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ワフー×弱虫ペダルサイクリングチームの特集第2ページは、インドアトレーナー最注目の「KICKR BIKE(キッカー・バイク)」を取り上げる。唐見美世子、織田聖の両選手がレーサー目線でインプレッション。非常にユニークなプロダクトに二人とも目を輝かせながらKICKR BIKEに試乗した。

KICKRシリーズの集大成「KICKR BIKE」

ワフー KICKR BIKE、KICKR HEAD WINDワフー KICKR BIKE、KICKR HEAD WIND
2019年のユーロバイクでデビューを果たしたKICKR BIKE。HQのあるアメリカではすでに販売が開始されていたが、ついに7月上旬より日本国内でのデリバリーが開始される。それではインプレッションの前に、一旦KICKR BIKEの特徴を振り返ろう。

KICKR BIKEはいわゆるエアロバイク、ワットバイクと呼ばれるような室内据え置き型のペダリングマシン。ジムに設置されているマシンと異なるのは、ロードバイクやクロスバイクのようなスポーツサイクル、インドアサイクリングを楽しむための機器として設計されている点だ。

これまでワフーはスマートトレーナー、KICKR CLIMB、KICKR HEADWINDを通して、インドアサイクリングに没入できる自然なライドフィールを追求してきた。その集大成としてKICKR BIKEではトレーナー、KICKR CLIMB、スポーツバイクを一つに統合。スマートトレーナーから一歩先に進む革新的なフィットネスマシンとして生み出されている。

親指ボタンの他にブラケットの頭にもボタンが備えられている親指ボタンの他にブラケットの頭にもボタンが備えられている シマノ、スラム、カンパニョーロに対応できるデュアルコントロールレバー。ブレーキも効くというシマノ、スラム、カンパニョーロに対応できるデュアルコントロールレバー。ブレーキも効くという

フライホイールとブラシレスモーターを組み合わせたドライブユニットフライホイールとブラシレスモーターを組み合わせたドライブユニット ギア段数と斜度はインジケーターに表示されるギア段数と斜度はインジケーターに表示される

フライホイールとブラシレスモーターによる負荷装置、車体が上下に傾く斜度再現機能はご存知の通り。ブラシレスモーターだけではなく、フライホイールも搭載することで、ライドフィールはより自然になり、斜度再現機能はKICKR CLIMBより幅広い−15%〜20%に対応する。

KICKR BIKEではさらなる没入感を生み出すため、シフトレバーを搭載。レバー形状のボタンをクリックし変速を行うと、負荷装置がギアチェンジのような感触を再現してくれる。既報の通りシマノ(シンクロシフトにも対応)、スラム(ダブルタップ、eTap方式)、カンパニョーロの親指シフトの再現も可能だ。また、チェーンリングやカセットスプロケットの歯数を仮想的に設定することもできる。

没入感を高める役割はフィッティングも大いに関係している。これまでのスピニングバイクはある程度までしか普段乗っているポジションに近づけることができなかったが、KICKR BIKEではシートチューブ長、シートポストの出代、ヘッド長、トップチューブ長を調整することが可能となっている。クランクも160〜175mmまでの5サイズから選ぶことができ、マイバイクとほぼ同じもしくは理想のポジションでインドアサイクリングを楽しめる。

各部の調節機構はクイックリリースで固定されている各部の調節機構はクイックリリースで固定されている フレームのトップチューブ長とシートポストの突き出し量を調節することができるフレームのトップチューブ長とシートポストの突き出し量を調節することができる

クランク長は5種類から選ぶことができるクランク長は5種類から選ぶことができる ボトルケージも装着可能。インドアトレーニングに欠かせないドリンクも実車と同じ様に装着できるボトルケージも装着可能。インドアトレーニングに欠かせないドリンクも実車と同じ様に装着できる

ポジション調整時にスマホアプリを活用すれば、所有するバイクサイズをKICKR BIKEに反映することが可能だ。乗り慣れたポジションでインドアトレーニングを行えるため、マイバイクを使うことができないデメリットもほぼ無い。もしアプリで導きだされたポジションが体にフィットしない場合も、クイックリリース式の固定機構で調整すれば良い。六角レンチなど工具を使用せずにポジション変更できるのは大きなアドバンテージだ。

以上がKICKR BIKEの特徴のおさらい。更に細かい情報は、こちらの記事が詳しい。これからは弱虫ペダルサイクリングチームの唐見美世子、織田聖によるファーストインプレッションをお届けしよう。

唐見実世子&織田聖インプレッション

選手プロフィール

今回KICKR BIKEを試した弱虫ペダルサイクリングチームの織田聖と唐見実世子今回KICKR BIKEを試した弱虫ペダルサイクリングチームの織田聖と唐見実世子
織田聖
2015年の全日本選手権シクロクロス・ジュニアでの優勝を皮切りに、CXを中心として活躍を続ける22歳。2017年と2019年の全日本選手権シクロクロス・U23でも勝利を挙げ、計3度の全日本チャンピオンに輝いている。現在はロードレースの活動も並行しており、2019年からはフランスのロードチームにも所属し欧州での活躍も行っている。

