灼熱の鈴鹿サーキットで行なわれたインターハイロード。85kmを逃げ続けた渡邉歩(学法石川)が4人のスプリントを制しビッグレース初優勝。学校対抗総合は祐誠(福岡)が春夏連覇達成。



渡邉歩(学法石川)が85kmを逃げ優勝渡邉歩(学法石川)が85kmを逃げ優勝 photo:Hideaki TAKAGI
シード選手たちが最前列でスタートシード選手たちが最前列でスタート photo:Hideaki TAKAGIスタート直後に石上優大(横浜)らが抜け出すスタート直後に石上優大(横浜)らが抜け出す photo:Hideaki TAKAGI1周目に10人が抜け出す1周目に10人が抜け出す photo:Hideaki TAKAGI2015年インターハイを締めくくるのはロードレース。4日目最終日8月10(月)に個人ロードレースが鈴鹿サーキット(三重県)で行なわれ、序盤から逃げた渡邉歩(学法石川)が途中でブリッジした選手ら4人でのスプリントを制し優勝した。メイン集団はその8秒後、中川拳(帯広三条)を先頭にフィニッシュ。

6年ぶりの鈴鹿サーキット

インターハイロードが鈴鹿サーキットで行なわれるのは6年ぶり。前回2009年大会ではアタックを繰り返した山本元喜(当時奈良北)が逃げ切り勝ち。山本のその後の活躍は衆知のとおり。6月の全日本選手権ロードジュニアでは、逃げ切りを図りたい選手たちとスプリントに持ち込みたい選手たちの攻防を沢田桂太郎(東北)がスプリントで制した。このインターハイロードでは逃げたい選手たちが積極的にアタックを繰り返す展開に。

スタート直後に10人の逃げ

ゼッケン1番は昨年の同大会を2年生で5位に入った中村圭佑(昭和一学園)。同2番は3月の選抜ロードで優勝の石上優大(横浜)。彼ら7人のシード選手が最前列に並び8時40分に144人がスタート。5.81km×18周=104.58kmのレース。ホームストレートを上りシケインに入るころには石上ら6人ほどが早くも抜け出す。さらに選手たちが合流しスタートから5分で10人の逃げができる。

メンバーは石上、日野竜嘉(松山聖陵)、沢田、浜田大雅(藤井寺工科)、成海大聖(普天間)、蠣崎優仁(伊豆総合)ら10人。有力選手が多数含まれる危険な逃げだったが、意思がかみ合わなかったこととメイン集団を学法石川らが引いたため、4周目に入った時点で全員が吸収される。その3周目終了時のスプリント賞は沢田が獲る。

5周目に渡邉歩ら6人が逃げる

5周目に沢田が渡邉を連れて抜け出し6人の逃げができる。メンバーは沢田、渡邉、大前翔(慶応)、菅野将志(横浜創学館)、渡邉真郎(鹿町工)、松崎広太(取手一)。6周目に入る時点で沢田が抜けて逃げは5人に。この中で渡邉歩と大前はフィニッシュまで85kmを逃げ続けることに。

5周目、渡邉歩(学法石川)、大前翔(慶応)ら6人が抜け出す5周目、渡邉歩(学法石川)、大前翔(慶応)ら6人が抜け出す photo:Hideaki TAKAGI10周目へ、追走に出た浜田大雅(藤井寺工科)ら3人10周目へ、追走に出た浜田大雅(藤井寺工科)ら3人 photo:Hideaki TAKAGI


メイン集団はこの逃げを容認し最大で2分差にまで広がる。暑さも手伝い残り距離を考えての判断だ。ペースの上がらないメイン集団から数人規模の追走がかかるがすべてメイン集団に戻る。後半に入った12周目で先頭5人とメイン集団との差は30秒にまで縮まる。ここで後方を走っていた沢田がリタイア。「体調が上がらなかったので逃げを作ってから離れた」と中4日で世界選トラックへ向けこの日から移動する沢田。

14周目から4人が逃げ続ける

13周目に入った時点では5人のままだったがこの周回で渡邉真郎と松崎が脱落。代わって中村と石原悠希(真岡工)が25秒差のメイン集団からのブリッジに成功し5人に。さらに14周目に入り菅野が脱落し先頭は渡邉歩、大前、中村、石原の4人に。この4人は協調してローテーションしフィニッシュまでの30kmを逃げ切ることになる。

沢田桂太郎(東北)が11周を終えてリタイア沢田桂太郎(東北)が11周を終えてリタイア photo:Hideaki TAKAGI12周目へ、メイン集団も追い上げる12周目へ、メイン集団も追い上げる photo:Hideaki TAKAGI

14周目の先頭4人。中村圭佑(昭和一学園)と石原悠希(真岡工)がブリッジに成功14周目の先頭4人。中村圭佑(昭和一学園)と石原悠希(真岡工)がブリッジに成功 photo:Hideaki TAKAGI15周目へ入るメイン集団。有力選手たちが抜け出せない15周目へ入るメイン集団。有力選手たちが抜け出せない photo:Hideaki TAKAGI

逃げ4人とメイン集団とは1分差にまで再び広がり終盤へ向かう。このメイン集団からは石上、吉岡衛(奈良北)、北桑田高勢、榛生昇陽高勢らが抜け出しを計ったりペースアップを図るが連携した動きにならず、結局は集団のままで先頭4人を吸収にまでは至らない。ラスト2周の時点でその差は50秒。先頭4人の逃げ切りの可能性が出てくるがメイン集団の動きは変わらない。

最終周回へ入る先頭4人。メイン集団とは40秒差最終周回へ入る先頭4人。メイン集団とは40秒差 photo:Hideaki TAKAGIラスト3km、協調してローテーションする先頭4人ラスト3km、協調してローテーションする先頭4人 photo:Hideaki TAKAGIラスト1周で40秒差

ラスト1周へ入り先頭4人とメイン集団との差は40秒。先頭は協調しローテーションをして逃げ切りを図る。メイン集団はここにきても単発のアタックを繰り返し集団で追う動きにならない。そして最終カーブを経てホームストレートの700m先にまず4人が、そして抜け出した2人とすぐにメイン集団が現れる。まず仕掛けたのは石原、次に大前。そして中村も仕掛けるがここで渡邉が大前に合わせて2人の勝負に。最後は大前をかわした渡邉が優勝。大前、中村が続き石原はメイン集団先頭の中川に0.2秒先着し4位に。

逃げメンバー4人が牽制することなくラスト1周でも協調したこと、メイン集団内の統制が取れなかったことが逃げ切りの主要因。浅田顕監督率いるEQADS準所属の渡邉は毎レースで優勝候補に上がる実力を持っていたが、今までビッグレースのタイトルがなかった。

「ようやく勝てました」とフィニッシュ直後に出た言葉がそれを物語る。いっぽうで「(渡邉)歩と一緒に逃げようと話していたのですが。彼らが行ったときにも中村たちが行ったときも追いつけなくて」と集団内でマークされていた石上。

ラスト200m、4人がスプリント態勢へラスト200m、4人がスプリント態勢へ photo:Hideaki TAKAGI
ラスト100m、大前翔(慶応)と渡邉歩(学法石川)が並ぶラスト100m、大前翔(慶応)と渡邉歩(学法石川)が並ぶ photo:Hideaki TAKAGIメジャーレース初勝利の渡邉歩(学法石川)メジャーレース初勝利の渡邉歩(学法石川) photo:Hideaki TAKAGI


「独走よりも4人でのスプリントを」優勝した渡邉歩

優勝した渡邉は「今村(駿介)選手や沢田に声をかけたら一緒についてくれて沢田が「歩のために」と引いてくれて。大前選手が合流して今村選手が離れてあとはペースで走って逃げ続けました。中村選手は強いし大前選手はスプリントもあるのでそれを考えて走っていました。あと1周で40秒差は安心できなかったです。今日は独走よりもスプリントで勝てる自信がありました」とふだんから仲間である沢田との連携があったことを明かす。

ゴールに届かなかった中村圭佑(昭和一学園)と抜け出すことができなかった石上優大(横浜)ゴールに届かなかった中村圭佑(昭和一学園)と抜け出すことができなかった石上優大(横浜) photo:Hideaki TAKAGI5周目に渡邉歩(学法石川)を引き上げたのは沢田桂太郎(東北)5周目に渡邉歩(学法石川)を引き上げたのは沢田桂太郎(東北) photo:Hideaki TAKAGI
個人ロードレース表彰個人ロードレース表彰 photo:Hideaki TAKAGIスプリント賞、1回目 沢田桂太郎(東北)、2・3回目 大前翔(慶応)スプリント賞、1回目 沢田桂太郎(東北)、2・3回目 大前翔(慶応) photo:Hideaki TAKAGI

大前は1年前のインターハイ1kmTTを1分09秒112で7位に入ったスピードがある。そしてぎりぎりで逃げ切った石原は「中村選手も自分と同じタイミングで仕掛けたので一緒に追走しました。優勝しか考えていなかったので嬉しさ半分悔しさ半分です」と語る。石原は7月の実業団石川ロード・ユースで動き回ったうえでの2位がある。

トラックとロードの成績をあわせた学校対抗総合は祐誠(福岡)が春夏連覇を達成した。連日朝9時から30度超えで最高は35度以上のトラック、そしてロードフィニッシュ時は32.5度と暑さとの戦いでもあったインターハイが終わった。2016年のインターハイはトラックを鳥取県倉吉市の倉吉自転車競技場で、ロードは1日置いて広島県三原市の中央森林公園で行なわれる。さらに翌2017年はトラック、ロードともに福島県で行なわれることが決まっている。



結果
学校対抗総合表彰学校対抗総合表彰 photo:Hideaki TAKAGI春夏連覇の祐誠高等学校(福岡)春夏連覇の祐誠高等学校(福岡) photo:Hideaki TAKAGI個人ロードレース 104.58km
1位 渡邉歩(学法石川)2時間33分02秒
2位 大前翔(慶応)+0.3秒
3位 中村圭佑(昭和一学園)+3.1秒
4位 石原悠希(真岡工)+7.9秒
5位 中川拳(帯広三条)+8.1秒
6位 石井駿平(前橋工)+8.6秒
7位 天春雄也(暁)+8.8秒
8位 小嶋健太(金沢)+9.6秒
9位 小野寛斗(横浜)+9.7秒
10位 佐藤彗斗(取手一)+9.9秒

ロード総合成績
1位 学法石川 福島 9点
2位 慶応義塾 神奈川 7点
3位 昭和第一学園 東京 6点 
4位 真岡工業 栃木 5点
5位 帯広三条 北海道 4点
6位 前橋工業 群馬 3点
7位 暁 三重 2点
8位 金沢 石川 1点

学校対抗総合成績
1位 祐誠 福岡 50点
2位 岐阜第一 岐阜 39点
3位 学法石川 23点
4位 岐南工 岐阜 20点
5位 倉吉西 鳥取 15点
6位 松山聖陵 愛媛 14点
7位 榛生昇陽 奈良 14点
8位 鹿町工 長崎 13点

photo&text:高木秀彰