短距離個人TTが含まれた5日間のベルギーツアーで、イェンス・クールレール(ベルギー、ベルギーナショナルチーム)が逆転総合優勝。毎日総合首位が入れ替わる接戦を制した。



5日間で争われたバロワーズ・ベルギーツアー(UCI2.HC)は、100年以上前の1908年に初回大会を迎えた格式高いステージレース。世界大戦などの影響で幾度か中止に追い込まれるも、今年で87回目。毎年総合優勝を目指してベルギーチームが激しくしのぎを削る大会だ。

第1ステージ 大落車が発生したスプリントでブライアン・コカール(フランス、ディレクトエネルジー)が勝利第1ステージ 大落車が発生したスプリントでブライアン・コカール(フランス、ディレクトエネルジー)が勝利 photo:www.sport.be第1ステージ コースを塞いだ落車。ジルベールらも被害に遭う第1ステージ コースを塞いだ落車。ジルベールらも被害に遭う photo:www.sport.be


ジロ・デ・イタリア最終週と会期を重ねたものの、クイックステップフロアーズやロット・ソウダルなど5つのUCIワールドチームが参加した他、チームが出場しなかったイェンス・クールレール(普段はオリカ・スコット)やオリヴァー・ナーセン(普段はAG2Rラモンディアール)などはベルギーナショナルチームとして、ベルギーを代表するプロコンチネンタル/コンチネンタルチーム、そしてトレック・セガフレードからは別府史之が、NIPPOヴィーニファンティーニからは内間康平と小林海という日本人選手3名が顔を揃えた。

オランダとの国境沿いに走り、海岸線に面したクノック=ヘイストに至る第1ステージは集団スプリントに持ち込まれ、イェンス・デブシェール(ベルギー、ロット・ソウダル)を下したブライアン・コカール(フランス、ディレクトエネルジー)が勝利する。

第2ステージ フィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)を下したマテュー・ファンデルポール(オランダ、ベオバンク・コレンドン)第2ステージ フィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)を下したマテュー・ファンデルポール(オランダ、ベオバンク・コレンドン) photo:www.sport.be
第2ステージ 石畳の急坂をこなすラース・ファンデルハール(オランダ、テレネット・フィデア)第2ステージ 石畳の急坂をこなすラース・ファンデルハール(オランダ、テレネット・フィデア) photo:www.sport.be第2ステージ フィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)が総合首位に浮上第2ステージ フィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)が総合首位に浮上 photo:www.sport.be

続く第2ステージでは、途中から逃げた14名がゴールまで到達。ディレクトエネルジーが牽引するメイン集団の追撃は届かず、最後はベルギー王者フィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)とシクロクロスの新旧世界王者、マテュー・ファンデルポール(オランダ、ベオバンク・コレンドン)とワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴェランダスヴィレムス・クレラン)による三つ巴スプリントでファンデルポールが大金星の勝利を掴み取る。コカールが遅れたため、総合首位はジルベールの手に渡った。

13.4kmという短距離の個人TTで争われた第3ステージでは、「ケンメルベルグで遅れた昨日とは違って物凄く好調だった」と言うマティアス・ブランドル(オーストリア、トレック・セガフレード)がTT世界王者のトニ・マルティン(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)を14秒も引き離す快勝。しかしブランドルは前日にタイムロスを被っていたことが響いて総合3位ジャンプアップに留まり、ステージ3位に入ったファンアールトがリーダージャージに袖を通した。

第3ステージ ステージ優勝を挙げたマティアス・ブランドル(オーストリア、トレック・セガフレード)第3ステージ ステージ優勝を挙げたマティアス・ブランドル(オーストリア、トレック・セガフレード) photo:www.sport.be第3ステージ 14秒差のステージ3位に食い込んだワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴェランダスヴィレムス・クレラン)第3ステージ 14秒差のステージ3位に食い込んだワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴェランダスヴィレムス・クレラン) photo:www.sport.be

