「日本スポーツマスターズ2014埼玉大会」の自転車競技が、9月20日・21日の2日間に渡って開催された。大会の模様を出場された選手のお話を交えてレポートする。



秋晴れに恵まれた大宮双輪場秋晴れに恵まれた大宮双輪場 photo:Satoru.Kato
日本体育協会が主催する「日本スポーツマスターズ2014」が、埼玉県で開催された。この大会は開催される都道府県を毎年変えて行われており、水泳、サッカー、軟式野球、空手道など13種目が行われる。

自転車競技はトラック種目のみで、男子はスプリント、ケイリン、ポイントレース、3km個人追抜き、1kmTT、チームスプリントの6種目。女子は500mTT、2km個人追抜き、スプリントの3種目。男子については、それぞれの種目について年齢を5歳ごとに分けて6つの区分があり、同世代同士で争える。出場資格は満35歳以上。プロとして活動していた元選手は、契約や登録を解除後満1年以上経過している事が条件となるほか、その年の国体に出場する選手は参加出来ない事になっている。

スプリント お互いの様子を見ながら、かけ時を探るスプリント お互いの様子を見ながら、かけ時を探る photo:Satoru.Katoポイントレース ポイント周回のせめぎ合いポイントレース ポイント周回のせめぎ合い photo:Satoru.Kato

ポイントレース スタート前、壁際に整列して待機ポイントレース スタート前、壁際に整列して待機 photo:Satoru.Katoスプリント 最終コーナーで本気の勝負スプリント 最終コーナーで本気の勝負 photo:Satoru.Kato


今年の大会には、日本全国から男女合わせて167人が出場。元競輪選手、元オリンピック代表、元マスターズ世界チャンピオンなど、レベルの高い選手が名を連ねた。また、日韓スポーツ交流事業として韓国から15人の選手団が来日し、各種目で交流した。

自転車競技の会場は、1周500mの走路を持つさいたま市の大宮双輪場。初日の20日は曇り空で肌寒さを感じるほどだったが、2日目の21日は秋晴れに恵まれた。



500mTT優勝 和地恵美さん

女子500mTT 優勝した和地恵美さん女子500mTT 優勝した和地恵美さん photo:Satoru.Kato
女子500mTT表彰 優勝は和地恵美さん女子500mTT表彰 優勝は和地恵美さん photo:Satoru.Katoマスターズ世界選手権で優勝経験もある和地恵美さんは、500mTTと2km個人追抜きに出場。「500mも2kmも、タイムは全然良くなかったです」と反省の弁。500mTTで大会5連覇した事については「毎年毎年が勝負なので、あまり意識してなかったです」と言う。

普段の練習は、毎朝職場までの通勤に50kmほど乗る事と、帰宅してからのローラーでやる「もがき」練習。でも最近は「仕事の都合でなかなか練習時間が取れない」とも。今年最大の目標はマスターズ世界選手権。競技を長く続けるポイントは「生活リズムを整える事と、バランス良く食事をする事。それと楽しんでやる事」だそうだ。

ケイリン スタート前、緊張の一瞬ケイリン スタート前、緊張の一瞬 photo:Satoru.Katoケイリン優勝 市川英昭さん

女子2km個人追抜き 優勝した小沼美由紀さん女子2km個人追抜き 優勝した小沼美由紀さん photo:Satoru.Kato今大会のケイリン3部(45歳以上50歳未満のクラス)で優勝した市川英昭さんは、今回を含めて5回優勝している強者。「1部(35歳以上40歳未満クラス)で3回、2部(40歳以上45歳未満)で1回優勝しました」との事。

2012年の全日本実業団トラックチャンピオンシップでも、ケイリンで優勝している。強さを維持する事について聞くと「特に意識した事は無いです。自転車が好きなんで、休日を含めよく乗ってます」今年の目標は「マスターズ全日本も狙いますけど、全日本実業団をもう一度穫る事が目標です」

女子2km個人追抜き優勝 小沼美由紀さん

ケイリンを走る今大会出場者最高齢の中山勝男さんケイリンを走る今大会出場者最高齢の中山勝男さん かつてMTB選手として活躍していた小沼美由紀さんは地元埼玉県在住。この大会がある事を知って昨年から出場したいと思っていたと言う。念願かなって出場出来た感想は「楽しかったです」と満面の笑み。「今年5月に主人に相談して、練習につきあってもらいました。ピストはギアの選択ひとつでガラッと変わるので、奥が深いですね」と言う。ご主人は競輪選手の小沼良選手。「子供が手を離れたので、何かやってみたいなと思ってました。初めてのトラックレースで勝てるとは思ってなかったです。これからも楽しみながら続けていきたいです」

今大会最高齢の中山勝男さん

女子スプリント決勝 優勝した濱田真子さん女子スプリント決勝 優勝した濱田真子さん photo:Satoru.Kato今大会に出場した中で最高齢は74歳の中山勝男さん。スプリントとケイリンに出場した。「調子はまぁまぁかな。病み上がりなもんで・・・タイムもそこそこ良かったし」と笑顔。自転車は30代の頃に始めたので40年も続けているのだと言う。長く続けるために心がけている事を聞くと「焦らない事だね」と即答。「自分のペースで走って楽しむ事。それが一番です」

女子スプリント優勝 濱田真子さん

今大会で優勝し、女子スプリント6連覇を達成した濱田真子さん。「6連覇は意識してませんでした。今回は2km個人追抜きも500mTTもタイムが良くなかったので、調子は良くなかったです。でもスプリントは自分のタイミングでかけられたので、なんとか勝てたって感じです」自転車歴は12年くらい。マスターズとしては浅い方だが「競争の迫力と躍動感が自転車の魅力」と語る。

3km個人追抜き、ポイントレース優勝の藤田晃三さん

男子3km個人追抜き 2位以下に大差をつけて優勝した藤田晃三さん男子3km個人追抜き 2位以下に大差をつけて優勝した藤田晃三さん photo:Satoru.Kato
男子3km個人追抜き表彰 優勝は藤田晃三さん男子3km個人追抜き表彰 優勝は藤田晃三さん photo:Satoru.Kato元ブリヂストンアンカーの選手で、オリンピック出場経験もある藤田晃三さん。3km個人追抜きでは、全出場者全員の中でトップタイム。ポイントレースでは20周のうち4周目から最後までを2人で逃げ切る走りを見せた。「今はあくまで趣味の範囲で、生活を犠牲にしない程度に練習してます。1日1時間くらい、年寄りの朝の散歩みたいな感じです」

チームスプリント 先頭が離れて2周目を走るTKGチームチームスプリント 先頭が離れて2周目を走るTKGチーム photo:Satoru.Katoこの大会では出場した2種目で優勝したが「僕みたいなのが出ちゃっていいのかな?と。3km個人追抜きは思ったよりタイム差がついちゃったんで」と、申し訳なさそう。「最近はパワーメーターなどで数値として色々わかってしまうから、レースに出る前に戦えるか否かがわかってしまう。やっぱり楽しみながらやれる事が一番ですね」

チームスプリント 優勝のTKGチームチームスプリント 優勝のTKGチーム photo:Satoru.Katoチームスプリント優勝 TKGチーム(松島伸安さん、古本清文さん、矢野賢児さん)

3人が顔を合わせたのは、なんと大会前日。揃って練習した事も無いのに優勝してしまったというから驚きだ。「どうせ出るなら面白い事をやってみようと思ってたんです。お互いに連絡は取り合っていたんですけど、3人揃って走ったのは大会当日の公式練習が初めてでした。そこで交代のタイミングとか、お互いの走り方とかを確認して本番に臨みました」元競輪選手と聞いて納得。「マスターズの大会はレースも楽しいんですけど、同窓会みたいなノリがいいですね。出場者は元競輪選手も多いけど、それよりも一般の方が強くて驚きました」とも。ちなみに、チーム名の「TKG」は、3人の住んでいるところ(富山、高知、群馬)の頭文字。「たまごかけご飯じゃないですよ」

インタビューさせて頂いた方全てが「楽しむ事が大切」と言う一方、勝負の場となれば真剣そのもの。マスターズの大会と知らなければ、普通の自転車競技の大会と何ら変わらない雰囲気とは言え、ピリピリとした感じが無いのは人生経験豊富なマスターズの余裕からなのかもしれない。2日間を通して落車事故がゼロだった事も、マスターズならではと言えるだろう。

なお、「日本スポーツマスターズ」は、来年は石川県で、2016年は秋田県で開催される事が決まっている。

text:photo:Satoru.Kato