クリテリウム・ドゥ・ドーフィネのクイーンステージでついにチームスカイの牙城が崩れた。超級山岳フィノー/エモッソンでマイヨジョーヌを振り切った総合2位アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)が総合首位に。タイム差8秒の接戦の行方は最終日に持ち越しとなった。



葡萄畑に見守られながら山岳を目指すプロトン葡萄畑に見守られながら山岳を目指すプロトン photo:Tim de Waele


ドーフィネ第7ステージは大会最難関のクイーンステージ。161.5kmのコースには5つのカテゴリー山岳が詰め込まれており、レース中盤にかけてスイスに入国する。一日の締めくくりは超級山岳フォルクラ峠(登坂距離12.6km/平均勾配8.2%)と超級山岳フィノー/エモッソン(登坂距離10.2km/平均勾配8%)のダブルヘッダーだ。

クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2014第7ステージクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2014第7ステージ image:A.S.O.レースが最初の2級山岳に差し掛かる頃、30km地点で6名の逃げグループが形成される。この中には前日の第6ステージで惜しくも2位となったリエーベ・ヴェストラ(オランダ、アスタナ)の他、第4ステージを制したユーリ・トロフィモフ(ロシア、カチューシャ)、ライダー・ヘシェダル(カナダ、ガーミン・シャープ)の姿があった。

先頭でフィニッシュを目指すユーリ・トロフィモフとエゴール・シリン(ロシア、カチューシャ)先頭でフィニッシュを目指すユーリ・トロフィモフとエゴール・シリン(ロシア、カチューシャ) photo:Tim de Waeleやがて山岳賞ジャージを着るアレッサンドロ・デマルキ(イタリア、キャノンデール)やジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター)、フレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)ら8名が合流。こうして14名に人数を増やした逃げは最大8分のリードを稼ぎ出した。

カチューシャの2人の後ろにリエーベ・ヴェストラ(オランダ、アスタナ)が迫るカチューシャの2人の後ろにリエーベ・ヴェストラ(オランダ、アスタナ)が迫る photo:Tim de Waeleここまで一貫してレースをコントロールしていたチームスカイではなく、この日はティンコフ・サクソがメイン集団を牽引。先頭14名とメイン集団のタイム差が7分を推移したまま連続超級山岳に差し掛かった。

トロフィモフとシリンを振り切ったリエーベ・ヴェストラ(オランダ、アスタナ)トロフィモフとシリンを振り切ったリエーベ・ヴェストラ(オランダ、アスタナ) photo:Tim de Waele超級山岳フォルクラ峠でヘシェダルがアタックを仕掛けると逃げグループは崩壊。続いてトロフィモフがアタックを仕掛け、ヘシェダルやトニー・ギャロパン(フランス、ロット・ベリソル)を振り切って頂上通過する。すると下りでチームメイトのエゴール・シリン(ロシア)が先頭トロフィモフに追いついた。

残り2kmから飛び出したアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)残り2kmから飛び出したアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:Tim de Waeleカチューシャの2人が先頭を逃げる中、約6分後方のメイン集団ではチームスカイがペースアップを開始。人数を絞り込んだ状態で超級山岳フォルクラ峠を越える。下りでコンタドールらが飛び出すシーンも見られたが、チームスカイがこれを封じ込めた。

コンタドールを自ら追撃するクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)コンタドールを自ら追撃するクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waeleそして迎えた最後の超級山岳フィノー/エモッソン。最大勾配17%の登りを先頭で突き進むトロフィモフとシリン。その後方ではヴェストラが単独追走を続け、他の逃げメンバーは全員メイン集団に吸収される。

フィニッシュ後に動けなくなるクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)フィニッシュ後に動けなくなるクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waele残り2kmで先頭のカチューシャコンビを視界に捉えたヴェストラが、ついに残り150mで先頭にジョイン。そのままスプリントに持ち込んだヴェストラが、ワンツー勝利を思い描いていたカチューシャの2人を置き去りにする。24時間前に僅差で失ったステージ優勝を、ヴェストラがクイーンステージで叶えてみせた。

