2月23日から26日までの4日間、中東のUAE(アラブ首長国連邦)を舞台にアブダビツアー(UCIワールドツアー)が開催される。ニーバリやコンタドール、キンタナといったグランツールレーサーに加え、キッテルやカヴェンディッシュ、グライペルら豪華なラインナップが揃う中東最終戦の見どころをチェックしておこう。



プロトンが砂漠の丘を越えていくプロトンが砂漠の丘を越えていく photo:Tim de Waele


UCIワールドツアーに昇格した2月の中東最終戦

アブダビツアー2017コース全体図アブダビツアー2017コース全体図 image:RCSsportツール・ド・フランス主催者ASOが手がけるツアー・オブ・カタールとツアー・オブ・オマーンに続き、ジロ・デ・イタリアの主催者RCSスポルトがUAEの最大都市ドバイを舞台にドバイツアーを初開催したのが2014年のこと。中東第3のステージレースとしての成功を受け、RCSスポルトと地元アブダビのスポーツカウンシルが手を組み、UAEの首都アブダビを舞台にアブダビツアーが2015年10月に初開催された。

アブダビツアー2017第3ステージアブダビツアー2017第3ステージ image:RCSsport2015年の第1回大会はUCIカテゴリー1で、2016年の第2回大会はカテゴリーHC(超級)に昇格。そして、開催時期を他の中東2レースと同じ2月に移した2017年の第3回大会はUCIワールドツアー入りを果たした。ツアー・オブ・カタールがキャンセルされたことでこのアブダビツアーが中東で唯一のUCIワールドツアーレースとなった。

ジュベルハフィートを登るメイン集団ジュベルハフィートを登るメイン集団 photo:Tim de Waele総合争いを決定付けるのは今大会唯一の山岳ステージである第3ステージ。起伏の少ない半島の真ん中にある岩山ジュベルハフィートを駆け上がる。標高1,025mの頂上に続く全長10.8kmの登りの平均勾配は7%。前半にかけて8%の勾配は続き、残り3km地点で11%の急勾配区間を抜けてからは平坦基調となる。平坦ステージで風による集団分裂が発生しない限り、この第3ステージでついたタイム差がそのまま総合成績となる。

ほぼ真っ平らでコーナーも少ない砂漠の一本道を走る第1ステージとアブダビの街をぐるっと一周する第2ステージ、そして2009年からF1アブダビグランプリの舞台になっているヤスマリーナサーキットを周回(5.5kmを26周)する第4ステージはスプリンターたちのためのものだ。

出場するのはキャノンデール・ドラパックとエフデジを除く16のUCIワールドチームにワイルドカード枠のUCIプロコンチネンタル4チームを加えた合計20チーム。バルディアーニCSF、ガスプロム・ルスヴェロ、NIPPOヴィーニファンティーニ、ノボノルディスクがワイルドカードを得ている。

設定された特別賞ジャージは4つ。赤い総合リーダージャージ、緑のポイント賞ジャージ、白いヤングライダー賞ジャージ、黒い中間スプリント賞ジャージを懸けて22チーム・各チーム8名ずつの合計176名が戦う。

選手や大会関係者は毎日宿泊地を変えることなく、ヤスマリーナサーキット(第4ステージ会場)の真上にある5つ星ホテル「ヤス・ヴァイスロイ・アブダビ」に宿泊。そこからスタートとフィニッシュに移動する方式をとっている。



アブダビツアー2017ステージリスト
2月23日(木)第1ステージ マディーナット・ゼイド〜ママディーナット・ゼイド 189km
2月24日(金)第2ステージ アブダビ〜アブダビ 153km
2月25日(土)第3ステージ アルアイン〜ジャベルハフィート 186km(山頂フィニッシュ)
2月26日(日)第4ステージ ヤスマリーナサーキット〜ヤスマリーナサーキット 143km

シェイク・ザイード・グランド・モスクなど、アブダビの観光名所をめぐるシェイク・ザイード・グランド・モスクなど、アブダビの観光名所をめぐる photo:Bettiniヤス・マリーナ・サーキットで開催されるアブダビツアー最終ステージヤス・マリーナ・サーキットで開催されるアブダビツアー最終ステージ photo:www.abudhabitour.com




グランツール並みかそれ以上の豪華ラインナップがアブダビに集結

ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) photo:CorVos同時期にベルギーではクラシックシーズンが始まり、マレーシアではツール・ド・ランカウイが開催されるが、そんな中でもこのアブダビツアーには豪華な選手たちが集結した。クラシックに出場せず、ハイシーズンに向けて乗り込みを続けるオールラウンダーやスプリンターたちが一堂に会している。

ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) photo:CorVos短い4日間のステージレースで、しかも山岳ステージが1つしかないことを考えるとこの上ないほど豪華なラインナップ。その豪華さはグランツールを凌ぐといっても過言ではない。「出場していないのはフルームとサガンだけじゃないかと思うほどビッグネームが多くて、開幕前の有力選手記者会見の選手選定が本当に難しい」とレースの広報担当が嘆くほどだ。

アルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)アルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード) photo:www.vueltaandalucia.es中東バーレーンチームのエースとして総合優勝の最有力候補に挙げられるのはヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)だ。ニーバリは2016年に総合優勝を飾っているツアー・オブ・オマーンをパスし、このアブダビツアーに懸けている。

マルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ)マルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ) photo:Kei Tsuji/TDWsportジロ・デ・イタリアでニーバリの最大のライバルになると目されるナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)は2月上旬のボルタ・ア・バレンシアナで総合優勝を飾っており、シーズン序盤から調子の良さを見せている。キンタナはジロとツール・ド・フランスの同年制覇が今シーズンの目標だ。

マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ) photo:www.abudhabitour.comディフェンディングチャンピオンのタネル・カンゲルト(エストニア、アスタナ)は、直前のツアー・オブ・オマーンを総合3位で終えたファビオ・アル(イタリア)のサポートに回ることになるだろう。移籍したニーバリとアルがこのアブダビツアーで初めてライバルとして顔を合わす。

カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット) photo:Kei Tsujiブエルタ・ア・アンダルシアを総合2位で終えたばかりのアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)はレース距離を伸ばすために急遽アブダビツアーに出場を決めた。移籍後初めて共同リーダーのバウク・モレマ(オランダ)とタッグを組む。

別府史之(トレック・セガフレード)別府史之(トレック・セガフレード) photo:TDWsport / KTチーム存続の救世主でもあるアブダビでのレースだけに、下手なレースが許されないのがUAEアブダビだ。ツアー・オブ・オマーン総合2位のルイ・コスタ(ポルトガル)を中心に、ルイス・マインティーズ(南アフリカ)やディエゴ・ウリッシ(イタリア)といったまさに一軍を揃えている。もちろん平坦ステージでもアンドレア・グアルディーニ(イタリア)とベン・スウィフト(イギリス)が優勝を狙いに行く。

ステフェン・クライスヴァイク(オランダ)とロベルト・ヘーシンク(オランダ)という二強を揃えるロットNLユンボや、ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ)とニコラス・ロッシュ(アイルランド)を揃えるBMCレーシングなど、どのチームも強力なメンバーをアブダビに送り込んでいる。

結果には結びつかなかったもののオマーンで積極的な動きを見せたロメン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)や、オマーンでヤングライダー賞を獲得したメルハウィ・クドゥス(エリトリア、ディメンションデータ)、ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)、ロマン・クロイツィゲル(チェコ、オリカ・スコット)、トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)、イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)ら、名前を挙げるとキリがないほどのラインナップだ。

平坦ステージで主役を担うと見られているのが、ドバイツアーで圧巻のステージ3勝&総合優勝を飾ったマルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ)。しかしドバイツアーと比べるとリードアウト要員は少なく、ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア)を中心にした総合系選手の比率が高い。

2016年大会でステージ2勝を飾ったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)や、2015年大会ステージ2勝のエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)、そしてアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)らがキッテルに挑む。

若手スプリンターとしては22歳のカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)や、23歳のニッコーロ・ボニファツィオ(イタリア、バーレーン・メリダ)、23歳のリック・ツァベル(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)らが有力。特にサントス・ツアー・ダウンアンダーで無敵を誇った小柄なユアンのスピードがトップスプリンター相手にどこまで通用するのか注目だ。

また、トレック・セガフレードからは別府史之、NIPPOヴィーニファンティーニから小石祐馬と窪木一茂が出場。別府はコンタドールとモレマを平坦ステージでプロテクトする重要な役目を担う。小石と窪木は平坦ステージではエドゥアルド・グロス(ルーマニア)を、山岳ステージではジュリアン・アレドンド(コロンビア)をアシストする。もちろんチャンスがあれば逃げにも期待したいところだ。

text:Kei Tsuji in Abu Dhabi, UAE