雪を伴う悪天候によってコースが約半分に短縮されたツール・ド・スイス最終ステージでヤルリンソン・パンタノ(コロンビア、IAMサイクリング)が勝利。登りで力を誇示したミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ)が総合優勝に輝いた。



標高2,283mの超級山岳フリュエラ峠の頂上を目指すミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ)標高2,283mの超級山岳フリュエラ峠の頂上を目指すミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ) photo:Tim de Waele


ツール・ド・スイス2016第9ステージツール・ド・スイス2016第9ステージ image:Tour de Suisse標高2,314mの超級山岳アルブラ峠と標高2,283mの超級山岳フリュエラ峠を越える117.7kmコースで開催予定だったツール・ド・スイス第9ステージ。しかし降雪によって超級山岳アルブラ峠の通行が危険と判断され、前半60kmをカットした57kmで争われることに。超級山岳フリュエラ峠を登って下るシンプルな山岳決戦となった。

超級山岳フリュエラ峠を駆け上がるミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ)超級山岳フリュエラ峠を駆け上がるミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ) photo:Tim de Waele2つあるスプリントポイント目掛けてポイント賞ジャージのマキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、エティックス・クイックステップ)ら3名が序盤からエスケープ。確実にポイントを稼いだリケーゼは南米出身選手として初めてポイント賞を獲得している。

ヨン・イサギーレ(スペイン、モビスター)を含む第2集団ヨン・イサギーレ(スペイン、モビスター)を含む第2集団 photo:Tim de Waeleやがて先頭3名が超級山岳フリュエラ峠の登坂を開始すると、1分あったタイム差は瞬く間に縮小してやがては吸収。登坂距離12.8km/平均勾配7%の登りでアスタナ勢がペースを作り、そこからパンタノ、ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)、サイモン・スピラック(スロベニア、カチューシャ)がアタックした。

イエロージャージを着るロペスモレーノはティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)を引き連れて先頭3名にジョイン。総合逆転を狙う立場の総合2位アンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール)や総合3位ヨン・イサギーレ(スペイン、モビスター)、総合4位ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン)はこの動きに乗り遅れた。

総合優勝に向けて快走するロペスモレーノは超級山岳フリュエラ峠の頂上まで2kmを残してアタック。「ライバルたちを驚かせたくてアタックしたんだ。彼らもアタックしようとしていたに違いないけど自分から動いてみた。それが功を奏した」というコロンビアンクライマーが雪と雨に濡れた峠を突き進み、後続を30秒引き離して独走で頂上を通過した。



ライバルたちの様子を確認するミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ)ライバルたちの様子を確認するミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ) photo:Tim de Waele


超級山岳フリュエラ峠の頂上2km手前でアタックするミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ)超級山岳フリュエラ峠の頂上2km手前でアタックするミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ) photo:Tim de Waeleレインジャケットを着て完全ウェットなダウンヒルをこなしたロペスモレーノを、イサギーレ、パンタノ、ヴァンガーデレン、セルゲイ・チェルネツキ(ロシア、カチューシャ)の4名が追いかける。下りの勾配が緩んだ区間でタイム差は縮まり、残り9kmで追走4名が先頭ロペスモレーノに合流した。

雨に濡れた超級山岳フリュエラ峠の下りをこなす選手たち雨に濡れた超級山岳フリュエラ峠の下りをこなす選手たち photo:Tim de Waele後方では協力体制を築いたバーギルとコスタが追い上げる。総合2位につけていたタランスキーはジョセフロイド・ドンブロウスキー(アメリカ、キャノンデール)の懸命なアシストを受けたものの、1分近い遅れを挽回できなかった。

先頭グループを牽引するヨン・イサギーレ(スペイン、モビスター)先頭グループを牽引するヨン・イサギーレ(スペイン、モビスター) photo:Tim de Waeleタランスキーを少しでも引き離したいイサギーレがほぼ先頭固定で精鋭グループを引き続け、残り4kmからの平坦区間ではステージ優勝を見据えたアタックが頻発。しかしいずれのアタックも決まらずに勝負は先頭5名のスプリントに持ち込まれる。残り250mでパンタノが一気に仕掛けるとチェルネツキが反応。チェルネツキがタイミングよくスリップストリームから抜け出して隣に並んだが、パンタノが先頭を守り抜いた。

