最初の超級山岳ステージで、中国人選手のワンが独走で逃げ切り優勝を飾り、後続に2分27秒差でリーダージャージを獲得。彼の力を甘く見てしまった欧米のトップチームは、大きく出遅れてしまう結果となった。歴史的快挙とも称されるワンの活躍にレースの現場は沸いている。

4賞ジャージを総ナメにしたワンの金星

ポイント賞を獲得したアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)と総合リーダーのワン・メイリン(中国、ハンシャンサイクリング)ポイント賞を獲得したアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)と総合リーダーのワン・メイリン(中国、ハンシャンサイクリング) photo : Sonoko Tanaka「今日がキャリアの中で最良の日。自分たちは本当にラッキーだったと思う」と、第3ステージ、キャメロンハイランドへの超級山岳を制したワン・メイイン(中国、ハンシャンサイクリング)は、満面の笑みで彼の周りを取り囲む大勢の報道陣に話した。

彼のことを良く知る中国人メディアは「ワンはスプリンターだ」と言うが、昨年のツアー・オブ・チャイナ(2.HC)では山岳賞を獲得していることからも、マルチな才能を発揮させる24歳の若い選手だということが伺える。

マレーシアは、マレー人だけでなく、多くの中国系やインド系の人たちが生活している多民族国家。レースの公式カメラマンやメディアオフィサーは中国系マレーシア人であるし、中国語はマレー語、英語についでよく使われ、街を歩いていると多くの中国語の看板を多く見かける。また大会には、たくさんの中国メディアが帯同していることもあり、メイインの大金星は会場で大きな大きな話題となった。

第3ステージ 片手を突き上げてゴールするワン・メイイン(中国、ハンシャンサイクリング)第3ステージ 片手を突き上げてゴールするワン・メイイン(中国、ハンシャンサイクリング) photo:Sonoko Tanakaハンシャンサイクリングがコントロールするメイン集団ハンシャンサイクリングがコントロールするメイン集団 photo : Sonoko Tanaka


総合優勝を狙う欧米チームの大誤算

ワン・メイリン(中国、ハンシャンサイクリング)の通訳をするリー・フーユー。ディスカバリーチャンネルに所属していた経歴をもつワン・メイリン(中国、ハンシャンサイクリング)の通訳をするリー・フーユー。ディスカバリーチャンネルに所属していた経歴をもつ photo : Sonoko Tanaka第3ステージでも“アジア人”たちの逃げは簡単に決まったという。何選手かが先行し、最後に集団から飛び出したのがワンだった。ワンは総合3位につけていたが、彼の実力を知らない欧米チームには「まさか中国人選手が逃げ切れることはないだろう」と、簡単に彼のアタックを容認してしまったのだ。

キャメロンハイランドに続く上りで、集団はペースアップを図るも、愛三工業レーシングチームによると、「レースリーダーであるテオ・ボス(オランダ)のブランコプロサイクリングが集団のコントロールには加わらず、アンドローニジョカトリは上り口での落車に3人が巻き込まれ、ペースが乱れてしまったようで、集団の主導権を握るチームがなかったことも差が広がってしまった原因の1つ。ヴィーニファンティーニなどが集団のペースを上げたものの、それでもタイム差がどんどん開いていった。集団のなかにはタイム差表示が間違っているんじゃないか?という雰囲気もあったくらい」という。

沿道にはバナナやフルーツ、トウモロコシなどの露店が並ぶ沿道にはバナナやフルーツ、トウモロコシなどの露店が並ぶ photo : Sonoko Tanaka

最初は5人で構成されていた先頭集団だったが、登坂区間でメイリンの独走となる。追走グループは前を追おうとピエール・ローラン(フランス、ユーロップカー)のアシストをする新城幸也らの動きでペースアップ。25人ほどの有力選手に絞られていき、そこからジュリアン・アレドンド(コロンビア、チームNIPPO・デローザ)が単独でアタックを仕掛け、さらにワンを追ったが、結果的に2分27秒ほど届かず、ワンの圧勝となった。

アレドンドは「もちろん勝つつもりで前を追ったけど、彼を捉えることはできなかった。しかし、ほかの有力候補に40秒ちょっとの差を付けられたことは良かったと思う。次の山での大きなアドバンテージになる」と話す。総合順位に大きく影響する超級山岳は第5ステージのゲンティンハイランドが残されている。

第3ステージ 単独でワンを追走するジュリアン・アレドンド(コロンビア、チームNIPPO・デローザ)第3ステージ 単独でワンを追走するジュリアン・アレドンド(コロンビア、チームNIPPO・デローザ) photo:Sonoko Tanaka単独で追走し、有力選手たちからタイム差を稼いだジュリアン・アレドンド(チームNIPPO・デローザ)単独で追走し、有力選手たちからタイム差を稼いだジュリアン・アレドンド(チームNIPPO・デローザ) photo : Sonoko Tanaka

新城と西谷が逃げた第4ステージは集団スプリントに

西谷泰治(愛三工業レーシング)、新城幸也(ユーロップカー)、プーチョン・サイウドンシン(OCBC)のエスケープグループ西谷泰治(愛三工業レーシング)、新城幸也(ユーロップカー)、プーチョン・サイウドンシン(OCBC)のエスケープグループ photo : Sonoko Tanaka2つの超級山岳ステージに挟まれた第4ステージは、ハンシャンサイクリングやスプリンターチームのコントロールにより、スタート後30kmで決まった新城幸也や西谷泰治(愛三工業レーシング)ら、3人の逃げは残り11km地点で吸収。

新城は「今日は自由に動ける日だったし、チームのオーダーとして誰かが逃げに乗ることになっていました。西谷さんと懸命に引いたけど、ペースアップをしても、後ろとのタイム差は開かず、横風が強かったこともあり、今日は逃げ切れる展開ではありませんでした。明日の山岳ステージではピエールの優勝を狙います。そのためのいいトレーニングになりましたね」とレース後に話す。

ワンのリーダージャージ獲得により、まったく読めなくなってきたレース展開。総合を狙うチームは、明日、第5ステージのゲンティンハイランドで攻める以外に方法はないが、はたしてワンの力はどこまで通用するのか? アジアで戦う中国人選手とヨーロッパトッププロの山岳勝負が始まろうとしている。

リーダージャージを着て走るワン・メイリン(中国、ハンシャンサイクリング)リーダージャージを着て走るワン・メイリン(中国、ハンシャンサイクリング) photo : Sonoko Tanaka逃げている途中で脱水症状を起こしたという西谷泰治(愛三工業レーシング)、レース後にクールダウンする逃げている途中で脱水症状を起こしたという西谷泰治(愛三工業レーシング)、レース後にクールダウンする photo : Sonoko Tanaka


photo & text : Sonoko Tanaka in Shah Alam, Malaysia

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