中国で行われたUCI管轄のシクロクロスレース「千森杯」。その第2戦のレポートを紹介する。強豪に割って入った前田公平が6位を獲得し、女子では武田和佳が2戦連続となるシングルリザルトを確保した。



豊台で開催された千森杯の2戦目豊台で開催された千森杯の2戦目 photo:Masakazu.Abe
千森杯の2戦目は北京の中心部から西へ30kmほどにある豊台(Fengtai)。全チームとスタッフ移動用にオーガナイザーはバス3台に加え、機材運搬用の2トントラックを用意したが、日本チームの機材だけで荷台は満杯に…。

豊台のホテルは5つ星で新しく綺麗だ。ビールの自販機もラウンジもある、スタッフもウェイトレス含め英語がわかる人が多い。幕張メッセのようなエキスポ会場が隣接し、それ用の宿泊施設として設定されているので海外の顧客対応を前提になっているようだった。

ちなみに第1戦で松本駿(SCOTT)のDi2コンポーネントが不調になったのだが、スペアのジャンクションケーブルが無く、菅田、諏訪両監督が地下鉄で北京市内まで買いに行くことに。電話では上海の卸元含め正確な在庫、流動状況の把握や型番、部品名での在庫検索ができず、数軒廻って無事発掘できたという。

小坂正則(スワコレーシング)、武田和佳(Liv)両選手たちとローカルな街並み探検小坂正則(スワコレーシング)、武田和佳(Liv)両選手たちとローカルな街並み探検 photo:Masakazu.Abeクルミの産直販売。生で食べたがクリーミーで美味しかった。値段は5個2元クルミの産直販売。生で食べたがクリーミーで美味しかった。値段は5個2元 photo:Masakazu.Abe

賑やかなおばちゃんと総菜屋賑やかなおばちゃんと総菜屋 photo:Masakazu.Abe露天の蒸し饅頭を買う池本メカ露天の蒸し饅頭を買う池本メカ photo:Masakazu.Abe


木曜の試走が終わって会場からホテルに戻るシャトルバスから見た旧道沿いの辛庄村がちょうど夕市の時間だったのか、荷車や台に色々な野菜や鶏、雑貨が溢れ、いかにもアジアの豊かな原風景らしく惹かれたので翌日の午前中には有志で探検隊を編成して出かけてみた。その時間にはあまり市は立っていなくて寂しかったが、それでも色々な蒸し万頭や湯(スープ)を売る店や、青果や雑貨を売る市も少し出ていて手振り身振りで交流しながら楽しく過ごした。他のメンバーは北京市内観光に行ったり、イタリアの選手は北京動物園にパンダを観に行ったり、主催者が用意したエキスポ見学など北京観光を楽しんだようだ。

女子エリート:武田和佳が2戦連続のシングルフィニッシュ

さて、千森杯で初めてのレース会場はホテルから8kmほど西の「北宮森林公園」内の平地と周囲の山林を使った1周2.5km。第1戦とは性格の異なるコーナーが多く、コース中には2つのフライオーバーも。木、金と試走した日本選手達の感触はクイックなターンの連続する平地の処理とリズムの維持や、スリッピーな山林のグラベル路面、また路面の変わり目や段差による挙動変化が
注意点のようだった。そして高原の延慶と違い、30℃を超える高い気温とさらなる乾燥も待ち受けていた。

集中した表情でスタートを待つ武田和佳(Liv) 集中した表情でスタートを待つ武田和佳(Liv)  photo:Masakazu.Abe
海外勢にコースの印象について聞くと、第1戦で3位になったビアンカ・ヴァンデンホック尋は「割と得意なコースだと思う」と言い、第1戦優勝のベルギー男子ロブ・ペータースは「丘部分はトリッキーで面白いテクニカルなコース。だが平地部はとても退屈だね」と言っていた。若手のオーストラリア選手達は「母国と環境が似ているのでこのコースが好き」と言っていた。

そしてレース当日も良く晴れ アマチュアレースも終わり昼過ぎには気温も上がって行く。手元で測ると34℃。第2戦のスタートグリッドについては第1戦のポイント反映はせずに第1戦と同じスタート順で、従って女子の武田和佳(Liv)と男子の小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)は1列目スタートだ。

2Wayのフライオーバー。安田朋子(SNEL CYCLOCROSS TEAM)の姿も2Wayのフライオーバー。安田朋子(SNEL CYCLOCROSS TEAM)の姿も photo:Masakazu.Abe序盤からレースを掌握したセイリン・アルヴァラード(オランダ、クレルオブマート・ノードラッグス)序盤からレースを掌握したセイリン・アルヴァラード(オランダ、クレルオブマート・ノードラッグス) photo:Masakazu.Abe

第1戦で優勝したエミリー・カチョレック(アメリカ、スクイッド・バイクス)は追い上げ届かず2位に第1戦で優勝したエミリー・カチョレック(アメリカ、スクイッド・バイクス)は追い上げ届かず2位に photo:Masakazu.Abe20位で賞金を獲得した須藤むつみ(Ready Go JAPAN)20位で賞金を獲得した須藤むつみ(Ready Go JAPAN) photo:Masakazu.Abe


女子エリートはスタートから第1戦で2位に甘んじたオランダのセイリン・アルヴァラードが一気に先頭に立ち、ペースを緩めずに後続を引き離しに掛かる。2位争いは序盤、前戦3位のオランダのレベッカ・ヴァンデンホックとオーストラリアのナオミ・ウィリアムズの間で行なれたが、中盤に前戦で優勝したエミリー・カチョレック(アメリカ)が抜き、先頭の追撃に入った。アルヴァラードには18秒届かず、2位でフィニッシュ。3位にはヴァンデンホックが入った。

武田は10位前後から7位まで順位を上げたが、終盤にペースダウン。しかしオランダ選手のペースメイクも手伝って8位のままフィニッシュに到達し、2戦連続のシングルリザルトを獲得。須藤むつみ(Ready Go JAPAN)は20位フィニッシュし、15位までに用意されたUCIポイントには届かなかったものの、しっかりと賞金を獲得。安田朋子(SNEL CYCLOCROSS TEAM)は24位だった。

男子エリート:スイスのウィルダバーが優勝、前田公平が強豪を抑えて6位獲得

2度のパンクに見舞われてしまった小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)は14位に2度のパンクに見舞われてしまった小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)は14位に photo:Masakazu.Abe6位を気を吐いた前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム)6位を気を吐いた前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム) photo:Masakazu.Abe3位パックを作るクレラン・ファストフードサービス勢3位パックを作るクレラン・ファストフードサービス勢 photo:Masakazu.Abe高校生の織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)は26位に高校生の織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)は26位に photo:Masakazu.Abe64名がエントリーした男子エリートでは、第1戦3位のクリス・ジョンジワード(オーストラリア、Jブラッド・アドヴェンチャー)や2連勝を狙うロブ・ピータース(ベルギー、クレラン・ファストフードサービス)、スイスのマルセル・ウィルダバー(スコット・オドロ)が横一線で飛び出していく。

調子が悪そうなピータースに変わってイェンス・アダムス(ベルギー、クレラン・ファストフードサービス)が上位に上がり、勝負の行方はジョンジワードとウィルダバーに委ねられ、最後はウィルダバーが勝利。MTB・クロスカントリーの世界王者であり、リオの金メダリストのニノ・シューター(スイス)のチームメイトであるウィルダバーは、スイスのクロスカントリーエリミネーターのナショナルチャンプ。MTB選手向きと言われていたこのコースで結果を出してみせた。

日本勢では小坂光が好位置からレースを進めたが2度のパンクでポジションを落とし、代わって前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム)が終盤に掛けてポジションを上げ、強豪を抑えて6位でフィニッシュ。小坂光は14位に終わり、エリートカテゴリー初挑戦の高校生、織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)は日本人3番手となりながら、1ラップされ惜しくも賞金には届かない26位でレースを終えた。

また 残念ながら前戦より高い結果を目標にした小坂正則(スワコレーシングチーム)、池本真也(Frieten)、松本駿(Team SCOTT)、藤田拓海(SNEL CYCLOCROSS TEAM)、齋藤拓真(Team GARNEAU CHAINRING)は残念ながら完走とはならなかった。

こうして1週間2連戦の幕と閉じた第4回千森杯。その晩のパーティーでは大会の看板選手として活躍したタイス・アルの胸像が披露されたり、過去3回出場し大会に貢献した小坂光も表彰された。オーガナイザーによれば今後はW杯の招聘も視野にあるそうだ。最後は菅田純也代表監督の言葉でレポートを締めくくりたい。

「4回目となる大会に過去最大規模の11名で挑んだが 前田公平が第2戦6位、武田和佳が第1戦7位、第2戦8位という一桁台の結果を出してくれ、当初の目標以上の成果となった。来年はさらに表彰台を狙えるような選手を招聘し再び勝負したいと思う。例年のように今回も素晴らしい中国UCIレースのホスピタリティの中で試合ができて大変感謝している。今後は中国以外のアジア各国でもシクロクロスレース開催の話があるので、そういった国とも競技を通じて交流を深められたら良いと思っている」(菅田純也代表監督)

男子エリートのシャンパンファイト男子エリートのシャンパンファイト photo:Masakazu.Abe


千森杯UCIシクロクロス Qiansen Trophy2016第2戦結果
男子エリート(64名)

1位 マルセル・ウィルダバー (スイス、スコット・オドロ) 
2位 クリス・ジョンジュワード(オーストラリア、Jブラッド・アドヴェンチャー)
3位 イェンス・アダムス(ベルギー、クレラン・ファストフードサービス)
6位 前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム)
14位 小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)
26位 織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)
34位 小坂正則(スワコレーシングチーム)
39位 松本駿(SCOTT)
38位 池本真也(Frieten)
49位 齋藤拓真(Team GARNEAU CHAINRING)
52位 藤田拓海(SNEL CYCLOCROSS TEAM)

女子エリート(29名)
1位 セイリン・アルヴァラード(オランダ、クレルオブマート・ノードラッグス)
2位 エミリー・カチョレック(アメリカ、スクイッド・バイクス)
3位 ビアンカ・ヴァンデンホック(オランダ、リウェイパリェスビルトーフェン・MTBリヒトヴァゼット)
8位 武田和佳(Liv)
20位 須藤むつみ(Ready Go JAPAN)
24位 安田朋子(SNEL CYCLOCROSS TEAM)



参加メンバー
男子エリート

小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)
前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム)
小坂正則(スワコレーシング)
池本真也(Frieten)
松本駿(SCOTT)
織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)
藤田拓海(SNEL CYCLOCROSS TEAM)
齋藤拓真(Team GARNEAU CHAINRING)

女子エリート
武田和佳(Liv) 
須藤むつみ(Ready Go JAPAN)
安田朋子(SNEL CYCLOCROSS TEAM) 

スタッフ
諏訪孝浩(SNEL CYCLOCROSS TEAM) 
佐藤成彦(弱虫ペダルサイクリングチーム)
日比谷篤史(弱虫ペダルサイクリングチーム)
菅田純也(Team GARNEAU CHAINRING)
池本秀紀(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)

report:Masakazu.Abe