7月17日、ピレネーの麓で2度めの休息日を迎えたツール・ド・フランス。ユーロップカーが滞在するポーのホテルに新城幸也を訪ねた。第2週のレースを振り返る。

新城幸也(ユーロップカー)新城幸也(ユーロップカー) (c)Makoto.AYANOー いよいよ3週目に突入ですが、体調はどうですか?

体調は今のところ万全です。昨日もアタックしたとおり。脚は疲れていますが、精神的に下がっていることもありません。自転車が嫌いになることもありません。脚の疲労は他の選手と同じぐらいでしょうね。

ー 第1週が終わった時に言った「今まで一番調子がいい」という状態には変わりがないですか?

まだまだ走れるし、良い感覚です。

ー 今、いい調子を保てているのは経験を積んだからですか?レベルアップしているから?

経験ですね。もちろん脚も良くなっています。体重も第1週から変わっていないですし。削る部分を削ってからツールに入る「下準備」ができてから走り始められたというのは良かった。もし今1kgでも体重が減っていれば、まだ削れる部分があったということになりますからね。

敢闘賞を獲得したときのスポーツ新聞の記事をみて喜ぶジョン=ルネ・ベルノドーGM敢闘賞を獲得したときのスポーツ新聞の記事をみて喜ぶジョン=ルネ・ベルノドーGM (c)Makoto.AYANOー 第2週目の感想は? アタックして逃げてみて、どうでした?

2週目は全部のステージが速かったですね。トマ(ヴォクレール)が勝ったステージもやっと決まった逃げが20人ちょっとで、それに僕も入ることができました。
ロランの勝ったステージでは前にいたんですが、最後に越えた峠で遅れてグルペットでゴールして(タイムアウトギリギリでゴール)大変な思いをしました。
昨ステージも速かったし、おとといの14ステージもなかなか逃げが決まらなかったし、この2週目は「逃げたい」という皆の思惑が一緒だったということでしょうね。

ー 逃げの難しさを感じる?

インタビューに答える新城幸也(ユーロップカー)インタビューに答える新城幸也(ユーロップカー) (c)Makoto.AYANO難しさはどのレースも同じですよね。やっぱり逃げたいと思っていても逃げられない、逃げるつもりがなくても逃げに入ってしまうこともある。すべてタイミングですよね。

ー 昨日のアタックは決まったかに思えたんですが、最後まで逃げられなかったのはなぜだと思いますか?

良いメンバーで20kmぐらい逃げたんですが、決まらなかった。集団が逃がしてくれなかったんですね。後ろもまだアタック合戦が続いていたんです。メンバーが良かったから20kmも逃げられた、とも言えます。もしあの逃げが決まってたら僕の勝ちはかなり可能性が高かったと思います。

そして20kmの間、前も後ろも必死でアタックを続けた後の次のアタックは決まりますよね。トマが「あの時お前が前にいたから俺が行くしかないと思った」と言ってくれました。集団は皆疲ていたんです。全員必死でしたよ。普通ならスプリンターチームが最後に何とかしようとするんですが、止めましたよね。マシュー・ゴスも最後の山で遅れた。フランク・シュレクもクレーデンも僕の後ろでひらひらしていました。皆限界だったんです、実は。

ピエール・ロランと新城幸也(ユーロップカー)ピエール・ロランと新城幸也(ユーロップカー) (c)Makoto.AYANOー このところ逃げのトライと、トマのための仕事、ピエールのパンクのアシストなど、仕事が増えているように感じますが?

その仕事のお陰で集団の前にいられるというのもあるんです。モンサンクレールの上り(第13ステージ)でも、総合がもし関係なかったら前にいる必要はなかったんですよ。で、前にいなければ集団前方に残れなかった。集団の前にいるぶん、脚は使うけれど変な使い方をしないで済むので、精神的にも楽ですね。

ー そんなエースたちのための働きについては、レース後にヴォクレールやロランに言葉をかけてもらえたりするんですか?

