4月13日にベルギーで開催されたブラバンツペイル(UCI1.HC)でペトル・ヴァコッチ(チェコ、エティックス・クイックステップ)が勝利。ツキから見放されたクラシックシーズンを送っていたベルギーチームにチェコチャンピオンが勝利をもたらした。



丘陵地帯のアップダウンコースを進むプロトン丘陵地帯のアップダウンコースを進むプロトン photo:Tim de Waele


曇り空のフランドル地方をスタート曇り空のフランドル地方をスタート photo:Tim de Waele今年で開催56回目を迎えたブラバンツ・ペイルはベルギーのフランドル地方を駆けるセミクラシックレース。フランス語では「ラ・フレーシュ・ブラバンソンヌ(ブラバントの矢)」と呼ばれる。

先頭で石畳坂を走るジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)先頭で石畳坂を走るジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ) photo:Tim de Waele同一主催者のフランドルクラシックシリーズ(オンループ、ドワーズドア、ヘント、ロンド、シュヘルデ、ブラバンツ)の最終戦にあたるが、起伏に富んだコースはアルデンヌ・クラシック寄り。そのため、週末から始まるアルデンヌ3連戦(アムステル、フレーシュ、リエージュ)の前哨戦として毎年軽量なクラシックレーサーが集まる。

残り11km地点でアタックするピーター・ウェーニング(オランダ、ルームポット・オラニエ)残り11km地点でアタックするピーター・ウェーニング(オランダ、ルームポット・オラニエ) photo:Tim de Waeleレースの舞台となるのは、ベルギーの首都ブリュッセル南東に広がる丘陵地帯。地理的にはロンドに代表されるフランドルクラシックの開催場所よりも東だ。そのため丘陵は比較的緩やかとなり、激坂と呼ぶような急勾配の登りは登場しないのが特徴。

チームメイトのために先頭グループを率いるジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)チームメイトのために先頭グループを率いるジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ) photo:Tim de Waeleルーヴェンからオーベレルエイセに至る205kmコースには、合計26カ所の短い登りが設定されている。フィニッシュ手前には5つの坂「ハーガールト(平均勾配10%)」「ヘルトストラート(平均勾配4%)」「ホルストハイデ(平均勾配5%)」「エイケルダーラーン(平均勾配7%)」「シャヴェイ(平均勾配6%)」が詰め込まれた23.4km周回コースが用意されており、選手たちはここを3周する。「シャヴェイ」の登坂で締めくくられる1日の獲得標高差は約2200mだ。

最後の「シャヴェイ」でアタックするペトル・ヴァコッチ(チェコ、エティックス・クイックステップ)最後の「シャヴェイ」でアタックするペトル・ヴァコッチ(チェコ、エティックス・クイックステップ) photo:Tim de Waele最大5分先行したオリバー・ツァウグ(スイス、IAMサイクリング)ら4名の逃げは、レース中盤にかけて急速にリードを失っていく。タイム差が1分台に乗った残り80km地点からメイン集団ではカウンターアタックが続発。エティックス・クイックステップやロット・ソウダル、BMCレーシングが積極的に仕掛け、先頭グループを捉えながらシャヴェイの周回コースに入る。

登りで飛び出したペトル・ヴァコッチ(チェコ、エティックス・クイックステップ)が独走フィニッシュ登りで飛び出したペトル・ヴァコッチ(チェコ、エティックス・クイックステップ)が独走フィニッシュ photo:Tim de Waeleトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)らもアタックに加わったが、いずれの動きもメイン集団から1分以上のタイム差を稼ぐことができない。全ての逃げを吸収したメイン集団は、スプリント勝負に持ち込みたいオリカ・グリーンエッジ勢がコントロールした。

ブラバンツペイルを制したペトル・ヴァコッチ(チェコ、エティックス・クイックステップ)ブラバンツペイルを制したペトル・ヴァコッチ(チェコ、エティックス・クイックステップ) photo:Tim de Waeleフィニッシュまで26kmを残してティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)がアタックを仕掛けると、ここにジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)が合流。オリカ・グリーンエッジやディレクトエネルジー率いるメイン集団から20秒リードで最終周回に入る。

15秒ほどのリードを得たまま連続する坂を越えて逃げ続けたウェレンスとアラフィリップだったが、残り11km地点で50名ほどのメイン集団に吸収。続けざまにカウンターアタックし、5kmに渡って独走したピーター・ウェーニング(オランダ、ルームポット・オラニエ)も残り6km地点で捕まった。

残り5kmを切ったところで登場した「エイケルダーラーン」の登りで再びアタックは活発化。トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル)の飛び出しにデーヴィッド・タナー(オーストラリア、IAMサイクリング)とエンリーコ・ガスパロット(イタリア、ワンティ・グループグベルト)、アラフィリップ、ヴァコッチが合流して先頭は5名に。

積極的に逃げていたアラフィリップが献身的に先頭グループを率い、15名ほどに縮小したメイン集団を10秒引き離して残り1kmアーチ。残り700mの最終コーナーを曲がって「シャヴェイ」の6%斜面が姿を現すと、チェコチャンピオンがスパートを仕掛けた。

追いすがるギャロパンとガスパロットを引き離したヴァコッチがダンシングでフィニッシュへ。チームメイトにアシストされ、最後の勝負どころで一発アタックを成功させたヴァコッチが6秒差をつけて勝利した。

ヴァコッチは過去にツール・ド・ポローニュやツアー・オブ・ブリテンでステージ優勝を飾っている23歳のチェコチャンピオンで、2015年ツール・ド・フランスさいたまクリテリウムにも出場。その後バカンスを日本で過ごした選手だ。

「ルームメイトであり、U23時代からよく知ってる仲のジュリアン(アラフィリップ)の働きは素晴らしかった。自分を信頼して精一杯サポートしてくれたチームに感謝している。彼らの働きにこうして勝利で報いることができて良かった。本当にアメージングな気持ちだ」と、今シーズン3勝目を飾ったヴァコッチは語る。エティックス・クイックステップは今シーズン22勝目。アルデンヌ・クラシックでもヴァコッチとアラフィリップのタッグは注目だ。

2位のガスパロットは表彰台で天を指差した。「全力を尽くした結果であり、チームにとって重要な成績だ。でも、(亡くなった)アントワーヌ・デモアティエに勝利を捧げることが叶わなかったので残念な気持ちもある」とガスパロットはコメントしている。

選手コメントは各チーム公式サイトより。



ブラバンツペイル2016結果
1位 ペトル・ヴァコッチ(チェコ、エティックス・クイックステップ)    4h48’50”
2位 エンリーコ・ガスパロット(イタリア、ワンティ・グループグベルト)     +06”
3位 トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル)             +12”
4位 ブライアン・コカール(フランス、ディレクトエネルジー)          +20”
5位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
6位 ソニー・コルブレッリ(イタリア、バルディアーニCSF)
7位 マウリス・ラメルティンク(オランダ、ルームポット・オラニエ)
8位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)
9位 トムイェルテ・スラグテル(オランダ、キャノンデール)
10位 ロイック・フリーゲン(ベルギー、BMCレーシング)

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele