シマノが誇るロードコンポーネントの最高峰「DURA-ACE」が4年ぶりのフルモデルチェンジを果たす。大きなトピックは、新たに油圧ディスクブレーキとパワーメーターを組み込んだこと。同時に、更なる高効率化を実現すべく、あらゆる箇所でブラッシュアップが図られている。



シマノR9170系DURA-ACE Di2シマノR9170系DURA-ACE Di2 (c)シマノ
1973年の登場以来、世界最高峰のロードレースシーンをサポートしてきた「DURA-ACE(デュラエース)」。ツール・ド・フランスをはじめとした3大グランツールや世界選手権、クラシックレースの数々と、40年以上に渡る歴史の中で貢献してきた勝利数は枚挙に暇が無い。

9代目となる新型DURA-ACEに与えられた型番は「R9100」。開発コンセプトを「ライダーの出力を余すことなく推進力に変えること」とし、シマノによればライダーとバイクの更なるシナジー(相乗効果)を目指して、人車の一体感にも着目したとしている。

シマノR9100系DURA-ACEシマノR9100系DURA-ACE (c)シマノ
これまでに行われた8回のフルモデルチェンジの中でも、その変化の幅は特に大きいといえるだろう。なぜなら、油圧ディスクブレーキシステムやパワーメーターが新たにDURA-ACEに組み込まれたからだ。

この他にも、Di2においてはインテリジェント変速システム「シンクロナイズドシフト」やファームウェアの無線アップデート/セッティングへの対応など。注目ポイントが目白押しだ。リアスプロケットは、先代の9000系と同じく11段となっている。下記には新型DURA-ACEの詳細をお伝えしよう。



リムブレーキ同様のコントロール性を実現 DURA-ACE初のディスクブレーキ

新型DURA-ACEに組み込まれた油圧ディスクブレーキシステム新型DURA-ACEに組み込まれた油圧ディスクブレーキシステム photo:Makoto.AYANO
新型DURA-ACEの最注目ポイントの1つが、油圧ディスクブレーキの登場だ。シマノでは数年前からグループ外コンポーネントとしてロード用油圧ディスクブレーキシステムを展開してきたものの、既存のコンポーネントシリーズの名前が与えられたのは、今回が初めて。トッププロが求める性能を実現できたことから、晴れてDURA-ACEの名を冠した油圧ディスクブレーキシステムが誕生したのだ。

シマノのエンジニアは、DURA-ACE初の油圧ディスクブレーキについて「これまでのロード用油圧ディスクブレーキシステムよりも、新型DURA-ACEではプロライダーの高い要求に応えるよう、味付けにこだわりました。」とコメント。「剛性感を上げて、ガチッと効くように仕上げています。当て効きについては、プロライダーからのフィードバックを取り入れながら、レバーの重量やマスターシリンダーをチューニングしており、リムブレーキに近いコントローラブルなフィーリングになっていますね。」と自信を覗かせる。

シマノ BR-R9170(左がフロント、右がリア)シマノ BR-R9170(左がフロント、右がリア) (c)シマノシマノ SM-RT900-S(160mm)シマノ SM-RT900-S(160mm) (c)シマノ

リムブレーキ同様のコントロール性を実現したというDURA-ACE初の油圧ディスクブレーキシステムリムブレーキ同様のコントロール性を実現したというDURA-ACE初の油圧ディスクブレーキシステム photo:Makoto.AYANOローターは内周部で効率的に放熱する新構造を採用。冷却性能を高めたローターは内周部で効率的に放熱する新構造を採用。冷却性能を高めた photo:Makoto.AYANO


また、DURA-ACE初の油圧ディスクブレーキの肝となるのは、ローターだ。外周部で発生した摩擦熱を、内周部で効率的に発散させる新構造をとり、XTRなどに採用されてきた放熱性に優れるアイステクノロジー・フリーザローターよりも、同条件で30℃もの冷却性能向上を実現。これにより、グランツールに登場するような長距離のダウンヒルでも、より安定的なブレーキングが可能となり、パッドの長寿命化にも成功した。

ローターは、用途や使用環境にあわせて選べるように140mmと160mmの2サイズを用意。なお、ルックス面ではよりロードレーサーに馴染むように、MTBとは異なるクリーンなデザインとされている。キャリパー本体は、もちろんフラットマウント台座に対応する。