もちろんです。でなかったら誰も働きませんよ(笑)。ちゃんと感謝の言葉をかけてくれます。
昨日(第15ステージ)の逃げも、あの場面で前を逃げるというのはチームにとってもいいことで、監督からもトマからも後で褒めてもらえました。
モンサンクレールの上りの後、横風区間で集団が分裂してピエールが後ろに取り残された時も、僕がピエールを連れて前に引き上げた。あの時それができるのは僕しかいませんでしたからね。
トマは今回のツールはそういったごちゃごちゃする展開が多いから、このメンバーセレクションで良かったと言ってくれました。そういうところで僕が仕事が出来ることを評価してくれています。

ー リーダーが勝つのはどういう感覚ですか?今回のツールではそれが2回ありました。

ー 嬉しいですよね。僕の微々たる力ですが、役に立ってリーダーが勝ってくれる。嬉しい面と、「僕の番はいつかな?」と気が引き締まる面があります。僕の番を待ってますよ(笑)。

チームバスの窓には優勝の盾2つと敢闘賞の盾3つが飾ってあるチームバスの窓には優勝の盾2つと敢闘賞の盾3つが飾ってある (c)Makoto.AYANOー バスの窓に飾っている、優勝の盾2つと敢闘賞の盾3つは、毎日見てどうですか?

まあそれはとくに。チーム賞金額ランキングも3位なんですよ(笑)。

ー 今はチームの雰囲気はいいですか?

いいですが、今朝2人帰りましたからね(昨日完走できなかったヴァンサン・ジェロームとジョヴァンニ・ベルノドー)。マッサーもひとり帰ったので規模縮小ですね。メンバーが途中で居なくなるのは今までのツールで初めてですね。9人いたほうがやっぱりいいんです。その選手が必要なケースは必ずあるし、何かしら起こるし。残念な感じはあります。昨日は登りでなかったので何もできなかったです。登りならあらゆる手を使えるんですが。

短いステージは厳しくなりますね。ロランが勝った短いステージも僕がきつかったし、短いステージは落とし穴がいっぱいありますね。距離が短いとレース展開が凝縮されます。

ー 明日明後日は大変なピレネーステージですが、2人いなくなったことでユキヤの仕事が増えるんでしょうか?

とはいえ僕は上りが登れないですからね。もともと上りで働けてないですから。だから平坦区間でボトルを運んだり、引いたりは増えるでしょうね。登れるのはトマ、ピエール、マラカルネ、ゴティエ。ジューヌと僕が平坦を引いて、あとは任すしかないですね。

ー 残りのステージで逃げるチャンスは18ステージでしょうか。

そうですね。チャンスは18ステージにしかないですね。でもきっとスプリンターチームが狙ってくると思います。シャンゼリゼはけっこう厳しい石畳で、ガツガツ行けないですからね。チャンスがあるとしたら、ヴィノクロフが勝ったようにラスト1kmでアタックする誰かに着いて行くしかないでしょう。あの最終コーナーは一人しか抜けられませんからね。番手で突っ込むのはコワイです(笑)。

ー シャンゼリゼの最後のステージはチームスカイがトレインを組んでカヴェンディッシュを勝たせたいようですが?

インタビューに答える新城幸也(ユーロップカー)インタビューに答える新城幸也(ユーロップカー) (c)Makoto.AYANOカヴは昨日で帰ると思ったんですが、最後まで走るんですね。

ー ステージ優勝のチャンスはずいぶん減ってしまいましたが、思うところはありますか?

しょうがないですね。分かっていたことでもあるんです。だから最初のほうで逃げておきたかったし、最後のほうになると難しくなる。18ステージでは、できることはやってみようと思っています。
逃げ切りでしょうね。昨日みたいにガンガン闘えば逃げ切るでしょうし、早めに逃げが決まっちゃえば、最後にロット(・ベリソル)が追い上げてグライペルの勝利を狙ってくるでしょうし。多分スプリントになると思います。チャンスはかなり小さいです。


photo&text:Makoto.AYANO

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