今年初開催の益田チャレンジャーズステージ。男子のU23、U19、U17を対象としたレースの模様と、大会を主催したNPO法人「益田市・町おこしの会」のお話を交えてレポートする。



益田市郊外の公道コースで行われた益田チャレンジャーズステージ益田市郊外の公道コースで行われた益田チャレンジャーズステージ photo:Satoru.Kato日本海に面した島根県西部に位置する人口約4万8千人の益田市。ここで自転車による町おこしを企画するNPO法人「益田市・町おこしの会」が中心となり、この大会が実現した。日本自転車競技連盟が主管し、来年の全日本選手権の出場資格を獲得できる公式戦である。

コースサイドに立てられたのぼりコースサイドに立てられたのぼり photo:Satoru.Kato出場出来るのは男子のアンダー23以下の選手で、カテゴリーはU23、U19、U17の3つに分けられる。益田市郊外に設定されたコースは、浅田顕氏が代表を務めるシクリスムジャポンが監修。1周14.2㎞、標高差136m。前半に7%、8%の登りが繰り返され、後半は曲がりくねった下り基調。パワーとテクニックが要求される、エリートのレースも開催できるほど質の高いコースに仕上がった。

U23 4周目 雨澤毅明(那須ブラーゼン)を先頭に進む5人の先頭集団U23 4周目 雨澤毅明(那須ブラーゼン)を先頭に進む5人の先頭集団 photo:Satoru.Katoレース距離は全てのクラス共通で、5周回=71km。途中、2周目終了時のコントロールラインでスプリント賞、4周目の登りでは山岳賞が設定される。

当日の天気は薄曇り。朝方はかなり冷えたものの、時折薄日が差しこんで徐々に気温が上がる。それでも半袖で走るには寒く、集まった観客も秋と言うよりも冬の服装が目立った。

U23 岡篤志が清水太己とのエキップアサダ対決を制する

U23 最終周回 登りで仕掛ける清水太己(EQA U23)U23 最終周回 登りで仕掛ける清水太己(EQA U23) photo:Satoru.Kato午前10時ちょうどにスタートしたU23。レースが大きく動いたのは2周目。アタック合戦から集団がばらけて5人が先行する。メンバーは、岡篤志、清水太己(以上EQA U23)、小石祐馬(ヴィーニファンティーニNIPPO)、徳田優(鹿屋体育大学)、雨澤毅明(那須ブラーゼン)。この動きでメインと言える集団は無くなり、後続は3〜5人の小集団が続いていく状態になる。

スプリント賞を小石、山岳賞を徳田が獲得するも、それらをきっかけに新たな動きは起きず、5人は協調して周回を重ね、後続を引き離す。

最終周回の5周目、登り区間に入った直後に清水がアタック。雨澤、岡が続き、徳田と小石が遅れる。その後雨澤が遅れ、清水と岡の2人が先行する。残り2kmを2人のまま通過し、EQAのワン・ツーが濃厚になる。しかし、EQA U23の浅田監督の指示は「チームプレーは無しで、個々の力で勝負せよ」。2人仲良くゴールする事は許されず、チームメイト同士のスプリント勝負となった。

ゴールまで300mのストレートに、清水が先行して入ってくる。残り100mを過ぎたところで清水の背後から岡がまくりにかかる。残り50mで清水をかわすと、両腕を広げてゴールラインを越えた。

U23 岡篤志(EQA23)が先頭でゴールラインを越えるU23 岡篤志(EQA23)が先頭でゴールラインを越える photo:Satoru.Kato
U23 表彰式U23 表彰式 photo:Satoru.Kato「5人の逃げが決まった時、後続に追いつかれないようラスト1周までは協調して行き、牽制が始まる頃合いでしかけようと考えていた。清水が先に動いたので、それについて行き、最後は自分のもがける範囲でしかけた」と、レース後に語る岡。

「今年はなかなか勝てなかったので、いいメンバーが揃ったこのレースで勝てて良かった」と言う一方、「代表に選ばれるかはまだわからないけど」と前置きして「2月にアジア選手権があるので、来月にはそれに向けた調整を始めたい」と、気持ちはすでに来シーズンに向かっているようだ。



U19・U17 最終周回 4人に絞られた先頭集団U19・U17 最終周回 4人に絞られた先頭集団 photo:Satoru.KatoU19は小山貴大 U17は日野竜嘉が優勝

U23スタートの1分後、U19とU17が同時スタート。10人前後のまま周回を重ねた先頭集団は、4周目の山岳賞をきっかけに一気に人数を減らし、U19の小山貴大(EQADS)、野本空(松山工業高校)、黒川晴智、U17の日野竜嘉の4人が残る。最後はスプリント勝負になり、U19は小山が優勝。U17は、この集団で3位に入った日野が優勝した。

U19・U17 最後のスプリントを制した小山貴大(EQADS)がU19優勝U19・U17 最後のスプリントを制した小山貴大(EQADS)がU19優勝 photo:Satoru.KatoU19優勝 小山貴大のコメント
山岳賞で人数が減ったところで、後続に追いつかれないようペースを維持するようにした。本当は自分で集団を崩して独走に持ち込みたかったけど、最後はスプリントになってしまった。それでも勝てたので良かった。来年はアンダー23に上がるので、このオフシーズンにしっかり力を付けて、最初から勝てるようにしていきたい。

U17優勝 日野竜嘉のコメント
山岳賞のところで人数が減ったのは良かったのだけど、そこで足を使ってしまった。最後は自分の不得意なスプリントで負けてしまった。U19も含めて勝ちたかったので悔しい。このオフはシクロクロスに集中し、来年はジュニアに上がるので、その準備をしっかりやっていきたい。



「自転車で益田市を全国区に」 益田市・町おこしの会 吉村修さん

この大会の開催に尽力されたNPO法人「益田・町おこしの会」理事長の吉村修さんに、レース終了後にお話をうかがった。

―なぜ、自転車で町おこしをしようと思ったのでしょうか?

NPO法人「益田・町おこしの会」理事長の吉村修さんNPO法人「益田・町おこしの会」理事長の吉村修さん photo:Satoru.Kato益田市は自然が豊かで、美味しいものもたくさんあります。でもそれは他の地方にもあるものですよね。もっと突き詰めていくと、道がきれいだし、交通量も少ないし、自転車イベントをやるには良い場所だった。そこに浅田監督が着目してくれて、「何かやらないか」と持ちかけられたんです。そこでやるからには全国初となるようなことをと考え、現役で使用している萩・石見空港の滑走路をコースに組み込んだサイクリングイベント「益田I・NA・KAライド」を開催しました。おかげでテレビの全国放送でも取り上げて頂き、自転車に乗る方々から大きな注目を集めるようになったんです。

アウディから提供された大会公式車両アウディから提供された大会公式車両 photo:Satoru.Kato―確かに、現在使用している滑走路を走るというのはインパクトがありました。そこからロードレースを開催する事になった経緯を教えてください?

U19優勝の小山貴大(EQADS)と、U17優勝の日野竜嘉U19優勝の小山貴大(EQADS)と、U17優勝の日野竜嘉 photo:Satoru.KatoI・NA・KAライドの準備で浅田監督に何度か来て頂いて、市内を走り回っているうちに「ロードレースをやるにはとても良い場所がある」と言われて、じゃあ、やってみようかと。それで昨年プレ大会を開催しました。人数が少なく苦労もしたのですが、今年は日本自転車競技連盟の主管大会として開催し、全国トップクラスの若手選手が集い、とてもレベルの高い大会が開催できたのです。

―大会の協賛社が、アウディ、全日空、味の素など、かなり豪華でした

協賛社は全て知人や友人の紹介で集まりました。アウディは、今の子供達が大人になった時にアウディの車を買ってもらえるようにアピールするイベントをやっているようで、アンダー世代を対象としたこの大会の趣旨と一致したようです。その他の協賛社さんも、この大会の趣旨に賛同してご協力頂いてます。

―コース的にはエリートクラスのレースも開催できそうですね

いろんな方にそう言って頂けるのですが、例えば全日本選手権などを開催するには、まだ越えなければならないハードルが多数あります。それは今後の課題ではありますが、まずは若い世代に機会を与える大会でありたいと考えてます。なかなか勝てなくてもがいている選手もいるだろうし、もっと強いところをアピールしたい選手もいるでしょう。そうした選手達が活躍できるレースとして、今後も続けていきたいと思ってます。

—2年前に自転車に関する知識ゼロからスタートしたという吉村さんだが、お話を伺っているとそうとは思えないほど。「いずれは、便数が増えて空港の滑走路がイベントに使えなくなりましたと言えるくらい、益田市に人が来てもらえるようにしたい」と話す吉村さん。今後も益田市の「自転車で町おこし」に注目したい。



2014第1回益田チャレンジャーズステージ結果
U23

1位 岡 篤志(EQA U23) 1時間50分56秒
2位 清水太己(EQA U23) 
3位 小石祐馬(ヴィーニファンティーニNIPPO) +1分9秒
4位 雨澤毅明(那須ブラーゼン) +1分58秒
5位 徳田 優(鹿屋体育大学) +2分23秒
6位 黒枝咲哉(鹿屋体育大学) +5分13秒

スプリント賞 小石祐馬(ヴィーニファンティーニNIPPO)
山岳賞 徳田 優(鹿屋体育大学)

U19
1位 小山貴大(EQADS) 1時間57分32秒
2位 野本 空(松山工業高校)   
3位 黒川晴智 +5秒
4位 北野龍人(立命館大学) +3分9秒
5位 岡部祐太(広島城北高校) +3分11秒
6位 平林楓輝(松山聖陵高校) +4分13秒

スプリント賞 渡邉大悟(九州学院高校)
山岳賞 野本 空(松山工業高校)

U17
1位 日野竜嘉 1時間57分33秒
2位 奥村十夢(榛生昇陽高校) +7分 
3位 岡本篤樹(榛生昇陽高校) +7分3秒
4位 三好憲士郎(榛生昇陽高校) +10分58秒
5位 源田真也(花園高校) +12分19秒
6位 鈴木史竜(JRIDE) +14分14秒

スプリント賞  日野竜嘉
山岳賞  日野竜嘉

text&photo:Satoru.Kato


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