リムブレーキ用キャリパーは更なる高制動力を獲得

リムブレーキ仕様も継続してラインアップされるリムブレーキ仕様も継続してラインアップされる photo:Makoto.AYANO
ブースターにより左右のピボットを接続することで、アームのたわみ量を最大43%低減することに成功ブースターにより左右のピボットを接続することで、アームのたわみ量を最大43%低減することに成功 photo:Makoto.AYANOシマノ BR-R9110-F(ダイレクトマウント)シマノ BR-R9110-F(ダイレクトマウント) (c)シマノ


リムブレーキ用キャリパーも着実な進化を遂げている。新型DURA-ACEでは、ブースターにより左右のピボットを接続することで、アームのたわみ量を最大43%低減することに成功。ケーブルに高い張力が加わった状態でも、かっちりとしたフィーリングをキープしてくれるという。また、従来モデルに対してアーム間の距離は縮まっているものの、28Cタイヤが装着可能なクリアランスが確保されている。

油圧ディスクブレーキ用キャリパー BR-R9170
対応取付台座:フラットマウント
パッド:フィン付き
税抜価格:14,388円(フロント)、 14,072円(リア)

ディスクブレーキ用ローター SM-RT900
サイズ:140mm、160mm
価格:7,330円(税抜)

リムブレーキ用キャリパー BR-R9100
BR-R9100 (沈頭ナット取付タイプ、前後セット) 35,883円(税抜)
BR-R9110-F(ダイレクトマウント、フロント) 18,816円(税抜)
BR-R9110-R(ダイレクトマウント/BB下取付、リア) 18,365円(税抜)
BR-R9110-RS(ダイレクトマウント/シートステー取付、リア) 18,816円(税抜)



DURA-ACEの名を冠した高精度クランク式パワーメーターが登場!

シマノ FC-R9100-Pシマノ FC-R9100-P (c)シマノ
クランクは9000シリーズの4アーム構造を受け継いでいる。アーム部分の設計を変更することで、駆動効率を最大限に高めつつも、BB込みで7gの軽量化に成功している。リアエンド幅142mmのディスクブレーキ用フレームでは、リアセンター410mm(最短)まで対応。歯数構成は5種類をラインアップする。

そして、新型DURA-ACEのクランクをベースとしたパワーメーターが登場する。シマノが展開するフィッティングサービス「BikeFitting」のテクノロジーを応用して開発されており、DURA-ACEの名に相応しい優れた計測精度と信頼性を実現している。

9000シリーズの4アーム構造を踏襲したクランクFC-R91009000シリーズの4アーム構造を踏襲したクランクFC-R9100 photo:Makoto.AYANO
リアエンド幅の拡大にも対応したクランクアームリアエンド幅の拡大にも対応したクランクアーム photo:Makoto.AYANOシマノ CS-R9100シマノ CS-R9100 (c)シマノ


センサーは左右のクランクアームの内側に、充電式バッテリーはアクスル内に搭載され、フレームやBB下取り付けタイプのダイレクトマウントBRと干渉しないよう設計されているという。フル充電でのランタイムは約300時間で、水分や泥にも強い専用の充電コネクタが用いられる。サイクルコンピューターとの通信は、ANT+もしくはBluetoothを介して行う。なお、計測項目や解析ソフト等の詳細は現時点では明らかにされていない。

スプロケットは、CFRPとアルミ合金を組み合わせたスパイダーや、チタン製コグ(ロー側5枚)などによって、優れた軽量性を実現。歯数構成は11-25T、12-25T、11-28T、12-28T、新登場の11-30Tという5種類がラインアップされる。

シマノ BB-R9100シマノ BB-R9100 (c)シマノシマノ PD-R9100シマノ PD-R9100 (c)シマノクランクセット FC-R9100
アーム長:165~180mm
歯 数:50-34T、52-36T、53-39T、
54-42T、55-42T
税抜価格(歯数):
55,980円(50-34T、52-36T、53-39T)、
58,239円(54-42T、55-42T)

クランク式パワーメーター FC-R9100-P
価格:未定

ボトムブラケット BB-R9100
BB-R9100 スレッドタイプ(BC137、36X24) 3,715円

カセットスプロケット CS-R9100
歯数/税抜価格:
11-25T 24,056円
11-28T 25,242円
11-30T 26,089円
12-25T 24,056円
12-28T 25,242円