唐見実世子
弱虫ペダルサイクリングチームのプレイングコーチとしてチームを牽引する一人。Jフェミニンツアーでは強さを見せ、2016年から2019年まで4年連続で個人総合優勝を果たしている。他にも2001年、2002年にはシクロクロス全日本王者となっている。2004年は全日本選手権個人TTで優勝、ロードレースで2位、2017年は全日本選手権ロードで再び2位に輝いている。

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レーサー目線から見たKICKR BIKE

KICKR BIKEを試す唐見実世子KICKR BIKEを試す唐見実世子
―前半はインドアトレーニングに対するイメージを伺ってきました。後半ではワフーのニュープロダクト「KICKR BIKE」のインプレッションを語って頂きたいと思います。乗ってみた第一印象はいかがでしょう。

織田:素晴らしく、面白いデバイスだなというのが率直な感想です。ズイフトの世界と連携してトレーナーが上下に動く体験は初めてだったので、最初は違和感がありましたが、10分も走れば慣れてきて斜度1%の動きも楽しく感じられるようになりました。

1%でも登りがやってきたら車体は傾くし、勾配が厳しくなってきたらダンシングに切り替えたりしようと思うので、本当に走っているかのような実感があります。バーチャルがよりリアルに近くなる気がしますし、ズイフトを一層楽しめるようになるのは間違い無いと思います。

唐見:初めて傾きを感じた時はただただ驚きました。アップダウンに合わせて傾いてくれることで、体の様々な筋肉を使うことになるので良い運動になると思いましたね。KICKR BIKEの場合、自然なペダリングになっていると感じます。

ズイフトライドを楽しみながらKICKR BIKEを試す二人ズイフトライドを楽しみながらKICKR BIKEを試す二人
―自然というのはリアルに近い感覚ということでしょうか。

織田:脚に感じるフィーリングはリアルと言うよりも滑らかですね。普通のインドアトレーナーと比較しても滑らかさは抜群に好印象です。そこにKICKR CLIMBの機能が加わり、登っている感覚を手軽に味わえると言う意味で自然なイメージでしょうか。

唐見:そう。斜度の変化に対してスムーズに負荷が変化するから、屋外で走っている時には気が付かなかったりする程度の斜度でも感じとりやすくなっていると思うんだよね。逆に、気合いを入れるような斜度変化もギア選択を間違わなければスムーズに登って行ってくれるので、あれ?ってなることもありました。慣れですかね。

織田:屋外だと視覚から得られる情報が錯覚だった、なんてこともありますよね。登っているつもりが実は登ってなかったり、登ってないつもりでも登っていたなんてことは頻繁にあります。1%の違いを画面上の数値と車体の傾き、足の負荷で感じられるのは面白いですよ。

スマホやタブレットで撮影し、バイクの寸法を測定するスマホやタブレットで撮影し、バイクの寸法を測定する
ヘッドの高さも調節することが可能だヘッドの高さも調節することが可能だ スマホでKICKR BIKE用のポジションを出すことができるスマホでKICKR BIKE用のポジションを出すことができる

―KICKR BIKEの特徴の一つにポジション出しが簡単という点があります。実際にポジションを出してみてフィッティングはどうでしたか。

織田:サドルハイトだけ少し高めの数値が出ましたが、それ以外はフィットしたので取るに足らない問題という印象です。ズレが発生するという事よりもスマホだけでポジションを簡単に導き出せる便利さの方が勝ります。ゼロからポジションを作り始めるより、出てきたデータから微調整を行なった方が楽ですからね。

唐見:クイックリリース式で簡単に作業ができるので、新しいポジションを試したりするのにも良いかも。

―購入した時にどのような形態で自宅に届くかもユーザーとしては気になる部分だと思います。

樋澤(ワフー):代理店であるインターテックさんからの配送となり、佐川急便の家電配送と同じ扱いになります。KICKR BIKEは脚を組み立てるだけで設置完了ですが、その作業および梱包資材の引き取りまでがセットの配送サービスとなっています。配送費用も販売価格に入っています。

「斜度の変化にスムーズに対応できるし、体の様々な筋肉を使える」唐見実世子「斜度の変化にスムーズに対応できるし、体の様々な筋肉を使える」唐見実世子
唐見:めちゃくちゃ良いじゃないですか!それを聞いたらこれを選びたくなりますよ。家に大きくて重いダンボールが玄関先に届くだけって嫌じゃないですか。洗濯機や冷蔵庫みたいに設置してくれて、ゴミを持って帰ってくれるなんて助かります。

KICKR BIKEとCOREを比較

―普段使用しているKICKR COREと比較して、一長一短を感じるところはありますか。

織田:比較して考えるとKICKR BIKEはモーターが搭載されているので踏み出しが軽いですね。KICKR COREも苦では無いですが、KICKR BIKEは特に印象的ですね。2つを比較するとギアが実車か仮想かで感覚が変わりますね。乗り慣れているマイバイクだと足にかかる負荷の具合でどのギアに掛かっているのか感覚的に把握できるのですが、KICKR BIKEだとギア構成をシミュレートしていて、インジケーターを見ても感覚的に捉えることが難しいです。ある程度の慣れが必要だと感じます。

