今年のツアー・オブ・ジャパンは休みなしの8日間8ステージ、747.45kmで総獲得標高12,291mの設定。注目は何といっても今年初登場の京都ステージ。フランドルを思わせるコース設定に加え当日の天気は雨模様の予報。いきなりロードレースの初日から大きく動くか、序盤から必見だ。



京都ステージ フィニッシュはけいはんなプラザ(パナソニック前)反対側の車線になる京都ステージ フィニッシュはけいはんなプラザ(パナソニック前)反対側の車線になる photo:Hideaki TAKAGI
例年5月の自転車月間に行われるツアー・オブ・ジャパン(TOJ)。今年は伊勢志摩サミットのため5月29日(日)から始まる。そして京都ステージが新しく加わりこれで8日間休みなしの8ステージになる。昨年までとは京都ステージが加わっただけでコースに変わりはない。昨年は堺→いなべ→美濃だったが、今年は堺→京都→美濃→いなべと順序が少し変わる。

個人総合成績の行方は南信州ステージまでで上位20人ほどが決まり、富士山ステージで3位以内がそして伊豆ステージでその順序が決定するだろう。富士山ステージが大きく影響するのは確かだが、続く伊豆ステージでも激しい攻防がみられる。昨年はイランの2チームどうしが激闘を繰り広げ、最後はエース自ら動くほどにまで追い詰められていた。今年は極めてテクニカルな京都ステージが加わり、地の利のある日本チームに有利な条件がある。富士山ステージまでに分差をつけておくことは可能な範囲だろう。

大会概要

UCIアジアツアー2.1
主催 自転車月間推進協議会
出場チーム 全16チーム(海外8、国内8)
日程 2016年5月29日~6月5日 8ステージ 747.45km 総獲得標高12,291m
5月29日(日)第1ステージ 堺:2.65km個人タイムトライアル 獲得標高10m 13時35分第1走者スタート
5月30日(月)第2ステージ 京都:105.0km 獲得標高1,836m 9時25分スタート
5月31日(火)第3ステージ 美濃:139.4km 獲得標高1,218m 9時15分スタート
6月1日(水)第4ステージ いなべ:130.7km 獲得標高1,650m 9時30分スタート
6月2日(木)第5ステージ 南信州:123.6km 獲得標高2,580m 9時15分スタート
6月3日(金)第6ステージ 富士山:11.4km 獲得標高1,147m 10時00分本スタート
6月4日(土)第7ステージ 伊豆:122.0km 獲得標高3,750m 9時30分スタート
6月5日(日)第8ステージ 東京:112.7km 獲得標高100m 11時00分スタート



5月29日(日)第1ステージ 堺:2.65km個人タイムトライアル 大仙公園周回

TOJ参加選手による堺国際クリテリウムTOJ参加選手による堺国際クリテリウム photo:Hideaki TAKAGI大阪府堺市の大仙公園を周回する個人TT。コンマ秒以下までの計測で順位が付く唯一のステージ。最終ステージまでこのタイム差が影響する可能性がある。コースレコードは2014年大会でウィリアム・クラーク(ドラパック)が出した3分14秒09。2番目はマイケル・マシューズ(現オリカ・グリーンエッジ)が2010年に出した3分14秒31。2015年大会はブレントン・ジョーンズ(ドラパック)が3分19秒17で優勝。前2人のタイムが突出しているので、上位を狙う選手にとっては3分20秒を切ることが目標だ。

なおこの日はTOJ出場選手によるレース「堺国際クリテリウム」が10時50分から10周で行われる。さらに11時45分からは実業団レース(JBCFクリテリウム)E1クラスタが8周、12時30分から女子Fクラスタが7周で行なわれる。



