日本最大のヒルクライムイベント「Mt.富士ヒルクライム」(以下、富士ヒルクライム)。その中から、主催者によって選ばれたクライマーたちが出走した「主催者選抜クラス」の上位陣の愛車を紹介しよう。



1位 田中裕士(グランペール)トレック EMONDA SLR

 1位 田中裕士(グランペール)トレック EMONDA SLR 1位 田中裕士(グランペール)トレック EMONDA SLR
4合目手前から勝負を仕掛け、勝ち逃げを作って勝利した田中さん。コースレコードを樹立する圧巻の走りを支えたのは、トレックのヒルクライムバイク、EMONDA SLRだ。「去年は直前に落車してしまって、それでも入賞できたのでその時は嬉しかったんですがだんだん悔しくなってきて。今年は万全の状態に仕上げてくれたので、その時点で満足でした。だから、優勝というのは逆に驚きでした」と語る田中さん。

昨年の10月からトレーニングを重ねてきて、直近のCTLは160ほどだったという。(※レース期間中のプロ選手が150程度と言われているトレーニングスコア。3か月間のトレーニング量の目安となる)基本は朝に実走、夜にローラーを回すというスタイルで、日々練習を積み重ね、今年はレースもほとんど出場せず富士に照準を合わせてきたのだとか。

のむラボ6号にPODIUMTTを組み合わせるのむラボ6号にPODIUMTTを組み合わせる アンカープラグの無いSTARLESSのトップキャップ トップチューブにあるのは京都の「どすこい巡業」のステッカーアンカープラグの無いSTARLESSのトップキャップ トップチューブにあるのは京都の「どすこい巡業」のステッカー


ノンドライブサイドは結線仕様だノンドライブサイドは結線仕様だ 使い込まれたクランク&パワーメーター使い込まれたクランク&パワーメーター


さて、そんな田中さんの愛車のEMONDA SLRは実は2代目。昨年まで駆っていたバイクを落車で壊してしまい、急遽調達したものだという。「実は今日5位に入った中村さんが、新しいのを買うということで、乗っていたバイクを譲り受けたんですよ」という。以前のバイクはヘッドチューブが長いH2フィットだったが、今回のバイクはよりレーシーなH1フィットとなり、よりしっくりくるようになったという。

パーツ類は基本的にすべて載せ替えとなり、機械式RED22をメインにシマノ9000系DURA-ACEのパイオニアペダリングモニターを使用しているのは昨年同様。一方ホイールはAX-Lightnesから、のむラボ6号へ変更している。昨年の兼松さんに続き、2年連続でウィニングホイールとなったのも注目ポイントだ。

ヘッドキャップはアンカープラグが不要となるSTARLESSという軽量パーツを使用。また、トップチューブのステッカーは「どすこい巡業」という京都のグループライドのもので、それがまた楽しいのだとか。「楽しいグルメライドなんですよ。もう、白目剥くくらいアタック合戦で。そして摂取カロリーが5,000kcalくらいあって。年に何回かお邪魔するんですけど、毎回楽しみにしてます!」とのこと。グルメライド??



2位 星野貴也(COWGUMMA)フェルト F FRD

2位 星野貴也(COWGUMMA)フェルト F FRD2位 星野貴也(COWGUMMA)フェルト F FRD
田中さんと2人での逃げに持ち込み、力を見せた星野さん。「最後のロングスプリントでついていけなかったですね」と勝負を振りかえった。大会記録に迫る走りを支えた愛車はフェルトのオールラウンドレーサーのハイエンドモデル、F FRDだ。

一昨年はトーヨー、昨年はトレックのDOMANEを駆っていた星野さん、バイク変更の理由は?との問いに「やはり軽さは大切かな、と。あとTextremeカーボンの柄もかっこよくて気に入りました」とのこと。今回の結果を見ても、その効果はあったようだ。

シマノのローハイトカーボンチューブラー、WH-R9000-C24TUシマノのローハイトカーボンチューブラー、WH-R9000-C24TU バーテープはダイレクトでグリップ力のあるカブトの薄型モデルBT-06バーテープはダイレクトでグリップ力のあるカブトの薄型モデルBT-06


