ツール・ド・スイス(UCIプロツアー)第2ステージは山岳で絞られた集団によるスプリント勝負に持ち込まれ、写真判定の際どい勝負をベルンハルト・アイゼル(オーストリア、チームコロンビア)が制した。総合成績は動かず、ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)が首位を守っている。

リーダージャージを着て走るファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)リーダージャージを着て走るファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク) photo:Cor Vosダヴォスをスタート&ゴールとする150kmの第2ステージは、ラスト22km地点で1級山岳、ラスト11km地点で3級山岳を越える。難易度は低いが、山を苦手とするピュアスプリンターたちは1級山岳で足止めを食らうことになった。

この日逃げたのはエルヴェ・デュクロラサル(フランス、コフィディス)ら3名。しかしサクソバンクがコントロールするメイン集団とのタイム差は2分30秒が上限で、3名は1級山岳の上り中腹、ラスト25km地点で吸収されてしまう。

この1級山岳でマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア)やダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)といった有力スプリンターが脱落する中、単独でアタックを決めたのは、カンチェラーラから31秒遅れの総合5位につけていたトニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア)だ。

メイン集団を最大1分近く引き離したマルティンは暫定バーチャルリーダーに浮上したが、サクソバンクの集団コントロールによってそのリードは縮小。結局2つの山岳ポイントを先頭通過後、ラスト7kmでマルティンは集団に吸収された。勝利には結びつかなかったが、マルティンは山岳賞トップに。TTスペシャリストのマルティンは、パリ〜ニースに続く山岳賞獲得を狙ってくるのだろうか?


横一線でゴールするフレイレ、チオレック、そしてベルンハルト・アイゼル(オーストリア、チームコロンビア)横一線でゴールするフレイレ、チオレック、そしてベルンハルト・アイゼル(オーストリア、チームコロンビア) photo:Cor Vosその後、集団はチームコロンビアとミルラムが主導権を争い、アタックで揺さぶりをかけるジェレミー・ロワ(フランス、フランセーズデジュー)やマルケル・イリサール(スペイン、エウスカルテル)らを吸収してハイスピードでゴールへ。

ジョージ・ヒンカピー(アメリカ)に発射されたアイゼルが先頭でスプリントを開始すると、昨年までの同僚ゲラルド・チオレック(ドイツ、ミルラム)がこれに対抗した。

フレイレとチオレックを僅差で下したベルンハルト・アイゼル(オーストリア、チームコロンビア)フレイレとチオレックを僅差で下したベルンハルト・アイゼル(オーストリア、チームコロンビア) photo:Edward A Madden/www.dotcycling.com先頭で一進一退の攻防を繰り広げるアイゼルとチオレック。少し進路を塞がれたオスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)はゴール直前で何とか先頭2人に並び、最後はフレイレ、チオレック、アイゼルが並んでゴール。誰も勝利を確信出来ずに手は挙がらない。写真判定の結果、先頭を守り抜いたアイゼルに軍配が上がった。

「非常にテクニカルなフィニッシュだった。幸いヒンカピーが素晴らしいリードアウトをしてくれて、絶好のポジションからスプリントに持ち込めたんだ」。久々に自らの勝利を狙い、プロ通算19勝目を飾ったアイゼルが振り返る。

プロ通算19勝目を飾ったベルンハルト・アイゼル(オーストリア、チームコロンビア)プロ通算19勝目を飾ったベルンハルト・アイゼル(オーストリア、チームコロンビア) photo:Cor Vos「チームコロンビアは集団スプリントに向けて完璧に状況をコントロールした。問題だったのは、スプリントを開始したときゴールラインが酷く遠くに感じたこと。ゴールまで辿り着かないんじゃないかと思った。もちろんチオレックとフレイレには警戒していた。2人とも右から追い抜かんばかりのスプリントで対抗してきたけど、何とか僕は持ち堪えた。本当に僅差だったよ!」

アイゼルやマーク・レンショー(オーストラリア)、アンドレ・グライペル(ドイツ)は、普段カヴェンディッシュの発射台を務めるトレイン要員。他チームに移籍すればエーススプリンター級の選手たちだ。それほどのスピードが無ければカヴェンディッシュの発射台は務まらない。

リーダージャージを守ったファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)リーダージャージを守ったファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク) photo:Cor Vos逆に言えば、そういった強力スプリンターに援護されたカヴェンディッシュの攻撃力は非常に高い。ジロ・デ・イタリアでステージ3勝を飾ったカヴは、ツールで再びステージ優勝量産を狙う。

サクソバンクのレースコントロールによって総合リーダージャージを守り、ラスト6km地点に設定されたスプリントポイントでボーナスタイム3秒を獲得したカンチェラーラは「レースはここまで思い通りに進んでいる。今日はボーナスタイムも獲得できたし満足だ。ようやく好調の波がやってきた」と、地元スイスでリーダージャージを着続けることに満足している様子。

「終盤にマルティンがアタックしたとき、ジャージキープに暗雲が立ちこめたけど、チームのおかげで状況を打破できた。いつまでジャージを着続けるか分からないけど、もう1日着れることは嬉しい限り」。シーズン前半から伸び悩んでいたカンチェラーラが、ツールに向けて、そしてシーズン後半に向けて調子を上げてきた。

選手コメントは各チームウェブサイトより。

ツール・ド・スイス2009第2ステージ結果
1位 ベルンハルト・アイゼル(オーストリア、チームコロンビア)3h36'54"
2位 ゲラルド・チオレック(ドイツ、ミルラム)
3位 オスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)
4位 フランチェスコ・ガヴァッツィ(イタリア、ランプレ)
5位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、ケースデパーニュ)
6位 シャビエル・フロレンシオ(スペイン、サーヴェロ)
7位 セバスティアン・シードラー(ドイツ、フォアアールベルク・コラテック)
8位 ロイド・モンドリー(フランス、アージェードゥーゼル)
9位 エンリーコ・ガスパロット(イタリア、ランプレ)
10位 ダニエル・モレーノ(スペイン、ケースデパーニュ)

個人総合成績
1位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)3h46'12"
2位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)+22"
3位 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、アスタナ)+25"
4位 ジョージ・ヒンカピー(アメリカ、チームコロンビア)+27"
5位 トニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア)+34"
6位 キム・キルシェン(ルクセンブルク、チームコロンビア)
7位 マキシム・モンフォール(ベルギー、チームコロンビア)+35"
8位 グスタフエリック・ラーション(スウェーデン、サクソバンク)+36"
9位 ルイアルベルト・ファリアダコスタ(ポルトガル、ケースデパーニュ)+38"
10位 ベルンハルト・アイゼル(オーストリア、チームコロンビア)+39"

ポイント賞
ベルンハルト・アイゼル(オーストリア、チームコロンビア)

山岳賞
トニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア)

中間スプリント賞
ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)

チーム総合成績
サクソバンク

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