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ピレネー山脈から中央山塊を駆け抜けた初週を終えたツールは、運命を分かつ2週目へと突入した。前半にジュラ山脈を経由した後、これまで多くのドラマを生み出し、これからも勝負の分水嶺となるアルプス2連戦。その中で躍動するシマノグローバルサポートチームの活躍にフォーカスしていこう。

スペインバスク地方のビルバオをスタートして2回目の休息日を迎え、2週目までにこなしてきたステージは全部で15。残すところ6つのステージとなり、今ツールも佳境に入ってきた。

優れた性能で選手たちの走りを支えるDURA-ACEホイール

ツールも既に2週目を終え、ついにアルプスへと足を踏み入れた photo:CorVos

ツールという世界最高の舞台にふさわしく、人類最高レベルの力強いパフォーマンスが連日繰り広げられている。人間の身体限界を拡張するような走りを支えるのは、最先端の技術によって開発されたパーツ群だ。

特に、常に高速で回転し続けるホイール、そして人と自転車を繋ぐコックピットやシューズ、ペダルといった機材は、成績に大きな影響を与えていることは間違いない。パワーロスを抑え、選手のパフォーマンスを最大限に引き出す機材は、勝利への道を均してくれる。

ダウンヒルをこなすヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)。大柄なスプリンターも安心して下れるのはホイールの高い信頼性があってこそ photo:So ISOBE

イネオス・グレナディアーズは山岳ステージでDURA-ACE C36ホイールを使用 photo:So ISOBE
第12ステージ アップダウン豊富な丘陵コースで逃げたマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)はオールラウンドなC50をチョイス photo:So ISOBE


"Science of Speed"をスローガンに開発されるシマノのパーツ群はその最右翼と言えるだろう。第2週目終了時点までの全15ステージで、シマノが機材面でフルサポートするシマノグローバルサポートチームは7勝。DURA-ACEを使用しているチームまで広げれば14勝と、圧倒的な成績を残している。

中でも注目を集めるのは、登場以来その優れた性能と、そして買い求めやすい価格で一般サイクリストからも高い人気を誇る3種のDURA-ACEホイールたち。山岳向けのC36、オールラウンドなC50、そして平坦向けのC60と、コースや脚質に応じて選択可能な3モデルが揃うDURA-ACEホイールも、コンポーネント同様に勝利を積み重ねている。

アルプス初日の第14ステージ、イネオス・グレナディアーズは軽量なC36で揃えた photo:So ISOBE

やはり使用率が高いのはオールラウンドなC50 登りも下りもこなせるマルチロールホイールだ photo:So ISOBE
平坦ステージではC60を使用する選手も多い photo:So ISOBE


選手の好みに応じて異なるリムハイトのホイールが混在するDSM・フィルメニッヒのチームパドック photo:So ISOBE

厳しい山岳ステージが続くこともあり、例年よりもC36を用いる選手の姿も多く見受けられる一方で、やはりもっとも使用率が高いのはC50。一方、数少ない平坦ステージでは勝利を狙うスプリンターがC60をチョイスしている。

総合成績の行方もある程度見えてきたこともあり、逃げの可能性も高まってきた第2週目では、逃げ切りを目指す選手らもC60をチョイスするシーンも多い。特に最初の1時間が50km/hを越えるほど高速化するレーススピードに対応し、そこから更に前へと抜け出すための武器として選ばれているようだ。

クリンチャー/TLR全盛期においてもチューブラー仕様を用意 選手第一主義のラインアップ

グルパマFDJのオリヴィエ・ルガック(フランス)はチューブラー仕様を愛用する photo:So ISOBE

このような流れの中で、チューブラーリムを廃止するホイールブランドも増えてきた。そして、その変化によって更にチューブレス/クリンチャータイヤのシェアが拡大するという再帰的な動きが見られるが、それでもシステム全体として軽量なチューブラーへ信頼を置くライダーはいる。

