、アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ・ISD)やダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、レオパード・トレック)。まさに史上最強のスプリンターたちがこのティレーノに集う。

日本からは別府史之(レディオシャック)が初出場を果たす。フミはジロ・ディ・サルデーニャに続くイタリアンレース出場。サルデーニャでは登りでクライマーに肩を並べる走りを見せ、総合22位に入っている。ジロ・デ・イタリア出場が期待されるフミに大きな声援を送りたい。


text:Kei Tsuji