ランカウイ8日目は、前日に引き続いて集団スプリントに持ち込まれ、フランスの若手、ブライアン・コカール(ユーロップカー)が並み居る強豪スプリンターを打ち破る金星を獲得。総合順位に大きな変動は無かった。

スタート前にリラックスするチームNIPPO・デローザのメンバースタート前にリラックスするチームNIPPO・デローザのメンバー photo:Sonoko.Tanaka10日間に渡るツール・ド・ランカウイも今ステージで8日目。2月28日に行われた第8ステージは、マレーシア北東部の街クアラ・トレンガヌから海沿いに北上し、内陸のタナ・メラへと至る164.5km。

スタートの準備をするジュリアン・アレドンド(コロンビア、チームNIPPO・デローザ)スタートの準備をするジュリアン・アレドンド(コロンビア、チームNIPPO・デローザ) photo:Sonoko.Tanakaコースは山岳ポイントが一つも設定されない難易度の低いもの。後半に丘越えが設けられるものの、スプリンターを脱落させる厳しさは無い。前日に次いでゴール地点では集団スプリントに持ち込まれるものと予想された。

集団を牽引するアスタナやヴィーニファンティーニ集団を牽引するアスタナやヴィーニファンティーニ photo:Sonoko.Tanakaランカウイの代名詞でもある灼熱の太陽は、この日も厚い雲に阻まれた。曇りときどき雨という空模様の下、昨日からリタイア無しの全125名がクアラ・トレンガヌの街をスタートしていく。

リアルスタートと同時に、激しいアタック合戦で幕開けた第8ステージ。まずは佐野淳哉 (ヴィーニファンティーニ) リー・フーユー(中国、ハンシャンサイクリングチーム)、チェ・スンウ(韓国、KSPO)の3人が抜け出したものの直ぐに吸収。メイン集団は決定的な動きが無いままアタックとチェックを繰り返しつつ、非常に速いペースでレースを展開していく。

ようやく逃げが決まったのはスタートから47kmが過ぎてから。ジーウェン・ロー(シンガポール、OCBCシンガポール)とリュー・ジャンペン(中国、ハンシャンサイクリングチーム)が抜けだすと、集団はようやく沈静化。先行する2名の逃げを容認した。

集団が一気にペースを落としたため、先行する2名とのタイム差は急激に拡大。80km地点では最大タイム差は11分をマーク。メイン集団のペースコントロールを担うのはこの日もチームNIPPO・デローザ。もちろんリーダージャージを切るジュリアン・アレドンド(コロンビア)のための動きだ。

やがて集団スプリントを見据え、ペースコントロール役としてヴィーニファンティーニが1名、アスタナとガーミン・シャープが2名ずつアシストを投入。これを機にエスケープコンビが持つリードは徐々に失われていった。

残り50m、ブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)にアンドリュー・フェン(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)らが迫る残り50m、ブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)にアンドリュー・フェン(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)らが迫る photo:Sonoko.Tanakaしかし周到にタイム調整を図っていたのは、むしろ先頭を行く2名だった。集団のペースアップに伴ってペースを上げたことで、タイム差は残り20kmで2分47秒と、逃げ切り勝利も見え隠れする展開に。しかしリューがアタックしたことで協調が崩れ、やがて2名は勢いを増す集団に飲み込まれる。そして各チーム入り乱れての激しい位置取り争いを経て、集団は最終ストレートへと到達した。

金星をあげたブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)金星をあげたブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー) photo:Sonolp.Tanakaそして残り250mから一斉に始まったスプリント。ポイント賞ジャージを着るアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)が埋もれる中、残り200mでコカールが一気に右側のラインから仕掛けると、並びかけるアンドリュー・フェン(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)やフランチェスコ・キッキ(イタリア、ヴィーニファンティーニ)からわずかに先着。フランス期待の若手が大舞台で金星を上げた。

「勝つことができてスーパーハッピーさ。前半ステージからトライしていたけど、どうにも運がなかった。(8位となった)昨日は勝てるだけの脚が無かったんだけれど」と語るコカールは、今年チームに加入したばかりの20歳。今シーズン既にエトワール・ベセージュで2勝を飾っており、トラックで養ったスプリント力が本物であることを見せつけた。


危なげなくリーダージャージを守ったジュリアン・アレドンド(コロンビア、チームNIPPO・デローザ)危なげなくリーダージャージを守ったジュリアン・アレドンド(コロンビア、チームNIPPO・デローザ) photo:Sonoko.Tanaka第8ステージ表彰第8ステージ表彰 photo:Sonokoa.Tanaka


日本人最高位は、福田真平 (愛三工業レーシング)の15位。リーダーチームとして集団牽引役を担った福島晋一や石橋学、徳田鍛造らは後方でゴールしている。





ツール・ド・ランカウイ2013第8ステージ結果
1位 ブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)   3h36′47″
2位 アンドリュー・フェン(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)
3位 フランチェスコ・キッキ(イタリア、ヴィーニファンティーニ)
4位 アンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)
5位 リコ・ロジャース(ニュージーランド、シナジー・バク サイクリングプロジェクト)
6位 オマル・ベルタッツォ(イタリア、アンドローニ・ジョカトリ)
7位 レイモンド・クレダー(オランダ、ガーミン・シャープ)
8位 ホセイン・ナテギ(イラン、タブリスペトロケミカル)
9位 アヌアル・マナン(マレーシア、シナジー・バク サイクリングプロジェクト)
10位 ヤニ・テウェルデウェルデゲイバー(エリトリア、MTNキュベカ・サムスン)
15位 福田真平 (愛三工業レーシング)
46位 伊藤雅和 (愛三工業レーシング)
49位 中島康晴 (愛三工業レーシング)
53位 新城幸也 (ユーロップカー)
83位 盛一大 (愛三工業レーシング)
85位 西谷泰治(愛三工業レーシング)
97位 福島晋一 (チームNIPPO・デローザ)
106位 綾部勇成 (愛三工業レーシング) +58″
110位 石橋学 (チームNIPPO・デローザ) +1′13″
114位 佐野淳哉 (ヴィーニファンティーニ)  +1′49″
124位 徳田鍛造 (チームNIPPO・デローザ)+5′31″

個人総合成績
1位 ジュリアン・アレドンド(コロンビア、チームNIPPO・デローザ)29h31′52″
2位 ピーター・ウェーニング(オランダ、オリカ グリーンエッジ) +1′15″
3位 セルヒオ・バルディージャ(スペイン、MTNキュベカ) +2′10″
4位 ピーター・ステティーナ (アメリカ、ガーミン・シャープ) +2′32″
5位 ワン・メイエン(中国、ハンシャンサイクリングチーム) +2′40″
6位 ネイサン・ハース(オーストラリア、ガーミン・シャープ) +2′47″
7位 フォルッナート・バリアーニ (イタリア、チームNIPPO・デローザ)+2′49″
8位 ジョン・エブセン(デンマーク、シナジー・バク サイクリング) +2′55″
9位 ツガブ・グルメイ(エチオピア、MTNキュベカ・サムスン) +2′58″
10位 アミール・コラドザグ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル チーム)

ポイント賞
アンドレア・グアルディーニ (イタリア、アスタナ)

山岳賞
ワン・メイエン (中国、ハンシャンサイクリングチーム)

アジアンライダー総合成績
ワン・メイエン (中国、ハンシャンサイクリングチーム)

チーム総合成績
MTNキュベカ・サムスン


text:So.Isobe
photo:Sonoko.Tanaka