イタリアで「ジェンキ」と呼ばれ続ける山本元喜が逃げた。アルプス山岳決戦を控えた240kmの最長ステージでメイン集団から逃げ切った山本。翌日の「チーマコッピ」アニェッロ峠の様子を含め、ジロ第18ステージの現地レポート。



ニーバリの登場に観客が沸くニーバリの登場に観客が沸く photo:Kei Tsuji
ラ・ガゼッタ・デッロ・スポルトラ・ガゼッタ・デッロ・スポルト photo:Kei Tsuji地元出身のジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレック・セガフレード)は大人気地元出身のジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレック・セガフレード)は大人気 photo:Kei Tsuji
ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)の登場に合わせてピンクの風船が飛ぶステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)の登場に合わせてピンクの風船が飛ぶ photo:Kei Tsuji


スタートに並びに行く前に少し考える。このまま行けば今の調子的に完走は確実。完走だけがしたいのであれば今日は集団で休んでおいた方が良いと思う。しかし、それだけで良いのか?という思いもある。完走が確実で目標を達成できる以上、その次のステップに進まなければ成長は無い。

自分がジロに出ているのは経験を積むため。少しでも多くの経験を積むことが出来れば次に繋がる何かが見えるはず。今日どうすればいいか監督のジュリアーニに聞きに行けば「今日は長いし、明日と明後日はきついレースになる可能性が高いから休んだ方が良い」と言われる気がした。そう言われてしまえばそうするしかない。自分でどうするか決める為に今日はジュリアーニには聞きに行かなかった。結局のところ、明日明後日に山岳が控えていようと、今日の距離が最長だろうと「逃げたい」という思いは変わらずあったわけである。
(山本元喜のブログ「Genki一杯」より抜粋)



福井響メカニックからボトルを受け取る山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)福井響メカニックからボトルを受け取る山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsuji
ピエモンテ州の街を通過するピエモンテ州の街を通過する photo:Kei Tsuji
逃げグループのローテーションに入る山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)逃げグループのローテーションに入る山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsuji


山本元喜が逃げた。人数が多いためいつもより早口で逃げメンバーを読み上げるラジオコルサから「ヌーメロ・チェントトレントット(No.138)ヤマモト」という言葉を聞き出す。まだステージ優勝を飾っていない11チームが多くの選手を送り込んだ24名の逃げが集団を振り切ることは、レース前半の時点で、明白だった。

奇遇にも、新城幸也(当時Bboxブイグテレコム)が3位に入った2010年ジロ第5ステージのスタート地点ノヴァーラをレースは通過。広大な水田が広がるこのピエモンテ州の一帯はイタリア最大の米の生産地だ。

この日の逃げでイタリアでの知名度は一気に上がったように感じる。沿道のおじさんは「ヤマモト」や「ナガトモ」、そしてイタリア語読みの「ジェンキ」と叫んでいる。グランツール出場というハードルを越えて、さらにその舞台で本人の得意とする逃げに挑戦。結果はステージ23位。それだけを見ると逃げきったメンバーの中で最下位だが、本人も言うように「グランツールで逃げる」というプライスレスな経験が出来たわけだ。きっと気づかないところで自分の限界や基準がグッと上がっている。

なお、24歳という年齢は逃げメンバーの中で際立って若いわけではなく、ステージ優勝したトレンティンは26歳で2位のモゼールが25歳。山本よりも若い選手は5人いた(マッカーシー23歳、キュング、アメルスケタ、レガク22歳、モホリッチ21歳)。

大会一番のロングステージでの逃げが2連続超級山岳ステージに影響するのではないかと心配されるが、山本は「昨日のダメージが・・・とか言っている場合じゃない。一度完走すると決めた以上、完走しなければヘタレである」ともちろん諦めない姿勢を見せている。



逃げグループから脱落した山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)逃げグループから脱落した山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsuji
逃げグループから遅れた山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)が石畳坂を登る逃げグループから遅れた山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)が石畳坂を登る photo:Kei Tsuji逃げグループから脱落した山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)逃げグループから脱落した山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsuji


マッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ)は長距離ステージのスペシャリスト。これまでのプロレース8勝のうちの3勝が230kmオーバーのレース(もしくはステージ)。彼が勝った2014年ツール・ド・フランス第7ステージは234.5kmで2015年のパリ〜トゥールは231km、そしてこの日のジロ第18ステージが240km。今年のミラノ〜サンレモ(293km)では10位に入っている。

「トレンティン」という名前の通りトレンティーノ=アルト・アディジェ州出身。いつも陽気な性格で、イタリア訛りの少ない英語を流暢に使う。まだ26歳と若いが、実力を含めてプロトンの中では一目置かれる存在だ。10年後には彼がプロトンを仕切っている気もする。



サンマウリツィオの石畳坂を登るプロトンサンマウリツィオの石畳坂を登るプロトン photo:Kei Tsuji
マリアローザのステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)らを先頭に石畳坂を進むマリアローザのステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)らを先頭に石畳坂を進む photo:Kei Tsuji
最後のサンマウリツィオでモゼールとブランビッラを追うマッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ)最後のサンマウリツィオでモゼールとブランビッラを追うマッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ) photo:Kei Tsuji


日本のファンにとってもイタリアのファンにとっても(イタリア人がステージ4位までを独占した)刺激的な第18ステージを終えて、ジロはアルプス山脈に向かう。第19ステージのアニェッロ峠(標高2744m)は、当日よほど天候が悪化しない限り問題なく越えることが出来る見通し。休息日の月曜日に新たに雪が積もったものの、徹底的な除雪作業によって峠はクリアになっていると主催者は自信を見せており、地元行政や警察からもGOサインが出ている。頂上付近には最大で5mほどの雪の壁がコースの両側にあると報じられている。

通行不能になった場合に備えて主催者は代替コースを準備しており、セストリエーレから標高1854mのモンジェネヴル経由でフランス入りし、リスルを登ってフィニッシュする案が有力と見られている。これはフランスからイタリアに向かう土曜日の第20ステージも共通で、1級山岳コル・ド・ラ・ボネット(標高2715m)が通行不能の場合は迂回措置が取られる。大会ディレクターのマウロ・ヴェーニ氏は「代替コースは標高を下げる。テクニカルで厳しいことに変わりはなく、総合争いにふさわしいコースになるだろう」とコメントしている。

今のところ天気が崩れる予報は出ていないため、第19ステージと第20ステージは予定通り行われると見られているが、それよりも主催者を悩ませているのがフランス国内のガソリン不足だ。現在フランスでは労働法改革に反対するストライキが行われており、製油所が一時的に停止したためガソリンの供給が各地で間に合っていない状況。報道によるとフランス国内のガソリンスタンドの3分の1が給油不可の状態だという。そのため「必ずイタリア国内で給油しておくように」という緊急のコミュニケがプレスセンターで配布された。

雪とガソリンに不安を抱えながら、ジロは最後の山場を迎える。

text&photo:Kei Tsuji in Pinerolo, Italy
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の画像 エスケープ 2014年全日本選手権ロードレース
投稿者: 佐藤 喬
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