例えば、シマノグローバルサポートチームの一つであるグルパマFDJにおいては、ケヴィン・ゲニエッツ(ルクセンブルク)やオリヴィエ・ルガック(フランス)などのほか、ティボー・ピノ(フランス)も勝負を賭けた第12ステージでチューブラーを使用するなど、未だに根強い人気を誇る。

コンチネンタルのコンペティションチューブラーを履くケヴィン・ゲニエッツ(ルクセンブルク)のC50ホイール photo:So ISOBE

そういった今や少数派となりつつある選手たちの要望を切り捨てることなく掬い上げ、最新世代のホイールにもチューブラーリムを設定しているのは、シマノのレース、そして選手たちに対するリスペクトを感じる部分であろう。

選手の足元を支え、そして彩るS-PHYREシューズ

多くの選手らが厚い信頼を置くシマノのS-PHYRE photo:So ISOBE

シマノが支えているのは自転車の足回りだけではない。選手自身の足元にも、シマノのサポートは及んでいる。昨秋に第4世代へと進化したシマノのフラッグシップシューズであるS-PHYREの最新作、SH-RC903は登場間もないにもかかわらず、既に多くの選手に選ばれる名作としての風格すら漂わせている。

足という十人十色な部分にまつわるプロダクトだけに、選手それぞれのこだわりや好みがダイレクトに反映されるのがシューズという存在だ。フレームやホイールといったバイク関連はもちろん、ヘルメットやウエアなど、チーム単位で供給される機材が決まっている中で、シューズだけはチームメイトがバラバラのモデルを履いているという光景も珍しくはない。

マイヨヴェールに王手をかけるヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)の足元には先日発表されたシルバーの限定カラーが輝いていた photo:So ISOBE

どれだけの好条件を出しても、選手自身に気に入ってもらえなければ使われないのがシューズであり、特にツールという大舞台で選ばれるというのは、そのモデルに大して選手が全幅の信頼を置いていることの表れだと言えるだろう。

サラウンドラップ構造やシームレスミッドソールといった、S-PHYREシリーズの性能を支えるテクノロジーについては、過去のプロダクト記事を見ていただくとして、この特集ではツールを走る選手の足元を彩る、特別仕様を紹介していこう。

マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)の足元には専用デザインのS-PHYREが photo:So ISOBE

なんといっても注目はマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)のシューズだろう。プロらしいオールホワイトのRC903に、彼の名前の略称である"MVDP"のロゴがシルバーで大きく描かれたスペシャルな一足。シルバーのメタリックBOAダイヤルは、特別仕様の証でもある。

フランス王者であることを示すチャンピオンジャージを身にまとうヴァランタン・マデュアス(フランス,グルパマFDJ)の足元には、足首側にブルー、つま先側にレッドのメタリックBOAダイヤルを配置したフレンチトリコロールカラーのカスタムRC903が存在感を放つ。

ヴァランタン・マデュアス(フランス,グルパマFDJ)のRC903。フレンチトリコロールを意識した配色のBOAダイヤルの特別仕様 photo:So ISOBE

また、既にステージ4勝を挙げマイヨヴェールにほぼ王手をかけたヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)はシルバーカラーのS-PHYREを着用。こちらは、先日一般販売がアナウンスされた限定カラーとなっており、ホワイトが大多数を占める選手の足元の中で、その圧倒的な強さとともに一際目立つ存在感を放っていることは間違いない。

ツールはついにアルプスへ突入 過酷なステージで躍動するシマノグローバルサポートチーム

休息日明けの第10ステージ 慌ただしいアタック合戦の末形成された逃げには、多くのシマノグローバルサポートチームメンバーがジョイン photo:CorVos

さて、それでは今週もシマノグローバルサポートチームの活躍を軸に、激動のツール2週目を振り返っていこう。9連戦という長い1週目を終えたプロトンは、クレルモン・フェランでの休養日を挟んで再スタート。

英気を養った選手らを迎えた第10ステージは逃げに有利な丘陵コースで、ステージ優勝を狙う選手らが果敢にトライ。レミ・カヴァニャ(フランス、スーダル・クイックステップ)やミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド、イネオス・グレナディアーズ)、ジュリアン・アラフィリップ(フランス、スーダル・クイックステップ)といった強力な選手が乗る逃げは、プロトンを振り切りフィニッシュ地点へ先着した。