サンマルコのアスピデに、ウッドマンのピラーサンマルコのアスピデに、ウッドマンのピラー 電動DURA-ACEを使用していた電動DURA-ACEを使用していた


コンポーネントはシマノの9070系DURA-ACE Di2。機械式のアルテグラを使用していた昨年からアップデートし、更にレーシーなアセンブルに。ホイールもシマノのローハイトカーボンチューブラー、WH-R9000-C24TUを合わせている。

サドルはサンマルコのアスピデに、ウッドマンのピラーを組み合わせる。ハンドルはボントレガー、ステムはジップとフロント周りはアメリカンブランドで固めた。バーテープはダイレクトでグリップ力のあるカブトの薄型モデルBT-06を使用する。



3位 板子佑士(Life Ride)スコット ADDICT SL

3位 板子佑士(Life Ride)スコット ADDICT SL3位 板子佑士(Life Ride)スコット ADDICT SL
第2集団の先頭を取って3位に入った板子さんの愛車はスコットの超軽量マシンであるADDICT SL。組み合わせるコンポーネントも軽量なスラムREDと、まさにクライマーらしい1台に。「実は10速なんですよね」という板子さん。

その理由を尋ねると、「家庭の円満のために(笑)」とのこと。11速にすれば来年はチャンピオンになれるかもしれないですよ、奥さん!ホイールはジップの202を組み替えたもの。ハブをTNI ウイングハブのセラミックモデルに変更している。

Mcfkのサドルとウッドマンのピラーを組み合わせるMcfkのサドルとウッドマンのピラーを組み合わせる 極限まで無駄をそぎ起こしたハンドル周り極限まで無駄をそぎ起こしたハンドル周り


ツール・ド・おきなわのボトルを使っていたツール・ド・おきなわのボトルを使っていた ジップの202のハブをTNIに組み替えたジップの202のハブをTNIに組み替えた


ローターの3Dクランクにストロングライトのチェーンリングを組み合わせたフロントは、50-34Tのコンパクト仕様。一方リアは12-25Tを使用していた。Mcfkのカーボンサドルやバーテープが省略されたハンドル周り、またノコンタイプの軽量ワイヤーなどなど、軽量化に余念のない様子が見て取れるヒルクライムマシンに仕上がっていた。



4位 森本誠(GOKISO)ヨネックス CARBONEX

4位 森本誠(GOKISO)ヨネックス CARBONEX 4位 森本誠(GOKISO)ヨネックス CARBONEX
節目節目で集団を揺さぶり、勝ち逃げとなったアタックにもしっかりとチェックに入り、流れを作り出していた「山の神」こと森本誠さんの愛車は、昨年に引き続きヨネックスのCARBONEX。アンダー700gという超軽量なフレームは、適度なしなりがあり脚残りが良いところが気に入っているのだという。

「ローテの綾で出た田中君に合わせたところまでは良かったんですが、自分が結構いっぱいでしたね」と展開を振り返る。特に今年は全日本選手権に合わせた調整を行い、相当のボリュームを稼ぐ練習を中心に据えてきたのだとか。「長距離を乗り込む中で、ヒルクライムにも対応できると思ったんですが、そううまくはいかないですね。田中君に倣ってローラー練もやらないとだめですね」と森本さん。

サドルはPROのTURNIXを使用サドルはPROのTURNIXを使用 ステムもハブと同色にアルマイトされているステムもハブと同色にアルマイトされている


BBもゴキソを使用している クランクはスクエアテーパーのスギノを使用BBもゴキソを使用している クランクはスクエアテーパーのスギノを使用 ハブはもちろんゴキソ。最軽量のクライマーハブだハブはもちろんゴキソ。最軽量のクライマーハブだ


注目ポイントは回転系がすべてゴキソであること。ハブはもちろんのこと、ボトムブラケットもゴキソとなっており、その回転性能は撮影の際にクランク位置を調整するだけでも体感できるほど。タイヤは前輪がコンチネンタルのGATORSKIN、後輪がIRCのASPITEを使用していた。コンポーネントは機械式のスラムRED。電動コンポーネントよりも信頼性に優れるというのが、そのチョイスの理由だ。



5位 中村俊介(SEKIYA)トレック EMONDA SLR

5位 中村俊介(SEKIYA)トレック EMONDA SLR5位 中村俊介(SEKIYA)トレック EMONDA SLR
トレックの最新ヒルクライムマシン、EMONDA SLRを駆る中村さん。5gという超軽量塗装「U5ベイパーコート」仕様の軽量化を追求した一台だ。実は今年の優勝者である田中さんにEMONDAを乗らせてもらったことがきっかけで、購入を決意したのだという。

