8月24日に開幕するブエルタ・ア・エスパーニャの総合リーダーに与えられるのが真っ赤なマイヨロホ(レッドジャージ)。ログリッチェやバルベルデ、ロペス、ウランら、10年目を迎えるマイヨロホ争いの注目選手を紹介します。


スペインの情熱を表す真っ赤なリーダージャージ

マイヨロホを着て最終ステージを走るサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)マイヨロホを着て最終ステージを走るサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) photo:Kei Tsuji
レッドジャージを意味するマイヨロホはブエルタ・ア・エスパーニャ最高の栄誉。長年にわたって金色のマイヨオロが採用されていたが、2010年にツール・ド・フランス主催者のASOがブエルタ主催者Unipublicに資本参入を開始したことを受け、黄色いマイヨジョーヌとの混同を避けるためにスペインのナショナルカラーである赤色に変更された。「ラ・ロハ」とも呼ばれるリーダージャージが採用されてから2019年で10年目を迎える。

ツールのマイヨジョーヌ、ジロのマリアローザにあたる個人総合成績のリーダージャージであり、毎日のステージ成績を積算し、その最も少ない選手が翌日のステージでマイヨロホを着る。つまり最終日を終えた時点でマイヨロホを着ている選手がブエルタ総合優勝の栄冠に輝く。2013年からジャージスポンサーを務めるのは売り上げ世界2位のスーパーマーケットチェーン「カルフール」。

ボーナスタイムは2019年も健在。ブエルタではチームTTと個人TTを除く各ステージの上位3名(1位10秒、2位6秒、3位4秒)と中間スプリントポイント上位3名(1位3秒、2位2秒、3位1秒)にボーナスタイムが与えられるため、山頂フィニッシュで活躍する選手が加速度的に総合リードを広げることになる。

暗闇に包まれたシベレス広場にマイヨロホが浮かび上がる暗闇に包まれたシベレス広場にマイヨロホが浮かび上がる photo:Kei Tsuji


前年度覇者不在の戦いはユンボ・ヴィズマvsモビスターに?

第74回大会に出場する176名のうち、総合優勝経験があるのは3名。2009年大会の覇者アレハンドロ・バルベルデ(スペイン)と2016年大会の覇者ナイロ・キンタナ(コロンビア)が揃うモビスターにとって、地元スペインのブエルタは決して落とすことのできないタイトルだ。バルベルデは出場戦手中最多となる12回目のブエルタ出場で、最多25回目のグランツール出場。最多ステージ13勝、ならびに最年長選手(39歳)でもある。

当初はジロ・デ・イタリア総合優勝者リチャル・カラパス(エクアドル)もモビスターのラインナップに加わっていたが、直前のクリテリウムレースでの落車負傷の影響で出場を見送っている。カラパスのいないモビスターは、ツールから連戦出場となる2人のベテランと、若手マルク・ソレル(スペイン)らにマイヨロホの望みを託す。

アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:CorVosナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) photo:Kei Tsuji

モビスターの前に立ちはだかるのがユンボ・ヴィズマ。ジロ・デ・イタリアを総合3位で終えたプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア)とツール・ド・フランス総合3位のステフェン・クライスヴァイク(オランダ)がエースを担う。

今シーズンの前半に3つのUCIワールドツアーレースで総合優勝しているログリッチェはブエルタ初出場。ここにジョージ・ベネット(ニュージーランド)やロベルト・ヘーシンク(オランダ)といったアシストが加わり、チーム力はナンバーワン。初日のチームタイムトライアルから早速リードを奪うと見られる。

プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ) photo:Kei Tsujiステフェン・クライスヴァイク(オランダ)ステフェン・クライスヴァイク(オランダ) photo:Makoto Ayano

2017年にステージ2勝を飾り、2018年に総合3位に入ったミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)は山岳ステージの比率が高いブエルタ向き。アスタナはツールを途中リタイアしたヤコブ・フルサング(デンマーク)やヨン・イサギレ(スペイン)らをアシストとして送り込む。ジロでは総合7位と振るわなかったが、ロペスは春先から2つのステージレースを制している。

キンタナやロペスの他にも注目のコロンビア人選手は多い。大会連覇がかかっているミッチェルトン・スコットを率いるのは2016年総合3位のエステバン・チャベス(コロンビア)。ウィルス性の疾患によって長期間低迷しながら、チャベスはジロでステージ優勝を飾って復調をアピールしている。

ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) photo:Kei Tsujiエステバン・チャベス(コロンビア、ミッチェルトン・スコット)エステバン・チャベス(コロンビア、ミッチェルトン・スコット) photo:LaPresse

他にもリゴベルト・ウラン(コロンビア)やダニエル・マルティネス(コロンビア)、そして新加入セルジオ・イギータ(コロンビア)を揃えるEFエデュケーションファーストも強力だ。ピンクアーガイルチームはコロンビア三人衆だけでなくヒュー・カーシー(イギリス)やティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ)というオールラウンダーたちもラインナップに加えている。

もう一人の総合優勝経験者ファビオ・アル(イタリア、UAEチームエミレーツ)はそろそろ復活に向けたブレイクスルーを起こしたいところ。ツールでは総合14位とまずまずの結果。グランツールに初出場するチームメイトの最年少選手タデイ・ポガチャル(スロベニア)の走りにも注目だ。

リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト)リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト) photo:Kei Tsujiファビオ・アル(イタリア、UAEチームエミレーツ)ファビオ・アル(イタリア、UAEチームエミレーツ) photo:Makoto Ayano

ツールを制したチームイネオスはタオ・ゲオゲガンハート(イギリス)とワウト・プールス(オランダ)のダブルエース体制。ジロを落車リタイアしたゲオゲガンハートと、ツールでアシストを務め上げたプールス。2016年総合7位のダビ・デラクルス(スペイン)もメンバー入りしている。

ボーラ・ハンスグローエは2015年総合3位のラファル・マイカ(ポーランド)や2016年総合9位のイタリア王者ダヴィデ・フォルモロ(イタリア)を軸に戦う。2017年総合4位のウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ)や、アドリアティカ・イオニカレースを制したマーク・パデュン(ウクライナ、バーレーン・メリダ)、ピエール・ラトゥール(フランス、アージェードゥーゼール)、ルイス・メインチェス(南アフリカ、ディメンションデータ)らも総合上位に絡んでくるだろう。

タオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チームイネオス)タオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チームイネオス) photo:Kei Tsujiダヴィデ・フォルモロ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)とラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)とラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos

ブエルタ歴代総合優勝者
2018年 サイモン・イェーツ(イギリス)
2017年 クリストファー・フルーム(イギリス)
2016年 ナイロ・キンタナ(コロンビア)
2015年 ファビオ・アル(イタリア)
2014年 アルベルト・コンタドール(スペイン)
2013年 クリストファー・ホーナー(アメリカ)
2012年 アルベルト・コンタドール(スペイン)
2011年 クリストファー・フルーム(イギリス)
2010年 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア)
2009年 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン)
2008年 アルベルト・コンタドール(スペイン)
2007年 デニス・メンショフ(ロシア)
2006年 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン)
2005年 デニス・メンショフ(ロシア)
2004年 ロベルト・エラス(スペイン)
2003年 ロベルト・エラス(スペイン)
2002年 アイトール・ゴンザレス(スペイン)
2001年 アンヘル・カセロ(スペイン)
2000年 ロベルト・エラス(スペイン)
1999年 ヤン・ウルリッヒ(ドイツ)
1998年 アブラハム・オラーノ(スペイン)
1997年 アレックス・ツェーレ(スイス)
1996年 アレックス・ツェーレ(スイス)
1995年 ローラン・ジャラベール(フランス)
1994年 トニー・ロミンゲル(スイス)
1993年 トニー・ロミンゲル(スイス)
1992年 トニー・ロミンゲル(スイス)
1991年 メルチョル・マウリ(スペイン)
1990年 マルコ・ジョヴァネッティ(イタリア)

text:Kei Tsuji

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