リクイガスは来シーズンのグランツールに向けて作戦を練っている。しかしロマン・クロイツィゲル(チェコ)のチーム離脱とフランコ・ペッリツォッティ(イタリア)のトラブルにより、チームリーダー選びは以前より簡単なものになった。12月にサルデーニャで行なわれるトレーニングキャンプで、来シーズンのスケジュールが決定される予定だ。

ジロで総合優勝を飾ったイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)ジロで総合優勝を飾ったイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス) photo:Kei Tsuji昨年のちょうどこの時期、リクイガスの指揮官たちは頭を抱えていた。グランツールで総合上位を狙えるオールラウンダーが4名も在籍していたので、誰がどのグランツールでチームリーダーを担うのかが定まらなかったのだ。

度重なるミーティングの末、イヴァン・バッソ(イタリア)とペッリツォッティをジロ・デ・イタリアへ、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア)とクロイツィゲルをブエルタ・ア・エスパーニャへ送り込むことに決定。そして4名全員でツール・ド・フランスを闘うことになった。

ブエルタ王者に輝いたヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)ブエルタ王者に輝いたヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス) photo:Unipublicしかしそんなリクイガスの作戦を、ペッリツォッティのドーピング疑惑が打ち砕いた。バイオロジカルパスポートのデータに基づき、UCI(国際自転車競技連合)はジロ開幕直前にペッリツォッティのドーピング疑惑を明らかにした。

それから5ヶ月が立った先月、TNA(イタリア・アンチドーピング裁決機関)はペッリツォッティに無罪を言い渡した。しかし、未だにUCIとペッリツォッティの闘いは終わっていない。UCIとの係争が終わらない限り、リクイガスはペッリツォッティとの契約を更新しない方針だ。

とにかくペッリツォッティのトラブルにより、急遽ニーバリにジロ出場の機会が回ってきた。ニーバリはバッソの2度目のジロ制覇を支えるとともに、ステージ1勝&総合3位の活躍。ツール出場のチャンスは逃したが、結果的にそれがブエルタ制覇に繋がった。

一方、計画通りのシーズンを過ごしたクロイツィゲルは、ツールを2年連続総合9位で終え、ブエルタでニーバリを強力にサポート。しかし1年前倒しでリクイガスとの契約を打ち切り、チームリーダーの座が確約されているアスタナへの移籍を決めた。

もう一人のチームリーダー、バッソは引退までにツールとブエルタを制覇したいと夢見ている。「またツールで活躍したいんだ。僕はツールとともに歩んできた。来年こそ僕がツールで輝く年だと信じている」。来シーズン、バッソは2つのグランツールを走る可能性が高い。

これらの出来事が、来シーズンに挑むニーバリの緊張を解きほぐしている。「心置きなくジロ・デ・イタリア制覇を目指すことが出来るよ。オフシーズンに可能な限りコースを試走したい。全てはマリアローザのため」。リクイガスの若きチームリーダーはそう語る。

text:Gregor Brown
translation:Kei Tsuji
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