ブエルタ・ア・エスパーニャの総合争いも残すところ、あと2日。フラットな37kmのTTで、フルームがトップタイムをマークし、マイヨロホを着るキンタナとの差を1分21秒にまで縮めることに成功。区間8位のコンタドールが総合3位に浮上した。



ステージ優勝のクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)ステージ優勝のクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:TDWsport/Kei Tsuji


ステージ2位:44秒差 ヨナタン・カストロビエホ(スペイン、モビスター)ステージ2位:44秒差 ヨナタン・カストロビエホ(スペイン、モビスター) photo:TDWsport/Kei Tsujiステージ3位:1分24秒差 トビアス・ルドヴィグソン(スウェーデン、ジャイアント・アルペシン)ステージ3位:1分24秒差 トビアス・ルドヴィグソン(スウェーデン、ジャイアント・アルペシン) photo:TDWsport/Kei Tsujiステージ4位:1分26秒差 イヴ・ランパート(ベルギー、エティックス・クイックステップ)ステージ4位:1分26秒差 イヴ・ランパート(ベルギー、エティックス・クイックステップ) photo:TDWsport/Kei Tsujiブエルタ史上初めて最終日の前々日に開催される個人タイムトライアル。第19ステージは、サビアをスタートしてから南下し、地中界の美しい海岸線が広がるカルプに至る37kmのコースが舞台となる。高低差170mほどの丘が登場するものの概ね平坦基調で、後半にはテクニカルなコーナーが連続。TTスペシャリストやルーラーに有利なレイアウトと言えよう。

3ステージを残すのみとなった今年のブエルタだが、総合争いは混沌としており、この37kmによって順位変動が起こるのは必至。総合上位勢で見ると、TTを得意とする2位のクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)や4位のアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)に対して、苦手とするマイヨロホのナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)や3位のエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・バイクエクスチェンジ)がタイムロスをどの程度に押さえ込めるのかに注目が集まった。

最初に好タイムをマークしたのは、42番手スタートのイヴ・ランパート(ベルギー、エティックス・クイックステップ)。しばらくの間、47分59秒がターゲットタイムとなる。その後、106番手スタートのトビアス・ルドヴィグソン(スウェーデン、ジャイアント・アルペシン)が、ランパートのタイムを2秒上回ってホットシートに。ルドヴィグソンの直後にスタートしたシルヴァン・ディリエル(スイス、BMCレーシング)は、途中まで好ペースを刻むも、最後のUターンで痛恨の落車。

チェコTTチャンピオンのレオポルド・ケーニッヒ(チェコ、チームスカイ)などが、ルドヴィグソンの後塵を拝する中で、リオオリンピック個人TT4位のヨナタン・カストロビエホ(スペイン、モビスター)がトップタイムを更新。それまでのトップタイムを40秒も上回る47分17秒で暫定首位に立つ。そして、総合上位陣ががスタートを切っていく。



ステージ11位:2分16秒差 マイヨロホを守ったナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)ステージ11位:2分16秒差 マイヨロホを守ったナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) photo:TDWsport/Kei Tsuji
ステージ17位:2分50秒差 マイヨプントスを着て走るアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)ステージ17位:2分50秒差 マイヨプントスを着て走るアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:TDWsport/Kei Tsujiステージ8位:1分57秒差 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)ステージ8位:1分57秒差 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ) photo:TDWsport/Kei Tsuji




ステージ7位:1分54秒差 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール・ドラパック)ステージ7位:1分54秒差 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール・ドラパック) photo:TDWsport/Kei Tsujiステージ24位:3分13秒差 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・バイクエクスチェンジ)ステージ24位:3分13秒差 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・バイクエクスチェンジ) photo:TDWsport/Kei Tsujiステージ93位:6分29秒差 落車リタイアを喫したサムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング)ステージ93位:6分29秒差 落車リタイアを喫したサムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング) photo:TDWsport/Kei Tsujiステージ32位:3分45秒差 サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ)ステージ32位:3分45秒差 サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ) photo:TDWsport/Kei Tsuji総合上位陣の中で、スタートから12.5kmの地点に設けられた第1中間計測を最速通過したのはフルームで、全体でもトップタイムをマーク。今年のツール・ド・フランス覇者に対して、コンタドールは29秒、キンタナとチャベスは46秒のビハインドを背負うことに。また、第1中間計測の結果を受けて、表彰台争いに変動があり、この時点でチャベスを17秒上回ったコンタドールが暫定で総合3位となる。

24.3km地点に設けられた第2中間計測でもフルームは更に加速。キンタナに対して1分33分のアドバンテージを得て、明日の総合首位逆転を射程圏内に捉える。同時に、コンタドールに1分12秒、チャベスに2分14秒の差をつけ、2人を総合優勝争いから引きずり下ろす。

