世界チャンピオンの勝利で幕を閉じた第100回ロンド・ファン・フラーンデレン。勝った者、負けた者、そして勝負開始を前にレースを去った者・・・。レースを沸かせたトップレーサーたちのコメントを紹介します。



1位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)

世界チャンピオンのペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)世界チャンピオンのペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ) photo:Makoto Ayano落車が多発するレースで徹底的に自分をサポートしてくれたチームに感謝だ。100km経過してからメカトラで前後のホイール交換を余儀なくされたし、とにかくスタートからフィニッシュまで全開だった。誰も協力してくれなかったので、とてもハードなレースだった。もちろん簡単なことじゃないけど、ライバルたちをふるい落として独走するのが最良の方法だった。

残り13kmを独走するペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)残り13kmを独走するペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ) photo:Tim de Waele(残り32kmで)クヴィアトコウスキーの賢明なアタックに反応。誰もが疲れているタイミングで、しかもチームスカイが4〜5人を揃えている状態だったので、チームスカイの選手と抜け出すのは理想的な展開だった。これまで経験した6回のフランドルの中で最もハードで、最も変わった展開だったと思う。ペースが緩んだのは10分程度。あとは常に全開走行だった。

レース中、ファビアン・カンチェラーラの調子の良さを感じたよ。でも彼がアタックに反応しなかったことは意外だったし、判断ミスだったと思う。自分にとっては良い展開で、20秒リードでオウデクワレモントを走ることができたし、パテルベルグでもまだアドバンテージがあった。カンチェラーラとファンマルクに追われる展開になって、彼らがスプリント勝負のために牽制することを願った。実際にその通りになったと思う。タイム差が数秒縮まってから再び拡大した。

レインボージャージを着てフランドルで勝つことは特別だ。先週亡くなったベルギーの2人と、昨日のトレーニング中に落車して出場できなかったマチェイ・ボドナールにこの勝利を捧げたい。来週のことは来週考える。今はこの勝利を味わいたい。

2位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレック・セガフレード)

最後のパテルベルグを登るファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレック・セガフレード)最後のパテルベルグを登るファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレック・セガフレード) photo:Makoto Ayano2位と1位は違う。歴史に名前が残るのは1位の選手だ。勝てなかった。それだけだ。

観客の声援に応えるようにフィニッシュするファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレック・セガフレード)観客の声援に応えるようにフィニッシュするファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレック・セガフレード) photo:Tim de Waele勝つためのレースをしたけど運は味方しなかった。前半はメカトラ続きで、落車の影響も受けた。ヤスパー・ストゥイフェンに限って言えば少なくとも3回はバイクチェンジした。それでもチームは全力で走ったし、自分も全力を尽くした。

2位は十分に凄いことだ。今朝、レースをスタートする時は特別な気分だったよ。勝つための挑戦した上での2位は悪くない結果。一晩寝ればハッピーになれると思う。今日は歴史を作りたかったけど、ペーター・サガンはどんな動きにも対応できる強さで、勝利に値する走りだった。

クヴィアトコウスキーとサガンが飛び出して、ファンマルクが合流した時に生まれた1秒差が決定的になった。ステイン・デヴォルデルを信頼して、他のチームの協力も得て追走。でも今日は前半からスピードが緩むポイントがないほど全開で、落車も多発するタフな展開だったので、追いつかなかった。ステインの走りには感銘を受けたよ。ヤスパーがチームカーのサポートを受けているときにメカトラに見舞われたグレゴリー・ラストを早々に失ったことが誤算だった。細かいミスやトラブルによってチャンスが遠ざかってしまった。

セプ・ファンマルクとは協調体制を築けていたし、ペーターとの差を詰めたかったけど、自分はスーパーマンじゃない。全開で踏んだ結果、追いつかなかった。1秒差が致命的になった。言い訳なんかしない。セプと協力してもペーターには追いつかなかった。彼が最強だった。ありがとう、フランドル。

3位 セプ・ファンマルク(ベルギー、ロットNLユンボ)

落車したセプ・ファンマルク(ベルギー、ロットNLユンボ)落車したセプ・ファンマルク(ベルギー、ロットNLユンボ) photo:Tim de Waele120km地点の下りで落車してからすぐに集団に復帰したものの、身体にダメージは残っていた。壊れていたバイクを交換したりと、落ち着いてレースに復帰するまでに時間がかかった。バイクのサドルが少し下がっているように感じたものの、またスペアバイクに乗り換える時間なんてなかった。トラブルから復帰する時にはチームメイトたちに助けられたよ。

終盤にかけて脚の感触がよかったので、登りは問題なかった。サガンとクヴィアトコウスキーの動きが決定的だと判断してすぐさま反応。後ろの集団は牽制していたので理想的な展開だった。

4位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)

ディフェンディングチャンピオンのアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)ディフェンディングチャンピオンのアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ) photo:Makoto Ayano自分のレースには満足している。チームの走りは素晴らしく、常に集団前方のポジションをキープしてくれた。でも終盤の登りでカンチェラーラとサガンには付いていけないだろうと思っていたよ。オウデクワレモントで彼らに先立って動いたものの、引き離すような脚力はなく、逆にポジションを失ってしまった。そこからルーク・ロウと協力してパテルベルグで前のグループに追いつき、集団スプリントで4位という成績を残すことができた。

デパンヌでは良い成績を残したけど、調子が最高とは言えない状態だったので、登りで有力選手たちには敵わないと思っていた。4位は悪くない結果であり、調子も悪くない。さらに調子を上げることができればパリ〜ルーベの表彰台が見えて来る。ルーベとはフランドルほど相性が良くなくて、今まで良い感触で走れた試しがない。今年こそ良い走りがしたいと思っている。

