2022年のアンバウンド・グラベルでデビューウィンを果たしたシュワルベのG-ONE RSをテスト。高速でグラベルを駆け抜けるために開発されたタイヤを、アンバウンド・グラベルの出場経験を持つCW編集部の綾野が試した。



シュワルベ G-ONE RS photo:Makoto AYANO

ロードサイクリングのオルタナティブとして注目されて以来、急速に人気の遊び方となったグラベルシーン。グラベルと一言で説明されるものの、バイクパッキングを駆使したキャンプツーリングやファスト&エンデュランスサイクリング、世界選手権が開催されるまでになったレースまで遊び方が広がっており、懐の深いジャンルとして多くの人が楽しんでいる。

特にレースシーンに投入される機材の進化は著しく、シクロクロスやマルチパーパスバイクを転用するのではなく、グラベルレースのための専用バイクとして開発が行われるまでに至っている。そのようなグラベル機材において最も重要なのがタイヤチョイス。アンバウンド・グラベルのような超長距離レースでは転がり抵抗が小さく、スピードを乗せやすいタイヤが求められており、各社がレースタイヤをラインアップに揃えている。

今回紹介するシュワルベもその一つ。G-ONEシリーズとして計7種類ものタイヤを揃え、ありとあらゆるグラベルシーンに対応。ピュアなレース向けとして用意されているのはG-ONE RとG-ONE RSの2種類で、高い速度域でのレースでアドバンテージを得られるタイヤを実現している。本ページでは2022年にローンチされた新型グラベルレース用タイヤG-ONE RSをピックアップ。発表の場となったアンバウンド・グラベルにおいて、イヴァール・スリックがデビューウィンを掴み取り、すぐさま新型タイヤの優れた性能を証明してみせたモデルだ。

センター部分はウロコのようなパターン、サイド部分に大きなノブを配置している photo:Makoto AYANO

G-ONE RSがレースにおいてアドバンテージを発揮できるのは、タイヤの大部分がセミスリックとされているから。ショルダー部分のブロック以外はスリックとまでは言わないものの、ほぼ平滑な鱗状のパターンに覆われており、G-ONE Rに対して約20%も転がり抵抗を低減させた。

完全なスリックではなく鱗で覆われていることがポイントだ。若干の段差を設けることでグラベルでのトラクション性を稼いでおり、力を込めたペダリングでもタイヤが滑りにくくなっている。またタイヤローテーションを逆転させれば、さらなるトラクション性能を引き出せる。

コーナリング時は先述したサイド部分のブロックが路面を捉えるため、砂利道でも安定したグリップ力を発揮する。また直進時にブロックが接地しても大きな抵抗とならないように、ブロックの形状と角度が最適化された。ショルダーブロックもタイヤローテーションを逆転することで、グリップ力を高めることが可能だ。

サイド部分のノブによってグリップ力を確保している photo:Makoto AYANO

ケーシングがシュワルベが誇るスープレス構造であることも特徴。優れたしなやかさを実現したケーシングによって、転がり抵抗を低減するだけではなく、オフロード時の走行安定性やトラクション性向上を実現した。

そのG-ONE RSをシクロワイアード編集部の綾野真がテスト。2022年のアンバウンド・グラベルではG-ONE Rを使用し、その性能を最大限に引き出した経験を持つ。そんな綾野が感じたレースに特化したG-ONE RSの性能とは。



-編集部インプレッション

G-ONEシリーズの様々なモデルを試してきた綾野真がG-ONE RSのテストを行う

G-ONEシリーズはほぼ全てのモデルを使用してきていて、その中でもG-ONE RSは見た目、コンセプト通りにレース用として速いスピードで走らせることができるタイヤというのが第一印象です。昨年のアンバウンド・グラベルでイヴァール・スリックがデビューインした実績のあるタイヤなので、レースタイヤとしては間違いないと思います。

転がり抵抗の軽さは際立つため、一直線のフラットグラベルでスピードを上げて駆け抜けるためのタイヤであると容易にイメージがつくでしょう。グラベルでの軽さだけではなく舗装路面でもタイヤが抵抗となりにくく、舗装路メインでグラベルを繋いで走るようなライド、使い方にもおすすめです。

引き締まったグラベルが続くレース向けのタイヤとして最高な性能を備えている

一方でコーナリングでのコントロール面では上級者向けと言うのが率直な感想です。見た目からもわかるように背の高いノブがサイドに寄っているので、コーナリングではタイヤの形状を意識しながらバイクを倒す乗り方をマスターする必要があります。ノブが路面を捉えば確かにグリップ力を発揮してくれるので、コーナーも綺麗に曲がっていけるはずです。

グリップやトラクション面で言えば、ウロコ状のセンター部分も見た目以上に路面を噛むような感触があります。グラベルの登りや若干ルーズな路面でも、タイヤの接地面を意識して乗ることで登りでもトラクションのコントロールを手中に収められるはずです。なので空気圧は気持ち低め、私の場合は体重62kgで1.7〜1.8bar程度に設定することで、高圧によって発生するタイヤの跳ねを抑えつつ、グリップ力を稼げるような印象がありました。

アンバウンド・グラベルでもG-ONE Rを使用した綾野真が新型のG-ONE RSをテスト

スリックに近いようなウロコ状のトレッドは弱そうに見えるんですが、使っていてタイヤに傷が入るような気配が全くありません。トランスペアレントのサイド部分も耐パンク性に不安がありそうですが、これまで試してきたG-ONEシリーズ全てで裂けたこともなく、RSについてもテスト中に切れたり、傷ついたりと言うことがないので、相当強く作られているのだと思います。

それでいてケーシングがとてもしなやかで、乗っていて快適で気持ちが良く、ロードで言うならばチューブラータイヤを履いているかのよう。素材を吟味して性能をバランスよく整えている高級タイヤの感触がグラベルタイヤでも味わえるというのが、G-ONEシリーズの特徴です。その分価格は張ってしまうけど、価格なりの価値をすぐに感じられるはずです。

コーナリングではタイヤのサイド部分を意識するとグリップ力を発揮できる

G-ONE RSの登場によってシュワルベのグラベルタイヤラインアップは完成されたと思います。ベースはオンオフ50:50のG-ONE ALLROUNDが何でも使いやすいモデルとして用意されていて、よりグリップ力を求める場合はULTRA BITEなどを選ぶことができます。

このタイヤは本当にスピードを求めるレースには間違いありませんが、実際にはそのような走り方をする方は少ないと思うので、舗装路をミックスしながら距離を稼ぐようなグラベルツーリングにはぴったりです。前輪にG-ONE R、後輪にG-ONE RSのように組み合わせて使うのも良い。乗り心地の良さを堪能しながら、速く走るという目的があるのであれば大満足のタイヤとなるでしょう。

ハードパックのグラベルに適したパターンが採用されている



シュワルベ G-ONE RS
タイプ:Tubeless Easy
バージョン:SuperRace, V-Guard
コンパウンド:ADDIX RACE
カラー:トランスペアレント
サイズ(重量):35C(410g)、40C(445g)、45C(505g)
価格:13,200円(税込)

impression: Makoto AYANO
text: Gakuto Fujiwara