5月30日(月)第2ステージ 京都:105.0km 普賢寺小学校前→けいはんなプラザ周回コース

京都ステージ 同志社大学構内をセレモニーラン。小石祐馬(NIPPOヴィーニファンティーニ)の母校京都ステージ 同志社大学構内をセレモニーラン。小石祐馬(NIPPOヴィーニファンティーニ)の母校 photo:Hideaki TAKAGI京都ステージ KOMまで約1.5km、左側へ入る京都ステージ KOMまで約1.5km、左側へ入る photo:Hideaki TAKAGIいきなり大勢を決するかもしれない厳しいステージがロードレース初日に設定された。場所は京都府南部の京田辺市と精華町。今年初めて設定された京都ステージは適度なアップダウンとカーブ、狭い道幅などが入り組んだ箱庭のようなエリアと、けいはんなプラザ周辺の近代的な幅広い道路のエリアで構成される。前者はまっすぐきれいな道を行くと思ったら脇の細い道へ入りその先は坂など、次々に現れるカーブやアップダウンをこなすフランドルを想像させるレイアウトだ。

セレモニーライドは9時25分に普賢寺ふれあいの駅をスタートし同志社大学構内を通り、正式スタートの普賢寺小学校へ。ここを9時50分に正式スタートしフィニッシュラインのけいはんなプラザまで4.2kmを走りここから1周16.8kmを6周してフィニッシュとなる。なおレース中に普賢寺小学校と普賢寺幼稚園でウィーラースクールが、けいはんなプラザでは辻善光氏らによるイベントがある。

ロードレース初日でコントロールするチームが無いに等しいので激しい戦いがみられるだろう。今年初のコースでありコースを事前に知っておくことが大きなアドバンテージになる。加えて天気予報は雨模様。日本チームがイランなど海外の強豪チームに差をつけるとすればこの京都ステージしかないと言っても過言でない。日本チームが地の利を得て主導権を握り、海外勢を置き去りにするレースがみられるかどうかどうか。コースを覚えてしまう2周目以降でなく1周目にどのような動きがみられるか、期待したい。



5月31日(火)第3ステージ 美濃:139.4km 旧今井家住宅前パレード→美濃周回→美濃和紙の里会館前周回コース
岐阜県美濃市

2015年TOJより メイン集団は山本元喜(NIPPO・ヴィーニファンティーニ)とフェン・チュンカイ(ランプレ・メリダ)が引く2015年TOJより メイン集団は山本元喜(NIPPO・ヴィーニファンティーニ)とフェン・チュンカイ(ランプレ・メリダ)が引く photo:Hideaki TAKAGI平坦コース+一ヶ所急峻な上りというプロフィール。スプリンター向けのコースで集団ゴールが予想されるが、過去には逃げが決まり単独ないし少人数ゴールもあったステージ。ロードレース2日目となり、リーダーチームによるコントロールが行なわれる展開となるだろう。集団ゴールの可能性が高いが、アドバンテージを持っておきたい選手などによる逃げの可能性もある。過去には月曜日の奈良と美濃で続けて20人ほどの逃げが決まり、それで大会の大勢が決まってしまったこともあった。平坦だけにいったん遅れたら二度と復帰できない怖さがあり、予断を許さないステージだ。



6月1日(水)第4ステージ いなべ:130.7km 阿下喜駅前パレード→いなべ周回→農業公園梅林公園

いなべステージの難所 15%の上りを行くいなべステージの難所 15%の上りを行く photo:Hideaki TAKAGI2015年から導入されたいなべステージ。昨年はロード初日だったが今年は2日目にあたる。三重県北部の岐阜県と滋賀県境にある、いなべ市北部を走るコース。三岐鉄道北勢線の終着駅である阿下喜(あげき)駅をパレードスタート地点。同線は2003年まで近畿日本鉄道の路線であり、762mm軌間のナローゲージとして全国的に有名。アップダウンのある15.2kmの周回コースを8周する。

コース北側の農業公園にフィニッシュ地点がありその1km先のKOMが最高地点。コースプロフィールの大まかは、そのKOMと南側の最低地点を繋ぐ緩い上りと下りになる。フィニッシュ地点へは緩い上りが続き、右折後ややテクニカルな500mを過ぎて最終コーナー。そこからフィニッシュ地点までは数%の上り坂250m。さらに駐車場内を通りいったん少し下ってからKOMまでの急坂へ。この序盤は道幅が2.5mもなく狭くかつ10%を超え15%ほどの急坂でコンクリート舗装。2車線道路に出てからもKOMまでの坂は続く。この標高差100mの上り区間の破壊力は小さくない。

