宮澤崇史を迎えたニッポは、佐野淳哉ら最強のアシスト陣で優勝を狙う。宮澤個人ではじつに3連覇がかかっている。シマノ、愛三、BSアンカーはもちろん、今年は鹿屋、東大、日大、中央大など大学生の戦いも熱い。

昨年に最強のまま一時解散の梅丹本舗。彼らの行き先がポイントだ。ツール・ド・北海道2009第4ステージより昨年に最強のまま一時解散の梅丹本舗。彼らの行き先がポイントだ。ツール・ド・北海道2009第4ステージより photo:Hideaki.TAKAGI

昨年、最強チームのまま一時解散した梅丹本舗勢の行った先がポイントだ。宮澤崇史、菊池誠晃らが移籍したTEAM NIPPOがもちろんその筆頭。そして清水都貴(チームブリヂストン・アンカー)、福島晋一(クムサン・ジンセン・アジア)も昨年の優勝メンバーだ。

実業団Jサイクルツアーで無敵の強さを誇るシマノレーシング、アジアツアーで活躍し10日前の加東ロードで貫禄の勝利を挙げた愛三工業レーシングチーム、そして清水・狩野智也らが加入したチームブリヂストン・アンカーももちろんステージだけでなく総合優勝を狙う。

インカレで激しい戦いを見せた内間康平(鹿屋体育大学)と西薗良太(東京大学)や飯野智行(中央大学)ら大学生の戦いが、いま熱い。大学生の中で強いだけでなく、内間や西薗はUCIや実業団レースでも結果を出してプロと互角に渡り合う実力を証明してる。彼らがコンチネンタルチームとどう戦い、そして結果を出すのか、そしてU23の順位が注目だ。
また、7大学のうち4つまでが国立大学だ。特に東京大学、京都大学、北海道大学はすべて一般入試による選手。ステージレースで、日ごとにたくましくなっていく彼らは必見だ。

今年は山岳の第2ステージの動向で大きく変わる。
いずれにしても宮澤、佐野、福島、狩野、西谷、畑中らは上位争いをする。

レース前日の9月15日夕方のスタートリストから全19チームを見ていこう。

ARBO KTM-GEBRUDER WEISS(オーストリア)
グレゴール・ガズヴォダは元梅丹本舗のメンバー。今年のツアー・オブ・チンハイレイクでステージ優勝を飾っている。プリア・ラースは昨年のツール・ド・おきなわ山岳3位。


ACTION CYCLING TEAM(チャイニーズタイペイ)
トラックレースで世界レベル、来日も多数のフェン・チュンカイのスピードに注目。今年のイーストジャワで総合9位のファン・シーチャンは総合で期待できる。


GEUMSAN GINSENG ASIA(大韓民国)(クムサン・ジンセン・アジア)福島、奈良、熊坂、海藤
福島晋一は今年の全日本個人TTチャンピオン。オールラウンドに力を発揮し、ステージ&個人総合優勝候補だ。そのタフさは、特に厳しい第2ステージで力を発揮するだろう。
奈良基は全日本個人TT第2位。ようやくその力を結果で表わすことができた。もちろん2位で満足する男でない。その上の走りに期待だ。熊坂和也は北海道出身、海藤もフランスで修行を積んできた。


KOREA NATIONAL TEAM(大韓民国)ゴン・ヒョスク、ジャン・キュング、コム・ジュンファン、パク・スンベク、チュイ・ジュンギュン
山岳で強いゴン・ヒョスクは総合で確実に上位争いをする。梅丹本舗にもいたパク・スンベクはスプリンター。この2人の存在は他チームに脅威だ。



ニッポ最強の瞬間。10年全日本選手権で宮澤崇史が優勝、最強アシストの佐野淳哉は4位ニッポ最強の瞬間。10年全日本選手権で宮澤崇史が優勝、最強アシストの佐野淳哉は4位 photo:Hideaki.TAKAGITEAM NIPPO 宮澤、井上、菊池、ガロッファロ、佐野
昨年まで今大会個人総合2連覇、そして日本チャンピオンの宮澤崇史を中心に動く。フィジカル最強の佐野淳哉とのタッグは他チームにとって、最大の脅威だ。もちろん宮澤の総合3連覇が目標だが、展開しだいでは佐野にチャンスがある。今年5月のツール・ド・熊野第2ステージは山岳で最後は登坂ゴールでそれに勝利。今大会の第2ステージに似る。山岳だけでなく平坦までトップレベルのヴィンツェンツォ・ガロッファロは全ステージで活躍、それを支えるのは井上和郎、菊池誠晃の強力メンバーチームにとって、戦いの幅が広がっていることも有利なところ。
大門監督は「崇史と淳哉が中心になる。昨年はチームとして最低の結果だったので今年は個人と団体を狙う。メンバーも「勝つ」ことを意識して選んだ」と語る。



シマノレーシングは若手が急成長。それぞれが総合・ステージを狙える位置にあるシマノレーシングは若手が急成長。それぞれが総合・ステージを狙える位置にある photo:Hideaki.TAKAGIシマノレーシング 鈴木真理、畑中、平塚、鈴木譲、村上
今シーズン、実業団Jサイクルツアーで無敵を誇るチーム。その原動力は畑中勇介ら若手だ。今年に若返りを果たしたチームは、パワーメーターを使った練習方法を取り入れた。練習のほうがきついと言う彼らの力は本物。新加入ながら数段階も強くなった平塚吉光、そしてツール・ド・熊野で山岳賞を獲得した鈴木譲、さらに村上純平と隙がない。昨年大活躍の阿部嵩之は不在だが補って余りあるメンバー。そしてエースは昨年総合2位の鈴木真理。勝ちを決める能力のきわめて高い鈴木は、若手を前面に出しつつも、いつでも勝利を狙える位置に付ける。
野寺監督は「昨年総合2位の真理が中心かもしれないが、いまは若手が伸びていて誰もが狙える位置にある。エースは決めていない。若手の頑張りに託したい」と語る。



10日前の実業団加東ロードで圧勝の西谷泰治(愛三工業レーシングチーム)10日前の実業団加東ロードで圧勝の西谷泰治(愛三工業レーシングチーム) photo:Hideaki.TAKAGI愛三工業レーシングチーム 綾部、西谷、盛、鈴木、福田
スピードマンの西谷泰治、昨年総合3位の盛一大でスピードを中心とした戦い方に対応する。今シーズンもアジアツアーを重点的に活動し、結果を出している。10日前の加東ロードでは西谷が難なく優勝。盛も走りで魅せた。キャプテンの綾部勇成は司令塔かつ自在な動きが得意。そして鈴木謙一はチームのために身を粉にして動くアシストの代表格。上れるスピードマンの西谷と盛を擁し、アジアツアーでの経験を生かすチャンスがやってきた。



狩野智也を迎えてチームワーク抜群のチームブリヂストン・アンカー狩野智也を迎えてチームワーク抜群のチームブリヂストン・アンカー photo:Hideaki.TAKAGIチームブリヂストン・アンカー 山本、狩野、清水都貴、普久原、伊丹
昨年山岳賞の清水都貴、日本の山岳王・狩野智也そして上れるスプリンターの山本雅道と役者に事欠かない。清水はもちろん総合を狙う。そして注目したいのは狩野。山岳での強さはもちろんだが、平地も強い。加東ロードではアタックをかけまくった上で逃げて3位。オールラウンドに力を発揮し、総合狙いも可能だ。普久原奨はタフな場面での走りに期待できる。伊丹健治は、チーム戦略がある中で、U23の成績にも期待が高まる。
藤野監督は「もちろん個人総合を狙う。いま、チームはうまくまとまっていて、みんなでやるぞという気持ちになっている。フランス遠征の成果を出したい」と語る。



10年ツール・ド・熊野第1ステージで優勝の辻善光(宇都宮ブリッツェン)宮澤やワン・カンポーらを抑えた10年ツール・ド・熊野第1ステージで優勝の辻善光(宇都宮ブリッツェン)宮澤やワン・カンポーらを抑えた photo:Hideaki.TAKAGI宇都宮ブリッツェン 柿沼、中村、辻、廣瀬、小坂
チーム結成から2回目の参加。ベテランの柿沼章、廣瀬佳正を筆頭に辻善光でステージ優勝を狙う。辻はすでにツール・ド・熊野で区間1勝を挙げているが、学生時代から相性のいい北海道。さらなる勝利を期待したい。中村誠は長いトンネルを抜けついに松川ロードで優勝、波に乗っている。小坂光はU23での順位にも期待できる。