第11ステージ 今大会4勝目を手に入れたヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:CorVos

続く第11ステージは第2週目唯一の平坦ステージ。貴重なチャンスをモノにするべく、各チームのスプリンターたちが火花を散らす。確実にスプリントに持ち込むべく、逃げにも一切の慈悲を与えないタイトなタイムコントロールが行われる。

この後に続く山岳連戦を前に、勝ち星を掴んでおきたい各チームがスプリントに向けて一進一退の攻防を繰り広げる中、最速でフィニッシュラインを切ったのは今大会既に3勝を挙げているマイヨヴェールのヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)だった。ラスト1kmからはほぼ単騎での勝負となったフィリプセンだが、並み居るライバルを一蹴し4勝目を手に入れ、マイヨヴェールを盤石なものとした。

序盤から積極的に逃げを目指しアタックしたジュリアン・アラフィリップ(フランス、スーダル・クイックステップ) photo:So Isobe

第12ステージ 下りで仕掛け、独走体勢を築いたマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:CorVos

12ステージでは再び逃げにチャンスが訪れる。地元の期待を一身に背負うティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)らが入った逃げから、マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)が抜け出し、積極的な走りを見せつけた。

そして第2週目の後半は山岳連戦へ。その端緒となる13ステージは超級山岳グラン・コロンビエールへ登る山頂フィニッシュ。フランス革命記念日となるこの日、4分弱のリードをもってグラン・コロンビエールへ突入した逃げからは、カンタン・パシェ(フランス、グルパマFDJ)が母国に勝利をもたらすべくアタック。

超級グランコロンビエールを制したミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos

ピドコックと勝利の喜びを分かち合うミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos

積極的な走りを見せたパシェを吸収した集団の更に後方より現れたミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド、イネオス・グレナディアーズ) が残り11.8kmから独走態勢に。メイン集団も必死に追うが、クフィアトコフスキはそのまま単独で名峰グラン・コロンビエールの山嶺を制覇した。

続く第14ステージでプロトンはついにアルプス山脈へ足を踏み入れる。序盤に大規模落車が発生し、ニュートラルが適用される波乱のスタートとなったが、この日もステージを狙う逃げが形成される。ジュリアン・アラフィリップ(フランス、スーダル・クイックステップ)やダニエル・マルティネス(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)、ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)といったシマノグローバルサポートチームの選手らも逃げに乗り、1つの3級山岳と2つの1級山岳を通過していく。最後から2つめとなるラマ峠でそのチャレンジは吸収されたが、メイン集団にはジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ)らが残り、最後の超級山岳で総合争いが本格化した。

下りで先頭2名に追いつき、そのまま独走勝利を決めたカルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos

山頂フィニッシュではなく、下り切った先がフィニッシュ地点となるこの日のステージを制したのは、一度先頭からドロップしつつも粘りの走りを見せたカルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ)。昨ステージのグラン・コロンビエールで鮮烈な走りを見せたチームメイトに呼応するような、最後まで諦めない走りを見せたロドリゲスは総合でも3位へとジャンプアップを果たしている。

そして2週目を締めくくるのは今大会ラストの山頂フィニッシュとなる第15ステージ。連日逃げにチャレンジするジュリアン・アラフィリップ(フランス、スーダル・クイックステップ)がこの日も見せ場を作った。総合争いが大きく動くかと思われたこの日だが、結果的には拮抗状態のまま順位は変わらず。最終週を目前に控え、カルロス・ロドリゲスも手堅くサンジェルヴェ・モンブランの登りをこなし、表彰台の座を守っている。

逃げ集団から飛び出したジュリアン・アラフィリップ(フランス、スーダル・クイックステップ) photo:So Isobe

ついに最後のフィナーレへ向けて、最終週へと突入するツール・ド・フランス2023。次編では、プロトンを支えるシマノのニュートラルサポートについてフォーカスを当てていく予定だ。
提供:シマノセールス 制作:シクロワイアード編集部