昨年大会ではレース後半にKOMまでの登り区間で抜け出したメンバーが逃げ切る展開になった。今年もこの狭くて急な登り区間が勝負のポイントになるだろう。それが序盤か終盤なのかは展開次第だ。



6月2日(木)第5ステージ 南信州:123.6km 飯田駅パレード→南信州周回→松尾総合運動場前
長野県飯田市

南信州ステージ 飯田市をみおろすKOMからの下り区間南信州ステージ 飯田市をみおろすKOMからの下り区間 photo:Hideaki TAKAGIツアーも後半の5日目に突入。山岳ステージだが平坦部分もあるため、クライマーが単独で逃げ切るのは難しい。少人数のスプリント勝負に持ち込まれることが多い。2014年は冷たい雨中のレースとなったためイラン勢が不発に終わったステージだった。

この南信州ステージで総合優勝争いの趨勢が決まる。おそらく上位数人が分差をつけていることだろう。イラン勢の圧倒的な登坂力を前にして彼らに総合成績で勝つためには、この南信州ステージまでで分差をつけておかなければならない。



6月3日(金)第6ステージ 富士山:11.4km 小山町生涯学習センターパレード→ふじあざみライン→富士山須走口5合目

コースレコード38分27秒で優勝のラヒーム・エマミ(ピシュガマン ジャイアントチーム)コースレコード38分27秒で優勝のラヒーム・エマミ(ピシュガマン ジャイアントチーム) photo:Hideaki TAKAGI日本の激坂として名高い「ふじあざみライン」を舞台にマスドスタート方式で行われる。セレモニーラン区間は13.2kmあり8時45分に小山町生涯学習センターをスタートし、本スタート地点に到着する。コースレコードは昨年にラヒーム・エマミ(ピシュガマン ジャイアントチーム)が出した38分27秒。2位は同じく昨年の総合優勝者ミルサマ・ポルセイエディゴラコール(タブリーズペトロケミカルチーム)が出した38分51秒。

そして日本人選手の最高は2010年にJツアー富士山で森本誠が出した42分11秒。昨年のTOJでは増田成幸(宇都宮ブリッツェン)がそれに迫る42分27秒で22位。さすがに日本人選手のステージ優勝は難しいが、できれば41分台で大きく離されないことを期待したい。



6月4日(土)第7ステージ 伊豆:122.0km 日本CSC周回(10周)

2015年より 最終周回で寺崎武郎(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)がアタック2015年より 最終周回で寺崎武郎(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)がアタック photo:Hideaki TAKAGI伊豆ステージはその標高差で、個人総合優勝争いのハイライトとなるステージ。平坦の無い上りと下りだけのコースの積算標高差は3,750mと発表されている。前日の富士山ステージでついた数十秒差は、このステージで挽回することが可能。そしてリーダーチームは集団コントロール力を問われる。

昨年は個人総合上位のイラン2チームが激しい攻防を繰り広げ、攻撃するピシュガマンに対しタブリーズは最終的にポルセイエディゴラコール1名となってエース自らが動き、ぎりぎりで耐えて首位の座を守った。その隙をついて最終周回に寺崎武郎(ブリヂストンアンカー)がアタック、これに反応したヴァレリオ・コンティ(ランプレ・メリダ)がステージ優勝した。伊豆は総合成績をかけた激しい攻防が見られるステージ。ぜひとも観戦に行こう。



6月5日(日)第8ステージ 東京:112.7km 日比谷シティ前パレード→大井埠頭周回(14周)

日比谷公園からスタートする東京ステージ日比谷公園からスタートする東京ステージ photo:Hideaki TAKAGI日比谷公園前をパレードスタートし、大井埠頭を14周する完全フラットなコース。総合逆転、ステージ優勝、ポイント賞、新人賞、団体総合などさまざまな思惑で各チームが戦う最後のステージ。例年積極的なアタックがかかるが、逃げが吸収されて集団ゴールスプリントという展開が最も多い。日比谷公園でスタート前のリラックスした選手に接し、そして周回コースの迫力あるスプリントを観戦しよう。

なお、同日に実業団JBCF大井埠頭ロードレースが行われる。昨年と同じでE2クラスタが9時15分スタートの3周回、E1クラスタが9時50分スタートの4周回だ。


photo&text:Hideaki TAKAGI

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