第3ステージ リーダージャージに袖を通したワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴェランダスヴィレムス・クレラン)第3ステージ リーダージャージに袖を通したワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴェランダスヴィレムス・クレラン) photo:www.sport.be
総合優勝を狙ったファンアールトだったが、コル・ドゥ・マキサール(長さ2.5km・平均勾配5%)やコート・ド・ラ・ロッシュ・オ・フォーコン(長さ1.5km・平均勾配9.3%)などリエージュ〜バストーニュ〜リエージュと類似するコース設定となった第4ステージのアタック合戦の末に脱落。最終的にルーベン・ゲレイロ(ポルトガル、トレック・セガフレード)とマウリス・ラメルティンク(オランダ、カチューシャ・アルペシン)の2人逃げがフィニッシュに辿り着き、先行態勢から仕掛けたラメルティンクが勝利を飾る。

総合は先頭2人まで5秒届かずゴールした21歳のネオプロ、レミ・カヴァニャ(フランス、クイックステップフロアーズ)に移ったものの、この時点でカヴァニャのリードは総合2位イェンス・クールレール(ベルギー、ベルギーナショナルチーム)に対して1秒、3位マルティンに対して5秒と僅差であり、ボーナスタイムを獲得できる翌日の中間スプリント争いが熾烈を極めた。

第4ステージ コート・ド・ラ・ロッシュ・オ・フォーコンで仕掛けるフィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)第4ステージ コート・ド・ラ・ロッシュ・オ・フォーコンで仕掛けるフィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ) photo:www.sport.be第4ステージ ルーベン・ゲレイロ(ポルトガル、トレック・セガフレード)を下したマウリス・ラメルティンク(オランダ、カチューシャ・アルペシン)第4ステージ ルーベン・ゲレイロ(ポルトガル、トレック・セガフレード)を下したマウリス・ラメルティンク(オランダ、カチューシャ・アルペシン) photo:www.sport.be

第4ステージ 5秒差のステージ4位に入ったレミ・カヴァニャ(フランス、クイックステップフロアーズ)が総合首位に第4ステージ 5秒差のステージ4位に入ったレミ・カヴァニャ(フランス、クイックステップフロアーズ)が総合首位に photo:www.sport.be
明けた最終日、クールレールの逆転総合優勝を狙うベルギーナショナルチームが徹底的に逃げを潰し、カヴァニャのリードを守りたいクイックステップフロアーズは幾度もボーナスタイムを潰すべく逃げを打つ。しかしシーソーゲームはベルギーナショナルチームに軍配し、狙い通りクールレールが先頭通過して総合を逆転。続く第2中間スプリントではジルベールが先頭通過したものの、2番手通過したクールレールがリードを6秒にまで広げる結果となり、この時点でスプリント力で部の悪いカヴァニャの総合優勝は潰えてしまった。

しかしゴールスプリントに向かう渦中、ラインがふらついたクールレールは他選手と接触して単独落車を喫してしまう。ただし残り3km以内のアクシデントだったことでスプリントを制したイェンス・デブシェール(ベルギー、ロット・ソウダル)と同タイムフィニッシュ扱いとなり、6秒差の逆転総合優勝が確定した。

第5ステージ 徹底的に逃げを潰し集団コントロールを行うベルギーナショナルチーム第5ステージ 徹底的に逃げを潰し集団コントロールを行うベルギーナショナルチーム photo:www.sport.be第5ステージ 接戦スプリントはイェンス・デブシェール(ベルギー、ロット・ソウダル)に軍配第5ステージ 接戦スプリントはイェンス・デブシェール(ベルギー、ロット・ソウダル)に軍配 photo:www.sport.be

第5ステージ 終盤にクラッシュしながらも復帰したイェンス・クールレール(ベルギー、ベルギーナショナルチーム)がガッツポーズでフィニッシュ第5ステージ 終盤にクラッシュしながらも復帰したイェンス・クールレール(ベルギー、ベルギーナショナルチーム)がガッツポーズでフィニッシュ photo:www.sport.be第5ステージ スタッフを総合優勝を喜ぶイェンス・クールレール(ベルギー、ベルギーナショナルチーム)第5ステージ スタッフを総合優勝を喜ぶイェンス・クールレール(ベルギー、ベルギーナショナルチーム) photo:www.sport.be

バロワーズ・ベルギーツアー総合表彰台バロワーズ・ベルギーツアー総合表彰台 photo:www.sport.be
いわば即席混成チームの結束と協力を得て第87代王者に輝いたクールレールは「普段様々なチームに所属している選手たちで構成されたチームだったものの、最終日には上手く連携を取れていたので勝利できた。母国のナショナルジャージを着て母国レースで勝てるなんて、すごく特別な気分だ」とコメントする。

また、アシストとして力を尽くした別府史之(トレック・セガフレード)は総合71位で完走。「この5日間はしっかりチームの仕事とコンディションを整える走りが出来たので良かった」と自身のTwitterにコメントしており、小林(総合91位)も「最初の3日間はリズムを掴めず苦しんだが、最終的には前回のダンケルクより遥かに余裕を持って走り切れた。決して自分に向いたレースでは無いが、楽しく走り切れた」とポジティブな感触を得た様子。別府の次戦はクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ(UCIワールドツアー)だ。



バロワーズ・ベルギーツアー2017結果
第1ステージ 5月24日 ロヒリスティ〜クノック=ヘイスト(178km)

1位 ブライアン・コカール(フランス、ディレクトエネルジー)       4h08’58”
2位 イェンス・デブシェール(ベルギー、ロット・ソウダル)
3位 ダニエル・マクレー(イギリス、フォルトゥネオ・ヴィタルコンセプト)
4位 トム・ヴァンアスブロック(ベルギー、ベルギーナショナルチーム)
5位 ロイ・ヤン(ベルギー、WBヴェランクラシック・アクア・プロジェクト)

第2ステージ 5月25日 クノック=ヘイスト〜モールスレーデ(199km) 
1位 マテュー・ファンデルポール(オランダ、ベオバンク・コレンドン)   4h43’12”
2位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)
3位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴェランダスヴィレムス・クレラン)
4位 オリヴァー・ナーセン(ベルギー、ベルギーナショナルチーム)
5位 オリヴィエ・パルディーニ(ベルギー、WBヴェランクラシック・アクア・プロジェクト)

第3ステージ 5月26日 ベーフェレン〜ベーフェレン(13.4km、個人TT)
1位 マティアス・ブランドル(オーストリア、トレック・セガフレード)   15’40”
2位 トニ・マルティン(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)         +14”
3位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴェランダスヴィレムス・クレラン)
4位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、ディレクトエネルジー)
5位 レミ・カヴァニャ(フランス、クイックステップフロアーズ)       +21”

第4ステージ 5月27日 アンス〜アンス(167.8km)
1位 マウリス・ラメルティンク(オランダ、カチューシャ・アルペシン)  4h09’50”
2位 ルーベン・ゲレイロ(ポルトガル、トレック・セガフレード)  
3位 イェンス・クールレール(ベルギー、ベルギーナショナルチーム)     +05”
4位 レミ・カヴァニャ(フランス、クイックステップフロアーズ)
5位 ヤン・バークランツ(ベルギー、ベルギーナショナルチーム)       +31”

第5ステージ 5月28日 ティーネン〜トンヘレン(169.6km)
1位 イェンス・デブシェール(ベルギー、ロット・ソウダル)        3h41’25”
2位 コエン・ヴェルメルトフォールト(オランダ、ルームポット・ネデランセロテリ)
3位 ボーイ・ファンポッペル(オランダ、トレック・セガフレード)
4位 バティスト・プランカールト(ベルギー、カチューシャ・アルペシン)
5位 ケニー・デハース(ベルギー、ワンティ・グループグベルト)

個人総合成績
1位 イェンス・クールレール(ベルギー、ベルギーナショナルチーム)   16h59’42”
2位 レミ・カヴァニャ(フランス、クイックステップフロアーズ)        +06”
3位 トニ・マルティン(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)          +11”
4位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)     +12”
5位 ジュリアン・ヴェルモート(ベルギー、クイックステップフロアーズ)    +38”

text:So.Isobe
photo:www.sport.be