最終走者ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)が、中間計測ポイントでそれまでのトップタイムを全て更新。圧倒的な走りで総合首位を守るとともに、マイヨジョーヌを着てパリ・シャンゼリゼに凱旋する資格を得た。

麦畑が広がるフランス中部を駆ける麦畑が広がるフランス中部を駆ける photo:Makoto Ayanoレース時間が1時間を超える、精神と体力の限界を試すような闘い。第99代目マイヨジョーヌを決めるのは53.5kmの長距離個人タイムトライアルだ。

前日の第18ステージを終えた時点で、総合首位ウィギンズから総合2位クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)まで2分05秒、総合3位ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)まで2分41秒。

最終走者ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)最終走者ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) photo:Cor Vos距離が長いだけに、総合上位陣の間でも簡単に分差がつく。「ひょっとしたらひょっとする」展開だったが、3週間経った今もなお、ウィギンズのパワーは圧倒的だった。

チームとしてここまで結果を残せていないアルゴス・シマノのパトリック・グレッチュ(ドイツ)とマチュー・スプリック(フランス)が気を吐いて好タイム。しかし、赤と黄色のカラフルなスペインチャンピオンジャージを着るルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク)が、1時間6分03秒で一躍トップに立つ。

ステージ2位・1分16秒差 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)ステージ2位・1分16秒差 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Makoto Ayanoペーター・ベリトス(スロバキア、オメガファーマ・クイックステップ)やリッチー・ポルト(オーストラリア、チームスカイ)も好走したが、LLサンチェスのタイムには届かない。

第1計測(14km地点)でティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)がLLサンチェスのタイムを更新。ヴァンガーデレンは3分前にスタートした前走者のカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)をパスする力走を見せたが、LLサンチェスには届かずステージ7位に。ヴァンガーデレンは総合5位とマイヨブランを手中に収めた。

1分50秒差のステージ3位に入ったルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク)1分50秒差のステージ3位に入ったルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク) photo:Cor VosLLサンチェスのタイムは、152番目の出走者と、153番目の出走者によって塗り替えられる。つまり総合2位のフルームと総合首位のウィギンズ。チームスカイの2人が抜群の走りを見せた。

先行するフルームが中間計測でトップタイムを連発。しかしその3分後方のウィギンズがそれを更に塗り替えていく。

フルームはLLサンチェスの暫定トップタイムを34秒更新。しかし、ウィギンズはそれを更に1分16秒も上回る1時間4分16秒でフィニッシュ。大会初制覇をほぼ決定づけたウィギンズがガッツポーズを繰り出した。

ゴールラインを切るブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)ゴールラインを切るブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) photo:Cor Vosゴール後、ガッツポーズするブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)ゴール後、ガッツポーズするブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) photo:Cor Vos

ステージ上位&総合上位選手の中間計測タイム推移
第1計測(14.0km地点)
1位 ウィギンズ    16'49"
2位 フルーム      +12"
3位 ヴァンガーデレン  +35"
4位 LLサンチェス    +38"
5位 Pベリトス     +39"
7位 ニーバリ      +41"
11位 ポルト      +55"
15位 ファンデンブロック+1'01"
37位 スベルディア   +1'32"
44位 ロラン      +1'37"
60位 エヴァンス    +1'48"
第2計測(30.5km地点)
1位 ウィギンズ    36'41"
2位 フルーム      +54"
3位 LLサンチェス    +58"
5位 Pベリトス     +1'16"
6位 ヴァンガーデレン +1'22"
8位 ポルト      +1'41"
15位 ニーバリ     +2'01"
25位 ファンデンブロック+2'29"
49位 スベルディア   +3'23"
62位 ロラン      +3'37"
81位 エヴァンス    +4'00"
ゴール地点
1位 ウィギンズ   1h04'13"
2位 フルーム     +1'16"
3位 LLサンチェス   +1'50"
4位 Pベリトス     +2'02"
5位 ポルト      +2'35"
7位 ヴァンガーデレン +2'34"
16位 ニーバリ     +3'38"
26位 ファンデンブロック+4'22"
42位 スベルディア   +5'32"
52位 エヴァンス    +5'54"
64位 ロラン      +6'14"



マイヨジョーヌにキスをするブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)マイヨジョーヌにキスをするブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) photo:Makoto Ayano最終日に、ウィギンズはマイヨジョーヌを着てパリに凱旋する。例年同様、最終ステージは総合タイム差がつきにくい平坦ステージ。つまり、ウィギンズが大会初制覇を決定づけたと言って良い。100年を超える長い歴史の中で、史上初めてイギリス人のツール覇者が生まれる。

レース後の記者会見に臨むブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)レース後の記者会見に臨むブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) photo:Makoto Ayano山岳ステージでは好調フルームにお株を奪われたが、得意の個人タイムトライアルで堂々とした威厳たっぷりの走りを披露。最高の形で総合争いを締めくくったウィギンズは「タイムトライアルは自分の領域だ。完全に自分向きのコースで、自分のスタイルで締めくくりたかった。ラスト10kmは様々な感情がわき起こってきたよ。ここに至るまでの長い長い日々…。昨年落車でツールを去り、グルノーブル(の個人TT)を走るカデルをテレビで見た時の落胆…。それからずっと、ツールに王手をかけたときの気持ちを想像していたんだ。ツールを狙う選手にとって、これ以上の勝利は無い!」とコメントする。

失速したエヴァンスに代わってアイマル・スベルディア(スペイン、レディオシャック・ニッサン)が総合6位に浮上した以外に、総合トップ10の順位に変動は起こらなかった。自身初の総合表彰台を獲得したニーバリは「表彰台には大満足だ。でもここがゴールではない。将来、もっと上の順位を目指していきたい」とツイートしている。レディオシャック・ニッサンはチーム総合成績トップをキープ。

新城幸也はピエール・ロラン(フランス)を上回る6分06秒遅れのステージ57位。クリストフ・ケルヌ(フランス)に次ぐユーロップカー内2位の好タイムで、総合では84位に。日本人選手として初めて2桁の総合順位でパリに向かう。

チーム内2位のステージ57位に入った新城幸也(日本、ユーロップカー)チーム内2位のステージ57位に入った新城幸也(日本、ユーロップカー) photo:Makoto Ayanoステージ7位・2分34秒差 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)ステージ7位・2分34秒差 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム) photo:Makoto Ayano


選手コメントはレース公式サイトより。

ツール・ド・フランス2012第19ステージ結果
1位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)             1h04'13"
2位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)                 +1'16"
3位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク)              +1'50"
4位 ペーター・ベリトス(スロバキア、オメガファーマ・クイックステップ)     +2'02"
5位 リッチー・ポルト(オーストラリア、チームスカイ)              +2'25"
6位 パトリック・グレッチュ(ドイツ、アルゴス・シマノ)             +2'28"
7位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)      +2'34"
8位 ヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、モビスター)               +2'46"
9位 レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)               +2'50"
10位 ジェレミー・ロワ(フランス、FDJ・ビッグマット)              +3'05"
16位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)     +3'38"
26位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル)        +4'22"
42位 アイマル・スベルディア(スペイン、レディオシャック・ニッサン)      +5'32"
52位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)        +5'54"
57位 新城幸也(日本、ユーロップカー)                      +6'06"
64位 ピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)               +6'14"

個人総合成績 マイヨ・ジョーヌ
1位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)            84h26'31"
2位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)                 +3'21"
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)     +6'19"
4位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル)         +10'15"
5位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)      +11'04"
6位 アイマル・スベルディア(スペイン、レディオシャック・ニッサン)       +15'43"
7位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)         +15'51"
8位 ピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)                +16'31"
9位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、アスタナ)              +16'38"
10位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ・ビッグマット)               +17'17"
84位 新城幸也(日本、ユーロップカー)                    +2h29'13"

ポイント賞 マイヨ・ヴェール
ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)

山岳賞 マイヨ・ブラン・アポワ・ルージュ
トマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)

新人賞 マイヨ・ブラン
ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)

チーム総合成績
レディオシャック・ニッサン

敢闘賞
設定無し

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos
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