市民レースの最高峰、ツール・ド・おきなわ市民210kmに優勝した高岡亮寛(イナーメ信濃山形)の自筆レポートをお届け。3回めの勝利をものにしたレースの組み立て方、パワーデータ、そして当日までの年間通じての生活が綴られる。



朝日を浴びながらスタートを待つ市民210kmの選手たち朝日を浴びながらスタートを待つ市民210kmの選手たち photo:Makoto.AYANO
中学生時代から自転車競技に熱中し、2000年に大学4年生でインカレを最後に競技を一旦終了。2006年に社会人の趣味としてツール・ド・おきなわに出場してから、本年で10年連続出場となる。市民210km(過去は200km)には2007、2011年と優勝していて、是非とも3勝目を狙いたい。

2015年シーズンは家庭の事情でだいぶレース活動が少なかった。春先はほとんどレースは諦めていて、6月末の全日本選手権に向けて4月頃から徐々にコンディションを上げていった。

5月に木祖村2daysで総合優勝をしてようやく自信を取り戻せた。6月末の全日本選手では良い結果は出せなかったけど、自分の走りには満足できた。8月くらいまではだいぶ緩い感じで練習の力を抜く。

9月頃からおきなわを意識して、また練習に集中していく。プロのレースであるチャンピオンレースに出るか市民レースに出るか決めかねていた。しかし9〜10月の家族の予定や海外出張のスケジュールが見えてくると、レースや練習を重点的にできない週末が多いことが判明。プロのレースで完走を目指すよりも、市民レースで優勝を目指してあがいてみる事に決めた。

高岡亮寛(イナーメ信濃山形)、小畑郁(なるしまフレンド)、白石真悟(シマノドリンキング)らが市民210kmの最前列に並んだ高岡亮寛(イナーメ信濃山形)、小畑郁(なるしまフレンド)、白石真悟(シマノドリンキング)らが市民210kmの最前列に並んだ photo:Makoto.AYANO
制約条件が多ければ多いほど、工夫して限られた時間で練習できてなんとかなるんだな、と自分でも感心するくらい10月は集中して練習できた。5日間でロンドンーNYを周る強行日程をこなしつつも、月間で2100kmくらい走れた。

11月に入ったら練習量を一気に落として疲れを抜く。体重は数年ぶりの59kg台まで落ちる。減量しすぎてパワーが落ちてしまっていないか? と強い不安に駆られたけど、疲れを抜きつつも短い高強度練をした時にそれなりにパワーも出ていることも確認できたので、レースには必勝で臨む。口には決して出さなかったけど、「格の違いを見せつけて勝ちたい」と思っていた。

前夜の就寝は23時前。どうせ早くベッドに入っても眠れないだろうから自然体で。 緊張して熟睡とはいかず、けどいつものことなのでそんなに気にしない。

スタート3時間前の4:45に起床。 ホテルの部屋で朝食を食べる。

昨夜の夕飯を名護曲(なぐまがい)で食べて、その際に朝食用にクァファジューシーのおにぎりも作ってもらった。 ほかに家から持ってきたオートミール・ミューズリーミックス、自然食系のパン、バナナなど多めに用意。 気分と体調によって何を食べるかと、どのくらい食べるかを決める。

今回は前日までのカーボローディングがうまくいったからか、目覚めてあまりお腹が空いていなかったので、結果的に朝食はかなり少なかった。 まぁ当日朝にたくさん詰め込むよりは、前日までに時間をかけて身体に充填する方が正解だろう。

6時過ぎにホテルを出発してレース会場に。同じ市民210kmに出るチームメートのまこっち(高橋 誠)と合流。 着替えてイナーメアップオイルを脚に軽く塗るくらい。時間には余裕がある。

高岡亮寛(イナーメ信濃山形)の優勝バイク TIME ZXRS Sサイズ(2013モデル)高岡亮寛(イナーメ信濃山形)の優勝バイク TIME ZXRS Sサイズ(2013モデル)
レース仕様の自転車。今までのレースでしなかったこととして、シートチューブのボトルケージにつけていた携帯用ポンプ台座を今回は外した。小さい事だけれど、 とにかく100%出来る準備は全てやってレースに臨むという意気込みだ。

スタート地点へ移動して今回もホイールを拝借したGOKISOさんのブースで空気を入れ直す。少し高めで前後共に8.5気圧。予想最高気温は29度と高いのでスタート時点までダブルボトルには手をつけずにペットボトルの水をスタート直前まで飲む。暑さ対策としてインナーウェアはなし。軽くもなるし。