「本当に素晴らしいとしか言えない。昨日逃げたので今日は休むべきかと思ったものの、走り出してみると調子が良いので、また逃げに乗ったんだ。最後の登りはとにかく自分のペースを守ることを心がけた。残り200mで2人のロシア人をパス。本当にクレイジーな勝利だ」とヴェストラは驚く。UCIプロチームの中で今シーズン最も勝てていない(シーズン7勝)アスタナに、貴重な勝ち星をもたらした。

ヴェストラとカチューシャコンビが競り合ったその数分後方では総合優勝を懸けた闘いが加熱。ミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ)のハイペースによって人数を減らした集団から、残り2kmを切ったところで総合3位ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ベルキン)がついに脱落。すると総合2位コンタドールが飛び出した。

ニエベに続いてリッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)がメイン集団を率いたものの、コンタドールとの距離は広がっていく。残り1kmを切ってマイヨジョーヌのクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)本人が動いたものの、コンタドールとの距離は縮まらなかった。

コンタドールは先頭ヴェストラから1分33秒遅れ、そしてフルームは1分53秒遅れでフィニッシュ。総合12秒差をひっくり返したコンタドールが、8秒の総合リードと栄光のマイヨジョーヌを得て最終ステージに挑むこととなった。

「残り2kmの時点ですでに限界に近かったものの、アタックという賭けに出たんだ。イエロージャージ獲得はサプライズ。予想を上回る結果を得たものの、まだドーフィネは終わったわけじゃない。明日も厳しいステージであり、チームスカイは強力だ」と、総合リードを得たコンタドール。

初のドーフィネ制覇に王手をかけたが、それ以上に自身のコンディションに満足している様子だ。「結果はどうであれ、日々改善している脚の状態には満足している。これはツールの準備レースであり、一番重要なのは7月5日に最高の状態であることだ」。

初日からキープしていた総合首位の座を明け渡したフルームは「昨日の落車の影響があることは否めない。大事には至っていないけど、太ももの動きに違和感があった。アルベルトのファンタスティックな走りについていけなかっただけだ。レースの一番厳しいポイントで攻撃を仕掛けた彼がジャージを勝ち取ったんだ」と、ライバルの走りを讃える。それと同時に復讐を誓った。「山頂フィニッシュを残して僅か8秒差。レースが終わるまで、総合争いは終わらない」。

選手コメントはレース公式サイトならびにチームスカイ公式サイトより。



マイヨジョーヌを獲得したアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)マイヨジョーヌを獲得したアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:Tim de Waele


クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2014第7ステージ結果
1位 リエーベ・ヴェストラ(オランダ、アスタナ)
2位 ユーリ・トロフィモフ(ロシア、カチューシャ)
3位 エゴール・シリン(ロシア、カチューシャ)
4位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
5位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ)
6位 ライダー・ヘシェダル(カナダ、ガーミン・シャープ)
7位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
8位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)
9位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)
10位 セバスティアン・レイヘンバッハ(スイス、IAMサイクリング)
4h32'51"
+07"
+16"
+1'33"
+1'51"
+1'53"

+2'11"
+2'16"
+2'19"


個人総合成績
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
2位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
3位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ)
4位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ベルキン)
5位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル)
6位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)
7位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)
8位 セバスティアン・レイヘンバッハ(スイス、IAMサイクリング)
9位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)
10位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ)
27h46'51"
+08"
+39"
+59"
+1'14"
+1'16"
+2'11"
+2'14"
+2'50"
+2'52"


ポイント賞
クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)

山岳賞
アレッサンドロ・デマルキ(イタリア、キャノンデール)

ヤングライダー賞
ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ベルキン)

チーム総合成績
アスタナ

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele