山岳コースの第2ステージ、最後の丘陵で抜け出した6人のスプリントをマキシミリアーノ・リケーゼ(チームNIPPO)が制してリーダーに。鉄壁の走りでNIPPOは総合優勝へ向かう。

マキシミリアーノ・リケーゼ(チームNIPPO)が優勝マキシミリアーノ・リケーゼ(チームNIPPO)が優勝 photo:Hideaki.TAKAGI
9月16日(日)、ツール・ド・北海道第2ステージが当麻町から美瑛町までの156.5kmで行われた。
当日は朝から時折豪雨となる悪天候。気温も17度と肌寒い。
序盤の丘陵をきっかけに11人の逃げができ、中盤の山岳で井上和郎(ブリヂストンアンカー)が単独先行、これを終盤にNIPPOがおもに引くメイン集団が吸収。勝負はラスト15kmの丘陵地帯に持ち込まれ、ここで6人が先行、ゴール勝負をリケーゼが制した。さらに西薗良太(ブリヂストンアンカー)、増田成幸(宇都宮ブリッツェン)が続いて、個人総合順位もこの順序に。

4賞ジャージが並ぶスタート地点4賞ジャージが並ぶスタート地点 photo:Hideaki.TAKAGI美瑛までの第2ステージが始まる美瑛までの第2ステージが始まる photo:Hideaki.TAKAGI白金ゴルフクラブの上り、先頭の10人白金ゴルフクラブの上り、先頭の10人 photo:Hideaki.TAKAGIラスト10キロの先頭集団。ここから最後の戦いがラスト10キロの先頭集団。ここから最後の戦いが photo:Hideaki.TAKAGIゴール150m前 飯野智行(宇都宮ブリッツェン)が先頭ゴール150m前 飯野智行(宇都宮ブリッツェン)が先頭 photo:Hideaki.TAKAGIU23リーダーとなった中尾佳佑(順天堂大学)U23リーダーとなった中尾佳佑(順天堂大学) photo:Hideaki.TAKAGIマキシミリアーノ・リケーゼ(チームNIPPO)が総合リーダーにマキシミリアーノ・リケーゼ(チームNIPPO)が総合リーダーに photo:Hideaki.TAKAGI
個人総合&ポイント&U23リーダーの黒枝士揮(鹿屋体育大学)は2分21秒差の27位に沈み、U23リーダーは代わってステージ10位の中尾佳佑(順天堂大学)に。
チームNIPPOはマキシミリアーノ・リケーゼで個人総合優勝を狙い、翌日の最終第3ステージへ駒を進める。

序盤に11人の逃げ

この第2ステージは距離と標高差は大きいものではないが断続的に現れる登坂が差のつきやすい配置のため、厳しい山岳コースといえるステージ。
おりしも朝から断続的に強い雨が降り気温も低い天候。路面の悪い区間もあり落車やパンクが懸念された。

7人少なくなった88人がスタート。序盤からリーダーチームの鹿屋体育大学が集団をコントロールする。10km地点ほどにある丘は道が狭く下りは路面が荒れている。ここを契機に11人の逃げができる。リーダーの黒枝士揮(鹿屋体育大学)はパンクで遅れる。

メンバーはシモーネ・カンパニャーロ(チームNIPPO)、井上和郎(ブリヂストンアンカー)、山本元喜(鹿屋体育大学)、ニック・ハミルトン(ジェリーベリー・サイクリング)、普久原奨(宇都宮ブリッツェン)鈴木譲(シマノレーシング)、安原大貴(マトリックスパワータグ)、嶌田義明(チーム右京)、オリヴァー・ビア(ヴェロクラブ・メンドリシオ)、ユスプ・アブレコフ(ウズベキスタン・ナショナルチーム)、マーティン・シルヴェイン(OCBCシンガポール)。

一定ペースで上るNIPPO主導の集団

有力チームのほとんどが乗った逃げは容認され、差を次第に3分ほどへ広げていく。上り区間に入り差はやや縮まるが吸収まではしない。メイン集団はNIPPOがコントロールする。この白金ゴルフ倶楽部への登坂は8%以上の勾配で破壊力があるが、先頭もメインも一定ペースで上っていき集団は崩れない。NIPPOはリケーゼをエースとするため、バリアーニらがペースを合わせた結果だ。佐野淳哉がこの区間でパンクしたことも影響した。

コースは一旦下って再び白金温泉KOMへの緩いのぼりへ。ここでようやく両方の集団ともにペースが上がる。先頭では井上がアタック、これを山本が追走する。しだいに先頭に井上、さらに山本、カンパニャーロ、マーティンの3人、そして他メンバーを吸収したメイン集団の構図に。井上からメイン集団まで最大5分の差がつき、逃げ切りの可能性も見えてくる。このままKOMをクリアして下りへ。メイン集団はNIPPOが引く。その後に間にいた3名がメイン集団に吸収。下りきってから中規模の登坂をクリア、この時点でリーダーの黒枝らが遅れる。

井上を吸収して勝負の美瑛丘陵へ

単独で逃げ続ける井上にNIPPOが牽引する集団が迫り、ラスト18kmの美瑛の丘陵地帯へ。急速に井上と集団の差が縮まり、ここで井上が吸収される。25人になった先頭集団は美瑛の丘陵で勝負をかけた攻防へ。ここで佐野や伊丹健治(ブリヂストン・アンカー)らがアタック、リケーゼ、佐野、西薗、伊丹、増田、飯野の6人に。この6人で最後の直線をスプリント。飯野が先行するがこれをリケーゼがかわして優勝。
リケーゼは前日の第1ステージで2位に入っており、これで個人総合リーダーに。

レース前は誰もが厳しい戦いのステージになると予測したこのコース。実際はNIPPOがリケーゼのペースで上ったために大きくはばらけなかった。しかしそれでも悪天候と厳しいコースのため、最後に抜け出せた6人は実力者ぞろいに。

驚異だったのは井上の圧巻の逃げだった。「NIPPOは平地を時速55キロで追走したのになかなか差が縮まらなかった」と大門宏監督に言わしめるほどの力走だった。ステージどころか総合優勝の可能性もある逃げだった。ブリヂストンアンカーはチームがうまく機能し5人全員が終盤の先頭集団に。特に西薗と伊丹が最後の6人に入りその実力を見せた。

宇都宮ブリッツェンは増田はもちろんのこと、飯野がゴール前で長距離を先行するなど力を発揮、団体総合で首位に躍り出た。

これでスプリント力のあるリケーゼがリーダーに立ったことで、個人総合優勝が見えてきたNIPPOだが、大門監督は違った見方をする。
「じつは今日も負けてもおかしくない展開だった。途中のコントロールや追走をNIPPOがやり全員がエネルギーを使った。ほかのチームはうちのチームを見ているだけで動かない。こんな状況なら昨日のように負けてもおかしくなかった」同じ内容をじつはこの第2ステージのスタート前にも打ち明けていた。この日NIPPOが追わなければ驚異の独走を続けた井上の優勝は見えていた。「これが現状なのかもしれないが、それでも結果を出さなければならない」と最終ステージに向けて引き締める。


結果
第2ステージ
1位 マキシミリアーノ・リケーゼ(チームNIPPO)4時間00分28秒
2位 西薗良太(ブリヂストンアンカー)
3位 増田成幸(宇都宮ブリッツェン)
4位 飯野智行(宇都宮ブリッツェン)
5位 窪木一茂(マトリックスパワータグ)+02秒
6位 伊丹健治(ブリヂストンアンカー)+05秒
7位 ニック・ハミルトン(ジェリーベリー・サイクリング)+08秒
8位 佐野淳哉(チームNIPPO)
9位 吉田隼人(ブリヂストンアンカー)+15秒
10位 中尾佳佑(順天堂大学)

個人総合時間賞 第2ステージ終了時点
1位 マキシミリアーノ・リケーゼ(チームNIPPO)7時間56分31秒
2位 西薗良太(ブリヂストンアンカー)+10秒
3位 増田成幸(宇都宮ブリッツェン)+12秒
4位 窪木一茂(マトリックスパワータグ)+15秒
5位 飯野智行(宇都宮ブリッツェン)+16秒
6位 ニック・ハミルトン(ジェリーベリー・サイクリング)+21秒 
7位 伊丹健治(ブリヂストンアンカー)
8位 佐野淳哉(チームNIPPO)+24秒
9位 鈴木譲(シマノレーシング)+25秒
10位 井上和郎(ブリヂストンアンカー)+28秒

個人総合ポイント賞 第2ステージ終了時点
1位 マキシミリアーノ・リケーゼ(チームNIPPO)45点
2位 黒枝士揮(鹿屋体育大学)25点
3位 西薗良太(ブリヂストンアンカー)20点

個人総合山岳賞 第2ステージ終了時点
1位 ニック・ハミルトン(ジェリーベリー・サイクリング)13点
2位 井上和郎(ブリヂストンアンカー)10点
3位 窪木一茂(マトリックスパワータグ)9点

個人総合U23賞 第2ステージ終了時点
1位 中尾佳佑(順天堂大学)7時間57分02秒
2位 雨宮正樹(日本大学)
3位 山本隼(中央大学)

チーム総合時間賞 第2ステージ終了時点
1位 宇都宮ブリッツェン 23時間50分36秒
2位 ブリヂストンアンカー +05秒
3位 チームNIPPO +08秒

photo&text:高木秀彰

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