今回のライバルとしては、優勝2回の白石君、ショップを開業した岩島君、WALKRIDEの青木君、なるしまフレンドの小畑さんあたりを考えていた。

あと練習で良い成果が出てきているチームメートのまこっちも一緒に表彰台乗れたら良いな、などと考えながらスタートラインへ。



朝陽を浴びながら名護市街を出発していく市民210kmの選手たち朝陽を浴びながら名護市街を出発していく市民210kmの選手たち photo:Makoto.AYANO
7:47にスタート。スタート後は落ち着いて集団前方をキープ。今年はいつもにも増して前方をキープしていた気がする。これは落車だけは絶対に避けたいという気持ちの表れなのではないだろうか。

レース序盤の1時間くらいは本部半島の軽いアップダウンを走る。上り手前では先頭近くまで上がり、上りはマイペースで走って順位を下げながら脚を極力使わないように走る。そうやって上りをリラックスして走るようにしていたら、本部半島はほとんどダンシングしないで走りきってしまった。

とにかく上りは軽い。これは調子が良いという事ではあるんだけど、一方で普段とは違った走りになっているので使う筋肉も違ってきたいたように思う。

いつまでも続くような大集団の市民210kmのプロトンの隊列いつまでも続くような大集団の市民210kmのプロトンの隊列 photo:Makoto.AYANO
本部半島を周ったら海外線を一路北上。毎年風が強いんだが今年は追い風基調。展開的には先頭8名ほどの逃げが決まって差が徐々に開いていく。北上する海岸線に出てから差が2分台から少しずつ広がる。

例年の事なので1回目のダムの上りまでに3−4分差なら問題なくて、7kmほどの上りで先頭は人数を減らしつつ後続集団はペースを上げて1-2分の差を詰めて.....という展開になると予想のもと、落ち着いて過ごす。

市民210kmのメイン集団で走る高岡亮寛(イナーメ信濃山形)市民210kmのメイン集団で走る高岡亮寛(イナーメ信濃山形) photo:Makoto.AYANO例年通り、ここらで皆に声かけて小休止/一時停戦を呼びかける。飲食しながら5.5時間も走るレースだから。どこかで停まりたいなと思っていた選手はまとまってストップして、集団はしばらくペースを落として待ち、その後の山岳に向けてコンディションを整えるというのが通例。チームメートやなじみの有力チームに声をかけてから集団先頭に出て、手を挙げてアピールしてから路肩にストップ。

アレっ、、誰も停まらない。「一人で追いかけるのは辛いなぁ」なんて思いつつ、軽量化。

焦る気持ちと、後半に備えてコンディションをバッチリにしたい気持ちが交錯。データを見たら70秒ほど停まっていた。急いでコースに復帰して再出発。けれど平地をあのスピードで進む集団を一人で追うのってかなり厳しいぞ。これでレースから離脱したら笑い話にしかならないけど、実際数年前にディフェンディングチャンピオンとホビーの強豪タイムトライアリストの二人がストップした後に、結局集団復帰できずというケースがあった。「もしや....」最悪のシナリオが脳裏をよぎる。

とにかく全く見えない300名以上の大集団を追って延々とタイムトライアルのごとく全力で走る。ハイ、序盤なのにかなり全力。データを見たら2分の最高出力はこの時で400Wだった。心拍も173まで上がっている。

集団が40km/hで走っているとすると、70秒だと750m以上前に行ってしまう。46km/hで追いかけたとしても6分で600mしか差が縮まらない。大集団の先頭から最後尾までは150mはあるだろうから、そのくらいの追走が必要になる。TTバイクでもないのに46km/h単独巡行って、かなり限界。

実際データで確認すると、4kmほどの追走を5分10秒くらい346Wでなんとか集団最後尾を捉えることに成功。集団が見えた時の安堵感ったら。

あわやレース終了かというハプニングを乗り越えて無事集団復帰したのが、ダムの上り口までまだ12km。集団先頭まで上がって息を整えるのにはまだ十分な距離があったのは救いだ。

複雑な気持ちが色々あったけど、とりあえず今日優勝するんだという強い気持ちに変わりないので、気持ちを落ち着かせて勝負に集中する。

1回目の普久川ダムへの与那の坂を登る先頭集団1回目の普久川ダムへの与那の坂を登る先頭集団 photo:Makoto.AYANO一回目の普久川(フンガワ)ダムの上り。例年通り先頭付近で上りに突入する。例年通り上りに入りすぐから常に誰かがペースを上げて落ちない。

私は常にペースを上げる人の後ろにぴったりとついて2番手で上る。ここで勝負をかける必要はないけど、終盤に向けて足を削っていく為に速いペースで進むのは大歓迎。今日のコンディションで上りで遅れるということは有り得ない。

一回目のダムの上りはほとんどBeachの片岡選手が先頭固定で進む。私は常に先頭をマーク。データ的には、約7kmで17分ほど290W、160/170拍、76回転。まだ余裕はある。補給所で水を1本受け取る。補給所過ぎる頃には上りで少し遅れた選手たちも合流してきてまだまだ大集団。60名ほど。

市民210kmのメイン集団市民210kmのメイン集団 photo:Makoto.AYANO下り基調のアップダウンをこなして、少し長めの上りもこなしつつ、今度は西の海岸線へ出て南下。その海岸線でなるしまフレンドの奈良選手と倉林選手という強豪2名が抜け出して逃げる。40秒ほどまで広がったけど、1分の差であればダムの上り7kmで吸収できるので焦らない。

2回目の上りもアタックはほとんどかからずに落ち着いている。今度はVCフクオカの井上選手が先頭固定で牽引。私は再びほぼ2番手固定。

上りの後半でWALKRIDEの青木選手がアタックして飛び出す。勢いは良かったけど、10秒と差は開かない。ホビーレースの場合、切れ味良いアタックで飛び出すよりは、なるべく力使わずにじわっと差を広げて逃げた方が良い。アタックの切れ味が良すぎると一緒に逃げに乗る人がいなくって、結局一人では逃げられず無駄に力を使って落ちてくるというのがよくあるパターン。そういう意味で青木選手のアタックも「そのままゴールまで行っちゃうよ!」というくらいの覚悟がないのであれば、あそこまで勢いよく行く必要はないんじゃないか。ペースを保ったまま徐々に差を縮めながら走り、山岳賞ポイント過ぎて下りで吸収。

警戒した岩島啓太(MIVRO)。なるしまフレンドから独立し、プライベートショップを経営するサイクリストに警戒した岩島啓太(MIVRO)。なるしまフレンドから独立し、プライベートショップを経営するサイクリストに photo:Makoto.AYANO補給所過ぎで岩島選手、田崎選手が二人で先行した。二人とも強豪だし、ここからが勝負区間なので、下り区間で数名で追いかける。安波小学校までの下りで最高速度82.2km/hを記録。そこで先頭二人に追いつく。6〜8名くらい少し集団から抜けた感じか。

高岡亮寛のペースアップに遅れだす先頭集団の選手たち高岡亮寛のペースアップに遅れだす先頭集団の選手たち photo:Makoto.AYANO抜けたと言っても、せいぜい2〜3秒差ですぐ集団は来るんだけど、平坦を一瞬走ってからすぐに勝負どころの上りが始まるので、例え数秒でも下りで稼げるのは小さくない。後ろはその数秒を埋めるために休めないまま勝負どころに突入しなければいけないのだ。

そしていよいよ勝負が始まる安波小学校からの上りへ。

ところで、2回目の普久川ダムの前に右脚を攣りかけた。最近はほとんど攣ることがなかったんだが、やっぱり暑さの影響なのか。給水と定期的にMag-Onジェルの摂取を心がける。

多分、レース用にタイムExpresso15というペダルを使っているんだが、そのペダルはまだ使い込んでいないので、クリートと接触するプレートの状態が新しくって、それで練習用ペダルの多少削れたモノと微妙に感触が違って、それも普段と少し違う一因なのかな、と走りながら考えた。

それはさて置き、勝負どころへ。ほぼ毎年と言っていいほどこの上りでは人数を大きく減らす動きがある。今年も事前作戦通りこの高江の坂で仕掛ける。

数秒の差だと思うけど、少人数で上り始める。岩島選手が気持ち強めに入ったと感じた。考えていることは一緒か。

まだまだ余裕はあるので、自分のペースでさらにペースを上げる。2回目の普久川ダムで長く先頭走っていたVCフクオカの井上選手が呼応してくる。けど先頭に出てペース上げるほどではない。どちらかという苦しそうな感じ。私はまだ余力は少しあるレベルで、頂上までずっと落とさずに牽いてみる。