先頭5名によるスプリントを制したヤルリンソン・パンタノ(コロンビア、IAMサイクリング)先頭5名によるスプリントを制したヤルリンソン・パンタノ(コロンビア、IAMサイクリング) photo:Tim de Waele「この勝利を家族とIAMサイクリングの関係者全員に捧げたい。下りで手の感覚が全くなくなって凍えたけど、最後の勝利(2011年ブエルタ・ア・コロンビア)が今日と同じ日だったことを思い出し、全力で勝利を狙った。まだ夢を見ている気分だ」と、5年ぶりの勝利をパンタノは喜ぶ。

「今朝、フリュエラ峠の下りとダヴォスのフィニッシュを車で試走した。街中に入ってから何度かアタックしたものの、ライバルたちにマークされたのでスプリントに備えたんだ。残り250mで仕掛けようと心に決め、そこから全力でスプリントした。(解散危機という)苦しい時期に直面しているチームにこの勝利をもたらすことができてよかった」。

ステージ優勝は27歳のコロンビアンクライマーの手に。そして総合優勝は22歳のコロンビアンクライマーの手に。ライバルたちに総合リードを奪われることなく最終ステージを終えたロペスモレーノが総合優勝に輝いた。

昨年アスタナでプロデビューし、同年ツール・ド・スイスで総合7位に入ったロペスモレーノ。今年のツール・ド・ランカウイでは圧倒的な登坂力を披露しながらもパンクによって総合3位に終わっている。「僕を信頼してくれているアスタナとともにこれからも一歩一歩進んでいきたい」と語るロペスモレーノはブエルタ・ア・エスパーニャでグランツールデビューする予定だ。

選手コメントは各チーム公式サイトより。



総合表彰台 2位イサギーレ、1位ロペスモレーノ、3位バーギル総合表彰台 2位イサギーレ、1位ロペスモレーノ、3位バーギル photo:Tim de Waele
総合優勝に輝いたミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ)総合優勝に輝いたミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ) photo:Tim de Waeleポイント賞を獲得したマキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、エティックス・クイックステップ)ポイント賞を獲得したマキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、エティックス・クイックステップ) photo:Tim de Waele
山岳賞を獲得したアントワン・トルホック(オランダ、ルームポット・オラニエ)山岳賞を獲得したアントワン・トルホック(オランダ、ルームポット・オラニエ) photo:Tim de Waeleスイスライダー賞に輝いたマルティン・エルミガー(スイス、IAMサイクリング)スイスライダー賞に輝いたマルティン・エルミガー(スイス、IAMサイクリング) photo:Tim de Waele


ツール・ド・スイス2016第9ステージ結果
1位 ヤルリンソン・パンタノ(コロンビア、IAMサイクリング)          1h23’55”
2位 セルゲイ・チェルネツキ(ロシア、カチューシャ)
3位 ヨン・イサギーレ(スペイン、モビスター)
4位 ミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ)
5位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)
6位 ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)
7位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン)
8位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール)            +56”
9位 ビクトル・デラパルテ(スペイン、CCCスプランディ・ポルコウィチェ)
10位 ジョセフロイド・ドンブロウスキー(アメリカ、キャノンデール)
16位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ)            +1’17”
21位 サイモン・スピラック(スロベニア、カチューシャ)
54位 新城幸也(日本、ランプレ・メリダ)                    +6’56”
91位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)               +11’01”

個人総合成績
1位 ミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ)          30h55’58”
3位 ヨン・イサギーレ(スペイン、モビスター)                   +12”
3位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン)            +18”
4位 ヤルリンソン・パンタノ(コロンビア、IAMサイクリング)            +42”
5位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール)           +1’04”
6位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)         +1’26”
7位 ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)                +2’09”
8位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ)             +2’38”
9位 サイモン・スピラック(スロベニア、カチューシャ)              +2’48”
10位 セルゲイ・チェルネツキ(ロシア、カチューシャ)              +5’08”

ポイント賞
1位 マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、エティックス・クイックステップ)

山岳賞
1位 アントワン・トルホック(オランダ、ルームポット・オラニエ)

スイスライダー賞
1位 マルティン・エルミガー(スイス、IAMサイクリング)

チーム総合成績
1位 カチューシャ

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele