キャットアイの新型フロントライトVOLT400 NEOと、VOLT800 NEO。対向への眩惑を減らす配光、ランタイム向上といった機能面でのアップデートや、ハンドルの上下どちらにつけても電源ボタンが上向きとなる設計など、改善が施された定番モデルの新型を実際に使用した。



キャットアイ VOLT 400、800 NEO

スポーツバイクを始める時の周辺アクセサリー探しで「皆か必ず行き着くブランド」と言って過言ではないキャットアイ。大阪に拠点を構える日本のライトブランドであり、丁寧な製品づくりから生まれる高い質のプロダクトを並べる「自転車用ライト」のリーディングカンパニーだ。

筆者・藤原も最初のライトはキャットアイのソーラー充電式ハイブリッドだった。またリチウムイオンの充電池モデルがポピュラーになってからは、VOLT400をスモールパーツを交換しながら、時には新しく買い替えながら長らく使い続けてきた。途中、他のブランドを使ってみることもあったが、結局はキャットアイのオプティキューブレンズテクノロジーによる満遍のない配光に戻ってくる。それだけ私にとってVOLTシリーズは使い勝手の良く、完成度の高いライトだった。

ライトユニットとバッテリーの間にマウントパーツが挟み込まれている

バッテリーとライトユニットの間にはパッキンが挟み込まれている

その一方で、VOLTシリーズの各モデルが登場して以降は、他社ブランドの大容量バッテリーを搭載するライトの価格が下がり始めた。明るさ・ランタイム・価格面でのパフォーマンスの良いモデルが手に入るようになったがために、業界を牽引するキャットアイのVOLTシリーズに対するモデルチェンジへの期待も大きくなってきた。そんなタイミングでの新型発表は、期待しないわけがない。

ローンチ時に気になってスペック情報で確認すると、VOLT400 NEOは先代と同じバッテリー容量とランタイム、VOLT800 NEOはバッテリー容量が4800mAhに増加しランタイムも向上している。

VOLT800 NEOはローモードで約12時間に進化しており、日没後も通して使うことができるのは両手放しで喜べるアップデートポイント。実際は夜通し走り続けることは稀なので、日中はデイタイムハイパーコンスタント、日没後は点灯モードに切り替える使い方でも電池切れを起こしにくくなっている。通勤や通学などで、頻繁だが、短い距離を乗る人にとっては充電回数が少なくなるのもメリットだ。

ハンドルの上下どちらにも装着可能だ

キャットアイ VOLT 800 NEO

そして新型ではハンドルバーの上側にライトを装着する方式、もしくはハンドルバーに吊り下げる方式どちらも対応している。旧モデルもフレックスタイトブラケットを逆転すれば使えないこともなかったが、電源ボタン(バッテリーインジケーター)が確認できず、電源ポートが上向きとなって浸水の原因となってしまうおそれがあった。

しかし新型ではライトユニットとバッテリーの中間に別体の樹脂パーツが挟み込まれている。このパーツにはフレックスタイトブラケットに装着するためのスライダーが備えられており、天地を入れ替えることで、ライトユニットの向きを変えずに吊り下げマウントに対応する。つまりバッテリーインジケーターが確認できる状態かつ、充電ポートに水が入りにくくなっているのだ。

ハンドルの上と下、どちらに装着しても電源ボタンが上になる

もちろんハンドルバーに吊り下げてVOLTシリーズを使っていたこともあるが、基本的にはハンドルバーの上にライトを配置していた。特にその理由を考えたこともなかったが、今回の新機構をテストしてみると、旧作で吊り下げなかった理由は「バッテリーインジケーターが見えない」ことに対し、違和感を覚えていたからだと気付かされた。

それほどバッテリーインジケーターを確認する動作は重要かつ、グローブを装着している状態で、ボタンの位置を視認したまま操作を行えるのは予想以上にストレスフリーだった。今度からは吊り下げ式で使いたいと思わせるほど、新たな選択肢を与えてくれたVOLTシリーズの進化には驚かされた。

新型は縦スリットが加えられたレンズとなっている

ライトのサイド部分はカットアウトされている
新型では底面もカットアウトされた



また、新型ではVOLTシリーズのアイコンだったオプティキューブレンズテクノロジーがアップデートされている。旧作はLEDを頂点として中央部分と周辺部分の光が円錐型に広がり、上下左右どちらも差がない配光に設定されていた。これが上下を反転しても違和感なく使えた理由でもある一方で、対向車を眩惑してしまうリスクも少なからずあった。

