アスパン峠とトゥールマレー峠を越えるピレネー最終ステージは、難関山岳を逃げ続けたピエリック・フェドリゴ(フランス、Bboxブイグテレコム)とフランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)の2人が集団を振り切り、スプリントでペッリツォッティを下したフェドリゴが優勝。Bboxブイグテレコムが2勝目を達成した。

青空に伸びるアスパンとトゥールマレーの峠道

晴れ渡る空の下、スタートする選手たち晴れ渡る空の下、スタートする選手たち photo:Makoto Ayanoこれまでツールに登場すること70回以上。もはやピレネー山脈定番の峠として知られる1級山岳アスパン峠と超級山岳トゥールマレー峠が登場した。最後の難関トゥールマレー峠はゴールまで70km離れているため、総合成績が動くほどの難易度はない。

しかしその一方でピュアスプリンターが集団内で乗り切れる難易度でもない。レースは逃げを狙ったアタックが序盤から繰り返された。

アスパン峠を上るピエリック・フェドリゴ(フランス、Bboxブイグテレコム)、フランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)、イェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)アスパン峠を上るピエリック・フェドリゴ(フランス、Bboxブイグテレコム)、フランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)、イェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク) photo:Makoto Ayano0km地点のアタックで幕開けた第9ステージは、30分以上に渡ってアタックと吸収を繰り返しながらハイスピードで進行。一時はランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ)までも動く意外な展開も見せたが、24km地点で4名の先行が決まると事態は収拾。メイン集団はアージェードゥーゼルがコントロールした。

逃げを試みたのはフェドリゴ、ペッリツォッティ、イェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)、そしてレオナルド・ドゥケ(コロンビア、コフィディス)。この4名は5分のリードを稼ぎ出して1級山岳アスパン峠(平均6.6%・距離12km)に突入した。

アスパン峠を上るメイン集団アスパン峠を上るメイン集団 photo:Makoto Ayano逃げを見送ったメイン集団はローレンス・テンダム(オランダ、ラボバンク)のアタックをきっかけに再び活性化し、このアスパン峠でエゴイ・マルティネス(スペイン、エウスカルテル)やユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、サイレンス・ロット)、トマ・ヴォクレール(フランス、Bboxブイグテレコム)を含む7名の追走グループが形成された。

先頭ではドゥケが遅れ、3名でアスパン峠をクリア。状況は次の超級山岳トゥールマレー峠(平均7.5%・距離17km)でも変わらず、ペースアップにフォイクトが脱落すると、先頭はペッリツォッティとフェドリゴの2人に。追走グループはチームのお膝元ピレネーで見せ場を作りたいエウスカルテル勢が懸命に牽いたが、先頭2名とのタイム差は縮まらなかった。

結局ペッリツォッティとフェドリゴは追走グループから3分、メイン集団から5分リードしたままトゥールマレーを上りきり、2人で協力して後続を引き離しながらダウンヒル。追走グループ内では2日連続で逃げに乗ったマルティネスが山岳ポイントを加算し、一躍山岳賞ランキングトップに躍り出た。

絶えぬペッリツォッティとフェドリゴの闘志

超級山岳トゥールマレー峠を先頭で上るフランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)とピエリック・フェドリゴ(フランス、Bboxブイグテレコム)超級山岳トゥールマレー峠を先頭で上るフランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)とピエリック・フェドリゴ(フランス、Bboxブイグテレコム) photo:Cor Vos先頭から5分遅れでトゥールマレーを走破したメイン集団内には、オスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)やホセホアキン・ロハス(スペイン、ケースデパーニュ)が残った。有力スプリンター不在の集団スプリントで、この2チームがステージ優勝をもぎ取りたいと考えるのは当然の考えだ。

集団スプリントに持ち込みたいラボバンクとケースデパーニュが牽引するメイン集団は、それまで飛び出していたマルティネスやヴォクレールらの追走グループを飲み込み、スピードを上げて先頭のペッリツォッティとフェドリゴを追走。ここから先頭2人の粘りが光った。

超級山岳トゥールマレー峠を上る選手たち超級山岳トゥールマレー峠を上る選手たち photo:Cor Vosツールでステージ優勝経験のあるフェドリゴと、ジロでステージ優勝経験のあるペッリツォッティ。ともに1978年生まれ。この脂の乗り切った2人の挑戦者は、すでにカテゴリー1級と超級の山岳を越えていることを感じさせない走りで逃げ続けた。

結局残り60kmで5分、残り30kmで2分30秒あったタイム差は詰まらず、メイン集団はラスト4km地点での有力候補アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)のパンクも影響して先頭2人を捉えきれず。最後まで息を飲む展開の末に、2人の逃げ切りが決まった。