5位 ルーク・ロウ(イギリス、チームスカイ)

チームとして協調して戦うことができた。常にレースの前方で展開していたし、コッペンベルグ後に生まれたすべての動きに選手を送り込んでいた。うまくレース運びしたことに個人的には満足している。レースには勝てなかったけど、勝利に向けてステップアップできたと思う。

最後のパテルベルグのダメージは強烈だった。最後は脚を残している者による戦い。その時点でまだ調子が良かったので、クリストフとアタックしてG(ゲラント・トーマス)のグループに合流した。でも追いつくタイミングが遅すぎた。フィニッシュまで追い風が吹いていたので、その前のグループ(サガン、カンチェラーラ、ファンマルク)に追いつくのは不可能だった。パテルベルグでの10秒は他のレースの1分に値する。小さいタイム差でも詰めるのは本当に難しいんだ。

火曜日にパリ〜ルーべのコースを試走して、水曜日にシュヘルデプライスに出場する。そのあと休息して、リカバリーして、ルーベに挑むよ。

7位 イマノル・エルビーティ(スペイン、モビスター)

逃げグループを率いるイマノル・エルビーティ(スペイン、モビスター)逃げグループを率いるイマノル・エルビーティ(スペイン、モビスター) photo:Tim de Waeleとにかく疲れたよ(笑)大観衆に包まれた最高の雰囲気の中、いくつもの壁に挑む1日が終わった。最高の走りができたと思う。サガンとクヴィアトコウスキー、ファンマルクが後ろから追いついてきた時、彼らはとにかく速くて、食らいつくのがやっとだった。最後の瞬間までトップ10に入れるかどうか分からなかったよ。

苦しみながらパテルベルグを越えた後、テルプストラやクリストフと合流して、そこからはスプリントに備えた。ファンバールレを抜いて6位に入れるかと思ったけど、全身が攣りまくりだったし、それ以上ペダルに力が入らなかった。

これから長距離ドライブして家に帰る。家族に会って、妻と息子とハグして、今まで支えてくれたことへの感謝の気持ちを伝えたい。今はこの結果を味わいながら休んで、アレハンドロ・バルベルデとともにアルデンヌに挑むよ。アルデンヌも重要なチャレンジであり、そこでも結果を出したい。

8位 ゼネク・スティバル(チェコ、エティックス・クイックステップ)

チームとして全開で攻めたものの、勝利には届かなかった。何かが欠けていた。サガンとクヴィアトコウスキーがアタックした時、カンチェラーラにも差を詰めることができなかったし、危険な動きであることは明らかだった。勝ちたかったが、全力を尽くしても届かなかった。

9位 ディミトリ・クレイス(ベルギー、ワンティ・グループグベルト)

個人的にもチームにとっても厳しい1週間だった。友人を2人(デモアティエとミングハール)も失ったんだ。だから今日は何かを果たしたいと思っていた。チームメイトのデモアティエに敬意を表して、ワンティのメンバー全員が全力で走った。調子が良かったのでオウデクワレモントでアタック。今日は理想的な展開に乗ることができた。パリ〜ルーベに向けて自信を得たし、モチベーション高く挑みたい。

10位 ニキ・テルプストラ(オランダ、エティックス・クイックステップ)

ハードなレースだった。前半から素晴らしいアシストぶりを見せてくれたイーリョ・ケイセ、ニコラス・マース、トニ・マルティンには敬服する。ステイン・ファンデンベルフの力を借りてオウデクワレモントで飛び出したファビアン・カンチェラーラを捉えたけど、その後のパテルベルグでのファビアンの加速には付いていけなかった。珍しく気温が高い1日だったので脚が攣りまくっていた。チーム力の強さを確認できたことはパリ〜ルーベへの自信になる。

15位 トム・ボーネン(ベルギー、エティックス・クイックステップ)

レース中盤の大落車に巻き込まれて手首を痛めてしまった。それからずっと腕と手首に痛みを感じながら走った。今日は間違いなくサガンが最強だった。パテルベルグでのサガンのアタックは尊敬に値するものだった。誰もが予想しているアタックを成功させるのは簡単なことじゃない。世界チャンピオンの独走勝利は素晴らしいパフォーマンスだ。サガンの勝利数は多くないかも知れないけど、彼の勝利はどれも美しく、クリーンだ。彼が勝ったと聞いて少し嬉しい気持ちになった。

エティックス・クイックステップも文句無しの走りをした。他の動きを待つのではなく、自ら動き、最後まで諦めなかった。集団を牽引する動きがたとえ他チームに有利に働いたとしても、そうするしかなかった。来週のパリ〜ルーベでは今日のロンドで証明したチーム力が生きるだろう。引き続き攻撃的に走りたい。手首の痛みを除いて、自分の調子は良いよ。

DNF グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)

悪夢のような1日だった。とても失望している。ただ言えることは、落車して地面にうずくまっていることが苦しかった。立とうと思ったけど、どこかが骨折したらしく、立てなかった。この事実を受け入れるのに数日かかると思う。必ずもっと強くなって返ってくるけど、フランドルとルーベ、アムステルという、シーズンの中で最も狙っていたレースを欠場しなければならないので、これ以上の失望感はない。難しい状況だけど対処する以外に方法はない。

選手コメントは各チーム公式サイトならびにヘットニュースブラッド紙より。

text:Kei Tsuji