唐見:ギア周りのことで言うと、実車の場合は変速時に力を抜く必要がありますが、KICKR BIKEならば気にする必要がありません。限りなく滑らかにギアチェンジが完了するのでストレスはありません。ただ、その感覚のまま実車に移行することはできませんが。

「インドアだけで良いなら、KICKR BIKEを使わない理由はない」織田聖「インドアだけで良いなら、KICKR BIKEを使わない理由はない」織田聖
織田:あと比較しようとするとマイバイクかそうではないかがポイントですよね。KICKR COREに限らず固定ローラーはベストなポジションのマイバイクで乗れますが、取付けがめんどくさい、チェーンで手が汚れる、フレームにかかる負担が気になりますよね。KICKR BIKEの場合は初回にポジション出しする必要がありますが、機材への負担を気にすることもなければ、手を汚すこともないです。

唐見:全くその通りだよね。フレームやBB周り、ヘッドパーツへのダメージに対する不安は付きまといます。全ての固定ローラーユーザーは、そう言う気持ちを持ちながらトレーニングを行なっていると思います。

KICKR BIKEはどのようなユーザーに適している?

織田:マイバイクではないデメリットも多くはないと思います。一度ポジションを出してしまえばアプリにデータを保存することができるので、家族でシェアしててもポジションの復元は容易ですし。もしKICKR BIKEが家にあり、ズイフトでトレーニングするのであれば、KICKR BIKEを使わない理由は無いですよ。トレーニングでも十分に使えると思います。

「ストレスがなくスムーズであることが特徴」唐見実世子「ストレスがなくスムーズであることが特徴」唐見実世子
唐見:変速でガチャガチャしないし、チェーンのメンテナンスも必要がなく、ストレスは圧倒的に少ないよね。KICKR BIKEを用意できるのであれば、絶対にこちらの方が良い。もし、既にスポーツバイクを持っている方であれば、KICKR COREの方がコスパは良いとも思いますが。

織田:インドアで乗るだけの人ならKICKR BIKEの方がマッチするでしょう。家族でローラー台をシェアする場合もKICKR BIKE。外でも自転車に乗りたい人であればKICKR COREで良いんじゃないかと思います。ただKICKR COREを購入した後に、KICKR CLIMBでアップダウンを体験したいと考える可能性があるなら考えものですね。ズイフトの沼にハマりそうな方は最初からKICKR BIKEの方が適しているかと。45万という価格ですが、完成車とスマートトレーナー、KICKR CLIMBを揃えると考えれば妥当ですよね。

「これからeスポーツとしてインドアサイクリングを嗜む人は増えてくると思う」織田聖「これからeスポーツとしてインドアサイクリングを嗜む人は増えてくると思う」織田聖
唐見:KICKR BIKEはロードバイクとローラー台という枠組みではなく、ロードバイクに限りなく近いトレーニングマシンって考えると良さそうだよね。ロードバイクに乗っている人だけではなく、MTBやBMXなど他種目の選手たちでも良いですし、スピードスケートの選手などが屋外の自転車トレーニングの代わりにKICKR BIKEとズイフトを活用しても良いんじゃないかなと思います。

―最後にKICKR BIKEはインドアサイクリングを豊かにしてくれる存在だと思いますか。

唐見:KICKR BIKEが登場して選択肢が増えるというのは喜ばしい事です。人によって感じ方、意見は変わると思うので、KICKR BIKEの性能や特徴、価格、設置場所などがフィットする人が選べば幸せになれるでしょう。インドアサイクリングを頻繁に行う方であればこっちの方が適しているとは思います。

織田:これからはインドアサイクリングをeスポーツとして嗜む方も増えてくるでしょう。そういう方であればKICKR BIKEは有力な選択肢です。ズイフトをメインと考えている方、これからインドアサイクリングを始めようという方であればフィットすると思います。

―ありがとうございました。


ワフー KICKR BIKE

ワフー KICKR BIKEワフー KICKR BIKE (c)ワフー
設置面積(長さ×幅)121cm×76cm
商品重量42kg
対応身長152cm~193cm
最大体重約113kg
クランクアームの長さ165、167.5、170、172.5、175mm
最大上り勾配20%
最小下り勾配-15%
最大パワー出力2200ワット
パワー精度+ / - 1%
測定基準スピード、距離、パワー、ケイデンス、勾配
ドライブトレインベルトドライブ
フライホール重量13ポンド(5.9kg)+ 拡張モーター
抵抗の種類電磁モーターおよび拡張モーター
接続性ANT+、ANT+ FE-C、Bluetooth
デバイスの互換性iOS、Android、PC(Mac、Windows)
電源の必要条件100-240V、50/60 Hz、最大2.5A
CWレビュー記事https://www.cyclowired.jp/news/node/317377
CW詳細紹介動画https://youtu.be/a_8s5mgwKGo
価格445,000円(税抜)
取り扱いインターテック(https://brand.intertecinc.co.jp/wahoo/
提供:ワフー 制作:シクロワイアード編集部
協力:弱虫ペダルサイクリングチーム(FacebookページInstagram