真っ先に目を引くのは、ホイールだろう。前輪にコリマのエアロ+MCC、後輪にマヴィックのコスミックカーボンアルチメイトという、異なるフレンチブランドのフルカーボンホイールを組み合わせている。「前後輪でホイールに求められているものは違うと思っていて。駆動力が必要な後輪は剛性の高いアルチメイト、前輪は軽いエアロ+MCCを選んでいます」という。しっとりした乗り味のフレームと剛性感のあるホイールはかなりマッチングもいいとのこと。

サドルはセッレイタリアのSLRの穴あきモデルを使用するサドルはセッレイタリアのSLRの穴あきモデルを使用する ステム一体型ハンドル・XXX Integrated Bar/Stemステム一体型ハンドル・XXX Integrated Bar/Stem


後輪はマヴィックのCOSMIC CARBON ULTIMATE、タイヤはコンチネンタルのCOMPETITION後輪はマヴィックのCOSMIC CARBON ULTIMATE、タイヤはコンチネンタルのCOMPETITION 前輪はコリマのエアロ+MCC前輪はコリマのエアロ+MCC


ハンドルはボントレガーのステム一体型ハンドル・XXX Integrated Bar/Stem。220gほどと、普通のカーボンハンドル単体ほどの重量に仕上がる超軽量モデルだ。コンポーネントはシマノのR9120 DURA-ACE Di2を組み合わせた。

実は今年初めての選抜クラス出場だった中村さん。「年代別とは全然違うレースで、びっくりしました。ペースの上げ下げも大きくて、完全にロードレース的な雰囲気で、楽しかったです」と初出場の感想を語ってくれた。逃げを決めた2人については「いつも練習やレースで痛い目見せられてるので、いつかは見返してやりたいですね」とも。



6位 兼松大和(Team Green Road)フォーカス IZALCO MAX

6位 兼松大和(Team Green Road)フォーカス  IZALCO MAX6位 兼松大和(Team Green Road)フォーカス IZALCO MAX
昨年コースレコードを打ち立てたディフェンディングチャンピオンの兼松さんは今年は機材を完全にスイッチして臨んだ。「奥庭でアタックして、逃げ切るというプランだったんですが、マークが厳しくて。」とレースを振り返った。今シーズンはJBCFに積極的に出場していることもあり、「富士ヒルはヒルクライムの中でもロードレース的で面白い。またリベンジします!」と闘志を燃やす。

さて、機材は昨年までヒルクライムレースを戦ってきたスコットからフォーカスへとスイッチ。同社のフラッグシップであるIZALCO MAXが新たな愛車となる。「試乗した時にすごくまっすぐ進むバイクだったのでこれならヒルクライムで行けるなと。あとカラーが良いでしょ?誰ともかぶらない感じで」と新フレームは既にかなりのお気に入りのよう。

カラフルなコーディネートのハンドル周り Blipsに取り付けられているのはKCNCのプーリーワッシャーカラフルなコーディネートのハンドル周り Blipsに取り付けられているのはKCNCのプーリーワッシャー カンパニョーロのBORA ULTRA 35にヴィットリアのCORSA SPEEDをチューブレス化して使用カンパニョーロのBORA ULTRA 35にヴィットリアのCORSA SPEEDをチューブレス化して使用


カーボンドライジャパンのビッグプーリーを使用カーボンドライジャパンのビッグプーリーを使用 オリジナルのシートクランプオリジナルのシートクランプ


コンポーネントはスラムのREDだが、今回はeTapへとチェンジ。「多少重くなりますけど、変速回数が増えて楽に走れるようになりました」と変更の理由を説明してくれた。更に、ヒルクライムポジションでも変速が行えるよう、上ハンドルにはBlipsがつけられている。KCNCのプーリーワッシャーをボタンに配置することで押しやすくするファインチューンは流石の一言。

リアディレイラーにはカーボンドライジャパンのビッグプーリーが組み合わせられ、更なる抵抗軽減を図る。ホイールはカンパニョーロのBORA ULTRA35にヴィットリアのCORSA SPEEDをチューブレス化して取り付ける。「転がり抵抗も低いですし、グリップも掴みやすい。普通のクリンチャータイヤよりも断然乗りやすいですね」とチューブレス派の顔をのぞかせた。