データでみると、レース中のピーク5分がここで353W。6分で337W。ってことは、この坂での勝負は5分程度だったみたい。

高岡亮寛(イナーメ信濃山形)、青木峻二(ウォークライド) 、白石真悟(シマノドリンキング)、井上亮(VCフクオカ)の4人が抜け出す高岡亮寛(イナーメ信濃山形)、青木峻二(ウォークライド) 、白石真悟(シマノドリンキング)、井上亮(VCフクオカ)の4人が抜け出す photo:Makoto.AYANO6人くらいいた気がするが、その後の緩い下り基調のアップダウンで人数が4人まで絞られる。メンバーはWALKRIDE 青木選手、VCフクオカの井上選手、シマノドリンキングの白石選手。ゼッケン401、403、405、とJPTという実業団のプロカテゴリでも走っている青木選手なので、順当に決まったという感じのメンバーだ。

奇襲でもなんでもなく、勝負どころのペースアップで抜け出たメンバーなので、後ろの集団が強力に追走してくることはなく、これで決まるだろう。残り60kmくらいかな。集団との差はしばらく1分未満なので、まだまだ油断はできない。4人でローテーションを回す。

上りでは井上選手が強そうだけど、今日の私が上りで負けることはない。青木選手はパワフルそうだけど、上りでは重そう。ゴールまでのコースプロファイルを考慮すると、途中で千切ることができるだろう。

やはり私と同じく二度の優勝経験がある白石選手が強敵かな。白石選手は数年前に集団スプリントでも優勝しているし、井上選手は未知数なので、どこかで引き離して独走に持ち込みたい。スプリントでの勝負はしたくない。

白石真悟がパンクで遅れ、3人になった高岡亮寛(イナーメ信濃山形)のリードする先頭グループ白石真悟がパンクで遅れ、3人になった高岡亮寛(イナーメ信濃山形)のリードする先頭グループ photo:Makoto.AYANO
4人で快調に逃げていたが、アクシデント発生。白石選手の前輪がパンクした。序盤であれば待つのだろうが、45秒程度の差で後ろも3人くらいで追走しているらしかったし、ゴールまでもう40kmを切っていたと思うので、残念ながら3人で逃げを続ける。ニュートラルバイクが停まって前輪交換していたが、それも手際良いとは言えず、タイムロスは小さくないだろうな。

3人の逃げへと状況が変わる。相変わらず協調体制は取れており、均等に回る。どこかの上りで青木選手が遅れることは確定的なので、どこで千切るかな。まずは一人ちぎっておいて、井上選手と1対1の勝負に持ち込もう。二人に協力されて2対1での勝負になったら不利だから。などと冷静に考えながら進む。

最後の補給所を過ぎて昔の源河への分かれ道を過ぎて、いよいよラスト30kmを切ってアップダウンのきつい区間へ。

慶佐次の海岸線を逃げ続ける井上亮(VCフクオカ)、高岡亮寛(イナーメ信濃山形)、青木峻二(ウォークライド)の3人慶佐次の海岸線を逃げ続ける井上亮(VCフクオカ)、高岡亮寛(イナーメ信濃山形)、青木峻二(ウォークライド)の3人 photo:Makoto.AYANO
最初の上りが一番キツイ。様子を見つつペースを落とさないように上る。井上選手も呼応するようにしっかりついてくる。やはり青木選手がきつそうで、ギリギリな感じだけど粘っている。ここはアタックせずにまず一人切り離して二人の勝負に持って行こうと思い、じわじわと速いペースで上る。ついに青木選手が千切れる。

パンクにより遅れた白石真悟(シマノドリンキング)と、小畑郁(なるしまフレンド)、田崎友康(F(t)麒麟山レーシング)による追走パンクにより遅れた白石真悟(シマノドリンキング)と、小畑郁(なるしまフレンド)、田崎友康(F(t)麒麟山レーシング)による追走 photo:Makoto.AYANOよし!と思いペースを維持していると、井上選手も限界になり遅れてしまう。ここで勝負をかけるのもいいけど、後ろの二人が近いので、協調して追走されるとイヤだな。とは思ったけど、アタックして振り切ったわけではなく自分のペースで走れているので、このままイケル可能性も十分ある。

ラスト27kmくらいでついに独走態勢に入る。上りは良いんだけど、平地で内転筋が攣りそうになる。しかも平地からの上り返しが一番辛い。けど、後続二人も強く追走できる脚は残っていないはずなので、大きくペースダウンしないようにとにかくギリギリで走り続けるしかない。集中してゴールまで走り抜くことを考える。

後続との差は40秒台で推移して、1分以上にはなかなか広がらない。しかも審判バイクに聞いたら「後続は二人」と。風の強い海岸線も長いのでしんどいなぁと思いながらも、上りでは少しアドバンテージがあるはずなので諦めずに進む。「脚が攣ってストップしませんように」と祈りながら。今回の補給食のメインはMag−Onのジェル。「効くはずだ」と信じる。

28kmを残し独走に出た高岡亮寛(イナーメ信濃山形)28kmを残し独走に出た高岡亮寛(イナーメ信濃山形) photo:Makoto.AYANO
カヌチャベイリゾート手前の上りが正念場。ほとんど脚が攣った状態で這い上がるようにして上る。その後の海岸線もヤバイ。けど断続的に続くアップダウンよりも長く続く上りだとリズムがつかめて走りやすいので、最後の羽地ダムの麓までたどり着けば勝てるだろうと思い、頑張る。

独走で羽地ダムへの上りに入った高岡亮寛(イナーメ信濃山形)独走で羽地ダムへの上りに入った高岡亮寛(イナーメ信濃山形) photo:Makoto.AYANO練習時からやっていた、空気抵抗を強く意識したフォームで頭を下げながら海岸線を行く。羽地ダムの麓で1分弱の差で、最後の上りへ。

一人逃げは捕まったら勝負は終わるという不安と恐怖はあるけど、駆け引きなど余計に考えることはなく、迷いなく走れるメリットがある。ただ14km先にあるゴールまで全力で走り続けることだけを考えて、上る。

頂上付近で確か「1分10秒差」と聞いたので、これはイケると思った。けど実際は下って左折してからの平坦が辛かった。ずっと上っていたいと思うほど、上りはいいんだけど平地で脚が攣りそうになる。普通に走れば安全なタイム差があるので、脚が止まらないギリギリの線で走り続けて、無事逃げ切り。

ゴールラインが近づいてきて、コースサイドには観客がたくさんいる中を独走で走り抜ける10数秒間は、何度味わっても最高の瞬間だ。

市民210kmのゴールに単独で飛び込む高岡亮寛(イナーメ信濃山形)市民210kmのゴールに単独で飛び込む高岡亮寛(イナーメ信濃山形) photo:Hideaki.Takagi
チャンピオンジャージを着てオリオンビールを飲み干す高岡亮寛(イナーメ信濃山形)チャンピオンジャージを着てオリオンビールを飲み干す高岡亮寛(イナーメ信濃山形) photo:Makoto.AYANO後続は二人でゴールまで来てスプリントで決着したらしく、2位青木選手、3位井上選手。
歴代トップの高山忠志さんの記録に並ぶ、という念願が達成できた。

市民210km表彰 優勝した高岡亮寛(イナーメ信濃山形)、2位青木峻二(ウォークライド)、3位井上亮(VCフクオカ)市民210km表彰 優勝した高岡亮寛(イナーメ信濃山形)、2位青木峻二(ウォークライド)、3位井上亮(VCフクオカ) photo:Makoto.AYANO『落車とパンクだけはしないようにして自分の力を最後まで出し切れれば満足』という気持ちと、『勝つかどうかより格の違いを見せつけて勝ちたい』という、表には出さなかった気持ちとを両方持ったままスタートした。一年で一番重要なイベントで、これ以上ない結果を残すことができて、とても幸せだ。
レース活動を黙認してくれている家族や、休み中に仕事をカバーしてくれている同僚や、イナーメ関係者、各種サプライヤーさんに感謝です。

来年も必ずコンディションを合わせておきなわに戻ります。

【走行データ】
走行時間:5時間27分
走行距離:207km
出力:平均203W、最大588W(NP 247W)
心拍数:平均144拍、最大176拍

【補給食】
100kcalくらいのミニあんぱん×3、同じくらいの大きさのおにぎり×1
Mag−Onジェル×8、その他ジェル×4
ドリンクは水のみ
以上で、2/3くらいをレース中に消費した。

【機材】
フレーム: TIME ZXRS Sサイズ(2013モデル)
サドル: Bontrager inForm RXL 146
ステム: TIME純正ステム120mm
ハンドル: Oval R950 420mm
メーター: Pioneer SGX-CA500
パワー計: Pioneer ペダリングモニター
クランク: DA9000 170mm
ペダル: Time Expresso15
ホイール: GOKISO GD2 ワイドクリンチャー38mm
ギア: 53-39 x 11-25
タイヤ: Continental SuperSonic 23c / ミシュラン ラテックスチューブ
ボトルケージ:OGK
変速/ブレーキ:シマノ Dura Ace Di2 / 9000系
ヘルメット: POC Octal AVIP MIPS Mサイズ
シューズ: BONT Vapor S
チームウェア:Wave One
サングラス: OAKLEY Jawbreaker

text:高岡亮寛 Akihiro.Takaoka
photo:Makoto.AYANO

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