チェーン CN-HG901-11
価格:4,723円(税抜)

ペダル PD-R9100
軸長:ノーマル、+4mm
税抜価格:
23,322円(ノーマル)、23,560円(+4mm)



シンクロシフトを投入 ストレスフリーを追求したDi2

シマノが他に先んじて実用化したロード用の電動変速システムDi2。「より直感的でシンプルな操作方法」をコンセプトに、3代目となるR9100系では大幅な進化を遂げた。ギア比の自動調整でより高効率なライディングを可能とする「シンクロシフト」が投入された。

シマノ ST-R9150(左、リム)、シマノ ST-R9170(右、油圧ディスク)シマノ ST-R9150(左、リム)、シマノ ST-R9170(右、油圧ディスク) (c)シマノ
油圧ディスクブレーキ用ST-R9170は、リザーバータンクを内蔵しながらリムブレーキ用と同等のコンパクトさを実現油圧ディスクブレーキ用ST-R9170は、リザーバータンクを内蔵しながらリムブレーキ用と同等のコンパクトさを実現 photo:Makoto.AYANOSTIレバーのフードは新たな表面仕上げにSTIレバーのフードは新たな表面仕上げに photo:Makoto.AYANO


R9150系DURA-ACE Di2のシンクロシフトでは、2つのモードがプリセットされている。「フルシンクロモード」は、M9050系XTR Di2と同様に、リアディレーラーの変速を基準にフロントを自動変速させ、同じギア比でもより効率の良い歯の組み合わせを選択してくれるというもの。「セミシンクロモード」はフロントディレイラーの変速にあわせてリアが1~2段変速するというもので、変速前のギア比をキープしてくれる。もちろん、前後を左右それぞれのスイッチで変速する「マルチシフトモード」も選択できる。

なお、TTバイクで新型DURA-ACE Di2を使用する場合の変速モードは「フルシンクロモード」のみとされている。従ってDHバー用の変速スイッチとブルホーンバー用のSTIレバーに設けられるスイッチは、片側1つずつ。スイッチは配置を見直しており、親指を動かすだけの自然に操作感に仕上がっている。

もちろん、シンクロシフトの変速順序や変速スピードなどは、E-Tube Projectにて調整可能。ジャンクションAとコンピューターを専用ケーブルで有線接続する従来どおりの方式の他に、新型DURA-ACE Di2では専用アプリがインストールされたタブレットやスマートフォンとのBluetooth無線接続にも対応した。

シマノ ST-R9160-Rシマノ ST-R9160-R (c)シマノシマノ SW-R9160シマノ SW-R9160 (c)シマノ

シマノ BT-DN110シマノ BT-DN110 (c)シマノシマノ BM-DN100シマノ BM-DN100 (c)シマノ


無線接続の利用には、ジャンクションAとBの間に設置する「EW-WU111」か、ジャンクションBとリアディレーラーの間に設置する「EW-WU101」のどちらかのワイヤレスユニットと、新型バッテリーマウントもしくは新型内蔵バッテリーをバイクに取り付ける必要がある。E-Tube Project専用アプリケーションはこの夏~秋にかけてリリース予定だ。

ドロップハンドル用STIはエルゴノミクスを追求することでより握りやすい形状を実現し、リムブレーキ用とディスクブレーキ用でほぼ変わらない形状に。加えて、変速スイッチのクリック感を改善しているという。ブルホーンバー用のSTIもリムブレーキ用とディスクブレーキ用の2種類で展開される。

リアディレーラーは、ロード用コンポでは初となるShadow(シャドー)デザインを導入。横方向へのせり出しが少なくなることで落車時の破損の可能性が低減している。フロントディレーラーは従来モデルよりも更なるコンパクト化を果たし、新設計のクランクとあわせて変速性能が更に向上した。

Shadowデザインを採用し、従来モデルよりも一回りコンパクトになったリアディレーラー RD-R9150Shadowデザインを採用し、従来モデルよりも一回りコンパクトになったリアディレーラー RD-R9150 photo:Makoto.AYANOさらにコンパクトになったDi2のフロントディレーラーFD-R9150さらにコンパクトになったDi2のフロントディレーラーFD-R9150 photo:Makoto.AYANO

リアディレーラーのフレーム取り付け部は、MTB用の様な形状となったリアディレーラーのフレーム取り付け部は、MTB用の様な形状となった photo:Makoto.AYANOデザインを一新したカーボン製プーリーケージデザインを一新したカーボン製プーリーケージ photo:Makoto.AYANO


ジャンクションAは3種類展開となり、コンパクトになった新型のステム取り付けタイプに加えて、ハンドル内蔵タイプとフレーム内蔵タイプが新たに登場。よりスマートなアッセンブルを可能とすると同時に、近年更に加速するロードフレームのエアロ化を後押しする格好だ。

デュアルコントロールレバー ST-R9150、ST-R9170
ST-R9150(電動変速/リムブレーキ、前後セット) 64,307円(税抜)
ST-R9170(電動変速/油圧ディスクブレーキ、右のみ) 38,536円(税抜)
ST-R9170(電動変速/油圧ディスクブレーキ、左のみ) 38,536円(税抜)

フロントディレイラー FD-R9150
台座:直付け
価格:38,333円(税抜)

リアディレーラー RD-R9150
価格:62,041円(税抜)

TT/トライアスロン用デュアルコントロールレバー
ST-R9160(電動変速/リムブレーキ、前後セット) 価格未定
ST-R9180(電動変速/油圧ディスクブレーキ、前後セット) 価格未定

TT/トライアスロン用リモートシフター SW-R9160
価格:未定

内装バッテリー BT-DN110
価格:14,412円(税抜)

外装バッテリーマウント(ロングタイプ/内装ケーブル式) BM-DN100
価格:10,606円(税抜)

ワイヤレスユニット EW-WU111
価格:7,958円(税抜)



各パーツのアップデートでよりストレスフリーになった機械式DURA-ACE

Di2並みのコンパクトさとなった機械式変速のSTIDi2並みのコンパクトさとなった機械式変速のSTI photo:Makoto.AYANO
シマノ ST-R9100(左、リム)、ST-R9120(右、油圧ディスク)シマノ ST-R9100(左、リム)、ST-R9120(右、油圧ディスク) (c)シマノ機械式の新型DURA-ACEも大幅に進化し、Di2と同様にストレスフリーな操作感を突き詰めた。STIはレバー部を再設計することで、よりクイックな操作が可能に。従来モデルと変速レバーのストロークを比較すると、左側のメインレバーは-24%、左右のリリース(張力解除)レバーは-14%となっている。

フロントディレーラーも、レバーに合わせて再設計されており、従来モデルとトータルの操作力は変わらないものの、変速動作がよりスムーズに。セットアップが簡単になったことも大きな特徴で、9000系では2通りあったケーブルのルーティングが1通りとなり、ケーブルテンションの調整機能を新たに搭載することで、ワイヤーの途中にかませるアジャスターが不要となった。

リアディレーラーはDi2と同じくShadowデザインとなり、スプロケットとの間隔が常に一定になるようにガイドプーリーの軌道を設定することで、変速の安定性を高めた。

シマノ RD-R9100-SSシマノ RD-R9100-SS photo:Makoto.AYANO構造を一新した機械式のフロントディレーラーFD-R9100構造を一新した機械式のフロントディレーラーFD-R9100 photo:Makoto.AYANO


デュアルコントロールレバー ST-R9100、ST-R9120
ST-R9100(機械式変速/リムブレーキ、前後セット) 51,644円(税抜)
ST-R9120R(機械式変速/油圧ディスクブレーキ、右のみ) 32,076円(税抜)
ST-R9120L(機械式変速/油圧ディスクブレーキ、左のみ) 32,076円(税抜)

フロントディレーラー FD-R9100
取り付けタイプ/税抜価格:
34.9mmバンド 12,131円
31.8/28.6mmバンド 12,190円
直付 11,226円

リアディレイラー RD-R9100
価格:21,492円(税抜)



ツール・ド・フランス開幕を前に発表されたシマノR9100系DURA-ACE ツール・ド・フランス開幕を前に発表されたシマノR9100系DURA-ACE photo:Makoto.AYANO
新型DURA-ACEの発売開始は、機械式変速/リムブレーキ仕様が2016年11月、電動変速/リムブレーキ仕様が2017年2月、油圧ディスクブレーキ関連部品が2017年春の予定だ。



photo:Makoto.AYANO in Caen FRANCE