2010年6月11日に行なわれたクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ(UCIプロツアー)第5ステージは、ゴール31km手前の超級山岳シャンルースで飛び出したダニエル・ナバーロ(スペイン、アスタナ)が独走勝利。プロ6年目のスペイン人クライマーが念願のプロ初勝利を飾った。

美しいフランス東部の山岳地帯美しいフランス東部の山岳地帯 photo:Cor Vosコース全長は143kmと短めだが、2級山岳ロータレ峠と超級山岳シャンルースが登場する第5ステージ。ラスト31km地点で標高1750mのシャンルースをクリアし、そこからハイスピードダウンヒルを経てグルノーブルにゴールする。

総合上位陣は翌日のラルプ・デュエズ頂上ゴールを見据えて動かない。そうにらんだ選手たちが、栄光のステージ優勝目指してレース序盤からアタックを繰り返した。

超級山岳シャンルースでメイン集団から飛び出したクリストフ・モロー(フランス、ケースデパーニュ)超級山岳シャンルースでメイン集団から飛び出したクリストフ・モロー(フランス、ケースデパーニュ) photo:Cor Vosアタック合戦の末に、2級山岳ロータレ峠の下りで形成されたのは、山岳賞ジャージを着るブラム・タンキンク(オランダ、ラボバンク)やエロス・カペッキ(イタリア、フットオン・セルヴェット)、エゴイ・マルティネス(スペイン、エウスカルテル)を含む7名の逃げグループ。総合成績において危険な選手は入っていなかったが、レディオシャックがコントロールするメイン集団はタイム差を最大5分15秒に抑え込んだ。

やがて超級山岳シャンルースに差し掛かると逃げグループは崩壊。先頭はマルティネス、カペッキ、そしてフランスの若手ティボー・ピノ(フランス、フランセーズデジュー)の3名に絞られ、3分遅れのメイン集団ではカウンターアタックが掛かり続ける展開。レディオシャックがコントロールするメイン集団から、コンタドール似のナバーロが飛び出した。

勢い良くシャンルースを駆け上がったナバーロは、先頭グループとのタイム差3分を瞬く間に縮め、逃げるメンバー全員を抜き去って先頭に。頂上まで7kmを残して独走を開始したナバーロは、そのまま後続を1分引き離す快走でグルノーブルへの下りに突入した。

超級山岳シャンルースを独走で駆け上がるダニエル・ナバーロ(スペイン、アスタナ)超級山岳シャンルースを独走で駆け上がるダニエル・ナバーロ(スペイン、アスタナ) photo:Cor Vos超級山岳シャンルースで逃げグループから脱落するブラム・タンキンク(オランダ、ラボバンク)超級山岳シャンルースで逃げグループから脱落するブラム・タンキンク(オランダ、ラボバンク) photo:Cor Vos集団内で超級山岳シャンルースを上るアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)とヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、レディオシャック)集団内で超級山岳シャンルースを上るアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)とヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、レディオシャック) photo:Cor Vos


ナバーロを追ったのはカペッキとピノのコンビ。しかし下りコーナーを攻め続け、全力で踏み続けたナバーロとの1分差を詰めることが出来ない。最後までリードを守り抜いたナバーロが、グルノーブルのゴールに独走のまま飛び込んだ。

ホーナーにサポートされて超級山岳シャンルースを上るマイヨジョーヌのヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、レディオシャック)ホーナーにサポートされて超級山岳シャンルースを上るマイヨジョーヌのヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、レディオシャック) photo:Cor Vosナバーロは1983年生まれの26歳。2005年にリバティーセグロス(翌年アスタナにスポンサー変更)でプロデビューし、現在に至るまでアスタナ一辺倒。山岳を得意とするクライマーとして知られ、2007年のツール・ド・スイスで山岳賞2位。2008年はドイツ一周総合4位、ツアー・オブ・カリフォルニア総合5位、ブエルタ・ア・カタルーニャ総合5位。

昨年のジロ・デ・イタリアで総合30位。ブエルタ・ア・エスパーニャで総合13位という成績を残しているが、意外にもこれがプロ初勝利。長年アシスト人生を歩んで来たナバーロが初の栄冠を手にした。

独走のままガッツポーズでゴールに飛び込むダニエル・ナバーロ(スペイン、アスタナ)独走のままガッツポーズでゴールに飛び込むダニエル・ナバーロ(スペイン、アスタナ) photo:Cor Vos「ドーフィネでプロ初勝利を達成することが出来て本当に嬉しい。いつもアシストとして走っているけど、今日はアルベルト(コンタドール)が自分のために走ることを許してくれたんだ。一か八か飛び出して、この勝利を掴んだ。僕はダウンヒルが決して得意な選手ではないけど、何とか逃げ切ることが出来たよ」。

アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)やヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、レディオシャック)は山岳で動きを見せず、3分04秒遅れの集団でゴール。下り区間で飛び出したクリストフ・リブロン(フランス、アージェードゥーゼル)は集団を24秒引き離すことに成功し、総合11位から総合7位に浮上。リブロンのジャンプアップ以外、総合成績に変動は無い。

いよいよドーフィネは翌第6ステージでクライマックスを迎える!ツール・ド・フランス名物の超級山岳ラルプ・デュエズが登場するのだ。まずはラスト52km地点で超級山岳グランドン峠を越え、一旦下ってからラルプ・デュエズ登坂開始。平均勾配7.9%・登坂距離13.8kmの上りで総合争いが決着するのは間違いないだろう。

選手コメントはレース公式サイトより。


クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2010第5ステージ結果
1位 ダニエル・ナバーロ(スペイン、アスタナ)          3h26'16"
2位 エロス・カペッキ(イタリア、フットオン・セルヴェット)      +34"
3位 ティボー・ピノ(フランス、フランセーズデジュー)
4位 ディミトリ・シャンピオン(フランス、アージェードゥーゼル)   +1'39"
5位 エゴイ・マルティネス(スペイン、エウスカルテル)
6位 クリストフ・モロー(フランス、ケースデパーニュ)
7位 ビエル・カドリ(フランス、アージェードゥーゼル)        +2'40"
8位 ピエール・ロラン(フランス、Bboxブイグテレコム)
9位 ルイス・パサモンテス(スペイン、ケースデパーニュ)
10位 クリストフ・リブロン(フランス、アージェードゥーゼル)

個人総合成績
1位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、レディオシャック)   19h55'04"
2位 タジェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、チームHTC・コロンビア   +1'15"
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)          +1'41"
4位 デーヴィット・ミラー(イギリス、ガーミン・トランジションズ)  +1'56"
5位 ニコラ・ヴォゴンディ(フランス、Bboxブイグテレコム)      +2'43"
6位 デニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)            +2'55"
7位 クリストフ・リブロン(フランス、アージェードゥーゼル)     +3'05"
8位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)+3'06"
9位 クリスティアン・クネース(ドイツ、チームミルラム)       +3'10"
10位 レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)          +3'28"

ポイント賞
ジェレイント・トーマス(イギリス、チームスカイ)

山岳賞
エロス・カペッキ(イタリア、フットオン・セルヴェット)

チーム総合成績
アスタナ

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos