2011年UCI世界シクロクロス選手権女子マスターズチャンピオンの荻島美香選手を講師に迎えてのシクロクロススクールが開催された。オンザロードつくば店の店長でありながら、茨城シクロクロスのオーガナイザーを務め、自身もC1で走る影山善明さんのレポートでお届けしよう。



全日本選手権を翌週に控える12月6日、会場は茨城シクロクロスの大会会場としてもおなじみの「小貝川リバーサイドパーク」。冬晴れの会場に28名の熱心なライダーが集まった。

青空の下28名の熱心なライダーが集まったシクロクロススクール青空の下28名の熱心なライダーが集まったシクロクロススクール
本スクール開催の発端は、今年9月の東北シクロクロス開幕戦での東北CXオルガナイザー菅田氏と筆者・影山との世間話から…。

菅田「私、全日本選手権は主催側なんで忙しそうで…。全日本のときはチーム(菅田氏が主宰するシクロクロスチームTeam CHAINRING)の監督を、荻島さんにお願いしようと思ってるんですよ~」
影山「そういえば数年前の夏にも帰国されてましたね~」
菅田「ああ、サマーキャンプね!(サマーキャンプの記事はコチラ)あのときみたいに各地でスクールやれたらステキだよね~」
影山「それはすばらしい!でも今年は日程タイトなんですね~」
菅田「あ、影山さん、茨城でならどうだろう?荻島さんの地元からも近いし!」
影山「ほほ~!」
荻島さん本人への依頼と会場周辺の調整を経て、スクール開催の運びとなった次第。(またとない機会を頂きましたことに感謝です!)

小貝川リバーサイドパーク周辺には、取手市藤代スポーツセンター、小貝川ポニー牧場、そして南北に伸びる小貝川サイクリングロードと、野外活動施設が充実している。その一角、小貝川堤防上ある「県南総合防災センター」内を、午前中の座学会場として利用させていただいた。(普段は災害用備品の備蓄施設、災害対策を学べる展示が行われている。サイクリング中のひなたぼっこ場所としてもおススメです。)

まずは座学から始まった小貝川シクロクロスクールまずは座学から始まった小貝川シクロクロスクール パワーポイントを使いながらわかりやすい講義が行われたパワーポイントを使いながらわかりやすい講義が行われた 真剣に聞き入る受講者のみなさん真剣に聞き入る受講者のみなさん 荻島美香選手の戦歴をざっと振り返ってみると、全日本個人TT優勝、全日本シクロクロス選手権優勝、シクロクロス世界選手権エリート21位、そしてシクロクロス世界選手権マスターズ優勝…。改めて凄まじい戦歴の持ち主である荻島先生(*文中あえて先生と呼ばせて頂きます)がマスターズ世界チャンピオンの証、ブルーのアルカンシェル姿で登場すると誰もが緊張してしまうというもの!

しかしながら、トークも世界レベルの荻島先生、緊張する参加者の心中を見通してか、座学は終始笑いが絶えないアットホームな雰囲気。教える側も、教わる側も、シクロクロスを愛する気持は一緒だもの!

まずはシクロクロスの歴史と、自身の体験談、そして新旧機材についての考察。テーブルもない座学会場は先生と生徒の距離がとても近いのがいいところ。「泥用のタイヤって、具体的には…空気圧は…」「同じヨーロッパでも、オランダとベルギーの違いってすごく大きくて…」「シクロクロスでサングラスが重要な局面は、実はね…」参加者もすぐに質問ができて、すぐに返事が返ってくる、なんともありがたい!

筆者も個人的に気になっているタイヤ選択について質問させていただいた。砂地用セミスリック・ヤスリ目のタイヤが買いやすくなった昨今、果たしてそのタイヤの有効度はどうなのか?と。確かに砂地での走りは軽くアドバンテージがある、しかしあくまでレース全体、コース全体を見回した上で選択するべきであろうという解答をいただいた。確かに、天候次第であっという間にコースコンディションが変わるシクロクロス、プラスの部分とマイナスの部分を考える必要があるのは当然だ。よし今度試してみよう、そんな気持ちにさせられた。

そして日本ではまだ十分に浸透していないであろう、シクロクロスに特化したトレーニング方法も紹介された。常に加減速を繰り返すシクロクロスでは短時間のインターバルトレーニングが重要なこと、参加カテゴリーに合わせてトータルのトレーニングタイムを設定することが必要なこと、シクロクロスライダーでも夏場のロードトレーニングとロードレース参加は大切であること、などなど…。

レース中の意識の持ち方については、「どんなに辛いときでも、常に自分をコントロールするんですよ」「コース全体を考えてペースを考えることが大事!」「転ぶまで攻めるのはNG!その後の影響を考えて…」など、実際の状況に合わせた(&先週の野辺山シクロクロスのコースを実例に出しながら…)アドバイスを頂いた。個別の質問に対して、実例を元にした親切な、そして厳しい解説。実際にシクロクロスレースに参戦している参加者からは「こりゃ早速、明日の大会(GPミストラル)から活かせるね!」の声も!

言葉の端々ににじみ出る「勝負師」としての荻島先生の意識も強く感じた約2時間の座学だった。



午後からの実技は、実際のコースに出ての走行と解説だ。レース中は頻繁に、かつ当たり前に行わなければならない飛び降り・飛び乗りの動作。先生の動きを目の当たりにすると、当たり前だが…滑らかで無駄がない!ともすれば簡単そうに見えてしまう…。

先生の講義に聞き入る生徒たち先生の講義に聞き入る生徒たち
本当に設置されたシケインを超える練習本当に設置されたシケインを超える練習 荻島スペシャル(?)トレーニング荻島スペシャル(?)トレーニング 実際はそう上手くはいかないことは皆分かっていること。動き出しのタイミング、例えるなら「コマ送りの場面」ごとに意識するべきポイントの説明を受け、「そうか!」「なるほど!」と気付かされる参加者たち。

担ぎに関しても、荻島流ダウンチューブを持ち上げる担ぎ方と、なぜそうするのか?その理由を解説していただいた。腕を回す位置を変化させるテクニックなどは、即実戦で役に立つ方法であろう。

シケイン(障害)越えも、滑らかに行うこと、バイクを持つ位置の重要なこと、バイクを振り上げる方向とコツについて個別にアドバイス。自分で行う、他人を観察する、解説を受ける、の流れはステップアップの近道!

最後は荻島スペシャル(?)トレーニング方法、「バランスを崩しそうなシッティングでのスタンディングから、全力でダッシュ!」を全員で実践!

短時間のインターバル走と組み合わせるとこれはとてもよいトレーニングになりそう! それほど広くない空地でもできそうなこの練習、安全な場所でぜひトライしてみていただきたい。

貴重なノウハウを間近で見て聞いて試すことができ、間違いなく参加ライダーのレベルアップに繋がった一日となった。「もっとたくさんの場所でスクールがやれたらいいな」と語る荻島先生。今後の展開にも期待!

「先生、ありがとうございました!」

text&photo 影山善明
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