ピエリック・フェドリゴ(フランス、Bboxブイグテレコム)とフランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)のスプリント対決ピエリック・フェドリゴ(フランス、Bboxブイグテレコム)とフランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)のスプリント対決 photo:Makoto Ayano少しの牽制の末に、先に仕掛けたのはペッリツォッティ。ステージ初優勝目がけてペッリツォッティが先頭で最終ストレートに突入したが、勢いよく追い上げるフェドリゴに軍配。ペッリツォッティが首を垂れるその横で、フェドリゴが大きく両手を広げた。

2006年ツールでも2人逃げを成功させ、サルヴァトーレ・コメッソ(イタリア)を破ってステージ優勝を飾っているフェドリゴ。再びイタリア人選手を破り、ツールのステージ2勝目を掴み取った。チームとしてはヴォクレールの第5ステージのヴォクレールに続く今大会2勝目だ。

後続のメイン集団はオスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)先頭でゴール後続のメイン集団はオスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)先頭でゴール photo:Cor Vosフェドリゴはツールの前哨戦ドーフィネ・リベレの超級山岳イゾアールステージでも優勝を飾っている。国内ビッグレースのビッグステージを、得意の逃げ切りで再び制してみせた。

ペッリツォッティは敗れはしたものの敢闘賞を獲得。2つの難関山岳を先頭で通過したことで、山岳賞3位に浮上した。ジロを総合3位で終えたペッリツォッティは既に総合で15分遅れ。開幕前から「モンヴァントゥーを制したい」と明言しているペッリツォッティは、山岳賞戦線に加わることが予想される。

マイヨジョーヌを守ったリナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル)マイヨジョーヌを守ったリナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル) photo:Makoto Ayanoメイン集団は結局34秒遅れでゴールし、総合上位陣は集団内でゴールしたため順位に変動はなし。リナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル)はマイヨヴェールを着て休息日を迎えることとなった。休息日明けは平坦ステージが続くため、ノチェンティーニのマイヨジョーヌ姿はもうしばらく継続すると見られている。

日本人選手2人は、最初のアスパン峠で集団から脱落し、新城幸也(Bboxブイグテレコム)が18分48秒遅れ、別府史之(スキル・シマノ)が24分57秒遅れでゴール。この日もグルペットで山岳を乗り切った。この日グルペットから脱落したダニーロ・ナポリターノ(イタリア、カチューシャ)はタイムオーバーで失格となっている。

選手たちはレース当日のうちに空路でフランス中部のリモージュへ移動。休息日を経て、第10ステージから再び平坦レースが繰り広げられる。ツール前半戦の山場は終わった。


ツール・ド・フランス2009第9ステージ結果
1位 ピエリック・フェドリゴ(フランス、Bboxブイグテレコム)4h05'31"
2位 フランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)
3位 オスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)+34"
4位 セルゲイ・イワノフ(ロシア、カチューシャ)
5位 ピーター・ベリトス(スロバキア、ミルラム)
6位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、ケースデパーニュ)
7位 フレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、サイレンス・ロット)
8位 ジョフロワ・ルカトル(フランス、アグリチュベル)
9位 アレッサンドロ・バッラン(イタリア、ランプレ)
10位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)
123位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)+18'48"
140位 別府史之(日本、スキル・シマノ)+24'57"

マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 リナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル)34h24'21"
2位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)+06"
3位 ランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ)+08"
4位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、アスタナ)+39"
5位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、ガーミン)+46"
6位 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、アスタナ)+54"
7位 トニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア・HTC)+1'00"
8位 クリスティアン・ヴァンデヴェルデ(アメリカ、ガーミン)+1'24"
9位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)+1'49"
10位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)+1'54"
146位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)+1h17'56"
157位 別府史之(日本、スキル・シマノ)+1h23'04"

マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)117pts
2位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)106pts
3位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、ケースデパーニュ)75pts
22位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)30pts
48位 別府史之(日本、スキル・シマノ)18pts

マイヨアポワ(山岳賞)
1位 エゴイ・マルティネス(スペイン、エウスカルテル)78pts
2位 クリストフ・ケルヌ(フランス、コフィディス)59pts
3位 フランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)55pts

マイヨブラン(新人賞)
1位 トニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア・HTC)34h25'21"
2位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)+49"
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)+54"

チーム総合成績
1位 アージェードゥーゼル 101h39'15"
2位 アスタナ +03"
3位 チームコロンビア・HTC +4'45"

第9ステージ敢闘賞
フランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)