そのためキャットアイは、対向車への眩惑を防ぐ新たな配光をNEOシリーズに採用した。外側から見て取れるレンズは複雑な設計にアップデートされており、レンズの左右と下部はカットオフされて光が届くような作りとなっている。上側にはシェードが備えられているため、上下は非対称となった形だ。これが実現できたのは、ライトユニットを上下反転させなくてもハンドルバー下側にライトを配置できる新パーツのおかげでもあろう。

楕円形の配光へと変化している

上方への光は抑えられている

肝心の配光は、設計の通り上部への光が穏やかで、メインの光は横に広い楕円形状。ライトをやや下に向けて地面を照らすと台形状に光が広がる。最近の自動車のように目線より高い位置への強い光は抑えられており、本当に光が届いているか心配になるが、テスト時に再帰反射性の看板が光っていることから上部への光は間違いなく届いている。また新型を装着した自転車に対向してみると、ライトが点灯しているのは確認できるが決して眩しくはない。しっかりと新しい配光の美点が生きているようだ。

一方で実際に走行してみると、ライトの角度調整はやや難しめと感じる。その理由は楕円形状の配光が平面的で、強い光が届くエリアが前後に短く、遠くまで光を届けようとするとライトを上向きに設定しないといけないため。ただあまり上向きに設定してしまうと、眩惑防止の配光が機能しなくなる上、地面を照らす光が弱くなるので、先述したような悩みが発生する。ダウンヒルのようなハイスピード走行時や、街灯のないエリアで遠くを見通したい時のセッティングは迷ってしまった。

VOLT 800 NEO(点灯ハイ)

ワイドな配光のメリットは路肩までしっかりと照らし出されているところ。先述の上方向への配光が物足りなく感じる暗闇の中でも、側方の物事をしっかりと把握することができる。特にコーナーの進入ポイントも目で見て確認しやすいため、安全という面でも進化を遂げている印象はある。対向への配慮なども含めると、確かな進化を遂げたライトに仕上がってるといえよう。

ハンドル下にライトを装着してもバッテリーインジケーターを確認できる

また、充電ポートにUSB Type-Cを採用したり、VOLT800 NEOのみとなるが急速充電回路を備えていたりと使い勝手に優れる設計も嬉しいところ。ダブルクリックでのハイモード切り替えやモードメモリ機能、フレックスタイトブラケットなど定番の設計に変更がないのも、旧型からの買い換える人にとっては好印象だ。

定番中の定番であるVOLTの新型は、お馴染みの機能や設計を残すことで使い勝手をそのままに、「新世代のライト」と胸を張って言えるほど進化を遂げたモデルだった。新しいスタンダードとして、多くのサイクリストがVOLT NEOシリーズをつけて走ることになるだろう。詳しいスペックはリリース記事をチェックしてもらいたい。



キャットアイ VOLT800NEO
サイズ:36 x 131.5 x 45 mm
重量:176g (カートリッジバッテリーを含む)
光源:LED 1個
使用電池:Li-ion 3.6V 4800mAh
使用時間:点灯(ハイ) :約3時間
点灯(ミドル):約5時間
点灯(ロー):約12時間
デイタイムハイパーコンスタント:約7.5時間
点滅:約100時間
標準充電時間:約4時間(2A)
繰返し充放電回数:標準300回 (定格容量の70%の容量低下まで)
防水性能:IPX4
付属品:USBケーブル TYPE-C
価格:18,700円(税込)

キャットアイ VOLT400NEO
サイズ:36 x 121 x 45 mm
重量:143g (カートリッジバッテリーを含む)
光源:LED 1個
使用電池:Li-ion 3.6V 2200mAh
使用時間:点灯(ハイ) :約3時間
点灯(ミドル):約8時間
点灯(ロー):約18時間
デイタイムハイパーコンスタント:約11時間
点滅:約60時間
標準充電時間:約3.5時間(1A)
繰返し充放電回数:標準300回 (定格容量の70%の容量低下まで)
防水性能:IPX4
付属品:USBケーブル TYPE-C
価格:9,900円(税込)

text:Gakuto Fujiwara

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