そして最終区間、テクニカルセクションを攻略したフルームは、それまで暫定首位だったカストロビエボのタイムを44秒も更新する46分33秒の一番時計を叩き出す。対するキンタナはフルームに対して2分16秒遅れでカルプにフィニッシュ。2人の差は1分21秒にまで縮まり、翌日の第20ステージでの総合首位逆転が現実味を帯びてきた。

優勝したフルームは「自分ができる事に集中して走ったし、走り終えた後は完全にオールアウトしていたよ。キンタナとモビスターはとても良い選手とチームで、彼らを倒すことは困難だろう。でも僕らのチームは挑み続けていくよ。ぜひ注目していてほしいね。」とレース後にコメントした。

対するキンタナは「僕はこのタイムトライアルをとても上手く走れたと思う。でも、フルームは今日、まるでコースを飛ぶように走っていたね。僕たちが予想していた以上の高いパフォーマンスを見せてくれたよ。明日、僕はフルームの動きをチェックし続ける。この最終決戦で、彼を逃しはしない。」とマイヨロホ死守への決意を表明した。

フルームに対してコンタドールは1分57秒、チャベスは3分13秒の遅れを喫し、前日まで射程圏内にあった総合優勝争いからは脱落。また、チャベスはコンタドールに表彰台を明け渡すことになったが、2人のタイム差は1分11秒と、こちらは翌ステージで逆転が起こる可能性が充分に残されている。

その他総合上位勢では、ステージ7位に入ったアンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール・ドラパック)がサイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ)を逆転し、総合5位に。ここまで総合トップ10圏内を守り続けてきたサムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング)が落車による肩の脱臼でリタイヤ。

日本勢は、敢闘賞ゼッケンを着けて出走した別府史之(トレック・セガフレード)が8分24秒遅れの143位、新城幸也(ランプレ・メリダ)が6分12秒遅れの82位で、それぞれ第19ステージを終えている。

総合優勝を決する第20ステージは、4つの2級山岳を越えた後に、登坂距離21kmで平均勾配5.9%の超級山岳アイタナ峠が待ち受ける193.2kmで争われる。マイヨロホ以外にも、総合表彰台やマイヨモンターニャ(山岳賞)も依然として逆転可能な状況にあり、様々な思惑が絡みあう混沌としたレースになりそうだ。



ステージ82位:6分12秒差 新城幸也(ランプレ・メリダ)ステージ82位:6分12秒差 新城幸也(ランプレ・メリダ) photo:TDWsport/Kei Tsujiステージ143位:8分24秒差 敢闘賞ゼッケンを着け出走した別府史之(トレック・セガフレード)ステージ143位:8分24秒差 敢闘賞ゼッケンを着け出走した別府史之(トレック・セガフレード) photo:TDWsport/Kei Tsuji


ステージ優勝のクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)ステージ優勝のクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:TDWsport/Kei Tsuji


ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第19ステージ結果
1位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
2位 ヨナタン・カストロビエホ(スペイン、モビスター)
3位 トビアス・ルドヴィグソン(スウェーデン、ジャイアント・アルペシン)
4位 イヴ・ランパート(ベルギー、エティックス・クイックステップ)
5位 ヴィクター・カンペナールツ(ベルギー、ロットNLユンボ)
6位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、チームスカイ)
7位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール・ドラパック)
8位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)
9位 ファビオ・フェリーネ(イタリア、トレック・セガフレード)
10位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)
46’33”
+44”
+1’24”
+1’26”
+1’47”
+1’51”
+1’54”
+1’57”
+1’58”
+2’10”


マイヨロホ(個人総合成績)
1位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
2位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)
4位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・バイクエクスチェンジ)
5位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール・ドラパック)
6位 サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ)
7位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アスタナ)
8位 ダニエル・モレーノ(スペイン、モビスター)
9位 ダヴィド・デラクルス(スペイン、エティックス・クイックステップ)
10位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ドラパック)
75h18’52”
+1’21”
+3’43”
+4’54”
+7’12”
+7’32”
+10’01”
+10’07”
+10’11”
+11’14”


マイヨプントス(ポイント賞)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
2位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) 
3位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) 
93pts
91pts
87pts


マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 ケニー・エリッソンド(フランス、FDJ)
2位 オマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ)
3位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ロットNLユンボ)
56pts
53pts
34pts


マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
2位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
3位 ダヴィド・デラクルス(スペイン、エティックス・クイックステップ)
8pts
16pts
34pts


チーム総合成績
1位 BMCレーシング
2位 モビスター
3位 キャノンデール・ドラパック
224h56’20”
+14’26”
+32’39”


敢闘賞
クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)

text:Yuya.Yamamoto

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