湘南ベルマーレ 山根、小室、平林、武田、原川
ベテランでスピードマンの小室雅成、アップダウンに強い山根理史と平林昌樹、19歳で全日本選手権U23で2位の原川浩介、21歳の武田耕大のベテランと若手のコンビで臨む。



10年全日本選手権U23での死闘。山本元喜(右・鹿屋体育大学)と原川浩介(左・湘南ベルマーレ)10年全日本選手権U23での死闘。山本元喜(右・鹿屋体育大学)と原川浩介(左・湘南ベルマーレ) photo:Hideaki.TAKAGIなるしまフレンドレーシングチーム八王子 岩島、二戸、桜井、若生、近藤
Jサイクルツアーで入賞多数の岩島をはじめ、二戸、若生らで臨む。クラブチームとしてはいままでツアー・オブ・ジャパンなどにも出場してきた。北海道でどう戦うか注目だ。


北海道地域選抜 山本、松田、栗栖、バークハウス、織田
山本幸平、ブライアン・バークハウスらを中心とする。山本はMTB日本チャンピオンで、先の世界戦では日本人過去最高の20位台でゴール。バークハウスは8月のニセコヒルクライムでぶっちぎりの優勝。過去にはデュアスロンの世界選手権で6位という成績を残す。
坂上監督は「山本幸平など個人の成績はもちろんだが、今年は特に団体での成績が狙えるメンバー」と語る。その山本は「できれば自分からガンガンいって少数に絞り込んで、ステージを狙いたい」と語る。



学生2強が激突したインカレロード。優勝の内間康平(鹿屋体育大学)と2位の西薗良太(東京大学)学生2強が激突したインカレロード。優勝の内間康平(鹿屋体育大学)と2位の西薗良太(東京大学) photo:Hideaki.TAKAGI鹿屋体育大学 高宮、内間、吉田、野口、山本
インカレロード優勝ので学生ナンバーワンの内間康平は昨年のU23で1位。今年はステージ優勝を狙う。吉田隼人、北海道出身の高宮、野口、そしてU23全日本チャンピオンの山本元喜で臨む。伊藤が怪我のため出場しないが、それでもチーム内選考に苦慮するほどの豪華メンバー。コンチネンタルチームと互角に戦う姿は必見だ。


日本大学 板橋、中田、雨宮、逢坂、安達
3週間前のインカレで見事総合28連覇を達成した。それを支えたのはトラック・ロード両方での厚い選手層。中田はそのインカレロードで8位、板橋、逢坂も上位完走している。雨宮は入学4日目のチャレンジロードU23で3位集団の頭を取っている。気力も充実の彼らに期待したい。


東京大学 西薗、安井、峠、三谷、有田
学生個人TTチャンピオンの西薗良太を中心にする。インカレ14位の三谷らの力も増しており、完走だけでなく順位も気になるところ。西薗はU23からは外れるが、学生界でナンバーワンの座を、そして区間と総合の両方で上位に絡む走りを見せるだろう。


中央大学 堀内、飯野、野口、郡司、笠原
飯野智行、堀内俊介、笠原恭輔らを中心にする。悔しかったインカレロードをバネにして上位陣に絡む走りを見せる。郡司はインカレ個人追抜きを4分53秒で4位。独走力にも期待だ。


京都産業大学 木守、山森、廣浦、木村、吉岡
09年学生個人ロードチャンピオンの木守望を中心にする。木守は今年のインカレロード、ポイントともに悔しい思いをしているだけに期待できる。


京都大学 宇野、杉山、吉浦、奥村、長森
インカレで宇野9位、長森13位、吉浦15位、そして3月の西日本チャレンジU23でワン・ツーなど各大会で結果を出しており、再びの黄金時代を築きつつあるのが今年の京都大学だ。完走はもちろん、それ以上の走りに期待。


北海道大学 冨岡、篠原、尾崎、栗山、相澤
一年間の活動はすべてこのツール・ド・北海道で好成績を挙げるためと言って過言でないのが北海道大学だ。インカレで冨岡が追走集団としてアタックするなど活躍。今年の道南エリアは彼らの練習コースでもある。完走以上の走りを見せてくれるはずだ。

なお、CKT-TMIT-CHAMPION SYSTEMはチームとして欠場する。

photo&text:高木秀彰

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