今年のブエルタ・ア・エスパーニャは、トレインを形成して完全にスプリント勝負の主導権を握るチームがいない。スペインに舞台を移した第5ステージは、各チーム入り乱れる混戦状態で集団スプリントに。アンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC)が力技でステージ2連勝を飾り、総合トップに立った。

晴天のカタルーニャ地方を駆け抜けるプロトン晴天のカタルーニャ地方を駆け抜けるプロトン photo:Unipublic
気温18度のオランダ/ベルギーから、気温37度のスペイン・カタルーニャ地方へ。1回目の休息日を終えたブエルタは、6日目にしてようやく本国スペインへと舞台を移した。

スペイン初日の第5ステージは、スペイン東部の地中海沿いを南下する174kmの平坦ステージ。冷たい雨に悩まされていたそれまでのステージとは異なり、熱い太陽が容赦なく選手たちに照らしつけ、“ブエルタらしい”灼熱の環境下でレースは行なわれた。

最大6分50秒のリードを得たジュリアン・エルファレス(フランス、コフィディス)ら6名最大6分50秒のリードを得たジュリアン・エルファレス(フランス、コフィディス)ら6名 photo:Cor Vosこの日は第4ステージで落車して手首を骨折したクリストファー・ホーナー(アメリカ、アスタナ)と、鎖骨を骨折したロベルト・キセロフスキー(クロアチア、フジ・セルヴェット)がDNS。195名でのスタートとなった。

レース開始早々にアタックしたのはフリアン・サンチェス(スペイン、コンテントポリス・アンポ)。負けじと飛び出し、サンチェスに追いついたのはホセアントニオ・ロペス(スペイン、アンダルシア)、マテウス・プロンク(オランダ、ヴァカンソレイユ)、セラフィン・マルティネス(スペイン、シャコベオ・ガリシア)、アイトール・エルナンデス(スペイン、エウスカルテル)、ジュリアン・エルファレス(フランス、コフィディス)。

メイン集団をコントロールするガーミン、クイックステップ、リクイガスメイン集団をコントロールするガーミン、クイックステップ、リクイガス photo:Unipublicこうしてプロコンチネンタルチーム所属選手中心の6名の逃げが決まった。最初の2級山岳ファトクサス峠はエルナンデスが先頭で通過し、10ポイントを獲得して一躍山岳賞ランキングのトップに立っている。

逃げグループとメイン集団のタイム差は最大6分50秒まで拡大したが、この日はガーミン、クイックステップ、リクイガス、ミルラムなどのスプリンターチームが余裕をもって逃げを追撃。トラック競技で何度もオランダチャンピオンに輝いているプロンクらの抵抗空しく、結局ゴールまで18kmを残して逃げは全て吸収され、レースは強制的にフリダシに戻された。

エルミタ峠に向けてメイン集団のペースを上げるラボバンクエルミタ峠に向けてメイン集団のペースを上げるラボバンク photo:Unipublicこの日の勝負どころは、前半の2級山岳ファトクサス峠ではなく、ゴール8km手前に登場するエルミタ峠だった。エルミタは標高差65mの小高い丘で、頂上に向かって急勾配の上りが続く。山岳ポイントは設定されていないが、逃げを狙う選手にとっては格好のアタックポイントだ。

大集団はラボバンクがハイスピードで牽いてエルミタ峠に突入。真っ先にダビ・デラフエンテ(スペイン、フジ・セルヴェット)がアタックを仕掛けると、その後方からフィリップ・ジルベール(ベルギー、サイレンス・ロット)が飛び出した。



デラフエンテを抜き去り、猛烈な勢いで急坂を駆け上がったジルベール。メイン集団23秒引き離して頂上を通過し、テクニカルな下りでもそのリードを保った。

エルミタ峠で強烈なアタックを仕掛けてメイン集団から飛び出したフィリップ・ジルベール(ベルギー、サイレンス・ロット)エルミタ峠で強烈なアタックを仕掛けてメイン集団から飛び出したフィリップ・ジルベール(ベルギー、サイレンス・ロット) photo:Unipublic
しかしゴール地点のビナロスの街が近づくとコースは平坦に。ヴァカンソレイユやリクイガス、チームコロンビア・HTCが牽くメイン集団は、ラスト3kmでジルベールを吸収。ジロ・デ・イタリアに続くグランツール2勝目を狙ったジルベールの野望は、スプリンターチームによって砕かれた。

ボーネンらを下したアンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC)が右手で2勝目をアピールボーネンらを下したアンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC)が右手で2勝目をアピール photo:Unipublicトレインを組んで完全に主導権を握るチームが現れないままラスト1kmを通過し、トップスプリンターたちが先頭で最終ストレートに突入。前に押し出されたダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)がラスト250mでスプリントを開始すると、トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)とグライペルがこれを追撃する展開に。

勢いあるスプリントで一気に先頭に立ったグライペルが、ライバルたちを力で抑え込んでゴール。筋肉隆々のマッチョなグライペルが、右手でVサインを決めた。

マイヨオロに袖を通したアンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC)マイヨオロに袖を通したアンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC) photo:Unipublic「ベルギーとの気温差が大きかったので、自分のコンディションに確証を得ていなかった。正直に告白すると、昨日の休息日はほとんどホテルの部屋にこもっていたんだ、エアコンのパワーを全開にしてね。今日はレースが進むにつれてどんどん調子が上がって、最後はステージ優勝に手が届いてよかったよ」。そう語るグライペルは、今シーズン17勝目。ボーナスタイム20秒を得て、一躍総合トップに立った。自身初のグランツールでのリーダージャージ着用だ。

ブライアン・ホルム監督は「(総合成績とポイント賞の)リードは出来る限り長くキープしたい。今日はラスト10kmを切ってから急坂が登場したので難しい展開だったが、コロンビアは問題なくミッションをやり遂げた。アンドレ(グライペル)は非常に良い状態だ。明日のステージは今日よりも難易度は高いが、彼はそう簡単に総合首位の座を明け渡すことはしないだろう」と、翌日からのステージにも自信をのぞかせている。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2009第5ステージ結果
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC)4h27'54"
2位 トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)
3位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)
4位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)
5位 ウィリアム・ボネ(フランス、Bboxブイグテレコム)
6位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、サイレンス・ロット)
7位 オスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)
8位 ボルト・ボジッチ(スロベニア、ヴァカンソレイユ)
9位 ダヴィデ・ヴィガーノ(イタリア、フジ・セルヴェット)
10位 フランシスコホセ・パシェコ(スペイン、コンテントポリス・アンポ)

マイヨオロ(個人総合成績)
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC)19h40'23"
2位 トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)+06"
3位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)+17"
4位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)+21"
5位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)+27"
6位 オスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)+33"
7位 ウィリアム・ボネ(フランス、Bboxブイグテレコム)+34"
8位 ドミニク・ロラン(カナダ、サーヴェロ)+38"
9位 ベアト・グラブシュ(ドイツ、チームコロンビア・HTC)
10位 アレッサンドロ・バッラン(イタリア、ランプレ)

モンターニャ(山岳賞)
1位 アイトール・エルナンデス(スペイン、エウスカルテル)10pts
2位 ラース・ボーム(オランダ、ラボバンク)9pts
3位 セラフィン・マルティネス(スペイン、シャコベオ・ガリシア)7pts

プントス(ポイント賞)
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC)78pts
2位 トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)58pts
3位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)47pts

コンビナーダ(複合賞)
1位 セラフィン・マルティネス(スペイン、シャコベオ・ガリシア)121pts
2位 ドミニク・ロエルス(ドイツ、ミルラム)164pts
3位 ジュリアン・エルファレス(フランス、コフィディス)201pts

チーム総合成績
1位 リクイガス 59h02'27"
2位 サクソバンク +03"
3位 ガーミン・スリップストリーム +06"

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Unipublic

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