大会最後の山岳でアタックしたライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・シャープ)に食らいついたスティーブ・クミングス(イギリス、BMCレーシングチーム)。メイン集団を17秒引き離して逃げ切った2人による勝負は、クミングスに軍配が上がった。

ツアー・オブ・北京2012第5ステージツアー・オブ・北京2012第5ステージ photo:Tour of Beijingツアー・オブ・北京最終日は、北京北部の昌平(チャンピン)から平谷(ピングー)までの182.5km。前半から2級と3級のカテゴリー山岳を越え、平坦区間を経て2級と1級山岳へ。標高719mの1級山岳がフィニッシュラインの29km手前に佇んでいる。

北京北部の山岳地帯へと向かうプロトン北京北部の山岳地帯へと向かうプロトン photo:Graham Watson/Tour of Beijing前半の山岳地帯で積極的に動いたのは、山岳賞ジャージを着るダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)。ジャパンカップ参戦予定のマーティンは2つのカテゴリー山岳を先頭で越え、山岳賞トップの座を揺るぎないものにした。

2分弱のリードで逃げる12名の先頭グループ2分弱のリードで逃げる12名の先頭グループ photo:Graham Watson/Tour of Beijingしかしマーティンの誤算が続くスプリントポイントで発生する。スプリントポイントを2番手通過した総合4位のエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、チームスカイ)がボーナスタイム3秒獲得に成功。マーティンはボアッソンハーゲンに総合3位の座を奪われてしまう。

1級山岳で先頭グループを絞り込むライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・シャープ)1級山岳で先頭グループを絞り込むライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・シャープ) photo:Graham Watson/Tour of Beijingこうした山岳賞とボーナスタイムを懸けた前半バトルが一段落すると、ようやくこの日の逃げが決まる。ミハイル・イグナチエフ(ロシア、カチューシャ)やマヌエーレ・ボアーロ(イタリア、サクソバンク・ティンコフバンク)、そしてスティーブ・クミングス(イギリス、BMCレーシングチーム)を含む12名の大きな逃げグループが先行した。その一方でアンディ・シュレク(ルクセンブルク、レディオシャック・ニッサン)は40km地点でバイクを降りている。

リーダージャージ擁するオメガファーマ・クイックステップがメイン集団をコントロールリーダージャージ擁するオメガファーマ・クイックステップがメイン集団をコントロール photo:Graham Watson/Tour of Beijingオメガファーマ・クイックステップがコントロールするメイン集団は、逃げグループを射程圏内に抑え込む。そして後半の2級山岳の登りが始まると、総合で1分30秒遅れのヘジダルがアタック。今年ジロ・デ・イタリア制覇を成し遂げたカナダ人は、単独で先頭グループに追いついた。

総合表彰台、左から2位フランチェスコ・ガヴァッツィ(イタリア、アスタナ)、優勝トニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)、3位エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、チームスカイ)総合表彰台、左から2位フランチェスコ・ガヴァッツィ(イタリア、アスタナ)、優勝トニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)、3位エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、チームスカイ) photo:Graham Watson/Tour of Beijing最後の1級山岳でヘジダルの登坂力に対応出来たのはクミングスのみ。こうして先頭はヘジダルとクミングスに絞られた状態で1級山岳をクリアし、30秒ほどのリードでダウンヒルに突入する。

「100%総合成績に集中していた」というヘジダルが下りを果敢に攻め、クミングスがこれに続く。連続する登りで30名ほどに絞られたメイン集団が40秒遅れで追走。オメガファーマ・クイックステップの他、アスタナやチームスカイが集団コントロールに加わった。

脚の揃ったヘジダルとクミングスは協力してハイスピードを維持。メイン集団を振り切って平谷のゴール地点へとやってくる。総合時間を稼ぐために積極的に前を引いたヘジダルにステージ優勝を争う力は残っておらず、クミングスがスプリントで先着した。

「今日の逃げは人数が揃っていて、ペースを落とすことなくメイン集団にプレッシャーを与え続けた。長い一日の最後を勝利で締めくくることが出来て嬉しいよ」。シーズン最後に2勝目を掴んだクミングスは語る。ブエルタ・ア・エスパーニャに続く、ワールドツアーレースでのステージ優勝だ。

17秒遅れでゴールにやってきたメイン集団は、ボアッソンハーゲンを先頭にゴール。ボアッソンハーゲンはボーナスタイムにより総合3位に浮上。しかし最後までトニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)の王座は揺るがなかった。

最終的にフランチェスコ・ガヴァッツィ(イタリア、アスタナ)との総合タイム40秒を守ったマルティンは、大会連覇を喜ぶ。「多くの人から連覇を期待されていたけど、今年はタイムトライアルが無く、いつもより大きなプレッシャーがのしかかっていた。月にも登る気分。スーパーハッピーだ」。

最終的に新人賞はラファル・マイカ(ポーランド、サクソバンク・ティンコフバンク)が獲得。リクイガス・キャノンデールがチーム総合成績トップに輝いた。

レース展開や選手コメントはレース公式リリースより。




ツアー・オブ・北京2012第5ステージ結果
1位 スティーブ・クミングス(イギリス、BMCレーシングチーム)        4h05'08"
2位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・シャープ)              +02"
3位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、チームスカイ)        +17"
4位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、レディオシャック・ニッサン)
5位 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ベリソル)
6位 フランチェスコ・ガヴァッツィ(イタリア、アスタナ)
7位 トムイェルテ・スラグテル(オランダ、ラボバンク)
8位 ラファル・マイカ(ポーランド、サクソバンク・ティンコフバンク)
9位 マティアス・フランク(スイス、BMCレーシングチーム)
10位 サイモン・クラーク(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)

個人総合成績
1位 トニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)      17h16'56"
2位 フランチェスコ・ガヴァッツィ(イタリア、アスタナ)             +40"
3位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、チームスカイ)        +46"
4位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)          +50"
5位 エロス・カペッキ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)          +52"
6位 リナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル)        +56"
7位 ラファル・マイカ(ポーランド、サクソバンク・ティンコフバンク)
8位 トマシュ・マルチンスキー(ポーランド、ヴァカンソレイユ・DCM)
9位 ルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター)                  +1'00"
10位 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ベリソル)

ポイント賞
エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、チームスカイ)

山岳賞
ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)

新人賞
ラファル・マイカ(ポーランド、サクソバンク・ティンコフバンク)

チーム総合成績
リクイガス・キャノンデール

text:Kei Tsuji
photo:Tour of Beijing