ツール・ド・フランスでマイヨジョーヌを狙う選手たちが最終調整に入る。ツール前哨戦として知られるクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ(UCIワールドツアー)が6月2日から9日までの8日間にわたって開催。マイヨジョーヌ本命選手の他、別府史之(オリカ・グリーンエッジ)が初出場する。

4つの頂上ゴールとフラットな個人タイムトライアルで決着

美しいアルプスの山岳地帯を進む美しいアルプスの山岳地帯を進む photo:Cor Vos2010年からツールと同じA.S.O.(アモリー・スポーツ・オルガニザシオン)が主催しているクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ、通称ドーフィネ。1947年に第1回大会が開催され、長年地元新聞のドーフィネ・リベレ社によって運営されてきた。

クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2013コース全体図クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2013コース全体図 image:A.S.O.その名の通りレースの舞台はフランス南東部のドーフィネ地方(現在のイゼール県、ドローム県、オート=アルプ県)。全長1117kmで、「ミニ・ツール」と形容されるほど内容の濃い8日間のステージレースだ。

クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2013第5ステージ・コース高低図クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2013第5ステージ・コース高低図 image:A.S.O.ツールの前哨戦と呼ばれるだけに、オールラウンダーたちの脚試しに最適なステージが用意されている。今年はドーフィネ史上初めてスイスで開幕。シャンペリーを発着する121kmのコースには1級山岳をはじめ4つのカテゴリー山岳が登場。登坂距離6.7km・平均勾配3.4%の3級山岳を駆け上がり、さらに1km登ってゴールを迎える。

その後もカテゴリー山岳を含むアップダウンコースが連続して登場。32.5kmのフラットコースで行なわれる第4ステージ・個人タイムトライアルで総合争いは本格的に動き出す。ここでのタイムが、ツールにおけるマイヨジョーヌ争いの指標になる。

後半4ステージはいずれも難易度の高い山岳を含む厳しいもの。標高1369mの超級山岳ヴァルモレル(登坂距離12.7km・平均勾配7%)にゴールする第5ステージで、クライマーたちがタイム差の挽回を目指すことになるだろう。

第7ステージはさながらツール第18ステージのリハーサル。レース前半に登場する超級山岳ラルプ・デュエズ、2級山岳サレン峠、1級山岳オモン峠の組み合わせはツールと共通。ツール第18ステージはラルプ・デュエズを再び登り返してゴールを迎えるが、ドーフィネは1級山岳ノイェル峠を越え、3級山岳シュペルデヴォリュイにゴールする。

胸元に青いラインが入った黄色いリーダージャージの持ち主を決めるのが、終盤にかけて2つの1級山岳が連続する第8ステージ。ラスト36km地点で1級山岳ヴァル峠(登坂距離10.4km・平均勾配6.9%)を越え、最後は1級山岳リスル(登坂距離13.9km・平均勾配6.7%)を駆け上がってゴールを迎える。後半にかけて勾配が増すリスルの登りで第65代優勝者が誕生する。

クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2013第7ステージ・コース高低図クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2013第7ステージ・コース高低図 image:A.S.O.クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2013第8ステージ・コース高低図クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2013第8ステージ・コース高低図 image:A.S.O.


クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2013ステージリスト
6月2日(日)第1ステージ シャンペリー〜シャンペリー 121km
6月3日(月)第2ステージ シャテル〜オヨナ 191km
6月4日(火)第3ステージ アンベリュー・アン・ビュジェイ〜タラール 167km
6月5日(水)第4ステージ ヴィラール・デ・ドンブ〜パルク・デ・オワゾー 32.5km(個人TT)
6月6日(木)第5ステージ グレシー・シュル・エクス〜ヴァルモレル 139km
6月7日(金)第6ステージ ラ・レシェール〜グルノーブル 143km
6月8日(土)第7ステージ ル・ポン・ド・クレ〜シュペルデヴォリュイ 187.5km
6月9日(日)第8ステージ シストロン〜リスル 155.5km

ツール開幕まで残り1ヶ月弱 コンタドールとフルームの調子を探る

アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ) photo:Cor Vos2011年から2年連続でドーフィネ総合優勝を果たしたのは、2012年のツール覇者ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、スカイプロサイクリング)。今年ウィギンズはジロ・デ・イタリアに出場したが、肺の感染症によって途中リタイアを喫した。膝の調子が思わしくないため、ツール欠場が決まっている。

クリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)クリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング) photo:Cor Vos今年のドーフィネならびにツールで対決が注目されるのが、アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)とクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)の2人だ。

トニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)トニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ) photo:Riccardo Scanferla2007年&2009年ツール覇者のコンタドールと、2012年ツール総合2位のフルーム。世界最高峰のグランツールレーサーと称され、マイヨジョーヌの本命と目される2人がこのドーフィネで顔を合わす。ウィギンズが出場しないため、フルームが正真正銘スカイプロサイクリングのキャプテンだ。

別府史之(オリカ・グリーンエッジ)別府史之(オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsujiコンタドールとフルームは今シーズンすでに数回対決を繰り広げており、2月のツアー・オブ・オマーンではフルーム総合優勝、コンタドール総合2位。3月のティレーノ〜アドリアティコではフルーム総合2位、コンタドール総合3位。フルームに軍配が上がっている。

ここに割って入るのがスペインのホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)やサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)ら。ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル)ら。アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ)やヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)らも総合上位に絡んでくるだろう。

第4ステージの個人タイムトライアルではトニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)に要注目。世界TTチャンピオンのマルティンは、今シーズン行なわれた平坦な個人TTで全勝。世界最速クロノマンとしての地位を確固たるものにしている。

シンプルな平坦ステージが設定されていないため、いわゆるピュアスプリンターは出場しない。比較的難易度の低い第6ステージはエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、スカイプロサイクリング)やナセル・ブアニ(フランス、FDJ)に代表される「登れるスプリンター」向きだ。

日本からは別府史之(オリカ・グリーンエッジ)が初出場する。フミはツアー・オブ・カリフォルニアでタイムアウトとなったが、コンディションは落としていない様子。ドーフィネが行なわれるのはフミが現在住んでいる地域であり、慣れ親しんだ地での奮起に期待したい。

text:Kei Tsuji