リーダージャージを着るマルセル・キッテルが顔から流血するというショッキングな映像が流れたこの日、同じドイツ出身のジョン・デゲンコルブがスプリント勝利。強風で集団が分断するタフレースの最後に、デゲンコルブが移籍後初勝利を飾りました。



ドバイのブルジュハリファを眺めるドバイのブルジュハリファを眺める photo:Kei Tsuji/TDWsport


平坦コースを逃げるマーク・クリスティアン(イギリス、アクアブルースポーツ)ら平坦コースを逃げるマーク・クリスティアン(イギリス、アクアブルースポーツ)ら photo:Kei Tsuji/TDWsport5日間の日程で開催されているドバイツアーも3日目。この日もレースの主役はスプリンターたち。ドバイからアラビア半島を横断し、同半島東岸のアルアカーにフィニッシュする大会最長200kmコースは真っ平らだ。

チームジャージにマッチしたリーダージャージを着るマルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ)チームジャージにマッチしたリーダージャージを着るマルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ) photo:Kei Tsuji/TDWsportドバイの街並みを背に集団から抜け出したのはマーク・クリスティアン(イギリス、アクアブルースポーツ)、ルカ・ピベルニク(スロベニア、バーレーン・メリダ)、アレックス・ドーセット(イギリス、モビスター)、ロイック・ヴリーヘン(ベルギー、BMCレーシング)という足の揃った4名。

集団内でにこやかに走る別府史之(トレック・セガフレード)ら集団内でにこやかに走る別府史之(トレック・セガフレード)ら photo:Kei Tsuji/TDWsportメイン集団が逃げをゆったりと追いかけ、6分まで広がったタイム差をじっくり縮める平穏な1日になると思われたが、砂漠を吹き抜ける横風区間が登場すると様相はガラリと変わる。ビッグチームのペースアップによって集団は縦に伸び、やがて5〜6つのエシュロンに分断された。

砂が真横に吹き抜ける砂嵐の中を走る砂が真横に吹き抜ける砂嵐の中を走る photo:Kei Tsuji/TDWsport砂が真横に吹き飛ぶ砂嵐の中、リーダージャージを着るキッテルが先頭集団に乗り遅れるシーンも見られたが、風向きが変わったところで後続エシュロンが追いついて集団は一つに。集団内に平和が戻ったものの、キッテルのこめかみには血が流れていた。

横風区間で集団が割れ、エシュロンが形成される横風区間で集団が割れ、エシュロンが形成される photo:Kei Tsuji/TDWsportキッテルは横風走行時のポジション争いの最中にアンドリー・グリブコ(ウクライナ、アスタナ)に殴られたとコミッセールに主張。キッテルは「ポジションを争っている際に身体が接触するのはよくあること。グリブコと彼の若いチームメイトの間に入った際、彼は気に入らなかったようでパンチを繰り出してきた。感情が高ぶっている状況だったとは言え、拳を上げるのは許されない」と説明している。

ヤンセファンレンズバーグを抜いて先頭に立つジョン・デゲンコルブ(ドイツ、トレック・セガフレード)ヤンセファンレンズバーグを抜いて先頭に立つジョン・デゲンコルブ(ドイツ、トレック・セガフレード) photo:Kei Tsuji/TDWsport対してグリブコは「自分のポジションを奪おうと彼は何度も何度も押してきた。手で押し返す以外に方法がなかったんだ。スプリント中なら理解できるけどレース中盤にやるべきことじゃない」とのコメントを残している。レース後、コミッセールはグリブコに失格処分を与えることを決定。アスタナは公式にキッテルとクイックステップフロアーズに謝罪するとともに、スポーツ倫理を乱したグリブコにさらなる処分を与える予定だ。

集団ペースアップによって縮まっていたタイム差はレース中盤に5分台まで回復したが、スプリンターチームの追撃によって残り20km地点で1分を割り込む。隊列を組むスプリンターチームによって逃げは残り3kmで吸収された。

この日もクイックステップフロアーズが主導権を握り、ディメンションデータとともに先頭を陣取って残り1km。しかし肝心のキッテルはサバティーニやトレンティンとの連携ミスにより埋もれてしまう。最終ストレートでロットNLユンボトレインの後ろから加速したディメンションデータジャージは、カヴェンディッシュではなくレイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ)だった。

ヤンセファンレンズバーグは別ラインから加速したダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、モビスター)やエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)を寄せ付けなかったものの、スリップストリームからタイミングよく抜け出したデゲンコルブに並ばれ、追い抜かれる。デゲンコルブが先頭でフィニッシュラインを切った。

「全力で働いてくれたチームメイトたちに勝利で報いることができてよかった。これはチーム全体の勝利だ」と、移籍後初勝利を飾ったデゲンコルブは語る。「残り2kmの時点で後方に埋もれていたけど、タイミングよく前に上がることができた。最後はキール・レイネンに引き上げられてスプリント。ただただパーフェクトだった」。

ボーナスタイム10秒を獲得したデゲンコルブが総合3位に浮上。キッテルが総合2位ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)に対して8秒リードで総合首位をキープしている。翌日は最大勾配17%の山頂フィニッシュ「ハッタ・ダム」が設定された大会最難関ステージ。2015年の「ハッタ・ダム」でステージ優勝を飾っているデゲンコルブは総合逆転を狙う。



今シーズン初勝利を飾ったジョン・デゲンコルブ(ドイツ、トレック・セガフレード)今シーズン初勝利を飾ったジョン・デゲンコルブ(ドイツ、トレック・セガフレード) photo:Kei Tsuji/TDWsport



ドバイツアー2017第3ステージ結果
1位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、トレック・セガフレード)      4h03’08”
2位 レイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、ディメンションデータ)
3位 ソニー・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・メリダ)
4位 フアンホセ・ロバト(スペイン、ロットNLユンボ)
5位 リカルド・ミナーリ(イタリア、アスタナ)
6位 ジャンピエール・ドリュケール(ルクセンブルク、BMCレーシング)
7位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)
8位 ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)
9位 アダム・ブライス(イギリス、アクアブルースポーツ)
10位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、モビスター)

個人総合成績
1位 マルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ)    12h34’54”
2位 ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)      +08”
3位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、トレック・セガフレード)       +10”
4位 ニコラ・ボエム(イタリア、バルディアーニCSF)           +13”
5位 ジャンピエール・ドリュケール(ルクセンブルク、BMCレーシング)   +14”
6位 レイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、ディメンションデータ)
7位 アレックス・ドーセット(イギリス、モビスター)
8位 トーマス・スチュアート(イギリス、ワンプロサイクリング)
9位 ヤコブ・マレツコ(イタリア、ウィリエールトリエスティーナ)     +16”
10位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)

ポイント賞
1位 マルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ)     50pts
2位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、トレック・セガフレード)      41pts
3位 ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)     35pts

ヤングライダー賞
1位 ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)    12h35’02”
2位 ヤコブ・マレツコ(イタリア、ウィリエールトリエスティーナ)     +08”
3位 ロイック・ヴリーヘン(ベルギー、BMCレーシング)

中間スプリント賞
1位 ニコラ・ボエム(イタリア、バルディアーニCSF)          12pts
2位 ジャンピエール・ドリュケール(ルクセンブルク、BMCレーシング)  10pts
3位 アレックス・ドーセット(イギリス、モビスター)          10pts

チーム総合成績
1位 UAEアブダビ                           37h45’42”
2位 モビスター
3位 BMCレーシング

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele

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