7位 大野拓也(OVERHEAT)メリダ SCULTURA 9000

7位 大野拓也(OVERHEAT)メリダ SCULTURA 90007位 大野拓也(OVERHEAT)メリダ SCULTURA 9000
序盤から終盤まで仕掛け続けた大野さんの走りを支えたのは、メリダのクライミングマシン SCULTURA 9000だ。「どっかで千切れるんだったら目立っておこうと思って!」とそのアグレッシブな走りの理由を語ってくれた。

昨年に乗り換えたというこのバイク、選んだ理由はずばり「安くて軽い!」から。フレーム重量720gのCF5フレームに最新のR9100DURA-ACEを組み合わせたクライミング仕様。ホイールもジップの軽量モデルである202を使用している。

プロロゴのフルカーボンサドルを使用プロロゴのフルカーボンサドルを使用 ボーマのカーボンバーとデダのスーパーレジェラを組み合わせているボーマのカーボンバーとデダのスーパーレジェラを組み合わせている


スプロケットはトーケンのコンパーチブルタイプだスプロケットはトーケンのコンパーチブルタイプだ ジップ202にヴィットリアのCORSA SPEEDジップ202にヴィットリアのCORSA SPEED


かなり前から使っているホイールとのことで、フリーが10s用なのだとか。そこでトーケンの10sフリー用11sスプロケットを組み合わせて使い続けているとのこと。タイヤはフロントがヴィットリアのCORSA SPEED、リアがヴェロフレックスのRECORD。ブランドが異なるのは、大会直前にパンクしてしまったからとのことだが、両方スキンサイドで違和感はほぼゼロ。

オーソドックスなパーツ構成ながら、サドルはプロロゴのフルカーボンモデル、C.ONEを使用するなど、軽量化にも抜かりはない。ぜひ来年もアグレッシブな走りに期待したい。



8位 武田祥典(桜高軽音部)スペシャライズド S-WORKS Tarmac SL4

8位 武田祥典(桜高軽音部)スペシャライズド S-WORKS Tarmac SL48位 武田祥典(桜高軽音部)スペシャライズド S-WORKS Tarmac SL4
185cmという恵まれた体格を持つ武田さん。そのパワーを支えるのは、スペシャライズドのS-WORKS Tarmac SL4だ。歴代Tarmacの中でも、剛性の高さに定評のある第4世代に、7900系のシマノ DURA-ACEを組み合わせている。

「クランク長を177.5mmに変えたんですよ」と武田さん。長くしたんですか?と尋ねると、その逆だという。なんと以前は180mmを使用していたため、ケイデンス重視で短くしたのだとか。フロントは52-39T、リアは12-28Tと、ロードレースにも対応できそうな歯数構成。ちなみにスプロケットはリーコンの軽量アルミモデルを使用している。

リッチーで固めるハンドル周りリッチーで固めるハンドル周り ブレーキもピンクアルマイトのモデルブレーキもピンクアルマイトのモデル


セラミックスピードのビッグプーリーを組み合わせていたセラミックスピードのビッグプーリーを組み合わせていた クランク長は177.5mmへと縮めたというクランク長は177.5mmへと縮めたという


前下がりのサドルはヒルクライム時の斜度に合わせてバランスがとれるように調整されたもの。また、「抵抗が減っているのを体感できますよ!」と一押しなのはセラミックスピードのビッグプーリー。特にローギアに入れたときのフリクションが減っていると感じるそうだ。ホイールはノーブランドのカーボンチューブラーリムをアメリカンクラシックのハブと組み合わせた手組で、前後重量950gに仕上がっているという。

さらにこだわりポイントはタイヤとのこと。「軽くて転がるので、ヒルクライムにはこれなんです」と語るヴィットリアのTT用モデル・クロノは長年信頼する相棒だ。「今回は序盤が穏やかだったので、このままいけば集団スプリントでチャンスがあるかと思ったんですが、そうはいかなかったですね。今年は調子いいので乗鞍を狙っていきたいと思います!」とのことだった。

text&photo:Naoki.Yasuoka

最新ニュース(全ジャンル)